砲艦外交の前に   作:休日

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11砲艦外交じゃ無くて戦争だろ3

 

 

 

 

(……ん? 何かがこちらに飛んでくる)

 

 虫のような形をした無機的な物体が一つ、キーンと音を立てて、ロウリア王国海軍上空に飛来する。

 

 見たことのない物体、その一点にとどまり続けたりする異様な飛行形態に、シャークンの心にはわずかな恐怖が芽生えた。

 

(まさか飛竜か? ……いや、違う。何だあれは!?)

 

 赤い機体に黒い文様が描かれている面妖な物体、弓矢の届かぬ上空を飛び回り、人間のものとは思えない大音声で艦隊に語りかける。

 

『こちらはパーパルディア皇国皇国海軍です。ロウリア王国海軍に警告します。ここから先は、パーパルディア皇国の領海となります。直ちに回頭し、自国の領海へ引き返しなさい。繰り返す――』

 

 そうだ。あの赤い色に黒い文様は、パーパルディア皇国の国旗の文様。するとあれは、パーパルディア皇国の兵器。

 

 どうやら彼の飛行物体の中には人が乗っているらしい。そういえば一年と少し前、北側諸国の外交官とやらを、うちの国の宰相が脅しつけて追い返したらしい。門前払いしたという話しはシャークンも聴いていた。

 

 その後、北側諸国はパーパルディア皇国と接触し、パーパルディア皇国は前帝ルディアスを処刑し、以前の政治体制とは大きく変わった平和主義体制になったとか。

 

 新皇帝セレミアは基本対外的には対話方針で、国内については、かつて属領統治していた現在の自治都市を、皇都より先に力を尽くし発展を目指す方針だとか。

 

 しかしあの飛行物体を見る限り、パーパルディア皇国はただの平和主義国家に変わっただけなのだろうか? 昨年、政治部が言っていたように本当に北側諸国とは蛮族だったのだろうか?

 

 『それ』に向かって弓を引いた者もいたが、矢はまったく届かず、あえなく海上に落ちた。面妖な物体は同じことを繰り返しながら、しばらく上空で旋回し、北の空へ立ち去っていった。

 

 しばらくすると、海の向こうに一つ二つ、三つ四つの小島が見えてきた。

 

(パーパルディア皇国には訪れたことがあったが、こんなところに島などあったか……? いや、島が動いている……! まさか、船か!?)

 

 小島と思われた船の1隻は、すさまじい速度で艦隊最前列の帆船の横に回り込み、同船と平行に走り始めた。その距離約300m。

 

「何だ、あれが……?デカい船だな」

 

 海将シャークンは少し緊張するが、相手はたったの1隻、沖に待機中のも含めて4隻だ。こちらは6,000余りもいるのだ。負けることなど絶対にあり得ない。

 

『ただちに回頭して引き返せ! さもなくば、貴船に対し発砲する!ただちに回頭して引き返せ!さもなくば、貴船に対し発砲する!!』

 

 先程の飛行物体同様に大音声で警告を発してくる。

 

 発砲とは何なのだろうかと思いつつ、おそらくそれが攻撃手段だと判じたシャークンは思う。パーパルディア皇国も甘くなったものだと。以前までのパーパルディア皇国ならば領海に入れば、敵を見つければ即撃沈だったというのに。

 

 まるでお子様に、これをしては駄目、あれをしてはいけないとでも言い聞かせているようではないか。北側諸国に骨でも抜かれたか。だが、同時に嫌な予感が収まらない。

 

 先ほどからざわつきを覚えるこの胸の感触と仕えは何だろうか? 危機的状況の中に居るようなこの感覚は。それを振り払うように、シャークンは、右舷艦隊に攻撃を命じた。帆船は右に旋回し、重巡洋艦フィシャヌスとの距離を縮める。

 

 

 ※

 

 

「大きいな……」

 

 パーパルディア皇国を名乗る飛行物体が現れた直後なので、この船も同国の所属だろう、外国船に対して第一撃を加えろと命ぜられた船長は、心の奥底に僅かな不安を抱く。

 

