砲艦外交の前に   作:休日

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朝田さん×レミール


10砲艦外交じゃ無くて戦争だろ2

 

 

 

 

「さあ、ブルーアイさん亭子に乗って下さい。ゴミ処理がせっかく見に来たというのに終わってはつまらないでしょう?」

 

 ロウリア軍をゴミと言い切る辻という方と共に、空を飛ぶ船に乗り込むブルーアイ。

 

 荷物を抱え、恐る恐る乗り物――浮遊航空艦と言っていたか――に乗艦する。乗艦してみると、艦内は思った以上に広く、日本らしいと言えば良いのか余計な装飾品が無い。

 

「とりあえず艦橋へと参りましょうか。ここからでは何も見えませんので」

 

 相変わらず辻氏はニコニコと笑みを讃え、物腰穏やかながら、底の見えない瞳をしている。

 

「正直、ゴミ処理見物をするだけなら小型可翔艦などでも充分良いのですが、浮遊航空艦が一番安全かと思いまして。飛んでくるでしょう? 火の粉」

 

 ワイバーンの導力火炎弾の事だろう、それを火の粉って。戦慄するブルーアイを余所に、広い航空艦の中を歩いて行く二人。

 

「そういえば、小耳に挟みましたが、ブルーアイさんは剣術の心得が有り。クワ・トイネ海軍主席だとか。もしもの時は助けて下さいね」

 

 な、なんで知ってるんだこの方は――!! どこにも漏れていないはずの情報を、当たり前のように知っていた辻を前に震える自分を鼓舞しながら。

 

「は、はいッ」

 

 そう答えたブルーアイは航空艦の艦橋へと辿り着いた。

 

 

 ※

 

 

 広々とした空間。天井は高く、横幅は広い。大きく前面を何かの写真が映し出し、秒事に切り替わっている。幾つも椅子が並んだ大型の窓の前には女性軍人が座っている。一瞬見えた窓の絵には第三文明圏の精巧な地図もあり驚いた。その窓の後方の窓には、外の視界が大きく映し出され、此処が未だ海上である事を物語っていた。

 

「本物のこの艦、亭子と同じ斑鳩級で、ネームシップの斑鳩にして御帝の御召し艦である斑鳩のサイズ、実はこれ程大きくないんです。原作――といっても意味不明なので説明しませんが、原型艦がありましてね。それを大型化させた艦なんですよ。これより小型の軽斑鳩級でさえ原型艦より若干大きくて、重斑鳩級に至っては原型の倍近い大きさがあります。デカけりゃ良いって物でもありませんけれどね」

 

 この空飛ぶ船。魔帝の保有していたと言われる空中戦艦を思い起こさせる船の説明を事細かにして下さる、辻氏。しかし正直何を言っているのかさっぱりだ。

 

「この艦を含めた大日本帝国の浮遊航空艦と大型艦にはフレイヤ炉と呼ばれるエネルギー炉心を搭載しておりまして、航続距離・稼働時間共に無限大です」

 

「はあッ?! む、無限大ってそんなの」

 

「あと、フレイヤ炉は水も酸素も生み出します。フレイヤ炉が無ければ超高高度の航行はあの世への一本道となるでしょう。普通は超高高度まで上がらないんですけれどね」

 

 衝撃の事実にブルーアイは驚く。この様な巨大艦や空飛ぶ船の稼働時間が無限など、反則だろうと。そして、更なる反則な事実を教えられる。

 

「武装につきましても、ハドロン砲。説明しても分からないと思われますので簡単にお答えしますと、強力なエネルギー加粒子砲、荷電粒子……んーどう説明したら宜しいのでしょうかねえ。どんどん深みにはまって行ってしまいます。まあエネルギーを消費する光線・熱源兵器とだけ。この艦にはハドロン重砲4門、単装リニア砲7門、大型リニア砲2門、ミサイル発射機3基、スラッシュハーケン4基を搭載しているのですが、そのうちエネルギー兵器につきましては熱で回路や砲が焼き切れるまでなら無限に使用できます」

 

 ああ、ブレイズルミナスの最新型も無限ですね。という事実にぽかーんと口を開けるだけだった。これ絶対に古の魔帝の技術を超えてるだろうと心で叫びながら。

 

