女神の使徒になった概念的TSは色々と目に毒である(異論は認める)   作:葛城

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第5話: 兵士「なんか胡散臭いけどローブの上からでもスタイルの良さが分かる女が来た」

 

 

 

 ──The Fantasy.

 

 

 王都『アストランカ』に足を踏み入れた彼女が抱いた率直な感想が、それであった。

 

 というか、それ以外の感想を彼女は思いつかなかった。

 

 欧州などの古い町並みとは少し違う……ように思えるが、似ている。

 

 王都にて行き交う通行人の風貌もそうだが、立ち並ぶ家屋や露店、何台もの馬車がパッカパッカと走っているのを見れば、そう思うのも無理はない。

 

 歴史に詳しくない日本人が想像する『中世ヨーロッパ(?)』みたいな景色を前に、彼女はそれ以外に相応しい言葉を思いつかなかった。

 

 

 とはいえ、特に驚きはしなかった。

 

 

 だって、あの男の記憶を見ているし。言うなれば、既に写真や映像などで見ていたから……近しいだろうか。

 

 まあ、新鮮な感覚というか、漫画や映画でしか見られない場所に、実際に立っているという感動はある。

 

 でも、ビックリするというか……信じられない光景といった類ではなく、期待通りの光景に喜んだ……という感じでしかなかった。

 

 

(……どうして、剣と魔法のファンタジーな世界ってだいたい似たような感じになるのだろうか?)

 

 

 ふと、脳裏を過る疑問……でもまあ、考えたところで仕方がないなと彼女は考える事を止めた。

 

 そんな事を考えたところで眼前の景色が変わる事は絶対にない。

 

 というか、そんなのを言い出したら、現代社会は『どうして鉄と機械とコンクリートの排ガス臭い世界なの?』って感じになってしまう。

 

 

 難しく考える必要はない。

 

 

 単純に、要因が同じであり、成るように成った結果が、似たような景色を生み出しているだけのこと。

 

 仮にこの世界に魔物がおらず、魔法が無くて、人類絶滅を引き起こすほどの災害が起こらなければ。

 

 数百年、あるいは1000年以上の時を重ねた後に待っているのは、彼女が良く知る現代社会の景色に似た世界だろう。

 

 そうなっていないのは、この世界に魔物が居て、魔法があるから。

 

 科学が発展する理由は、必要に迫られ、求められ、労力が注ぎ込まれたから。

 

 言い換えれば、この世界では、科学の替わりが魔法なのだ。ただ、方向性が違うだけで、根本的な部分は同じなのだ。

 

 

 ……そもそも、だ。

 

 

 女神様の御厚意を色々と受けた身である己が、上から目線であ~だこ~だと考えるのは何様にも程がある。

 

 この世界にはこの世界の歴史があって、この世界のスピードで着実に前へと進んでいるのだ。

 

 それを、『そうそう、ファンタジーってこうじゃなきゃ!』みたいな目で見るのは……あまりにも失礼だろうと、彼女は内心にて己を叱咤した。

 

 

(……意識して自戒せねば、なりませぬ)

 

 

 一つ、コホンと咳を入れて気持ちを切り替える。

 

 次いで、彼女は……改めて、町に入る為に協力してくれたオリバーたちへと、「本当に、ありがとうございます」頭を下げた。

 

 

「いえいえ、御気になさらず。ナナリーさんの作ってくれたスープもそうですが、何時もよりもずっと快適な移動となりました。それに比べたら、通行代ぐらいは安いものです」

「そう言っていただけると、こちらとしても気が楽になります」

「ははは、ナナリーさんは謙虚な御方だ……ですが、本当によろしいのですか? 通行料の持ち合わせもないのであれば……返さなくて良いので、いくらか融通致しますぞ」

「いえ、それには及びません。その御気持ちだけで十分でございます」

「……そうですか。ですが、なにか困った事がありましたら、ぜひ我が店へとお越しください。出来ることなら、お力になりますよ」

 

 

