ん?伯封か
后羿の・・・・・父の話を聞きたい?
そうか、では話してやろう
これから話すのは、私と奴の、愛の物語だ
作者「今回の東方転生小話のヒロインは純狐さんです」
純狐「嫦娥ブチ殺す」
作者「では、どうぞ~」
俺の名前は■■ ■。
趣味はアーチェリーと筋トレ。
勉強はそこそこ、顔は中の上
――今は省くが――色々あって転生した。
◆◆◆◆
私は・・・・・?
若返っている?
いや、夢だったのだろうか?
いや、夢なはずが無い!!
この憎悪の炎が教えてくれる。
・・・・・今の内に奴を殺せば裏切られることは無いが、伯封には会えない。
よし、鍛えよう。
奴と結婚し、伯封を産み、奴等を殺す。
これから起きる出来事は殆ど覚えていないが、力でねじ伏せれば良い。
完璧だ。
◇◇◇◇
今年で15になった俺は転生者である。
名前は
・・・・・俺は普通に巨にゅ、ごほん、美しい女性が好きだ。
俺は転生してから、ひたすらに弓を、体術を磨いた。
何故か?
勿論モテたいからではない。
それはこの世界が命の軽い世界だったからだ。
幸い、俺の今世の両親はクズでそろそろ毒殺されそうだったのでさっさと暗殺し、家督を継ぎ、権力と金を手に入れてある程度の道具を揃え、修練に取り組んだ。
「ありがとうございます!!ありがとうございます!!」
「別に良い。私はただ悪獣を撃ち落としただけだ」
・・・・・何時の間にか英雄に成っていた。
ただ、一日中山を駆けながら矢を放ち続ける訓練しかしていないのだが??
◆◆◆◆
「ふむ・・・・・おかしい。奴が悪獣を倒すのはもっと先だった筈だ」
私は4歳の頃に戻ったのを自覚してから体術や霊術、仙術を死ぬ気で磨き上げ、極めた。
嫦娥が私を目の敵にしてくるがバレては居ないはずだが、前――今から見るとはるか未来だが――ヘカーティアが言っていたバタフライエフェクトと言うやつだろう。
・・・・・純狐、気合を入れろ。
明日、奴に会う。
伯封に巡り合う為だ。
殺さないようにしなければ。
最悪の場合、手足をもいで拐えば良い。
今の私に勝てるのは
この時、私は知りもしなかった。
・・・・・私が恋に落ちるなど。
◇◇◇◇
「・・・・・ふむ、柄にもなく緊張してしまうな」
俺はとある女性に会いに来ていた。
この『都』の上級貴族、有仍氏の一人娘、名を純狐。
噂では『絶世の美女』『有仍氏の金』などと美しいと言う噂が絶えない。
その女性から「会って話したい」という旨の文を受けた。
正直言って悪獣を百体相手にしたほうがまだマシなレベルの緊張だ。
まぁ、悪獣は百体も居ないのだが。
「・・・・・どうぞ、純狐様がお待ちです」
侍女に案内され、有仍氏の屋敷を歩く。
・・・・・ウチとは大違いだ。
流石上級貴族といったところか。
「・・・・・純狐様、后羿様をお連れしました」
「・・・・・通せ」
部屋の中から聞こえてきた美声にドキリと胸が高鳴る。
戸を開けてもらい、通り抜けた先には、金の長髪の美女が物憂げに佇んでいた。
・・・・・俺を、見定めている?
「座れ」
「お言葉に甘えさせていただきます」
何かに納得したのか、彼女は少し頷き、此方を真っ直ぐと見た。
・・・・・ああ、真っ直ぐで綺麗だ。
こんな人が俺の妻になってくれたらなぁ。
「単刀直入に言おう。私の夫になれ」
「喜んで」
・・・・・即答してしまった。
相手も驚いているのか目を数度瞬き、ふぅと小さく息を吐いた。
「・・・・・二言は無いな?」
「ああ。貴女の様な美しい人が私の妻になってくれるというのなら何処に断る理由があるだろうか」
思ったよりもすらすらと言葉が出た。
彼女から息を呑む音、微かに動揺の様な感情を感じる。
「っ・・・・・私は純狐。よろしく頼む、后羿」
「ああ、こちらこそ」
顔を少し赤らめて、純狐は言った。
◆◆◆◆
おかしい。
奴はこんな好青年では無かった。
横暴で、自分勝手なクズだった筈だ。
私は動揺を隠しながら念を押すように言った。
「・・・・・二言は無いな?」
「ああ。貴女の様な美しい人が私の妻になってくれるというのなら何処に断る理由があるだろうか」
息を呑む。
心臓が早鐘を打つ。
嘘だ嘘だ嘘だ。
有り得ないっ!!
