ん~、そうねぇ・・・・・
これから話すのは、吟遊詩人と、魔女の、愛しく、遠い・・・・・奇跡的で、不思議な物語・・・・・かしら?
では・・・・・始めましょうか
はじまり、はじまり・・・・・とね
作者「今回の東方転生小話は、レイラさんです」
作者「知らない人もいるかも?」
吟遊詩人「僕の説明は?」
作者「では、どうぞ~」
昔々、あるところに、吟遊詩人と云う、霊が居ました
彼は、迷い人で、旅人でしたので
詩を詠いながら、旅をします
何処か、辿り着けると、信じて
そんなある日、彼は水辺で、逢いました
風で靡く、薄緑の、長い髪
彼は、彼女に、始まりの、言葉を言いました
「―――――」
彼女は、少し驚き、返します
「―――?」
そして、彼は、こう返します
「――、吟遊詩人」
それに、彼女はくすりと笑い、言います
「――レイラ。レイラ・プリズムリバー」
そうして、彼と、彼女は、一時の、友誼を
交わすのでした
はじまり、はじまり
◇◇◇◇◇
湖の畔で絵を描く、薄緑の長い髪の少女。
彼女に向かい、黒い髪の青年が歩いていく。
その青年、
「久しぶりだね、レイラ」
名を呼ばれた絵描きの少女――レイラ・プリズムリバーは、彼に振り返り、華の様に微笑む。
その微笑みに釣られてか、吟遊詩人も柔らかく笑った。
「あら、吟遊詩人さん。一ヶ月振りかしら」
「うん。今回は南の方へ行って来たんだ」
「ふふっ・・・・・じゃあ、何時もの様に聴かせてくださいますか?」
「勿論だよ」
そう言い、吟遊詩人は背負っていた身の丈程もあるウクレレを構えた。
瞬間、周囲から彼以外の音が凪ぐ。
そして彼はその楽器の名の様に、指を弾ませ、その音に合わせ、言の葉を紡ぐ。
「〜〜〜、〜〜、〜〜〜〜、〜〜」
レイラは瞳を閉じて、その音と、言の葉に耳を傾けて身を委ね始めた。
紡がれる彼の言の葉は
吟遊詩人たる彼に許された
彼は、彼女に出来るだけ沢山の
音を、霊体を、魂を掻き鳴らす。
それから十分間ほど彼は詠い続けた。
「ふぅ・・・・・」
詠い終えた吟遊詩人はゆっくりと息を吐く。
音が止んだことで目を開けたレイラは、パチパチパチ、と彼に称賛の拍手を送る。
「吟遊詩人さん、とても良かったです!」
「それなら良かったよ」
レイラの純粋な笑顔に吟遊詩人は満足そうに頷く。
そしてレイラは立ち上がり、吟遊詩人の方に手を伸ばして言う。
「お礼に、お茶でもどうですか?」
「うん、頂こうかな」
吟遊詩人は身の丈程もあるウクレレを背負い直し、立ち上がると、彼女の手を取った。
そうして彼等は近くの人気の無い屋敷に歩いて行く。
そして招かれた吟遊詩人がレイラの淹れた紅茶を飲み、ゆったりとした時間を過ごす。
これが二人の何時ものルーティーンだった。
ふと、レイラは呟く。
「吟遊詩人さんが見ていたもの・・・・・私も、少し見てみたいですね」
「じゃあ、僕と一緒に行ってみるかい?」
二人のルーティーンの中、変化が訪れる。
レイラはかぼそい声で吟遊詩人に問う。
「・・・・・良いのでしょうか?」
「良いの良いの。
吟遊詩人の『死者』という単語に反応して、レイラは目を伏せる。
「っ・・・・・そうですね。じゃあ、吟遊詩人さん。私を連れってくださいますか?」
「ふふ、勿論だよ。じゃ、行こうか!」
「今からですか?!」
「思い立ったが吉日、旅は道連れってね!」
「もう・・・・・少しは待って下さい。乙女の準備は時間が掛るんですよ!」
そうして彼と彼女は旅支度をして、慌ただしく、でも楽しそうに二人で歩き出したのだった。
◇◇◇◇◇
僕がレイラを連れて旅を始めてから一年が経った。
僕は
彼女とは数年の付き合いだけど、彼女の知らなかったことを沢山知った。
例えば、彼女はプリズムリバー伯爵という富豪の娘だったことや、姉が三人居たこと、東洋のマジックアイテムに因ってプリズムリバー伯爵家が潰れてしまったこと、あの家はプリズムリバー伯爵の屋敷だったということ。
それに、彼女が思いの外お転婆さんだったり、甘い物に目がなかったり、以外に足が速いことや、踊りが上手だということ。
それから、僕とレイラは様々な場所に行き、様々な風景を見て、様々な物を体験した。
時には荒野の真ん中で二人並んで、流れ星を見たりもした。
この一年は僕の大切な物になった。
・・・・・ずっと、こんな風に過ごしていられたら良かったのに。
「レイラ・・・・・行ってくるね」
「うん、いってらっしゃい。吟遊詩人さん、気を付けてね?」
温かく送り出してくれたレイラに背を向けて、歩き出す。
これ程、
レイラとの一年は、僕に十年の制限を課した。
僕にこの配役を押し付けた奴は、吟遊詩人が人と旅をすることを認め無いらしい。
・・・・・死んだ後位、好きに過ごさせてくれよ。
俺が何をしたっていうんだ?
「・・・・・取り敢えず、歩こう。考えててもしょうがない」
ふと後ろを振り返ると、レイラの家はもう見えない。
どうか、また逢えますように。
◆◆◆◆◆
吟遊詩人さんとの旅からもう五年が経ってしまいました。
寂しくて姉さん達の絵を描きはじめてからは三年でしょうか。
ある日、姉さん達の幻聴が聞こえる様になりました。
吟遊詩人さん、私は可怪しくなってしまったのでしょうか?