 驚きの連続の中、ふと前面の窓に坊主頭に黒い帽子、大日本帝国の海軍帽を被った壮年の男が映し出された。

 

「ああ、あれは映像スクリーンと言って、遠くの艦や、司令部等と、音声と映像を共有して会話したり、遠近問わず外の状況を映し出す再生装置、画面です。消すと正面にも視界が映し出されて、高度が高ければ綺麗な映像が見れますよ。で、どうされましたかいっくん」

 

 いっくん? あの人いっくんっていうのかあ~。とても絵の、ああ、映像の人物の名前とは思えないその名に、少し吹き出しそうになる。驚かされてばかりなのでこういった和やかな空気が新鮮だ。

 

『いっくんと呼ぶなァ!! その名で俺を呼んで良いのは妻だけだッッ!』

 

 

 

 

 

 砲艦外交じゃ無くて戦争だろ2

 

 

 

 

 

『辻、貴様何を考えとるんだ。護衛艦も無しに亭子一艦で“現場視察”等と、流れ弾に当たったらどうする?』

 

 確かにこの艦には護衛艦がいない。空だからと安心していたが。

 

「大丈夫です。万が一パーパルディア皇国のリニア砲の流れ弾が来たところであんな旧式の玉に貫かれるブレイズルミナスではありません。それに大事を取って遠方より眺めるつもりですので。何の為のスクリーンだと思っているんです?」

 

『なるほどな。戦場記者宜しくはやらんと』

 

「やるわけないでしょう。私の事を心配して下さるなんて……お優しいですね。女なら惚れてますよ」

 

『気持ちの悪いことを抜かすなッ!』

 

「そこ司令部ですか?」

 

『違う。いつものビルだ。万が一戦力が必要なら浮遊航空艦隊を三十艦程と、KMF数百持って行ってやろうかと考えて待機して居ったんだ。まったく、さっさとヴェルガモン伯爵領に戻らなければならんと言うのに』

 

「二足の草鞋は大変ですねえ」『お前が言うなッ!』

 

 ぷちゅんと正面スクリーンの映像が消える。

 

 そして今度はぷちゅんとまたスクリーンの映像が付いた。次に映し出されたのは、長い銀髪の、年の頃は二十代後半の美しい女性。と、その隣に黒縁眼鏡を掛けた、年の頃三十前後の平凡そうな七三分けの黒髪の男性だった。

 

 すると朗らかだった辻氏の、朗らかさの奥に隠された底の無い闇の色が瞳の中に映し出され、女性ががたがた震えだした。

 

「これはこれはご機嫌麗しゅう、レミール皇女殿下」

 

 れ、レミール皇女殿下?! ブルーアイは何度驚けば良いのか。画面に映し出されていたのはパーパルディア皇国皇族レミール皇女だった。話に聞けば一外交官をしているという彼女。なんだってこのスクリーンに映し出されるのか?

 

「そう緊張なさらず。いつものようにお話し下されば良いので」

 

『あ、ああ、分かった辻卿』

 

 まだ震えているレミール皇女殿下。すると――

 

『レミール皇女』

 

 レミール皇女殿下の隣にいる男性が優しく声を掛け、レミール皇女の髪を撫でながら、殿下を抱き締めて熱い抱擁を交わし、彼女を落ち着かせている。んん? このお二人は恋人同士なのだろうか? 私は見てはいけない瞬間を見てしまったのでは……。

 

 し、しかし辻卿?! この辻氏という方、普通では無いと思っていたが、パーパルディア皇国の皇女殿下であらせられるレミール皇女殿下が卿と敬称を付けて呼ぶくらいだから、実はかなりの大貴族だったのか?