 ともあれ、こちらは6,000隻を超える大艦隊。一番槍を任されたのであれば、その栄誉を逃がすわけにはいかない。それに牙の抜けたパーパルディア皇国など恐るるにたり無い。この巨船もどうせ張りぼてに違いないと己を奮い立たせて。

 

「火矢を準備しろ! 大型弩弓はまだ使うな!距離200で敵船に放つ!!」

 

 軍船長の指示により、船員達は最上甲板に設置された油の油母に矢の先端を浸け、松明で火を点火する。弓兵は炎の熱を感じながら、敵パーパルディアの巨大軍船に向かって弓を構えた。

 

 敵船との距離が200mを切る。

 

「放て!!」

 

 軍船から一斉に火矢が放たれ、放物線を描きながら敵船へと飛びかかる。大量に連続して放たれた火矢は、敵巨大船の外壁に突き刺さり、一気に船を燃え上がらせる筈だった。

 

 

 ※

 

 

 軍船から放たれた火矢は、“カンッカカンッカンッカンッ”断続的に音を立てて重巡洋艦『フィシャヌス』の15.5㎝連装砲塔に多数命中し、外壁塗料に傷を付ける。

 

 作戦行動にはまったく影響なかったが、火矢の有効射程距離から急速に遠ざかる。

 

 船団を一瞬で引き離し、約3㎞の距離を置いて旋回した。

 

「ひゃっはっはっはァァァッッ!! 見ろッ! 逃げやがった!!」

 

 ロウリア海軍の甲板で水夫達が逃げたと思い込んでいる重巡洋艦を馬鹿にし、野次を放つ。もちろん相手には届いていない。

 

 しかし船長は敵がまったくの無傷である事、そして敵のあまりの船速の速さに驚愕が隠せない。パーパルディア皇国の船、砲艦は見たことがある。だがあんなにも速かっただろうか。それに――。

 

「火矢が刺さらなかった。船体が金属でできているような……」

 

 パーパルディアの砲艦の船体は巨大だったが、あれは木造船。火矢がまったく刺さらないことなどあり得るはずが無い。本当に鉄なのか? それとも一部の国で採用されている鉄張船か? マストがないのは何故だ? 彼は敵船をどうやったら倒せるのか、思考を巡らせる。

 

 また、初撃を近くで見ていたシャークンは、胸中に不安を過ぎらせていた。かつて大量の砲艦を保有していたパーパルディア皇国の軍艦と言うだけで不安なのに、まるで攻撃が効いていない。

 

『逃げ出したか。まあいくら大きいとは言え、一隻ではどうしようもあるまい。しかし……今、攻撃が通じなかったのか? デカいくせに速いし、風を受けずにあれほどの速度を出せるとは……」

 

 やはりパーパルディア皇国を侮ってはならないのでは無いのか? この外征は失敗だったのでは? 技術の欠片から気付くあたり、シャークンは優秀な指揮官だと言えるだろう。

 

 

 

 

 

 

 砲艦外交じゃ無くて戦争だろ3

 

 

 

 

 

 パーパルディア皇国皇国海軍艦隊は、ロウリア海軍より明確なる攻撃を受けたため、これを完全なる敵性国家として、反撃を決定していた。

 

「重巡洋艦フィシャヌスが攻撃を受けた。これよりロウリア海軍に攻撃を開始する。ムー国の観戦武官は?」

 

「戦艦クーズの艦橋でお客さんと共に観戦中です」

 

「ならば是非とも初撃は答えてやらねばならんな」

 

「目標、左舷前方の水上船……」

 

 パール型重巡洋艦は等間隔で横並びとなる。全艦の甲板前方に設置された15.5㎝連装砲×2基4門が旋回し、角度を定め敵船に砲口を向ける。照準が定まった。

 

「……主砲――撃ち方、始め!」

 

 パーパルディア皇国皇国海軍、ロウリア王国海軍に対し、艦砲射撃を開始した。

 

 

 

 

 目のいいシャークンは、3㎞先の敵艦隊のわずかな変化に気付いた。

 

 4隻の大型船の前に付いていた二つ並びの二段の鉄の棒、16本が、ロウリア王国海軍側を向いたように見えた。

 

「あの棒は何だ?」

 

 次の瞬間、煙を出しながらボーンッとした轟音が幾つもとどろいた。

 

(煙? 勝手に燃え始めたのか?)