「っ・・・・・私は純狐。よろしく頼む、后羿」
「ああ、こちらこそ」
奴はこちらに向けてにこりと綻ぶように微笑んだ。
・・・・・ああ、嘘だ。
こんなことがあってはいけない。
きっと裏切られる。
・・・・・"恋"は害悪だ。
◇◇◇◇
そうして、俺は純狐と結婚することになった。
有仍氏の長に「娘が欲しければ〜」みたいなノリで悪獣を何体か仕留めてこいと言われたので・・・・・
「周りに居た悪獣を根こそぎ仕留めてきた。これで良いだろうか」
「あ、ぁあ・・・・・良いだろう」
有仍氏はというよりも『都』の住人の殆どがあんぐりと口を開けていた。
・・・・・どうしたのだろうか?
たかだが悪獣七十二匹だぞ?
・・・・・七十二とは不吉だな。
もう一狩り行くか。
「ど、何処に行く?!」
「狩りだ」
門から出て弓に矢をつがえ、狙い、放つ。
・・・・・命中。
さて、仕留めた獲物を引いて帰るか。
「只今帰った」
「后羿様、お疲れ様です!!」
「君もご苦労」
俺は門番と軽く話したあと、有仍氏の屋敷に向かった。
結露だけ言うと、何かめちゃくちゃ歓迎されて「純狐あげるんでどうか敵対しないでネ(意訳)」みたいなことを言われた。
そこまでか?
依姫さんなら同じ様なことできると思うのだが。
◆◆◆◆
・・・・・何だ奴は?!
悪獣を根こそぎ屠る?!
おかしいだろう?!
・・・・・ヘカーティアの言っていた「バタフライエフェクトヤバいわ〜」の恐ろしさが今理解った。
小説で笑っているのを馬鹿にして済まなかった・・・・・。
それにしても后羿の実力は異常だ。
見たところ体術にも精通している様だ。
・・・・・もっと鍛えねば。
む、だが筋肉が付きすぎていると嫌われ・・・・・?!
「何を考えているんだ私は?!」
・・・・・ふぅ。
取り敢えず奴との結婚は確定した。
後は伯封を産むだけだ!!
ヘカーティア曰くこういう時は腕を突き上げてこう言うのだったな。
「頑張るぞ、えいえいおー!!」
「(・・・・・何を頑張るかは知らないが純狐可愛すぎかよ)」
廊下で偶然それを見ていた后羿はそっとその場を離れた。
◇◇◇◇
その日、『都』に新たな夫婦が生まれた。
夫は
妻は有仍氏の金と言われた美女、純狐。
英雄の目出度い祝い事に『都』の住人は湧いた。
その夫婦はとても仲睦まじい様子だったそうな。
「純狐、未熟者だがよろしく頼む」
「ああ、不束者だがこちらこそよろしく頼む」
「・・・・・(后羿君が未熟者ですとそれと並ぶらしい軍団長である私も未熟者になってしまうんですが?)」
「ほほほ、后羿、落としがいがありそうね・・・・・純狐、今に見ていなさい。幸せそうな貴女の顔を歪ませてあげるわ!!」
しかし、その夫婦に悪意の影が忍び寄っていた。
◇◇◇◇
純狐と結婚してから数年・・・・・俺に息子が出来た。
名は伯封と言う。
妻の純狐が考えて付けたいい名前だ。
医者である永琳先生にはその節はとてもお世話になった。
彼女は恩人と言ってもいい。
何故なら妻と息子を両方無事に俺の所に帰してくれたのだから。
・・・・・俺の前世では弟が居たはずだった。
弟は流産で、母もその時に流行り病に掛かり死んだ。
だから俺は妻と息子の無事だけがとても心配だったんだ。
「おぎゃあ、おぎゃあ!!」
「純狐、産んでくれてありがとう・・・・・伯封、無事に産まれてきてくれてありがとう」
「・・・・・旦那様は、全く、泣き虫だな」
「大切な妻と大切な息子が両方無事で居てくれた、これ程嬉しい事は無い」
「そう、か・・・・・私達を愛しているか?」
「勿論だ。二人とも愛しているとも!!・・・・・私の命に替えてでも守ってみせる!!」
「・・・・・(もう、信じてしまっても、良いのだろうか・・・・・)」
俺は元気に純狐の腕の中で泣いている伯封とそれを愛おしく眺めている純狐を見て、彼女達を守ってみせると彼女と夫婦に成った時に立てた誓いを再び胸に刻んだ。
◆◆◆◆
伯封が産まれてくれた!!
