クリスマスが今年もやってくる。
毎年。毎年。

クリスマスなんて。
聖夜なんて。

毎年、思い出すことがある。
どうしても忘れらない。
そんな思い出。

カレンダーを見る。
そして、私は今年も悪態をつく。



「クリスマスの馬鹿野郎」




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お題:末、20、転職、口付け、街灯
(サブお題:クリスマス、着ぐるみ)

※こちらの文章を書くにあたり、語尾プッチンの省略をお許しくださいプッチン。
※また、こちらのお話はフィクションですプッチン。実在の人物・団体・出来事とは関係ありませんプッチン。
※さらに、こちらのお話はフィクションですプッチン。似たような人物・団体・出来事とは関係ありませんプッチン。
※電車で移動中の際に作成をさせていただきましたため、誤字脱字をお許しくださいプッチン。


「あなたじゃなかった。」

 

 

 

【「あなたじゃなかった。」】

 

 

 

この肌寒い季節は、恋人がほしくなる。

誰かが言っていた。

年末に近づくにつれて、人肌恋しい気温になり、人は身を寄せあう相手が欲しくなるのだ、と。

だから、この時期になると恋人が多くなる。

案の定、街中は恋人たちであふれていて。

男女が仲良さげに街中を歩くさまを、私は冷ややかな目で見つめていた。

 

マッチングアプリ、惨敗数丁度100回目。

 

 

「ごめん、……なんか違う。ごめんなさい」

 

 

そういわれて、相手の男性から断られたのは今ので丁度100回目。

ルックスも普通。年収も普通。素行もまあ普通。

無難に趣味は映画鑑賞だし、写真も少しばかり目を加工したものをはりつけている。

実際、マッチングアプリでは、100回ほどマッチしているのだ。

つまり、100人の男が私に「いいね」を押して、実際に会っている。

 

のに、実際に会ってみると【これ】だ。

 

一度会って。二度目のデートまでこぎつけたのに、断られてしまう。

それも理由が明確ではない。

 

 

「なんか、違う」

 

 

そういわれて、それきりになってしまうのだ。

そもそも、土俵にあがることがない。

なんなら相撲で戦わせてもくれない。

取り付く島もないというわけだ。

 

 

恋愛小説や漫画のように、運命の出会いなんてほど遠い。

 

 

 

「ごめん」

 

 

 

謝られると余計にみじめだ。

目の前で頭を下げる男はよく見れば、鼻毛も出ているし、顔も馬面。

やや後退し始めている髪は、セットされていないように思える。

フラれてしまった瞬間、すん、と気持ちは冷めていく。

 

昨日はあんなにもウキウキしていたというのに。

100年の恋も冷める…ほど、この人間に恋をしていたけではないが。

それでも、これからこの男のことを好きになろうとして、断られた。

なんなのだ。まったく。こうなったらひどい言葉でもかけてやろうか。

 

 

 

「いえ、あー、……いいです。別に。……えーっと、じゃあ、…さようなら」

 

 

 

何か文句の一つでも言おうとしたのに、何も出てこなかった。

機転の利かないオツムを殴ってやりたくもなったけれど、

他人にフラれてしまった手前、傷心な私自身を愛してあげられるのは私だけだ。

アドリブの利かない私を許してあげないといけないのも事実。

 

先ほどまで隣を歩いていた彼に別れを告げられ、逃げるようにその場を去る。

クリスマス間近で浮足立つ街の空気が嫌で、すぐ近くにあったカラオケに逃げ込んだ。

 

早々に受付を済ませ、ドリンクバーのグラスを4つとったら、全部にアイスティーを入れ込んで、部屋に駆け込む。

荷物を全てソファーに叩きつけ、マイクをひっつかむ。

 

 

 

「あああ゛ーーーーーっっ!!!!!」

 

 

 

絶叫が部屋中に響く。

さすがに隣の部屋から何か苦情がくるかもしれない。

いや、そんなこと知ったこっちゃない。

 

 

 

「どいつもこいつもクソヤローーーッッ!!!!」

 

 

 

頭にきていた。

何せ、特に理由もなく、というかただ「なんか違う」だけで二回目のデートが終わったことに。

これまで、100回分その理由でフラれてしまったことに。

 

 

 

「理由ぐらい言えオラァーーーーーッッ!!!」

 

 

 

いい大人が、しどろもどろになってるんじゃない。

理由ぐらい言ってみろ。改善点を述べろ。反省点を言え。

いっそのこと。

 

 

