リーシュ妃がサドに目覚めたら   作:記憶破損

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この世界の説明を後書きに書きました。


【オマケ2】自己主張が強い男だったら(猫猫編)

 

 猫猫(マオマオ)にとっての家族とは二人いる。母である鳳仙(フォンシェン)、そして…父の羅漢(ラカン)である。自分は恵まれた家庭に生まれたと理解している。武官であり、最高幹部の地位を持つ父と家庭の事から経営業の手伝いまでこなす母。その二人の子として産まれた事は、生活水準から見ても恵まれているだろう。

 

 母は賢く、時に厳しいが女の強さを教えてくれる。元妓女という出生らしいが、男に媚びを売るような性格ではない。逆によく妓女でいられたものだと、この母を妓女にしたあのやり手婆を感心してしまう。

 父もまた賢く、軍師という立場である故に当然ではあるが、物事の動きに対する感性、先読みに一手を招ずると表現すればいいのか…あらゆる事象に対し、先手を必ず取るように周りの者を動かし、これまでの戦において負け知らずらしい。どちらも敬意を持って然るべき人物なのだろう。

 

「さて、猫猫。分からないところはあるかい?」

「大丈夫だよ、じいさん」

「そうかい。では、次の課題を出しておこう」

 

 そんな他者から見ても一目置かれる存在…少々特殊な例であるが、優秀な家族が揃って特に父から尊敬と信頼を受けている人物がいる。その人物は猫猫にとって叔父に当たる人物である漢羅門(カンルォメン)。正確には猫猫も漢の字を名乗れるのだが、父が基本名乗らないので猫猫として過ごしている。

 

 過去について、父は詳しく語らない。叔父であり、猫猫にとって優しく接してくれる親戚の叔父としか両者とも表に出さないのだ。単純に叔父の性格や人柄が好きで、じいさんと呼んでいるが…この呼び方ができるのは、二人で勉強をしている時だけだ。

 

 当主様、お時間でございます

 ああ、もうそんな時間かい

 

 …連絡係の者が一瞬、こちらを見る嫌悪に等しい瞳を向ける。何度受けても、慣れないものだ。それをわかっていて、すぐ直線状に入るじいさんは相変わらず不器用だと安心してしまう。

 

「すまないね。猫猫、今回はここまでとしよう」

「ありがとうございました」

 

 礼をして、恥を受けぬように身なりを整えてから外に出る。屋敷を出るまでに数多の視線を受けるが無視を決め込み、そのまま出る。

 屋敷から一定の距離を離れてから息を吐き、溜め込んでいた諸々を外に出すのだ。

 

「しんど」

 

 名門の家に生まれた者は、その柵を潜ることに神経をすり減らすだろう。それに加え、名門の家に厄災を招いた者の子であるならば言わずもがな。血筋とは呪いの如く、子の猫猫に蝕んでいる。

 

親父(おやじ)が前当主をねぇ…まあ、証拠も残さない手腕は流石だ)

 

 現当主は緘口令を引いてくれていたのだろう。本人やその側近から過去について語られることは無かった。だが、下女達などの口を閉めるほどの圧を…いや、あの不器用な当主はそこまで強く出ないかと考えた。

 

(…じいさんを当主に戻したのが親父だろうな。あの性格込みで、私を橋として仲裁役もこなさせる。信頼と取れば聞こえはいいが、変なところで親父は人を見ないからな。いや見れなかったか)

 

 父親から比喩ではなく溺愛されている自覚がある猫猫。そのせいで、父に苦手意識が芽生えているが気にせず接してくる。普段は軽くあしらうが、何だかんだ猫猫も受け入れている。

 

「裏山に薬草でも取りに行くか」

 

 猫猫は家族から多くを学び、そして好奇心旺盛な成長を遂げた。どのような事柄も、自らで発散する事を幼いながらも身に付けていたのだ。

 

 おお!群生地を発見してしまった

 

 彼女にとって興味を惹かれる物は複数ある。一つ目は親の影響で盤面遊戯。四六時中対局しているのを見て育てば自然と興味も湧くというもの…親からの推薦で自然と趣味になっていたがそれはそれ。

 もう一つは薬の調合や薬学に関する事柄全般。これは羅門からの教えを受けて、自らも興味を持ったのを切っ掛けに凝り性な血縁の影響か、奥が深い薬学への探求に火がついて、燃え広がっていた。

 

 ヨモギもあるな。山菜でもついでに…

 

 猫猫の生活は恵まれている。

 

 へへへ。よう嬢ちゃん?こんなところで迷子か

 …どうも

 俺達が送ってやるよ! 