これ程嬉しい事は無いの!!・・・・・のだが、后羿を信じて良いのか、私は悩み続けている。
心の奥底では嫦娥に誑かされてしまうのではないか、何時か裏切られるのではないかと思っている。
だが、后羿は私の「私達を愛しているか?」という質問に、
「勿論だ。二人とも愛しているとも!!・・・・・私の命に替えてでも守ってみせる!!」
と断言してみせた。
その時の旦那様にはそれを必ず成し遂げるであろうと確信できるほどの"凄み"があった。
・・・・・知らぬ神に祈る気は無い。
だから、友であるヘカーティア、お前に祈る。
どうか、どうか、旦那様と伯封と幸せに暮らせますように。
「ほほほほ・・・・・そろそろ計画を実行に移す頃合いね。さぁ、純狐、憎き私の怨敵。貴女の子供を夫に殺され、憎悪に歪む顔を見せて頂戴」
◇◇◇◇
「后羿・・・・・貴方に頼みがあるのぉ」
背中になしだれかかる女。
部屋に焚かれた香炉。
・・・・・この糞女、俺を傀儡にするつもりだな?
少し泳がせよう。
・・・・・念のため依姫さんを呼んでおくか。
糞女に見えないように念を込めた矢を依姫さんに向けて打つ。
「・・・・・頼みとは?」
「うふふ・・・・・貴方の息子を純狐の前で殺して欲しいの」
ブチッ
俺の中で何かがキレる音がした。
グシャッ
思わず糞女の腕を握り潰し、首を掴んで持ち上げていた。
「え?・・・・・ぐっ?!」
「・・・・・おい、糞女。今、何て言った!!俺に!!愛しい人の前で!!愛しい息子を!!殺せと!!一族郎党滅びたいのか貴様ァ!!!!」
「がっ?!・・・・・ゴホっひいっ?!!」
今すぐにでもこの糞女の頚椎を捻り切ってやりたい・・・・・が、此処は俺と純狐と伯封の家だ。
そんな大切な場所をこれ以上は汚いもので汚したく無い。
「・・・・・糞女ッ!!今すぐこの件に関わっている奴等の名前を吐け!!そうすればこのまま頚椎を握り潰さないでやる」
「ぐ・・・・・本当、ね?」
「ああ、嘘はつかない」
「・・・・・〇〇の氏族長と、△△の氏族長、私の所の氏族長、よ・・・・・」
俺は糞女を家の外に放る。
そして柱の後ろで聞いていた依姫さんに言う。
「依姫、聞いていたか?」
「・・・・・はい」
「今から俺は奴等を皆殺しにするだろう・・・・・止めないでくれ」
未遂は罪に問われ難い。
その上、糞女が上げた名には裁判に関わる奴らの名前が多かった。
きっとこのままでは無罪放免になるだろう。
・・・・・そんな吐き気を催す邪悪は見過ごせない。
「・・・・・止めませんし、止める権利もありません。后羿君の家族は任せて下さい。指一本触れさせません」
「・・・・・感謝する」
俺は弓矢を持ち、家を飛び出した。
「・・・・・ご武運を」
◆◆◆◆
嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。
嫦娥が旦那様になしだれかかっている。
ああ、また裏切られるのか・・・・・。
戸の隙間から気配を完全に遮断して見ていると、旦那様の口が動く。
「・・・・・頼みとは?」
・・・・・きっと、伯封を殺せと言うのだろう。
「うふふ・・・・・貴方の息子を純狐の前で殺して欲しいの」
グシャッ
「(え?!)」
次の瞬間、旦那様が嫦娥の腕を握り潰し、首を掴んで持ち上げていた。
「え?・・・・・ぐっ?!」
「・・・・・おい、糞女。今、何て言った!!俺に!!愛しい人の前で!!愛しい息子を!!殺せと!!一族郎党滅びたいのか貴様ァ!!!!」
「がっ?!・・・・・ゴホっひいっ?!!」
・・・・・旦那様。
旦那様は、裏切ら無かった。
しかも、こんなにも、私達のことを・・・・・。
少しして、旦那様は弓矢を持って飛び出して行った。
