皆が集まる少し前のお話。
崩壊3rd公式アニメ『黄金の庭園:冬に積もる新年の願い』をモチーフにしているので先にそちらを見ると想像しやすいかもしれません。
ふと窓を見ると、季節を感じさせる雪がひどく降っていてとても外に出る気にはなれない。一段と寒い年越しになりそうだ。
「よそ見はいけないよ、ケビン」
目の前にいる青年、スウは目を細めてそう言うと自分の駒を動かした。今、僕とスウはチェスをしているのだ。これは大事な勝負なのだがつい思考が逸れてしまっていた。気を引き締め直さねばならない。絶対に負けられない戦いなのだから……。
一時間後、接戦の末に負けてしまった。
「はは、僕の勝利だね。約束通り今日の料理番は君に任せるよ」
「…仕方ない。引き受けよう」
料理はあまり得意ではないのだが、やらねばなるまい。渋々キッチンに向かおうと重い腰を上げると、ピンクの髪が目に入った。いつから彼女はいたのだろうか。
「あら、ケビンったらまた負けたのね〜」
「…ああ、最近はスウに勝てなくなってきた」
「そう言えば二人はいつからチェスを始めたの?」
可憐な声でエリシアが言った。
「僕はケビンに誘われて始めたんだ」
スウがこちらを向き、僕は頷く。
「へー、それじゃあケビンは?」
「…父の影響で小さい頃からしている」
ずっと暖かい部屋で寝ていた大きな猫がもぞもぞと動き出す。
「それなのにケビンは負けちゃったんだ〜」
猫の着ぐるみから顔を出しにやにやと笑いながらパルドフェリスは言った。失礼な猫には無視を決め込む。
「まぁまぁとりあえず、ケビンが今日の夕飯を作るのよね」
「あたし、エリシアのご飯の方が好き!」
「フェリス、そんなこと言わないの。でもせっかくの年末だし皆で作るのはどう?」
「賛成だ」
僕に取っては願ったり叶ったりの提案だ。
「いいじゃん、楽しそう!」
パルドフェリスも乗り気のようだ。スウも無言で首肯する。
「それじゃあ後から来るエデンたちにも伝えておかないとね!」
「全員が集まる機会も少ないし良いんじゃないかな」
パルドフェリスは唐突に僕を指さして言う。
「皆が来るまでまだ時間もあるし、チェスで勝負しようよ!」
あらあら、とエリシアは微笑を浮かべながらこちらを見守っている。
「…受けて立とう。ところで、フェリスはルールを知っているのか?」
「うろ覚えだけどケビンなんかには負けないよ!」
10分後、そこには地に伏す猫の姿があった。猫耳もぺたんとなり項垂れているのが見て取れる。
「…強い。悔しいー!」
フェリスが涙目でスウの方に駆け寄る。
「スウ、後でケビンに勝つ方法教えて〜」
「いいよ、でもケビンはかなり強いよ」
彼女はどうして僕に勝てると思ったのだろうか。でも教えるのが上手いスウだったら、フェリスもすぐに上達するだろう。
ある冬の日の出来事、平和な街の外れで暖かい時間が流れていた。