 

 おかしな事もある物だと思った次の瞬間。

 

 最前方を走る船団群が大爆発を起こして木っ端となって飛び散った。爆散した木片や船の部品、人間だった者がまき散らされ、周囲の味方の船上にばらばらと降り注ぐ。遅れて、何かが爆ぜるような音が敵船の方角から聞こえた。

 

 再びの砲撃だ。16の砲口があるのだ。弾の装填も速く次から次へと撃ち出され来る。

 

 ボーンッ。ボーンッ。

 

 重巡洋艦という見知らぬ艦種からの見たことも無い、巨大な砲弾による砲撃。しかも極めて正確で外れ玉が無い。

 

「く、くそおッ、だが、食料は現地調達が基本という事でワイバーン800騎を連れてきていて良かった。通信士。体力の消耗を減らすため岩礁地帯を休み休みさせながら来ている、ワイバーン隊の隊長に至急連絡!! 上空支援を要請しろ!! 敵パーパルディア皇国海軍主力船団と交戦中とな!!」

 

 四散した船はまだ竜骨などが残っていたが、無事だった乗員を乗せたまま、ほどなくして破孔からの心酔により、みるみるうちに傾いて沈んでいく。

 

 

 ※

 

 

 至近距離で放たれたパーパルディア海軍砲弾は、フィシャヌスに火矢を射掛けた船に直撃し、一発で撃沈した。

 

 当然だろう。ただの木造船団に重巡洋艦の15.5㎝連装砲の砲弾を止められるはずもない。

 

「これで引き上げてくれたら楽なんだが、野心に溢れたロウリアが引き上げるわけ無いよな」

 

 重巡艦隊司令を任された、本来は第一機動部隊副官のアモルは、無駄弾を撃つのが嫌いだった。

 

 如何にパーパルディア皇国が平和主義に舵を切ったとは言え敵が向かってくるのならばこれを排除する。至極当然だ。

 

 ただ無用な戦闘を避けたいのもまた事実。確実に勝てる相手とは言えだ。

 

 従って、こちらの力を一部見せることで、勝てないと理解させて相手から引き返させようとするように考えていた。

 

 侵略行動を止めて一年と少し、すっかり平和ボケとなってしまったと言われても仕方が無いが、彼はこの斉射で敵が撤退してくれることを願う。

 

 現に多くの船が吹き飛び沈没し、隊列も乱れ、ただでさえ遅い船速まで更に遅くなっていたために、淡い期待を抱いていた。

 

 

 ロウリア王国 北方征伐軍 ワイバーン部隊

 

 

「ロウリア王国北方征伐軍主力艦隊より魔信が入りました。『現在敵パーパルディア皇国主力艦隊と思われる艦艇群と交戦中。敵船は巨大で、当艦隊の軍船少なくとも30隻がこれらにより撃沈された。反撃のため、航空支援を要請する』……だそうです」

 

「ほう、敵主力か……。よろしい、800騎全騎で向かうぞ」

 

「了解しました『全飛竜隊に次ぐ。これより北方近海、パーパルディア皇国領海にて戦っている我らが同胞を救うため、全騎発進し支援に当たれ!! 繰り返す――』」

 

 出番を待ちわびていた竜騎士たちは歓声を上げた。のんびりのんびり海の旅はもう飽きたのだ。今は心踊る戦闘がしたい。敵のはらわたを食いちぎってやりたい。

 

 発進したワイバーン隊800騎が次々と岩礁を離れ、大空へと飛び上がっていく。

 

 

 

 

 大日本帝国浮遊航空艦 亭子(ていじ)

 

 

 メインスクリーンを見守っていた辻政信は、パーパルディア皇国皇軍の意外な戦法に、眼鏡の奥の瞳を僅かに揺らめかせた。

 

「ほう、そういう手を使いますか」

 

 高度は変わらず20,000mながら、場所は移動している。この10,000m下にはパーパルディア皇国皇女レミールと大日本帝国外交官朝田泰司の乗る浮遊航空艦デュロが浮かんでいる。