 

「くそぉぉ…彼氏ほしい……!」

 

 

 

私のどこがダメなんだ。

 

確かに顔はかわいくはない、と思う。

でも、それなりにメイクはしたし、かわいい…はずだ。いや、わからん。

 

お洋服も最近の流行、とセールになっていないものをわざわざ選んだ選んだつもりだ。

ダサくはないはずだ。多分。

 

話し方も、ボディタッチも、それなりに気を付けているはずだ。

……今の素の自分を出したこともない。

 

もしや、にじみ出ていたのだろうか。

 

 

いや、と首を振り、「くそ」と吐き捨てる。

そうさ、そうだよ、口は悪いよ。ほっといてくれ。

 

 

何もはじめからこうだったわけじゃない。

学生の頃に何人か恋人はいたが、それきりだ。

それから、恋人と呼べる存在がいなかった。

周りの友人たちが結婚だ、一人目だ二人目だと報告をしてくれることはめでたいと思う。

思う反面、悔しくもあった。

 

 

彼女たちと自分は何が違う?

 

 

考えて考えて考えて考えて、たくさん考えた。

とにかく、出会いの場がない、と結論付けた。

 

 

街コンに参加してみたけれど、何一つ楽しくなかった。

パサついた料理を食べて、決められたグループの中で話すだけ。

最後に気になる人の名前を書いて、終わり。

お互いの名前が書いてあった人たちが呼び出されて、祝福される。

50回ほど参加したことがあるが、どの町コンでも、私の名前が呼ばれることなどなかった。

 

 

出会いの場が恋愛に近すぎただろうかと、少し遠巻きにした社会人サークルに参加したが、これも楽しくなかった。

学生の頃からやっていたテニスのサークルだったが、変に禿たおっさんに付きまとわれて終わった。

ちなみにイケメンたちはみんな、サークルのマドンナにひっついていたっけ。

最終的に、サークルは辞めた。

 

 

社会人の出会いの場の多くは職場だというので、男性が多い営業ができるようにと転職もしてみたが、楽しくなかった。

毎日毎日、ノルマノルマノルマ。気が付いたら、仕事のし過ぎで会社で寝泊まりをしていた。

男性との出会い云々の話ではなく、自分のノルマに精いっぱいの毎日。

ちなみに、今では業績一位の女営業ということで社内に名を馳せている。

唯一よかったことは、飲みにケーションが自分にはあっていたということだろうか。

 

 

知人・友人からの紹介のほうが確実かもしれない、と友人たちに紹介してもらってこともあるが、これまた楽しくなかった。

みんな、仕方なく紹介させられた、という態度で挑んできたからだ。

どこか上から目線というか、どこか仕方なくというか。

どいつもこいつも、私を私として見てくれる人には出会えなかった。

そのことに関して、友人たちのほうが気に病んでしまったことも相まって、20人ほど紹介されたところで諦めた。

友人たちの心を痛めてまで、結婚がしたいわけではなかった。

 

 

お見合いにも10回ほどやってみたことがある。ちなみに、やはり楽しくなかった。

親がもってきたから、仕方なく…というのは建前で、親がもってきてくれたのなら向こうもその気だろうと、やや期待していた。

のに。

どいつもこいつも、返答はNO。向こうから帰ってくる返事は全てNO。

お見合いの間はあんなに楽しく話していたというのに、だ。

とうとう、親が泣き出したのでお見合いからも撤退した。

 

 

昔の恋愛に花が咲くともいうので、同窓会に参加したこともあったが、楽しくなかった。

いや、昔の友人たちと出会うのは楽しかった。そうじゃない。

かつて、恋人だったやつらは、全員結婚していた。

さらに衝撃的なことは、「結婚してるけど…いいよね?」とかつての恋人たちに迫られたことだ。

 

 

何言ってんだ、いいわけねーだろ。

 

 

右ストレートを食らわせて同窓会も後にした。

今後、参加することはないだろう。

 

 

もう残っているのは、ナンパか、マッチングアプリの二択。

こちらからナンパするのもなんだか違う気がしたので、マッチングアプリを頑張ることにしたが。

結果はこの通りだ。

100戦0勝。どんなデスマッチだ。カイジも嘆くわ。

 

 

大人の恋愛は難しい、なんて馬鹿がいう戯言だと思っていた。

 

 

それなりにしていれば、それなりの人と結婚できると思っていたのに。

思っていたのに、結果はこれ。

待ちの姿勢でいるのがよくない、と言われて一生懸命頑張ったつもりだった。

 