 

『ふう、少し落ち着いた。申し訳ないがあなた“方”との会話は緊張するのだ』

 

「こちらこそラブシーンをごちそうさまです。砂糖菓子でも食べたい気分ですよ。で、一体何のご用ですか?」

 

『いえ、辻卿の乗艦なさる浮遊航空艦が我がパーパルディア領空にお越しなさるという話を、こちらの朝田よりお聞きしたので、ご挨拶と作戦方針をお伝えにと』

 

 なるほど。作戦会議か。

 

「おや。まだ終わってなかったのですか? ゴミ掃除」

 

 ま、またゴミ。

 

『ゴミも纏まってやってきてくれなくては、業者としても手が出せませんので』

 

 レミール皇女殿下もゴミという。何だろう。彼らにとってロウリア軍6,000隻、ワイバーン800騎はゴミなのだろうか。我々にはとてつもなく強大な戦力に感じるのだが。

 

『しかし、我々はすでにゴミの位置を把握している。現在アルタラス島、シオス島の中間点を抜けたところ。エストシラント沖南500㎞の位置を5ノット程度と低速ではあるがパーパルディア皇国へと向かってきている』

 

「5ノットって、どれだけ遅いのですか。待ちくたびれてあくびが出ますよ」

 

『故に、我々もこちらから打って出ることにした。幸いにも航続距離半径の余裕の圏内。空母と戦車揚陸艦も出撃させる故エナジーフィラーが切れたらこちらで充電。または替えのエナジーフィラを使い再出撃を――』

 

「ああ、そんな心配は要りません。木造船6,000とトカゲ800匹でしょう?一発で終わりますよ」

 

 レミール皇女殿下の言葉を遮る辻卿。パーパルディア皇国は列強だ。本来なら不敬罪で辻卿が処罰されるだろうに、それがこの二人からは感じられなかった。むしろレミール皇女殿下が辻卿に無礼を働いたときの方が余程に。

 

「レミール皇女殿下。貴女も戦場に?」

 

『あ、ああ、私は浮遊航空艦デュロの中より見ているだけになりそうだが。本当はパールネウスに乗り込もうと考えたのだ。皆が命を賭けて戦う中、皇族だけが安全なところに居ても良いのかと考えて……だが、皆の猛反対に遭ってしまってな……実質、観戦武官の役割になりそうだ。ああ、観戦武官と言えばムー国のムーゲ大使が本国から武官を呼んだとか。見せても良いのだろうか』

 

 ムーが武官?! これはまた大事になってきた。列強国二位のムーが列強国四位? のパーパルディア皇国に観戦武官を送る。それも向こう側からの半強制で。

 

『何でもムーゲ大使自身の報告だけでは頭がおかしくなったと更迭されかねないから、パーパルディア皇国の力を武官と技術士の方に直接示してくれと……了承しても?』

 

 この遠慮の具合。やはり列強パーパルディア皇国の皇族よりもこの辻卿の方が立場が上なのだと、ブルーアイは確信を得た。

 

 普通で考えたらあり得ない事ながら、この一年でパーパルディア皇国にも大きな変化があったのだろう。

 

「かまいませんよ。子供のおもちゃに触れて赤ちゃんは成長していく物です。赤ちゃんだったパーパルディア皇国が子供に成長したようにね、まあムー国にどこまで何をするかしないかはまた追々となりますが」

 

 少し聞きたくなったブルーアイは此処で無礼を承知で会話に割って入った。

 

「も、申し訳御座いません、辻卿、レミール皇女殿下」

 

「どうしました?」

 

『なんだ?』

 

「私、クワ・トイネ公国の観戦武官。ブルーアイと申します」

 

『パーパルディア皇国皇族、外交官のレミールだ。して、なに用かブルーアイとやら』

 

 凄みを感じる。辻卿に対しては小動物だったレミール皇女殿下が、いまは巨大な竜に見えた。

 

「あ、あの、パーパルディア皇国の艦船は50隻無いとお聞きします。その――」

 

『ふふ、たった50隻以下の艦船で大丈夫かと言いたい訳か。お前、北側諸国が我が国に与えて下さったおもちゃの詳細を知らんな?』

 

「70,000tという巨大な戦艦があるとだけは」

 

『ふん、ならば想像も付こう。戦艦だけな訳がなかろう。航空機、分かりやすく説明するならば時速600㎞~900㎞超えの速度を持つ鉄竜。戦艦以外の全ての船や竜母──いや、航空母艦も鋼鉄だ。砲の威力も精度もお前が考えている以上に強力。特に46㎝超電磁砲の威力は恐ろしいぞ? あれだけでゴミ処理は終わる。一応全て排除する予定だが、相手が引き返すか降伏するかした場合。また逃げ始めた場合は攻撃を控える。他に聞きたいことは?』

