なんか衝動的に書きたくなった。

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空渡る鴉と飛べない家鴨

 

 

 

 

■  ■

「もう一回! もう一回だけ!」

「…………」

 

 顔を赤くして涙を目元に溜め、まるで親に強請る子供の様に頬を膨らませる少女に、寡黙な男は困っていた。

 夕焼けを背景に、宿り木に止まる鴉の絵が腕に刻まれた深緑色のジャケットを着る男こそ、伝説の傭兵。

 独立傭兵集団「ブランチ」、その四人目である独立傭兵「レイヴン」。傭兵達の間では『伝説』とされている、意思の象徴だ。

 そんな彼を困らせるのは、新参者の独立傭兵。

 大空スバル―――飛べない家鴨だ。

 

「ハハハッ。おい、見ろよシャルトルーズ。あのレイヴンが狼狽えてるぞ」

「ふっ、ふふふっ…笑かさないでよ、キング」

「微笑ましいですね」

「……」

 

 微笑ましくない。笑ってないで助けてくれ、と視線を送るが三人は気にせず笑っている。分かっていないのか、それとも分かった上で面白がっているのか。

 レイヴンとしては、かれこれ数十回にも及ぶ模擬戦にかなり疲れているのだ。流石にそろそろ休憩したいという切実なものがある。

 だが、彼女はそれをさせてはくれなかった。

 

「だって休んだら勝てないじゃん!」

「……」

 

 そんな横暴な、という想いも知らずに、お願いお願いと駄々を捏ねる家鴨。見苦しい事この上ない。

 レイヴンは言う。勝ちたいのなら、まずアセンから見直した方が良い―――と。

 彼女のアセンは、決して悪いものではない。が、それはあくまでもフレームの話しであって、武器は正直に言って最悪である。

 彼女が駆る機体は二脚。武器は左右バズーカで揃えている。そう―――構成からしてそもそも悪いのだ。

 これが四脚であるなら別だ。あれはホバーする事で動きを止めずに撃つ事が出来るのだから。だが、二脚はそうではない。

 二脚の場合、バズーカはいちいちその場で足を止めなければいけないのだ。その為、必然と敵の攻撃を受ける致命的な隙が出来てしまう。

 惑星封鎖機構の強襲艦隊をたった一人で掃討出来る実力を持つ彼にしてみれば、その隙は自分を殺してくださいと言っている様なものだ。

 にも関わらず…

 

「やだ! スバルはバズーカが良い!」

 

 当の本人は、バズーカが良いの一点張りである。

 あぁ、よく居るよく居る。一つの武器に拘りを持ち、それを決して変えようとしない意地ある傭兵。

 各いうレイヴンもその一人だ。

 

「アセン言うならパイル外してよ! それ強過ぎ!」

「断る」

「即答!?」

 

 パイルバンカー。PB-033M ASHMEAD。

 この武器を、レイヴンは一度も外した事がない。勿論、あくまでもアセン的な意味で。実戦だと、彼の実力を以てしてもそう簡単には当たらないのだ。

 この武器の圧倒的な火力は、まさしく浪漫。当てるのは難しいが、しかし当ててしまえば大抵のACは落とす事が出来る優れものである。

 スバルが敗北する原因も、だいたいこらである。

 

「むぅぅ…!!!」

「……」

「あれだと、傍から見れば兄妹だな」

「まぁ、違和感はないわよね」

「ふふっ」

 

 翔べるにも関わらず、翔べない鳥の面倒を見る鴉。

 翔ぼうにも翔べず、だから翔べる鴉に憧れる家鴨。

 見ていて微笑ましいのは、そうなのだろう。


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