 

「積極的にやってきて…これかあ…」

 

 

大人になれば自然と結婚できるものだと思っていた。

まさか、そのステージにも立てないとは思わなかったのだ、

ひとしきり叫び終わったところで、持ってきていたアイスティーをがぶ飲みする。

 

 

「…くぅぅ、ぷはあっ!」

 

 

叫びすぎて酷使した喉が生き返る。

さらさらと流れるアイスティーがこんなにもおいしいとは思わなかった。

再び大きな声で「コンチクショーーー!!!」と叫んだ時。

 

 

 

こんこん

 

 

 

ドアがノックされた。

とうとう隣の部屋から苦情が来たか。

ため息をついてから、ガチャリとこちらからドアをあける。

今の私は傷心していたが、それ以上に開き直っている部分があったので、怒られることなど屁でもないと思っていたし、

逆切れでもしてみせれば、異常な人だとでも思われて苦情を言われることもなくなるだろう。

自分の機嫌がうまく取れず、よくないことばかり頭に浮かぶ。

 

 

 

「すいません、あの……大丈夫ですか?」

 

 

 

目の前に立っている男は、やや線の細い男性だった。

きっと自分よりも年下なのだろう。幼い顔立ちが目立つ。

でも、けしてイケメンではない。

まあ、そこまで変な顔をしているわけでもない。

…特徴があまりない、といえばいいのだろうか。

顔の評価を終えながら、答える。

 

 

「…え、いや、大丈夫ですけど…」

 

 

どうやら文句を言いに来たわけではないようだ。

すまなそうに頭を掻きながら、こちらを見つめている。

 

 

「叫び声が聞こえてきたから心配しちゃって…。

 あ、ごめんなさい。それだけなんですけど……」

 

 

すまなそうにしていた彼。

 

 

「けど…?」

 

 

と怪訝に私がつぶやいたのなら、目の前にいた彼が俯いた。

ほかに言いたいことでもあるのだろうか。

もじもじとした態度は、やや私をイラつかせる。

 

 

「……あ、あの!」

 

 

ようやく、意を決したかのように話し出す彼を、呆れた目で見ていたような気がする。

まさか。

 

 

 

「自分じゃダメでしょうか…!!!」

 

 

 

ナンパされるなんて思ってもいなかったのだから。

 

 

 

 

 

あれから、話は進んでなんでだか連絡先を交換した。

思えば、勢いに押されただけだったようにも感じる。

でも、自分がナンパされるだなんて思わなかったというのもある。

ただ単純に、好意を持たれたのが嬉しかったのかもしれない。

 

 

だってそうだろう。

 

 

傷心だった女のスキをついた…というといい方は悪いが。

実際にまんまとそのスキに付け込まれたのだから。

いいじゃないか。

恋とか愛とかは。

マッチングアプリだとか、お見合いだとか、そういうのと変わらない。

まずは好意を持たれたことを喜ぶべきだ。

 

 

とにかく。とにかくだ。

 

 

携帯に映るメッセージは、彼からのもの。

明日は何時に、どこで、とデートの詳細。

 

 

「デートしてみないことには、わかんないもんね」

 

 

すっかり気分は有頂天。

明日のデートへ挑むのだった。

 

 

 

 

 

ガヤガヤと街中。

待ち合わせ場所は駅前の、大きなクリスマスツリー。

周囲も待ち合わせの人々。

クリスマスケーキのチラシを配る着ぐるみなんている。

昨日は、こんな空気が大嫌いだった。

でも、今日は違う。

 

 

 

私、今、周囲に溶け込めてるんじゃ?

 

 

 

にやにやとにやける口元をマフラーで多い隠す。

ナンパしてきた彼を待つ。

あの時、声をかけられなかったらここにはいなかった、と思うとなんだか胸がざわつく。

マッチングアプリで出会った男たちと待ち合わせするよりも、胸が弾んでいる気もする。

楽しみなのだ。きっと。純粋に。

 

 

そんなことを思っていたら、相手がやってきた。

 

 

駅の改札から出てきてから、きょろきょろと周りを見渡している。

私を探しているのだろうか。

まあ、でも、すぐ目の前の柱の前で待っているのだから、気が付いてくれるはずだ。

 

 

 

 

 

…。

 

 

 

 

 

そう思って、10分ほどが過ぎた。

本人からの連絡はない。

目の前に本人がいるというのに。

なんだ?わざとか?とでもいえるくらいには私は彼の目の前から動いていない。

彼は未だに私をきょろきょろと探している。

目の前にいるのに。

私はここにいる。スケイスもびっくりだろ。

 

