「ふんふふんふふ〜ん♪」
鼻唄を唄いながら初の護衛任務の準備を進める渚。
と言っても、大体はマーサなどが用意する為、本人達が用意するのは嗜好品という名の暇潰しの私物だ。
「こっちに来て海外に行くなんて初めてだね! 楽しみ!」
「いや、私ら王都だって殆ど出ないからこの国の事だって対して知らないからな?」
上機嫌の渚に冬美が水を差すと、そうだけどさ〜っと頬を膨らませる。
それに割って入る形で彩那がフォローに入る。
「でも、ちょっとくらい外出許可出るといいね」
「逃げられると思われてなければね」
「冬美〜そんな嫌なことばかり言わないでよ〜」
暗くなりそうな事ばかり言う冬美に渚が軽く羽交い締めする。
それを鬱陶しそうに払う冬美。
彩那はさっきからずっと黙っている璃里に話を振る。
「璃里ちゃんはどう思う?」
彩那に話しかけられて、ビクッとしてから顔を上げた。
「今回は、人を殺さなくてもいいんだよね……?」
今回はあくまでも護衛。
積極的に攻め込む訳ではない。
だから大丈夫な筈だが。
「だーいじょぶじょぶ! 多少のめんどーなのはボクが引き受けっから! 璃里は座って菓子でも食ってて!」
「あんたまたそういう……」
軽く約束する渚に冬美は眉をピクピクと動かす。
しかし、現状璃里を戦わせるのに反対なのは同じ。
出来れば璃里はこの先も戦わない方がいい。
この子は良くも悪くも武器を取るには優し過ぎる。
渚の言葉に安心半分で申し訳無さが半分といったところか。
あぁ、本当に何にも起こらなければいいのに。
冬美は天井を見ながらそう思った。
同盟締結のサインをするシグニードという国まで列車で移動する事になる。
勇者達は久し振りにティファナ王女の顔を見た。
彼女は少し顔を合わせづらそうにした後に頭を下げた。
なにに頭を下げているのか分からずに戸惑っていると、ティファナがそのまま話し始める。
「先日は申し訳ありませんでした。初陣から帰ってきた皆様に無神経な発言をしてしまい」
「あぁ……」
そういえば、初陣から帰ってきた時に気に障る事を言われた気がした。
気が立っていた事もあって勇者達も酷い返しをしてしまった。
「あ〜うん。ボクらもゴメンね? せっかく出迎えてくれたのに」
彼女なりに役割を果たそうとしてくれてたのに態度が悪かったと反省。
ただ、あの時は心に余裕が本当に無かったのだ。
少し間を置いてからティファナが話す。
「実は、その……母が懐妊したんです」
「かいにん?」
「妊娠のことよ。王妃様に赤ちゃんが出来たってこと」
妊娠と聞いて渚が嬉しそうに手を合わせる。
「わぁ、おめでとう! 男の子? 女の子?」
「まだ分かりません。母は男の子だったら良いと考えているようですが、わたくしはどちらでも」
「王族だものね」
ホーランドでは女が国のトップに立てないという決まりはないが、やはり女子より男子の方が周囲の反応はやはり好意的になる。
「赤ん坊が産まれた時に、この戦争が終わっていてほしいと思ったんです。でもそれは現実的じゃなくて。だからせめて、物心つく頃には戦争が終わっていたらと……」
都合の良い事を言っているのは理解している。
考えれば、彼女らはこちらの身勝手に巻き込まれているだけなのだ。
それでも。
「どうか、これからも御力添えを」
少し固まっていたが、慌てて彩那がフォローする。
「は、はい。それはもう! 私達も故郷へ帰りたいですし」
「冬美冬美。お姉ちゃん先輩として何かアドバイスしてあげたら?」
「ねぇよそんなもん……」
「フユミには弟妹が居るのですか?」
「あ〜生意気な弟が1人。帰ってきたら聞きます?」
「是非!」
「え、えぇ?」
ちょっと食い気味に迫ってくるティファナ王女に冬美が半歩下がった。
そこで渚が平手に拳を打ち付ける。
「俄然やる気が出てきた!」
今ではただ故郷に帰りたいで嫌々言いなりになってきたが、こうしてめでたい話を聞けばこの戦争を早く終わらせようという気にもなるという物。
そこでホーランド王が護衛や従者を連れてやって来た。
「そろそろ出立の時間だ」
「お父様……」
「ティファナ、行ってくる。留守の間、母を頼む」
「はい。お父様もどうかご無事で」
そう言って父の頬に軽くキスするティファナ。
顔が離れる瞬間になにか言っていたが勇者達には聞こえなかった。
ただ、その当たり前の親子のやり取り。 今の彼女らには遠い家族との触れ合い。
親子のやり取りを終えると列車に乗るように促された。
その前に。
「王様王様!