 対して、オリバーは朗らかに笑って、本当に気にしては……いや、まあ、いくらかの下心はあるのだろう。

 

 なにせ、王都に店を構え、護衛を雇うだけの資金を稼いでいる商人だ。抜け目なく恩を売るぐらい、造作もない。

 

 とはいえ、同時に……受けた恩はしっかり返す善性と矜持も、オリバーは持ち合わせている。

 

 だから、『出来ることなら力になる』という言葉は本心であった。損得抜きで、必要とあらば顔を貸すぐらいの気持ちであった。

 

 

「何時でも、大歓迎でございますから。あ、その際には必ずギルドへの事前登録を済ませてからですよ。登録料はこの国の方針で無料で行えますからご安心ください」

「ええ、そう致します、御親切に、どうも」

「何をするにも、まずはギルドで最低限の身分が保証されてからですぞ。そうでないと、先方も相手の身元が分からず、お互いに困った事になりますので」

「なるほど、言われてみればそうですね」

「それが終われば、何時でも……そう、ワタクシ、住居も幾つか所有しておりますので、ご利用とあらば、何時でも……!!」

 

 

 でもまあ、親切心の中で、商人としての心がちょろちょろっと表に出過ぎてしまうのは……仕方がないというか、御愛嬌というやつなのだろう。

 

 

 ……ちなみに、だ。

 

 

 オリバーの語るギルドというのは、現代で言えばハローワークに近しい……職業斡旋しょくぎょうあっせん所と仕事依頼所を兼ねた、半ば公的な組織のことで。

 

 オリバーが『先にギルドへ!』と促すのは、ナナリーの目的をうっすらとだが教えてもらったからだ。

 

 さすがに、事情が事情なのでおいそれと他人に話せる事ではない。

 

 しかし、何もかも沈黙を保っているのは余計な不信を招くので、地位の高い者の下へ向かうのだという部分を少しばかり臭わせた。

 

 

 すると、だ。

 

 

『身元不詳であるならば、まずはギルドに登録した方が良い』と、オリバーのみならず、護衛の人達全員から念押しされたのだ。

 

 これには当初、彼女は困惑した。だが、冷静に考えてみれば、まあその方が良いよなと納得した。

 

 現代社会であれば、身分証明書を持たずに外国を出歩くようなものだ。

 

 少なくとも、ギルドに登録出来た時点で、『経歴に目立った傷が無いことをギルドが認めた』ことになる。

 

 相手からしても、押し入ってきたのならともかく、何もしていないのに対処をしてしまえば無駄な悪評を生んでしまう。

 

 だからこそ、お互いにスムーズに事を進ませるためにも、最低限の身分保障にはなるギルド登録を済ませておけ……というわけであった。

 

 

 ……ちなみに(Part.2)。

 

 

 彼女は知る由もないことだが、オリバーたちが是が非でもギルドに登録しろと言った理由は、それだけではない。

 

 

(……この人、顔を出すだけでもヤバいのに、人前でローブを脱いだら……うん、絶対に登録しておいた方が良い)

 

 

 オリバーたちが密かに危惧したのは、彼女の美貌がもたらすデメリットである。

 

 美しさがもたらすモノは、正しく表裏一体。

 

 本当に不公平に思うのであれば、美しいからこそ得られるメリットを破棄するしかない。

 

 メリットだけを享受して、デメリットは御免こうむる……残念ながら、そんなのが許されるのはフィクションの世界だけ。

 

 望む望まないに関係なく、多数のデメリットを持って生まれたモノが、そのデメリットと付きあって生きて行かなければならないのと同じく。

 

 美しいというメリットを持って生まれた者は、そのメリットがもたらすリスクと付き合わなければならない。

 

 だからこそ、そのデメリットを減らすためにも、時には後ろ盾になってくれるギルドへ登録を……と、迫ったわけであった。

 

 

 

 ……。

 

 

 ……。

 

 

 …………とはいえ、そんなオリバーたちの優しさなど知る由も無い彼女はというと、だ。

 

 

(……思いの外、簡単に登録出来てしまったな)