 

 彼女にとって日常は、静かな時は訪れないかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「猫猫ぉよがったぁぁぁ」

「・・・悪かった、親父」

「猫猫は悪くない!爸爸(パパ)が不甲斐なかったからだぁぁぁごめんよぉぉぉ」

 

(恥ずかしい、うるさい…でも原因が自分だからな)

 

 後宮に売られた猫猫の下へ羅漢はすぐ訪れた。文字通り、売られてまだ数刻しか経っていない。入口付近で行われる家族との触れ合いは、猫猫にとって自分自身の罰として受け入れる。ある程度落ち着いたのを見計らい、話しかけた。

 

「早かったな」

「お前が帰って来なくて心配でな、叔父貴の家から逆算して場所を―ー」

 

 父から聞かされる猫猫の確保までの経緯を聞いていくと…自身の行動が全て把握されている事に悪寒が走る。

 

「…人さらいについては、どうやって」

「元々あの山は人さらいや山賊がいると軍部で」

「あー、機密のは喋るなよ」

「爸爸を心配してくれるなんて、知ってるが優しい子だな猫猫は!流石私達の子だ!」

 

 顔をこするように溺愛する父に内心呆れながら受け入れる。日常的に何かすれば、必ず褒めるのが父の癖だ。悪いとは思わないが、場所を選べと何度も伝えているが改善の兆しはない。

 

「何事かと思えば…羅漢殿か」

 

 見物人たちを割るように顔立ちの良い男が歩いて来る。見るからに高官であり、お付きの者も従えて、後宮入口で問題(家族交流)に対処に来たのだろう。見物人の下女達の声を受け、光るような笑顔で対応している。

 どうやら父と面識があるらしく、隠してはいるが面倒と思っているとありありと書いてあった。子の視点から見ても、この親と付き合うのは嫌だろうなと同情の視線を送ったが…何を勘違いしたのか、他の下女たち同様に笑顔で返され、蕁麻疹が出た。内心が顔に出ていたのか、興味を持ったような視線を向けられた。

 

「これは、これは壬氏(ジンシ)様」

 

 話ながら羅漢は猫猫の前に立つように移動する。壬氏と呼ばれた高官は、諦める様に向き合った。

 

「それで、何があった?」

「娘が人さらいに売られましてな。全力で取り戻しに来たところ」

「ああ、いつも自慢してるあの…いや待て、人さらいだと?それは本当か、それにしては随分と早い到着だ」

「ははは、改めて賊の討伐に関して話を進めましょうぞ!」

「お、おう」

 

 羅漢からの圧を感じたのか、若干引きながら答える。普段は無駄話を自分から絡んでくる輩が話を折る。そうまでして優先する事柄は何かと考えれば、自ずと答えは導かれる。

 

「では、これにて失礼」

「待て待て!後宮から連れ出すな、どのような理由であれ売られたからには手続きが」

「金は後で」

「いやだから!金だけじゃなく!」

 

 互いに熱が上がっていく。これは父の立場でも問題になると考え、猫猫は動いた。

 

「親父、今回の件は私が捕まったのが悪い。それに、今の環境が特別悪い訳でもないから」

 

 羅漢はそれでもと引き下がらなかったが、猫猫の説得、壬氏からの手段など改めて聞いて、渋々納得する。

 

「可能な限り、早く迎えに来るからな!気をつけるんだぞ!」

 

 軽い言葉で返事を返し、やっと行った羅漢に同じく疲れた様子の壬氏と目が合った。

 

「…お前の父についてどう思う?」

「・・・聞きたいですか?」

「…いや、もういい。猫猫だったか、少しの間だが、俺が雇う。お前に何かあれば大事に繋がるからな」

 

 

 少し変わった出会いになれど、後宮で起こる数々の事柄に最後まで付き合う事になるなど、この時の猫猫は思いもしなかった。

 

 

 





 この世界について

①羅門について。
本来であれば漢の名を捨て、その後薬屋になってますが、この世界では羅漢により、無理やり戻されて当主をしています。勿論、前当主が事故になった原因を察しており、羅漢に対し、嫌いにはなってませんが、何とも言えない感情を持ってしまっています。

②猫猫について
父と母から愛情を受けて育っています。この世界では名家の血筋のまま、羅漢の正式な娘なので家との接点ができています。出演してませんが、羅半の事を兄さんと呼んだりしてます。小指は無事なのでご安心を。
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