「ぐすっ。旦那様・・・・・」
私は、嬉しさと、安堵の余り、壁を背に泣いていた。
「・・・・・后羿君・・・・・君は
◇◇◇◇
「な、何で?!私のことは見逃すのではないの?!」
「俺は貴様の頚椎を握り潰さないと言っただけだ。殺さないとは言っていない」
「ヒィッ・・・・・ご、ごめんなさい!!あ、謝るから!!近づかないから!!どうか!!どうか!!殺さないで!!」
「無理だな。貴様の様な危険の芽は摘んでおくに限る。糞女。潔く、死ね」
矢を射る。
「何故だ!!何故ワシが!!金ならくれてやる!!地位も!!女も!!」
「黙れ豚」
矢を射る。
「何用ですか!!わたくしに弓引くとは!!衛兵!!」
「・・・・・何故、あの糞女の話に乗った?」
「貴方が目ざわりだったからに決まっているでしょう!!」
「もう良い。死ね」
矢を射る。
「ワシは裁判長だぞ?!貴様なぞ死刑だ!!」
「出来るものならやってみろ屑が」
矢を射る。
矢を射る。
矢を射る。
矢を射る。
矢を射る。
矢を射る。
矢を射る。
矢を射る。
矢を射る。
矢を射る。
射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って射って・・・・・もう居ない?
敵を探して彷徨っていると後ろから抱き締められた。
「旦那様、もう、良いんだ。もう、敵は居ないよ・・・・・」
「・・・・・純狐?」
ああ、もう、良いのか。
「・・・・・純狐、少し、疲れた」
「ああ、ゆっくりと休んでくれ・・・・・」
スッと力が抜け、俺は背中にぬくもを感じながら意識を手放した。
◇◇◇◇
目が覚める。
白い天井。
「・・・・・此処、は?」
呂律が回らない。
いや、重い。
「此処は私の病院よ」
「・・・・・永琳、先生」
横を向くと、赤青の服の八意永琳先生が、座っていた。
「ああ、無理に動かない方が良いわよ。極度の疲労で3日間も寝てたんだから」
「家族、は?」
「無事よ。依姫に感謝しなさい」
「もちろん、です、よ」
「それと、呼んだから直ぐ来るはずよ」
永琳先生がそう言うと同時に病室のドアが「バンッ」と勢い強く開かれ、ヨレヨレの服で俺の最愛の人が立っていた。
「旦那様!!」
純狐は勢いよくこちらに向けて飛びついてくる。
あ、ちょ、その方向は不味い。
「純、狐・・・・・ぐえっ」
く、クリティカル、ひっと・・・・・がくっ。
「旦那様?・・・・・旦那様?!」
「あらら」
◇◇◇◇
1週間後、俺は退院した。
退院の時に永琳先生が試験管を三本くれた。
「はい、餞別よ。どうするかは貴方達任せるわ」
「これは?!」
その試験管の中身は『蓬莱の薬』。
要するに不老不死の薬。
俺は永琳先生に深く頭を下げた。
「いいのよ別に。余り物だから」
「・・・・・」
・・・・・こんなヤバいモノが余り物??
ま、まぁ、有り難くもらっておこう。
「永琳先生、ありがとうございました」
「ええ、お大事に」
病室の入口迄歩く。
すると病室の入口に見慣れた美しい金の長髪が靡く。
「旦那様」
病室の入口から愛しい人の声がする。
「純狐」
「さぁ、帰ろう旦那様。伯封が待ってるぞ」
「ああ、帰ろう。俺達の家に」
俺は彼女と手を繋いで、家に向かって歩き出した。
ああ、幸せだ。
「純狐」
「ん?どうした、旦那様?」
「愛してる」
「ふっ。私も愛してるよ、旦那様!!」
『后羿』
主人公。転生者。強い。家族第一の優しい人物。
『純狐』
ヒロイン。可愛い。2周目なのでちょっと脳筋。
『伯封』
后羿と純狐の息子。喋ってない。
『永琳』
大先生。主人公の大先生兼恩人。
『依姫』
后羿のライバルで親友で・・・・・。
もしかしたらこの短編を長編ラブコメ小説に書き直す時が来るかも。