 

 態々ここまで移動してきた意味は特にない。精々がレミールの罪の意識の度合いを測るかくらいだろう。

 

 パーパルディア皇国皇族レミール皇女。彼女は幾度か民衆の眼前で土下座をしたことがある。謝罪行脚だ。

 

 無意味でもありつつ意義深い行為をしてきた彼女を、辻はその深い瞳で見てきている。

 

『この様なことをしても私の罪が購われることは無い。ルディアスへの崇拝心から私は多くを殺し、多くを傷つけてきた。元クーズ王国ハキ、イキア』

 

 呼ばれた二人は瞬間ビクッとするも、その目に憎悪を浮かべてレミールを見た。

 

『お前達のことも調べた。苦しみ抜いたそうだな。我らパーパルディア皇国の、皇族の、特に私の所為で』

 

 ハキの怒りが爆発した。

 

『苦しみ抜いただと!! そんな一言で済ませられるような艱難辛苦じゃ無かった! お前達皇族に、属領統治軍に、面白半分で殺される日々! 明日への希望が無い日々!』

 

 一息継ぎ。

 

『分かるかお前に! お前等皇族に俺たちの苦しみと怒りがッッ!!』

 

 はあっはあッ。一気に憎しみをぶつけたハキにレミールはただポロポロと涙を流し土下座を続ける。

 

『これは、これは日本式の最低な謝り方だと聴いた。最も恥ずべき謝罪方法だと。だから、私にはこれしか出来ない。私の命を欲しいと言うならばこの場で殺すが良い。殴られ蹴られ刺されそうして私は死んでいこう』

 

 ハキに迫るレミールの目。それは真剣なる瞳であった。本気で、本音で言っている。この場で殺されても良いと。

 

『頭を腕を踏みたければ踏め。こんな愚かな女の命一つで国の混乱を防げるというのならば、安いもの。さあ、好きにして良い。犯したければ犯すが良い』

 

 本気だ。この女は本気でクーズに謝罪している。いや、おそらくクーズだけじゃ無い。口端には切り傷、顔には痣。他の場所でも同じように謝罪し殴られ蹴られしてきたのだろう。

 

 皇族レミールはプライドの塊みたいな女だ。なぜその女がここまで出来る?分からない分からないが、一つ分かったことがある。ここまで、こんな醜い謝罪方法までとって謝るこの女を殴ったり、殺したりしたら。それはかつてこの女がやって来たことと同じになってしまうということだ。

 

『もう、いい、許しはしない。許せない。だが、あんたの謝罪は本物だ。本気で謝ってる奴を殺せるほど、俺は落ちぶれちゃいないんでね。馬鹿にすんなよレミール」

 

『俺も、ハキに同じだ。こんな謝り倒して殺せって言ってる女を殺したら、俺までくそったれルディアスと同じになっちまう。あんた全国回って謝罪行脚してんだろ。殴られたり蹴られたりはしても誰も殺さない。みんな分かってんだよ心からの謝罪だってことをな』

 

『イキア……ハキ……、すまない、すまない……!』

 

 

 ※

 

 

「ふッ、戦艦クーズ。それは彼女の謝罪の気持ちなのかも知れないですねえ。パーパルディア皇国最強の戦艦に属領都市の名を付けるのは」

 

 

 新皇帝に代わってから、北側諸国と国交を結んでから属領都市も変わった。まずビルディングにショッピングモールが整備され始めた。

 

 エストシラントからでは無いというのは皇族達・貴族達の謝罪の気持ちなのだろう。発展は地方から。これをスローガンにパーパルディア皇国はこの一年と少しの期間で発展という名の歩みを一歩ずつだが歩んできた。

 

 クーズなどはいま大発展していて都市住民の顔は活き活きとしている。レミールが外交官として視察に赴いた際、ハキが『おう、レミール。どうだよ今のクーズは。エストシラントを余裕で抜いてるだろ!』と自慢していたという。

 

 

「その謝罪の気持ちを持ち続けるのなら、あなたは人並みの幸せを掴めるでしょうねレミール皇女」

 