 

人の顔の見分けがつかないタイプの人間なのだろうか。

 

 

さすがに、このままだとどうにもならないような気がしたので、こちらから近づいて挨拶をした。

 

 

 

「あー…。ごめん。待った?」

 

 

「あ!!こんにちは!よかったです。きてもらえないんじゃないかって」

 

 

「電話、してもらえたらよかったんじゃないかと。まあ、いいですよ。

 どこに行きましょうか」

 

 

「あ!そうか。すいません…全然気が付きませんでした」

 

 

 

本当に気づかなかったのか。

いや、まあ。本人がいうならそうなのだろう。

若干、もやもやした気持ちを抱えるけれど、こんなことで今日のデートを辞めるわけにはいかない。

「じゃあ、行きましょう」と声をかけられて、ともに歩き出す。

彼は携帯の地図を開いて、矢印の方向へ。

 

隣を歩くが、話が特にない。

おかしい、向こうは私のことが【いい】と思ったのだから、ナンパをしたのではないのか。

緊張で話ができない、というのはこういうことなのだろうか。

彼は真剣に携帯を見つめながら「こっちみたいです」と店へ案内してくれる。

 

 

 

しかし、会話がそれしかない。

 

 

 

マッチングアプリの男たちのほうがまだ話そうとしてくれた気もする。

いや、私が求めすぎているだけか。

昨日の今日でナンパされたのだ。

緊張しているのかもしれない。

そう自分に言い聞かせた。

 

 

……が、店についてお昼ご飯を一緒に食べ、当初の予定通りに映画もみたが、ついぞ話が盛り上がることはなかった。

 

 

 

 

 

映画も見終わり、外も暗くなっている。

冬は日が落ちるのが早い。

まあ、そろそろ帰ったほうがいいかな?

ふう、と息をついたら、向こうが「次はどうしましょうか」と話しかけてきた。

 

 

 

「特に希望はないですけど」

 

 

「時間はまだ大丈夫ですか?」

 

 

「あ、はい。大丈夫です」

 

 

「それじゃあ、あの…イルミネーションを見ませんか。

 駅までの道のりのイルミネーションを見るだけでも、綺麗だと思うので」

 

 

 

もう外は暗くなり、街灯ときらきらと輝くイルミネーションが目をひいた。

駅までの道のり、と言っていたのでまあ、見ながらのんびり帰るのだろう。

それじゃあ、と歩き出す寸前にするりと手を伸ばされ、手を取られた。

ナチュラルに「行きましょう」と笑った彼をみて、いままでの彼はなんだったのかと、やや宇宙猫のような顔でいた気がする。

 

 

じっとりと濡れていく手のひら。

 

 

きゅっと音がするように手をにぎる彼。

そうそうそうそう、これこそデートっていう感じ!

若干冷めていたような気持ちを再度燃やすように、つないだ手に意識を向ける。

ちりちりと何かがこみあげたが、知らんふりした。

 

 

 

「わあ、綺麗ですね」

 

 

 

イルミネーションを一つ一つ見ながらいう感想。

まあ、ありきたりに「綺麗ですね」と返す。

言葉のバリエーションが少ない。

同じ会話を何度も、何度も。

そんなもんか、と思いながら見るイルミネーション。

ふと、隣を歩く彼が歩みを止め、きょろり、と周りを見回した。

気が付いたら人通りの少ないイルミネーションの道にきていたようだ。

まあ、ここからでも駅につくので、そんなに気にしていなかった。

 

 

 

「どうしたの?」

 

 

「……あの、僕と…その、」

 

 

 

はっきり言わないのは、なぜだろうか。

視線も合わず、やや伏し目がち。

言いたいことがあるなら、はっきり言えばいいのに。

そう思ってため息をついた時だった。

 

 

 

「僕と付き合ってください!!!」

 

 

 

繋いだ手に引き寄せられて、ぐっと抱きしめられる。

一瞬、何が起こったのかわからず、「あ?」とヤンキーみたいな声を出してしまったような気がする。

彼の手が背中にまわり、私はすっぱりと収まってしまわったわけだが。

 

 

どきんどきん。

 

 

聞こえる彼の心拍数。

なるほど、緊張しているんだね。

それもそうか、と自分も彼の背に手を回そうとして。

少し上を向いた時だった。

さほど、身長は変わらないと思っていたが、彼の顔が私の顔の目の前にあったのだ。

彼の表情はどうだったろう。

私はどんな顔をしていただろう。

 