 

 

 あっさりと審査を通り、ギルドカードなる身分証明書(見た目は、免許証サイズのカード)が発行されたことに、軽く驚いていた。

 

 これがまあ、誇張抜きで、本当にあっさり発行された。

 

 文字はまあ、あの男の記憶を含めて、軽く目を開いて見たら普通に読めたので、特に問題なく書くことが出来て。

 

 簡単な質疑応答(現代で言えば、一般常識みたいなもの)を終えれば、ファンタジー的なお話では、ある意味お約束な水晶(?)っぽい見た目の装置に手を置くよう言われて。

 

 置いたら置いたで、『……はい、問題無しです』とあっさり条件をクリアしたようで、受付の人は実に手慣れた様子で作業を進め。

 

 そうして……最後に、水晶の装置が光り輝いたかと思えば、そこからギルドカードがにゅーっと出現し……登録完了、彼女は無事にギルドの一員になったのであった。

 

 

(……とりあえず、これで目的を済ませられる)

 

 

 目指していたわけでもないので、特にこれといった喜びはない。

 

 でも、この世界における身分証明を手に入れたという事実が、だ。

 

 これまで何処か浮いた感覚があった己の心が、この世界にカチッと接続されたような……そんな感覚は、確かにあった。

 

 

 ……さて、と。

 

 

 テクテクと、ギルド職員より聞いた目的地まで聞いた道のり進みながら、彼女はジーッとカードを見つめる。

 

 ギルドの職員曰く、ギルドカードは貴重品であるらしい。

 

 魔物等に襲われて壊れてしまった等の場合はともかく、不注意による破損からの再発行は、罰金込みで、けっこう高く付くらしい。

 

 まあ、ギルドカード自体は下手な鉄よりも頑強であるらしく、意図的に壊すのはかなり大変らしいので、気にするべきは紛失の方だろうか。

 

 なので、大事に懐へ……というか、『倉庫』へ入れようとして、はて、と彼女は首を傾げた。

 

 というのも、この『ギルドカード』だが、詳細は説明されなかったが、自然的な物質ではなく、魔法的な力で作られた代物である。

 

 そして、『倉庫』も魔法の力で作られたモノ。

 

 己が生み出した魔法ならばともかく、己以外が魔法で生み出したモノと接触させれば……何かしらの不具合が発生するのではないだろうか? 

 

 

(……う~ん、確率の問題だな。運が悪ければカードに不具合が生じて、破損したのと同じ状態になっちゃう、か)

 

 

 念のために目を開いて見やれば、アレだ。

 

 低確率ではあるが、引き当ててしまえば確実に壊れる。しかも、単純な破損とは違い、魔法的な破損なので、意図した破壊という形で罰金込みの方になってしまう。 

 

 

 ……仕方がないか、そう彼女はため息を吐いた。

 

 

 100回出し入れしても壊れないだろうが、言い換えれば、1回目で壊れてしまう可能性はあるわけで……正直、『倉庫』を使う度にドキドキするよりはと、彼女はポケットに入れようと……あっ。

 

 

(……ポケット、無いじゃん)

 

 

 入れようとして、気付いた。

 

 彼女が来ている衣服には、ポケットが無い。

 

 基本的に『倉庫』が便利過ぎて、ポケットを使う機会が皆無だからこそ気付けなかった……どうしようか? 

 

 首から……カードに穴は開けられないので駄目。

 

 では、ケース等に入れて……残念ながら、一般的に流通している貨幣を持ち合わせていないので、買うことが出来ない。

 

 同様に、己の魔法で生み出したケースに入れるのも不安が付きまとう。可能性は低いが、壊れない保証は出来ない。

 

 大丈夫だと断言は出来るが、絶対かと問われたら答えられない程度の信頼性だからだ。

 

 では、このままズーッとケースか何かを入手するまで手に持っているか……いくらなんでも、それは面倒……っと、その時であった。

 

 

 ──スルリ、と。

 

 

 持っていたカードが手から離れた。

 