 何者をも見通す深い闇色の瞳で窓のから10,000m下方を見遣りながら辻は呟いた。

 

 

 ※

 

 

「つ、辻卿」

 

「ああ、失礼作戦でしたね。これ、まずは重巡部隊を表に出して、最小の砲撃をすることで格の違いを知らしめ追い払う作戦ですね。甘いと言わざるを得ませんがパーパルディア皇国は覇権主義を捨てました。露骨な力の行使をしたくはないのでしょう。まあ無駄なようですが」

 

「え? ああッ?! わ、ワイバーン部隊」

 

 ※

 

 重巡洋艦部隊の後方3㎞、戦艦パールネウスの戦闘指揮所ではすでにそれを捉えていた。

 

「さっさと帰ってくれれば良い物を。力の差も分からないのか」

 

 指令アルカオンが言うが、艦長が。

 

「それ、我々にも通ずるところですよ北側諸国をこけおどしと侮ったのお忘れですから」

 

「う、そ、そういえばそうだったな。兜の緒を締めるか。ヴェロニア、セイレーン、アビス、ワーグナーから全艦載機を発艦させろ」

 

「ラジャー」

 

 

 ───

 

 

「アスタルもう子供一歳なんだな」

 

 自分の機、震電改に乗り込みながらマグネが僚機のパイロット、アスタルに話しかける。

 

「ああ、子供は可愛いぞ。さっさとこの小競り合いも終わらせて息子のところに帰りたいものだ」

 

「お前そういうの死亡フラグって言うらしいぞ日本やブリタニアでは」

 

「ははッ、そりゃ気をつけんとな――」

 

 ぶるんッ、ぶるるるるるッ。排気音のしないモーターエンジンの回転音。プロペラの回る音。

 

「アスタル、震電改出る」

 

「おおっとこちらも、 マグネ。震電改出る」

 

 甲板を滑走し大空へと飛び立っていく震電改。

 

 その他にもゼロ式艦上戦闘機52型。が次々と発艦していく。静かなモーターの音を立てながら。

 

 

 ※

 

 

 突如3㎞先の大型船の後方より、豆粒が現れる。10,20、40、80、160、次々に増えていく豆粒は総数500を越える頃には目に見える物となって、シャークンの前に姿を現した。

 

 あ、あれは、鉄の竜、か? 緑色の塗装が太陽に輝き反射している。竜の鱗ではあり得ない現象。鉄しかあり得ない。鉄の竜、噂には聞いていたが本当だったのか。

 

「くッ、だが、そろそろワイバーン竜騎士団もこの海域に到達する。艦船でも竜でもこちらの方が数は上なのだッ! 全船、突撃せよ!!」

 

 船からオールが突き出る、太鼓の音と共にオールが力強く漕がれ、艦隊が加速する。

 

 ロウリア王国北方征伐海軍の軍船6,000余隻は、化け物のようにデカい船4隻に向かって突撃を開始した。

 

 ※

 

 海軍合流に向かっていたロウリア王国竜騎士団。王国史上最大の800騎による作戦行動、その雄志は地上から見る者達を圧倒する。

 

 竜騎士団長アグラメウスは、すでに勝利を確信していた。

 

 魔信器より敵主力との報が入り出撃したが、パーパルディア皇国海軍の主力は精々24隻の大型船だけと伺っている。多くとも50はないだろう。

 

 海軍だけでも充分に滅することができるだろうが、おそらくシャークン海将は被害を最小限に抑え、さらにロウリア王国軍と竜騎士団のとてつもない物量と力を誇示するつもりだろう。

 

 一回の作戦行動としてこれだけの大軍を投入するのは初めてで、これほどの部隊があれば伝説の魔帝軍でさえも打ち破れることだろう。まして武装解除したというパーパルディア皇国ごときに我らをとめられるはずがない。

 

 アグラメウスだけでなく、竜騎士たちの誰もがそう思っていた。

 

「ん? 何だあれは?」

 

 目のいい者が気付いた。

 

「――!!!」

 

 突如として現れた黒い点は、一瞬で竜騎士たちとの距離を詰める。

 

「光の――矢!!!」

 