 

「あ、い、いえ、お答え頂き、恐悦至極に存じ上げます」

 

 話は終わった。数秒間会話が途切れた。レミール皇女殿下がちらちらと辻卿の様子を窺っている。

 

「では、今回はこれでお開きと言うことで。まあ、あれこれ言いましたがこれから夜に入りますので。攻撃は明日の朝にして下さいレミール皇女殿下。夜間センサー類もありますので見えるには余裕で見えるのですが、昼に見る方がね。兵の士気も向上しますし、よろしいですね?」

 

『う、うむ分かった』

 

「と、いうわけで。朝田さんとレミール皇女殿下には明日の朝まで子作りに励んで頂きましょう。別に強制ではありませんが、どうせ気分も高まることでしょう。ごゆっくりとお楽しみ下さい」

 

 スクリーンの向こうから悲鳴にならない悲鳴が聞こえたところで。辻卿はこちら側から回線を切った。

 

「さて、ブルーアイさん、お部屋に案内します。付いてきて下さい」

 

 

 ※

 

 

 その日のブルーアイの日記

 

 

 私はクワ・トイネ公国の民として、無事日本国の船に乗り込んだ。空を飛ぶ乗り物の乗り心地は非常に良かったが、海面を離れ一気に上昇。雲の上に出てからの外の景色は絶景だった。この高さなら竜騎士も上ってこれない。給士の人に聞くと高度20,000mだという。

 

 10,000mでも凄いのに、20,000m?! また一つ私は驚いた。上昇する気なら40,000mでも行け、宇宙というこの世界の狭間と外より見えるどこまでも続く空間があるというから、そんな場所にまで到達可能な日本の技術力の高さには感心しても仕切れない。そして何よりも自分自身がまさか20,000mの高さで優雅にお茶を飲めるなんて。一生の思い出だろう。

 

 今日見たAEUの4隻の超巨大戦艦。パーパルディア皇国にあるという4隻の巨大戦艦に50隻近い鋼鉄の艦船。この空飛ぶ艦船亭子。何もかもが常識外れで驚かされることばかりだ。

 

 レミール皇女殿下のお話では約50隻の鋼鉄の艦隊と鋼鉄の竜で、ロウリア艦隊を一網打尽にするという。最初は自殺行為だと思った。しかし、あのAEUの超巨大戦艦あれはロウリアの艦船では絶対に沈められない物。

 

 それより小柄とは言え満載排水量にして76,800tという信じられない巨艦を4隻も持つパーパルディア皇国皇軍が負ける姿も同じく考えられない。しかも鉄竜を2,000騎以上持つという。ワイバーンの倍の速度を持つ鉄竜を。

 

 70,000tの戦艦には火矢もバリスタも効かないだろう。横を素通りされただけでも木造船など沈没だ。レミール皇女殿下や辻卿があそこまでたっぷりに『ゴミ処理』と仰っていた意味が良く分かった。本当にゴミ処理なのだ。嘘も外聞も無く。

 

 パーパルディア皇国はこの戦いに勝てる絶対の自信を持っている。

 

 これほどに楽をしても良い観戦武官があっても良いのだろうか。

 

 

 ※

 

 

 浮遊航空艦デュロ

 

 

 パーパルディア皇国皇族にして形だけ駐日大使(書類仕事はやらされる=パーパルディア皇国用にと辻からのプレゼント)外交官レミールは、大日本帝国外交官朝田と話していた。

 

「結局ロウリアは引かぬか」

 

「引く理由がありませんからね。対外的にはパーパルディア皇国は武装解除したように見えますし」

 

 二人は裸、一糸まとわぬ姿で、互いを抱き合い話し合っていた。辻の指摘通りに気分が高まり、自然と抱き合ったのだ。愛する男と愛する女。互いに抱かずには居られなかった。

 

 朝田はレミールの長い銀髪をその五指に絡めて弄びながら、確信めいたことだけを伝える。

 

「それも明日以降までですよ。明日の戦争でパーパルディア皇国は武装解除処か大軍拡していたことが諸外国に知れ渡り、下手に手出しをしてくる国も無くなるでしょう。ロウリア王国はその為の生贄です、大体にして自分達で飛び込んできたのですから向こうが100%悪い」