 あっ、と思った時にはもう、カードを手にした……少年にも見える小柄な男の背中が、遠ざかろうとしていた。

 

 

「──戻れ」

 

 

 スリだと気付くと同時に、彼女は魔法を使う。

 

 直後、男の手からふわりとカードが外れた。

 

 あっ、と振り返った……その顔は年若く、まだ少年と呼んでも……と、思った時にはもう、彼女の手にはカードが戻っていた。

 

 

「……火よ」

 

 

 立てた指先に、火が灯る。その大きさは、少年の頭よりも大きい。

 

 それだけで、威嚇には十分。

 

 魔法使いである事を察した少年は、遠目にも分かるぐらいに動揺を露わにすると、今にも転んでしまいそうなぐらいに慌ただしく……どこかへ、走り去って行った。

 

 

 ……。

 

 

 ……。

 

 

 …………白昼堂々行われた一瞬の悪事に気付いた者は、少ない。

 

 

 その気付いた者ですら、『ああ、盗まれそうになったのを追い払ったのか』と、全てが終わった後の話であり……つまりは、チラチラと視線を向けられるこそしたが、それだけであった。

 

 ……うん、まあ、アレだ。

 

 

(何に悪用出来るのかは知らないけど、貴重品を手で持って移動するのは駄目だよな……)

 

 

 とりあえず、現代社会の……そう、己が生まれ育った日本と同じ感覚で考えるのは止めようと、彼女は改めて認識したのであった。

 

 

 

 ……。

 

 

 ……。

 

 

 …………そうした、小さなハプニングを終えてから……しばし歩いた後。

 

 

「もし、ここは王城でよろしいですか?」

「……見れば分かるだろう? 何用だ、今日は来賓に関する話は聞いていないのだが」

 

 

 彼女はようやく、目的地である……リフライン王国の王都『アストランカ』にある、王が住まう城の前へと到着したのであった。

 

 国王が住まう城なだけあって、非常に立派だ。他の建物とは明らかに大きさも荘厳さも違う。

 

 城の周囲は堀が張られており、城の内部へと続く道は正門……だけに見える。

 

 その正門には、門番と思われる甲冑を着た兵士が何人も立っている。

 

 とりあえず近付けば、気付いた兵士たちが……その中でも、頬に傷のある初老の兵士が、その手にした槍を構えて通せんぼをすると、彼女へ訪問の理由を問いただした。

 

 

「失礼、私はこういうものです」

 

 

 なので、彼女はギルドの時と同じく、素直に答えた。

 

 懐より取り出したカードを差し出せば……どういうわけか、兵士はとてつもなく胡散臭いモノを見るかのような眼差しを彼女へ向けた。

 

 

「……いちおう聞いておくが、場所を間違えてはいないよな? 今なら、内容次第では軽い説教で済ませられるぞ」

「……? いえ、ここに用がありまして」

「そ、そうか……そう言うのであれば、そのように対応しよう」

 

 

 人肌によって温められたカードを拝見した兵士は、「真新しいカード……ふむ、成り立ての新人か」首を傾げながらも、彼女にカードを返し……改めて、理由を問うた。

 

 

「それで、何用で参ったのだ?」

「ここに、『エルフの秘薬』を必要とする者がいて、それを渡してほしいと遺言を託されまして……願いを果たす為に尋ねた次第であります」

「は?」

「で、これがその『エルフの秘薬』なのですが、誰にお渡ししたら良いのでしょうか?」

 

 

 素直に、彼女は理由を話した。

 

 『倉庫』より取り出した、赤い液体が修められた小さい小瓶を見せれば、兵士は……困惑という言葉がこれ以上ないぐらいに似合っている表情を見せた。

 

 

 ……兵士が困惑した理由は、三つ。

 

 

 まず、一つ目は……彼が知る『エルフの秘薬』というのは、本物であれば、金貨何百枚or何千枚という大金を使っても手に入れる事が難しい秘薬であり、それを女が手ぶらで持って来たということ。

 

 