 彼が叫んだ瞬間、隊列を組んでいたワイバーン隊前方が轟音と爆炎に包み込まれる。

 

 仲間23騎分の残骸が爆散し、大小様々な塊となって海の落ちていく。何が起こったのか。生者も死者もまったく理解できないまま、さらに十数秒後には12騎が2弾目の光の矢に襲われる。全員が事態を把握した数秒後には18騎と、次々落ちていく。

 

『ロケット弾の支援ありがとよゼロ戦隊の諸君。後は震電様の獲物だぜ』

 

 突如戦場に乱入してきたた緑色の鉄の塊。噂の鉄竜だと感じ取ったときにはワイバーンの2倍以上の速度で、竜騎士の間を駆け抜けていき。ダダダダッ。大きな音を出したかと思えば竜にも騎士にも、大穴が空いて海に落ちていった、当然死んでいる。

 

 その鉄竜は一騎だけではなく10、20と戦場に飛び込んできては、一撃離脱を繰り返して竜騎士たちに穴を開けていく。

 

「何だ!? 一体何が起こっている!!」

 

 ロウリア王国竜騎士隊には分からない事だが、その緑色の鉄竜、震電改の30㎜機関砲は非常に強力な攻撃力を誇る。ワイバーンの鱗など薄皮一枚引き裂く様な物で簡単に穴を開け、体内に食い込ませるのだ。それ一発でワイバーンは死亡、竜騎士に至っては頭や胴貫通即死である。

 

 それがあちらこちら。300機からの震電改が舞い、竜騎士とワイバーンを食い荒らしていた、ブーンという虫の羽音の様な音と共に。

 

 ロウリア竜騎士隊には誰も答えられる者が居ない。

 

「速いッ! 速すぎるギヒッ!!!」

 

「こんなの付いていけるわギャっっ」

 

 世界で最強の兵器であるはずのワイバーンが、ひたすら簡潔に殺処分されていく。ダダダダッッ。音が鳴れば何騎数十騎が処分され、こちらの火炎弾は当たらない。とにかく相手が速すぎるのだ。

 

 形は末広がりの三角形。後部中央には大きな風車が一つ、前方は平たく横一線に金属板が伸びている。速い、速い、速すぎる。

 

 血しぶきが舞い、人が、竜が、苦楽を共にしてきた仲間が落ちていく。

 

『アスタルどれくらい撃墜した? 俺35』

 

『甘いなマグネ50』

 

『おお、負けてられないな』

 

 震電改のパイロット達は気楽に無線会話をしている。ロウリア竜騎士団の絶望を知りながら。

 

 だが、知った事か。侵略してきたのはそちら側。パーパルディア皇国海軍航空隊の隊長クラスは日本で神聖ブリタニア帝国のルルーシュ・ヴィ・ブリタニア皇子殿下に薫陶を戴く栄誉が得た者がいる。

 

 この二人もそうだった。

 

『撃って良いのは』

 

『撃たれる覚悟のある奴だけだッッ!! オール・ハイル・パーパルディア!!!』

 

 オール・ハイル・パーパルディア!!!

 

「バカな!! そんなバカな!!!」

 

 雄叫びと共に更に機動力命中率も上がるパーパルディア皇国航空隊。

 

 片や戦意を喪失して散っていくワイバーンは格好の30㎜機関砲の餌食となり。

 

 300騎500騎と喪われていき799騎までが撃墜され。

 

「お、おのれェェェェェェッ! せめて一騎でも道連れにィィィィィ!!」

 

 アグラメウスの最後の咆哮と特攻も。

 

 ダダダダダダッッッ

 

「ぶぢゅ――」

 

 断末魔と共に、空しく空に響くだけであった。

 

 

 ※

 

 

 静寂が大海原を支配する。

 

「…………」

 

 誰もが目の前で起きたことを信じられず、誰一人として声が出せずにいた。

 

 ワイバーンは一騎落とすだけでも至難の業。船であっても、ワイバーン同士であっても。

 

 それが全騎、800騎全騎がパーパルディア皇国の鉄竜に叩き落とされたのだ。

 

 夢では無い。夢ならどれだけ良かったことか。

 