 

「ふふッ」

 

「どうなされました?」

 

「ああ、いや、泰司も冷酷なときは冷酷だなと」

 

「激情型の人間だと辻閣下と杉山閣下に指摘されました。恐れ多くも神楽耶皇女殿下にまで」

 

 この二人、日本やブリタニアのやんごとなき方々と良くお会いしている。原因は皇居マラソン。朝田もレミールも良く連れ立っては皇居マラソンをしているのだが、そこで夢幻会会合メンバーや皇神楽耶皇女殿下、果ては太平洋戦争を戦い抜いた上皇陛下とまでお会いしたりもする。

 

 上皇陛下や今上帝陛下、神楽耶皇女殿下などと出逢うと、レミールは同じくして他国の皇族で有りながらも土下座してしまうのだ。それだけ圧倒的なるオーラを持つ方々なのだが、海南島からほど近いパーパルディア皇国を大日本帝国の皇族方はお隣さんと呼んで親しげに接して下さる。

 

 それでもレミールには緊張を崩せず、終始敬語で話し、頭を下げたままという姿勢を崩さずなので神楽耶皇女殿下からは「うふふふ。面白い御方」と逆の意味で褒められたりもしていた。

 

「あの方々や神楽耶殿下にまでご指摘を受けたのなら本物だな。私とお前はワンセット外交官なのだからくれぐれも相手を挑発したり激情的にはならないよう頼むぞ」

 

「レミール皇女も私と似たような物ですけれどね」

 

「なにッッ!!」

 

「ほら」

 

「う……意地悪な奴め」

 

 少し怒って居るぞとでもいうように、レミールは朝田の頬に自らの頬をすり寄せ、甘えた。

 

 レミールの甘えに応える朝田は、自身も彼女の頬に頬を擦り付けて、レミールと朝田は頬ずり繰り返しながら柔肌に触れ、互いに互いで感じあう。

 

「泰司、実際の処6,000余りの木造艦船と、800騎の竜騎士。片付けるのにどれ程掛かる?」

 

 レミールも勝てることが当たり前の前提で聞いていた。負ける要素が無いのに負けることを考えられるはずも無い。

 

 少し考えた、後、朝田は答えた。

 

「一会戦で終わりですね」

 

「一会戦で終わるというのか?!」

 

 勝てることは分かりきっていたが、一回で終わるとはレミールも考えていなかった。

 

「まず各種連合戦闘機部隊。1,100。これでワイバーンは全滅です。序でに余り玉で木造船を食います。あとは横一線に並べたパールネウス級戦艦の前方2基6門計24門の18インチ三連装超電磁砲の一斉斉射で粗方片付きます」

 

「私もこの目で見て威力は知っているがそれほどか?」

 

「それほどです。廃艦処分の戦列艦でアレの弾丸止まったことあります?」

 

「な、ないな。突き抜けて後ろの崖を軽く粉砕した。風圧でも戦列艦がバラバラに吹き飛んだ」

 

「パールネウス級に搭載されているのは古いレールガンで。速度はマッハ7、射程300㎞です。御存じかと思いますが北側諸国は電気文明が恐ろしく発展しています。大和の60㎝レールガンなら射程1000㎞を超えてきます。まあ電気文明の他にも極超音速ミサイルや弾道ミサイルなど、大砲以外の投射手段はいくらでもありますけどね。とにかく、一会戦でおしまいです。ぎりぎりまで敵艦隊を引きつけて一斉発射です」

 

 

 ※

 

 

 翌日 早朝

 

 

 夜中の間、ゆらりゆらりと飛行していた斑鳩級浮遊航空艦亭子は、早朝、最高速度の2800㎞まで速度を上げた。(何でもブースターを付けるとそれ以上の速度が出るとか)

 

「なんという速度だ!!」

 

 ブルーアイは、昨日から驚愕しっぱなしである。

 

 と、彼の客室の扉が開き、給仕の女性にブリッジ、艦橋へと来るよう伝えられる。

 

 急いで着替えて艦橋へと向かった頃。既に辻政信は艦長席に腕を組んで座っていた。

 

「現在高度15,000。閣下、間に合いそうですか」

 