「なにを言ってるんだお前は?」
「たぶんそれ使い方違うよ渚ちゃん」
「それにしてもこの列車丸ごとが王族専用って豪華だよね」
「プライベートジェットみたいなモンでしょ。こっちでは飛行機とかあんまり使わないらしいし」
「なんで飛行機使わないの?」
「逆に聞くけどなんで知らねぇんだよ……」
この世界の情報についてまったく集めてない渚に頭を痛める冬美。
璃里が苦笑しつつ話す。
「この世界の空って強い魔法生物が多いらしいから。ほら、無人島で戦ったアレとか」
「あの魔法生物も強さ的には中の上くらいらしいからね」
「うん。それで以前は飛行機で物を運んでた時代も在ったみたいだけど、魔法生物に襲われて墜ちちゃうみたい。だからまだ安全な陸路がメインになったって聞いたよ」
「あ〜そういや、なんかでっかい鳥とかドラゴンっぽい生き物が空飛んでるの見るもんね〜」
あの無人島で倒した魔法生物が中の上なら、普通の魔導師では対処が難しいのだろう。
それにそこまで人員を割く余裕が無いのもある。
渚が納得した様子を見せると、部屋に初陣で世話になったアリアがやって来る。
「今、宜しいですか」
「はい。大丈夫です」
彩那が部屋の中に招くと端末を取り出してスケジュールの説明に入る。
「シグニードまでの3日間は好きに過ごしてもらって構いません。シグニードに着いたら指示が無い限りは王の側を離れないでください。少なくとも最低2人は王の側に居てもらいます。なにかご質問は?」
「はーい! お土産買う時間はありますか────イテッ!?」
冬美に頭を叩かれる渚。
アリアは苦笑しつつ答える。
「観光をお望みでしたら短い時間ではありますが、時間を捻出します」
「いいんですか?」
「はい。同盟締結後になりますが。それくらいの融通は利かせられる筈です」
「やったね!」
ガッツポーズする渚。
それと、とアリアが4人分の階級章を見せる。
「今回の任務に当たって皆さんの軍での階級が1つ上がります。おめでとうございます。中級二位ですね」
「ボク達に階級ってあったの? っていうか中級? 二位?」
「だからなんで知らねぇんだよっ!!」
あまりの無知っぷりに冬美が頭を抱えた。
というか、階級については以前説明されてたりする。
呆れから苦笑しつつ彩那が説明する。
「ホーランドでは上から大まかに軍総括、上級、中級、下級の3つに分かれてるんだよ。それで軍総括は4人居て、上中下の階級の中に一位から三位の階級があるの。中級二位ならちょうど真ん中だね」
余談だが、中級は規模や人数に差はあるが、本来は隊を任せられる地位である。
彼女らは経緯が特殊なので4人一緒に行動させているが。
「取り敢えず、今日からは胸にこちらの階級章をお付けください。中級三位の階級章はこちらにお返しください」
そう言って彩那達は胸に付けてた階級章のバッチを返すと新しい階級章を制服の胸に付けた。
「すいませーん。そのバッチ忘れました」
「アホかー!」
冬美が渚にチョークスリーパーをかける。
軍内部ですぐに判る身分証である階級章を忘れるとか間抜けにも程がある。
今新しいのが来たから良かったが、最悪不審者扱いされても文句は言えない。
階級章自体小さく、確認しようと思わないと目を向けないから気付かなかった事に冬美は自分の迂闊さを呪った。
コイツがこういうやらかしをするのを予測できなかった事に
「ちょっ!? ギブギブ! ゴメンってばぁ!」
「……ホーランドに戻ったら返却をお願いします、勇者ナギサ様」
その後の3日間の旅は快適だった。
急に揺れてビックリする事はあったが、異世界の列車旅。
物珍しい物も多くて新鮮だ。
気が付けば、あっという間の移動時間だった。
「今回の同盟締結は各国の条件の確認とすり合わせに4日間使う予定だ。その間、頼むぞ」
4日間。それが長いのか短いのかは勇者達には判らない。
しかし、王様というよりも、ティファナの父親は絶対無事ホーランドへ帰すつもりだ。
「では行くぞ」
王の命令と共に各国の会議の場へと足を踏み入れた。
羽根井璃里。
濃い栗色の髪を左右に束ねた少女。
魔力は4人の中で1番高いが気質がとにかく戦闘に向かない臆病で優しい性格。
転移や拘束などの補助系の魔法を得意とし、術式の解析力も高い。前線に出るより、本質的には研究職向き。
趣味は草花を育てること。渚程ではないが家事も得意。
対して運動能力は低く、やはり性格的に近接戦闘は苦手。
ホーランドで璃里、という名前は発音しづらいく、周囲からはリリィと呼ばれている。
初期案では名前が璃里子だったが、作者が子を入れ忘れて璃里という名前になっていた。
父は弁護士で母は専業主婦。
母がぽっちゃり体型なので、将来自分もああなる可能性があるのが悩みだった。
なのは達が彩那の過去に対して感想を言う回はどれくらいの頻度で入れて欲しい?
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3話から5話くらい
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6話から8話くらい
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9話から10話くらい
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話の区切りがついた時に