「我々は……伝説の魔帝の力を手にしたパーパルディアと戦っているとでも言うのか……?」

 

 圧倒的とも言える敵の強さを前に、シャークンは悲壮な心境で呟く。彼の手がカタカタと震え、足もガクガクし始めた。

 

 しかし、悲劇は自分たちだけを見逃してはくれなかった。

 

 遙か北の彼方の水平線上に、先ほどまで自分たちが戦っていた巨大船を更に巨大化させた信じられない超巨大艦が4隻。等間隔で並んでいたのだ。

 

 すべて灰色の船体で、帆船をなぎ払った魔導兵器をこれでもかというくらいに巨大化させた魔導兵器が付いている。目がいい分だけよく見えた。

 

 1隻6門、計24門。それが青白い光を放ち始め。魂を凝縮しているように魔力らしきものを溜めていき。煌煌とこちらへとその光を向け。

 

 

 瞬間――

 

 

 ドッ――――!!!

 

 

 海を引き裂き島を吹き飛ばし、真っ直ぐに向かってきた24の稲妻がロウリア艦隊を直撃。

 

 

 ドッゴオオオオオ――――ッッッ

 

 

 余りの轟音に耳が詰まる。風圧だけで船が吹き飛び、稲妻に直撃された船は跡形も無く消し飛んだ。

 

 6,000余隻の艦隊の合間を通るかのように突き抜けた巨大な24の雷は、300㎞進んだところで海に溶ける様に消えてしまった。全艦撃沈。その撃沈された船の破片にしがみつき辛くも命を拾ったシャークンは、パーパルディア皇国の駆逐艦に救助されることに。

 

 雷の直撃を受け消し飛んだその中には、パーパルディア皇国侵攻軍のアデムの姿もあったが、消し飛ぶ瞬間を見た者の話しでは、何故か解放されたかのように笑っていたという。

 

 

 ※

 

 

「ようやく使いましたか18インチ三連装レールガン。このまま使わなければなんのためにくれてやったか分からなくなるところでした。まああれは対地支援にも使えますからこれから先も重宝することはあるでしょうけれど」

 

 私はいま、起きた事を、素直に、そして率直には書き留められなかった。

 

 鉄竜も、最初の鋼鉄艦も異常は異常だったけど、最後の4隻。パールネウス型らしき4隻の巨大艦による主砲の一斉斉射について、どう言えば良い。

 

 あれ、海を引き裂き割った。間違いなく数百キロに渡って海を割った。画面で見ていたから良く分かったけれど、あれはロウリア海軍にはどうしようもない。

 

 ロウリア処じゃ無い。あんなの文明圏の国々でさえも止められないんじゃ。

 

 大日本帝国はそれをおもちゃといった。つまり北側諸国の国々の一部にとってはアレでさえおもちゃなのだ。

 

 海を引き裂き、6,000隻の艦隊を吹き飛ばし、300㎞の長々射程を持つ巨砲をおもちゃだなんて言える国。この世界にない気がする。

 

 ああ、観戦武官としての報告書になんて書こう?

 

 

 ※

 

 

「す、すごかったなあ、今の砲撃ッ、あんなの見たことねえよッ。なあハキ!」

 

「あ、ああ、なんていうか、お、俺たちのクーズッ、おまえッ、おまえッ、すげーやつなんだなッッ!!」

 

 特別にこの戦艦クーズに乗艦させて貰っていたハキとイキア。クーズ出身でクーズ住まい。更にレミールの知り合いという事で命の保証はしないぞと言うことで特別に乗艦させてもらっていたのだ。

 

 活躍はまだか。戦わないのか。と、やきもきしていたところ、クーズ含む4隻の戦艦が動き出し、等間隔に500mから1㎞くらいの間隔で並ぶと。

 

 水平線の向こうに見えた海を埋め尽くす艦列に向けて、前方6門の巨砲に電気を溜め始め。バチバチと音を立て青白い電気を放ち始めたかと思うと。

 

 全24門の砲が一斉に青白い巨砲を放ったのだ。一発一発の速度が速すぎて海が揺れるほど。

 

 でもその砲の直進進路にいた侵略者は砲が通り過ぎたときには消えて無くなっていた。

 