 副艦長らしき壮年の人物が、辻閣下に質問していた。本当はこの人がこの艦の艦長なのかも知れない。

 

「問題ありません。レミール皇女殿下からの通信でこちらの艦隊も出港したと。レミール皇女の艦隊は高度10,000で制止中のようです。恐らく皇女は自分も戦うとごねたのでしょうが、周りに押さえつけられたのでしょうね。まあパーパルディア皇国に差し上げた浮遊航空艦隊でも戦えますが、あれらの旧式艦艇にはハドロン砲の類いは搭載されておりませんから効率が悪いのですよ」

 

 閣下? やはり辻卿はパーパルディア皇国皇族であるレミール皇女殿下さえも恐れる人物なのか?直感したブルーアイは、辻に空いてる席に着いて下さいと促され、席に着く。

 

 正面スクリーンには遠方を映し出す機能もあるようで、戦場となる海域を映し出していた。

 

「物凄い数だ……!!」

 

 パーパルディア皇国はエストシラント近海まで押し寄せてきている、ロウリア王国の、船、船、船。どこまでも帯状に続く船の数。まるで洋上を行く蛇のようだ。

 

「もう少し拡大して下さい」

 

 辻卿の言葉に女性艦橋員がスクリーンを望遠鏡のように拡大していく。

 

 あれがパーパルディア皇国艦隊。

 

 前面より迫ってくる6,000隻の艦隊に対して僅か40数隻。だが、一艦一艦が堅牢で巨大。特に4隻の艦はあり得ないほどに巨大だった。

 

「あれがパールネウス級戦艦だな」

 

 満載排水量76,800tの怪物艦。さあ、果たしてどの様な。

 

「ムーの観戦武官は戦艦クーズに乗っているそうですね」

 

「まあ76,800t級の戦艦に乗っていて安全性に万が一はありませんが。近くで見たいのでしょう。正直浮遊航空艦の方が技術力の塊なのですがもったいない」

 

 

 のちに『エストシラント沖大海戦』と呼ばれる、歴史を動かした海戦が始まろうとしていた。

 

 

 ※

 

 

 エストシラント。及びパーパルディア皇国征伐海軍

 

 

「良い景色だ。美しい」

 

 美しい帆船が、帆いっぱいに風を受けて大海原を進む。その数6,000余り。大量の水夫と揚陸部隊を乗せ、エストシラントへ向かっていた。

 

 見渡す限り、船ばかりである。

 

 海が見えない。そう表現したほうが正しいのかもしれない。

 

 7年をかけた準備期間、パーパルディア皇国の軍事援助は昨年まで受け、のちは自力で財政を圧迫しながらにも用意した大艦隊。これだけの大艦隊を防ぐ手立ては、現在のパーパルディア皇国にはない。

 

 もしかしたらパーパルディア皇国はおろか、フィルアデス大陸全土さえも制圧できるかも知れない。

 

(かつてのパーパルディア皇国には『砲艦』という、船ごと破壊できる兵器があったらしいが、それも今や喪われた。愚かにも自国で処分していった。財政難なのかなにかはしらぬが愚かな事よ)

 

 だが財政を圧迫しているのはロウリアとて同じ。彼は一瞬顔を出した野心の炎を、理性で打ち消す。第三文明圏すべてへと挑むのはやはり危険が大きい。彼はこれから征服すべき、北の海を見据えた。  

 

 

 

 

 

 

 斑鳩級浮遊航空艦(休日版)

 

 全長:236m

 

 全幅:72m

 

 全高:36m

 

 速力:巡航速度1,200㎞

 

   :最高速度2,800㎞

 

 実用上昇限度:42,000m

 

 兵装:ハドロン重砲4門

 

   :単装リニア砲7門

 

   :大型リニア砲2門

 

   :32連装ミサイル発射機3基

 

   :スラッシュハーケン4基

 

 動力:フレイヤ炉

 

 航続距離:∞

 

 特殊武装:ブレイズルミナス(強化発展型)

 

(どんな傾向かを知りたいのもありまして

  • ミリシアル好き
  • ミリシアル嫌い
  • グラ・バルカス好き
  • グラ・バルカス嫌い
  • ロウリアは徹底的にやっちまうべき
  • ロウリアにも救いを
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