 

 

あと、数ミリ。

 

 

 

唇を近づけて、「ああ、私この人と、」と目をつむった。

矢先に、ぐ、と何かがこみ上げる。

 

 

喉の奥から込み上げるようなそれは、何かを我慢していたもののような。

なんだか。なんだか、それは嫌悪感とも似た。

いや、違う。それとはまた違う。

 

 

手を繋いだ時に感じたものと似た。

 

 

彼の唇が自分の唇に触れ、ほんのりと熱を持つ。

初めてのキスというわけでもなかったのに。

なぜだろう。とても戸惑っていた。

向こうは、私が何も反応しないことで気を許したと思ったのだろう。

ぐい、と角度を変えてくる。

 

 

その行動に、やや眉を顰める。

 

 

いや、同意だ。これは同意だ。

そういう雰囲気だったじゃないか。

キスなんて、初めてじゃない。

ただ久しぶりなだけ。

だから、少し、気になりすぎているだけなのだ。

 

 

 

しばらく彼に身を預けてみようと考えたあたりで、待てよ、と私自身に言われた気がした。

 

何も考えられない、なんて嘘だ。

何も感じてない、なんて嘘っぱちだ。

 

違う。違うんだ。

 

 

 

違う、と一度感じてしまえば、もうその違和感は拭えない。

そうなのだ。

ずっと感じていた自分の違和感。

ずっと無視していた既視感。

忘れていたんじゃない。見ないふりをしていた。

これを自覚してしまうのが恐ろしかったのかもしれない。

こんなこと、思ったらいけない。

考えたらいけない。

でも、今、私の頭で駆け巡る考えは……。

 

 

 

「あ、の…」

 

 

 

相手のしつこい唇からなんとか離れ、少しばかり距離をとる。

あれほどまでに憧れた口づけは、理想のものではなかった。

生々しい感触が残っているような気がして、人差し指で拭う。

 

 

次こそは、と決めていたのに。

あんなに、出会いたかったのに。

誰とでも付き合えると思っていたのに。

 

 

 

「……ごめんなさい」

 

 

 

私は、彼らと同じ気持ちでいる。

 

ようやく気が付いた。

 

 

 

あの時の、彼らの言葉は、心からの言葉だった。

これだ。これなのだ。彼らがこれしか言えなかったのは。

彼らがなぜ、こう言って離れていくのか。

 

 

【こういうこと】だったのだ。

 

 

あんなに忌み嫌っていた呪いの言葉を、私は放とうとしている。

私に好意を持ってくれた人に。

 

 

 

「なんか…違うんです…」

 

 

 

え、と声を漏らした彼の顔を見たくなくて、下を向く。

きっとあの時の彼らと同じ顔をしているのだろう。

まるでこちらが被害者のような表情で。

それを告げたくないのに、告げるしかない。

 

 

 

クリスマス前日なのに。

 

 

 

私はイベント前の最後のチャンスを棒に振ろうとしているのだ。

ようやく、私にも恋人ができると思っていたのに。

ようやく、結婚できると思っていたのに。

ようやく、親からの「いい人はいないのか」の言葉を聞かなくなると思ったのに。

 

ぴかぴかと光るイルミネーションを横目に、最後の勇気を絞る。

 

 

 

「ごめんなさい」

 

 

 

今年のクリスマスも、一人が確定してしまう。

でも、いいんだ。仕方がないのだ。

クリスマスというイベントを目前として、私は彼と過ごせないと思った。

思ってしまった。

合わない、と感じてしまった。

今後、クリスマスが来るたびに思い出す思い出に残せなかった。

悪い言い方をするなら、共にクリスマスを過ごすのは、彼ではないと感じてしまった。

 

彼が悪いわけじゃない。私の理想が高いのかもしれない。

でも、もうどうにもできない。

一度感じた違和感は拭えない。感じた嫌悪感は消えない。

 

 

 

でも、言いたくない。

 

 

 

何度も、私も言われてきたこの呪いの言葉を。

100回ほど唱えられてきた呪いを。

でも、言うしかない。伝えなければ。

 

 

 

そして、私は、呪いの言葉を口にする。

 

 

 

 

 

 

 

「あなたじゃなかった。」

 

 

 

 

 

 

 

メリークリスマス。

 

ひとりぼっちの私。

 

 

 

 

【END】

 

 

 

 


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