 今日この瞬間から、ハキとイキアにとって、戦艦クーズは新たな誇りとなるのだった。

 

 

 ※

 

 

 パーパルディア皇国海軍基地

 

「あ、アルカオン提督。あの砲の名は?! あの砲は一体何なのですか?!」

 

 一方でうんざりしていたのはパーパルディア皇国艦隊提督のアルカオンだ。とにかく巨砲の説明をと言うか46㎝砲について説明しろとムー国の観戦武官が煩いのだ。

 

 詳しいことは私も知りませんというと、ですがあの威力、あんな砲がこの世に存在するはずが。と帰ってくる。そもそも本当にしらんのだ!!

 

 と、延々質問攻めに遭っていたのだ。他にも、ゼロ戦、とくに震電の圧倒的速さと機動性、30㎜機関砲はどうやって作るのか。

 

 技術者としては空飛ぶ船もあり得ないし、巨大空母もあり得ない、レールガンとかいう巨大砲もあり得ない。こんなの本国にどう説明すれば。

 

 一度親善訪問で我がムーにパールネウス級でお越しくださいませんかという始末だ。アルカオン提督の悩みは尽きない

 

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ヴェロニア級40,000t空母

 

 使用国:パーパルディア皇国

 

 船体 基準排水量:40,000 t/46,000 t

 

 満載排水量:56,000t

 

 全長:285.05 m

 

 水線幅 / 最大幅:32.54 m / 47.78 m

 

 深さ:25.6 m

 

 吃水:10,2 m

 

 機関:倉崎重工製エナジーフィラー

 

 出力 200,000馬力

 

 推進器:スクリュープロペラ×4軸

 

 速力:35 kt

 

 兵装:5インチ単装砲×16基

 

    ファランクスCIWS2基

 

    40mm4連装機銃×21基

 

    20mm単装機銃×68基

 

    ミサイル:シースパロー8連装発射機×2基

 

    航空運用機能:搭載機数:136 - 145機

    

    燃料:倉崎重工製エナジーフィラー4基

 

    カタパルト:電磁式×2基 電磁式×3基

 

    制動索:4索

 

    エレベーター:3基

 

 一番艦ヴェロニア、二番艦セイレーン、三番艦アビス、四番艦ワーグナー

 

 

 

 

 パール型重巡洋艦

 

 使用国:パーパルディア皇国

 

 排水量:14,500t

 

 全長:208.5m

 

 全幅:21.5m

 

 吃水:6.8m

 

 機関:ユグドラシルドライブ旧式×4、エナジーフィラー×4 130,000馬力

 

 速力:34ノット

 

 航続距離:11,000海里

 

 乗員:1,800名

 

 兵装:15.5連装砲×3基6門

 

    12.7㎝連装砲×6基

 

    7.6㎝連装砲×12基

 

    20㎜連装機関砲×12基

 

 同型艦:二番艦フィシャヌス、三番艦ディオス、四番艦ムーライト

 

 

 

 

 パールネウス型戦艦

 

 

 基準排水量:70180t

 

 満載排水量:76800t

 

 全長:275m

 

 全幅:39m

 

 吃水:11.2m

 

 フレイヤ炉搭載

 

 推進器:スクリュープロペラ4軸

 

 出力:180000馬力

 

 速力:32ノット

 

 航続距離:∞

 

 乗員:2800名

 

 主砲:50口径46㎝三連装超電磁砲3基9門

 

 副砲:60口径15㎝三連装砲4基12門

 

 対空砲:40口径12.5㎝連装高角砲6基

 

 20㎜バルカンファランクス4基

 

 装甲

 

 舷側:510㎜

 

 甲板:300㎜

 

 主砲防盾:750㎜

 

 二番艦クーズ、三番艦アルーク、四番艦カース

 

 

 

 

 ゼロ式艦上戦闘機52型

 

 震電改

 

 

(どんな傾向かを知りたいのもありまして

  • ミリシアル好き
  • ミリシアル嫌い
  • グラ・バルカス好き
  • グラ・バルカス嫌い
  • ロウリアは徹底的にやっちまうべき
  • ロウリアにも救いを
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