・・・・・会いたいです。
◇◇◇◇◇
「は?」
帰って来たら、レイラの屋敷が無くなっていた。
少し周りの自然霊に聞いてみると、ヤクモユカリ?という化生の女がレイラと屋敷を何処かに移動させたそうだ。
ヤクモユカリ・・・・・東洋、いや、日本か。
行こう、レイラに会いに。
それから僕は、日本に行き、レイラを探し歩いた。
その中でわかったのは『幻想郷』という秘境があるということ、その秘境にレイラが居る可能性が高いということだ。
そうして探し歩くこと、二年。
ようやく『幻想郷』を隠す結界の境界を見つけることが出来た。
だが、流石に秘境の結界だ。
簡単には入れそうもない。
仕方無い。
「ふぅ・・・・・魂をアンプに、楽器はギター。騒霊は騒霊らしく、騒がしく行こうか!!」
僕の『音楽に関して大体何でも出来る程度の能力』でウクレレを一時的にギターに変えて掻き鳴らす。
強く強く、魂をアンプに、霊力の籠もった音を結界に打つける。
成程、山とかの地形を利用してるのか。
なら。
「・・・・・山よ!!僕の音を聞けぇ!!」
自然霊に呼び掛け、山を揺らす。
それにより結界が歪み、綻びが生じた。
「今だ!」
綻びに滑り込む。
・・・・・。
どうやら此処が『幻想郷』で合ってそうだ。
「・・・・・こんにちは。何時もなら幻想郷へようこそと言うところなのだけど、幻想郷を壊そうというのなら消えてもらうわ」
背後にいきなり現れた女が言う。
金の髪に紫色の装束。
ふむ、自然霊の言っていた容姿の通りだな。
「君がヤクモユカリで合ってる?」
「ええ・・・・・騒霊の類が私に何が御用で?」
ヤクモユカリは扇子で口元を隠し、言う。
この感じ・・・・・ココロを何らかの能力で隠してる?
いや、外側と隔てられてるみたいだ。
それに出している情報がバラバラで読めない。
胡散臭いというべきか。
「レイラを何処に連れてった?」
するとヤクモユカリの態度が少し変わる。
「あら、もしかして貴方があの娘の言っていた『吟遊詩人』?辿り着くとは思っていなかったのだけれど」
「そうだよ。で、レイラは何処?」
「あら、お熱いわねえ。
ヤクモユカリに背を向け、彼女が指した湖の方に飛ぶ。
「貴方は食べて良い人類?」
「死人だよ」
「良くも!!ルー・・・・・あれ?誰だっけ?まあ良いや。そこの黒いの!!取り敢えずアタイとしょーぶしろ!!」
「嫌だよ」
「チルノちゃんがすいません・・・・・」
途中で何か黄色のロリとか水色のロリとかが襲って来たので適当に伸しておく。
しばらくして、湖の畔に見覚えのある屋敷が見えて来る。
急ごう。
◆◆◆◆◆
ヤクモユカリさんという方に此処、『幻想郷』に連れてきてもらってから数年が経ちました。
どうやら、私はあのマジックアイテムが切っ掛けで『魔法使い』になってしまったというのです。
姉さん達の幻聴が騒霊という――吟遊詩人さんと同じ――霊になったこと以外に変わったことはありませんでしたが、鏡をよく見ると身体の成長が止まっています。
確かにヤクモユカリさんが言ったように何時かはあの場所に居れなくなっていたのでしょう。
此処は現世と隔絶された秘境なんですって。
ユカリさんが言うには、現世の人とは会えない可能性が高いのだとか。
でもね、ユカリさん。
きっと吟遊詩人さんは私に会いに来てくれます。
そんなこと有り得ない?
ふふっ・・・・・私は、信じてるんです。
ユカリさん。
一つ、賭けをしませんか?
◇◇◇◇◇
「レイラっ」
「あら、吟遊詩人さん・・・・・私、待ってたんですよ?ずっと、ずーっと」
「レイラ、待たせてごめん」
「ふふっ・・・・・大丈夫ですよ。時間だけは、たっぷりありますから」
「・・・・・レイラ、君が死ぬ迄、君の傍に居ても良いかな?」
「良いんですか?私は、面倒くさい魔女ですよ?」
「そんなこと言ったら僕だって面倒くさい騒霊だよ?」
「じゃあ、吟遊詩人さん。私、長生きしますから。ずっと、ずーっと一緒に居て下さい」
「うん。勿論だよ、レイラ」
めでたし、めでたし
私の妄言にお付き合い頂き有難う御座いました。
投げっぱなしな結末ですが・・・・・まあ、何時か長編に書き直すかもしれません。
『吟遊詩人』
役を押し付けられた騒霊。本来ならば更に理不尽極まりない条件づけがされる筈だったが、レイラという規格外の大魔法使いの無意識の願いにより条件づけが緩和されていた。少し未来でプリズムリバー三姉妹の音楽の師となる。今思うとかなり強い気がする。大妖怪クラス。
『レイラ・プリズムリバー』
規格外の大魔法使い。能力的なモチーフは「ちいさな魔女」。東洋のマジックアイテムが切っ掛けになって覚醒した。唯の寂しがり屋な少女だった。現在では偶に人里等で仲睦まじく歩く黒髪の青年と彼女が目撃されているそうだ。尚、パチュリーより年上。
『ヤクモユカリ』
一体何処の妖怪の賢者だろうか。尚、本の虫が書く物語の中では珍しくしっかりとした胡散臭い紫様。この後、魔女と吟遊詩人という物語を幼い霊夢に聞かせた。好評だったとか。