これは大学生の従兄弟から聞かされた話だ。
あるとき彼は、友人Aの家で飲むことになった。
友人Aはサークルの友人で、同じ学部でいくつか同じ講義を受けてる。休日にふたりして出かけることもある。そんな仲だったが、今まで互いの家まで遊びに行ったことはなかったらしい。
土曜に集まって、彼と共通の友人数人が友人Aのアパートに飲みに行った。そこはよくある安めのアパートの一室で、2階の一番端の部屋だった。
コンビニで買った缶が、これでもかと詰まっているビニール袋を机に投げ出して、つまみを広げてさあ始まるぞというところで、彼はふと部屋の一方、台所上部につけられた横長の窓から赤い光が差し込んでいることに気がついた。
光は、そのまま天井をその窓枠の形に照らしていた。
下から上に照らさないかぎりはああはならないだろう。普段はなんでもないが、その違和感に気づいて少しそこを眺めてしまっていた。
彼がその方を見て止まっていることに気づいた家主の友人Aはああそれねと切り出した。
「不思議だろ。それな、よく赤い車が止まってるんだ」
「赤い車?」
「ああ、俺も初めはちょっと不思議に思ってたんだが、どうやら道路に赤い車が止まってるらしくてな。それで陽の光が反射して、赤く光ってるんだ」
納得のいく答えが出てしまえば興味は失せるもので、その日はそのまま飲み明かして、気づけば朝日で目が覚めたそうだ。
別の日。飲み屋で飲み会をしていたその日は、友人Aはいなかったそうだ。代わりに、同じサークルの後輩がいた。
何気なく、ただ好きに飲んでいたが、あるとき人の顔に見える窓、の話が始まった。
家の一つの面に3つ窓枠があり、シミュラクラ現象なのかなんなのか人の顔に見える笑える家の写真を撮ったのだと誰かが言ったかと思えば、今度はいいや俺は犬の顔に見える家を見たことがあるねと言い張りだすやつ、バカ言え俺のが面白いのを見たぞというやつもいた。
そんななか彼は、ふとあの赤い光の盛れる窓を思い出した。だから彼は、俺は異世界に繋がる窓を見たことがあるといってあの窓について話したそうだ。
数人が、なんだそらバカかお前と酒のせいか盛り上がりをみせ、それなら俺はもっとすごい窓を見たぞと誰かが始めたときふと、例のサークルの後輩が、嫌そうな顔を浮かべていることに気づいた。
どうした、飲みすぎたかと聞いてもうやむやに。いえ、大丈夫ですだの、飲み足りないだけかもしれませんだのと誤魔化していたが、少し様子がおかしかったから問い詰めると、後輩は例の赤い光を通す窓のことで少し嫌な話があるのだと話始めた。
後輩もAのアパートにお邪魔したことがあり、あの赤い光を見たことがあったそうだ。
だから帰りに気になって、その通りはどんなところなんだと覗きに行ったらしい。
しかしそこは自転車がやっとすれ違えるような、その程度しか幅のない路地だったそうだ。
だから次のサークルのとき、Aに聞いてみると、次のような答えが帰ってきた。
従兄弟は、そのとき後輩がいったことを言いずらそうに要約してくれた。
「Aな、あそこが路地っていうのは知ってたらしいんだよ。けど毎週土曜日日中はずっと赤く光っているものだから不気味に思ってたらしいんだ。
ほら、その曇りガラス、開けて見下ろせるような位置にはないからさ。だからなんだかわからないまんまだったんだと」
しかしAが実家に帰ったとき、大通りに止まっている車の光が天井に当たっているのを見て「これだ」と思ったらしい。
だからそのときから、あそこには車が止まっているんだ。そう思うようにしてるとのことだった。
その話を聞いたとき、彼はすっかり酔いが覚めてしまったらしい。