 二つ目は、手ぶらで来た女が……明らかに、『アイテムボックス』と思われる魔法を使い、何も無い空間から小瓶を取り出したということ。

 

 

 そんな事が出来る時点で、眼前の女は只者ではない。

 

 しかし、女から手渡されたのは、新品の……それこそ、つい先程登録を終えたばかりと思われるギルドカード……何故そんなものを見せたのかが分からない。

 

 

 そして、最後の三つ目は……こんな往来で、いくら王城の前とはいえ、『エルフの秘薬』を所持していることを口にするという……その、あんまりな不用心さであった。

 

 

 ──え、なに、この女? 

 

 

 思わず、兵士たちが顔を見合わせるのも致し方ない事だろう。

 

 現代で例えるなら、街中で何百億もする宝石を無造作に取り出したようなものだ。

 

 裏があるのか、それとも密命の一種なのか、あるいは馬鹿なだけか。

 

 万が一、追い返すのが間違いだったら、その後に待ち受けているのは……見当が付けられない兵士たちは、追い返すという選択肢を取る事が出来なかった。

 

 

「……あの、受け取って貰えないと困るのですが」

 

 

 対して、そんな兵士たちの葛藤など知る由もない彼女だって、けっこう困った顔をした。

 

 まあ、彼女がそうなるのは致し方ない。

 

 コレを渡す為にわざわざ遠出したのだし、コレを受け取って貰えないとなれば、約束が果たされない。

 

 魔法を駆使して強引に渡す事は可能だが、その為に犯罪者の汚名を被るのは……ちょっと、御免こうむるなというのが彼女の本音であった。

 

 

「い、いや、受け取ってほしいと言われても……そもそも、受け取れるだけの権限を私たちは与えられていないのだ」

 

 

 当然といえば、当然の答え。

 

 

「では、どう致しましょうか?」

 

 

 言われて、門番って要は受付兼ガードマンみたいなものだし、そうなるよな……と、納得した彼女は、率直に尋ねた。

 

 

「とりあえず、確認を取ってくる。どうするにしても、私たちでは判断が難しいからな」

 

 

 しばし、う~んと唸った兵士は……そう、結論を出した。

 

 

「しかし、事前の連絡無しだから、待たせてしまうだろう。何をするにしても、正式に許可が下りるまでは……そうだな、明後日ぐらいまで王都に滞在出来るか?」

「金無しなので、適当な場所での野宿が許されるのであれば……そういうのが許される場所ってありますか?」

「……全く、無いのか?」

 

 

 さらに困惑する兵士に、彼女は一つ頷いた。

 

 

「恥ずかしながら、物心付いてからずっと森の中で生活しておりましたので。つい先日、初めて育ての親以外の人とお話しました」

「……あ~、う~ん、そういう……そういうやつか」

「はい、そういうやつでございます」

「……誰か、頼れる者はおらんのか?」

「頼れる者、ですか……」

「……おらんのか?」

 

 

 これで駄目なら、いよいよ困ったぞといった様子で唸る兵士……だが、天は彼を見捨ててはいなかった。

 

 

「……1人だけ、困った事があったら力になると言ってくれた方がおります」

「おお、それならば、そいつにお願いして泊めさせてもらえ」

「でも、その人……ここに来る前に出会ったばかりで、交友なんて無いも同然で……」

「それでも、野宿の許可は出せんし、受け取る事もできん。なんなら、私の名を……『グレッシュ・アストレイ』の名を出してもかまわん。後で城より料金は支払われるだろうから、無理を承知でお願いしに行け」

 

 

 そう、言われてしまえば……相手の内心の葛藤を察した彼女は、困り顔で受け入れるしかなくて。

 

 

(ここまでスムーズに来ていたのに……すみません、オリバーさん……早速ですが、御迷惑をお掛けすることになりそうです)

 

 ──物置でも馬小屋でも十分だから、どうか貸してくれますように。

 

 

 そう、願うしか……力になるという話が社交辞令ではないことを……願うしかなかった。

 

 

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