砲艦外交の前に   作:休日

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CP:玉城×マリーベル


13砲艦外交する?しない?(グリンダ騎士団投入する?しない?)

 

 

 

 

「終わらない。終わらないっ。終わらないッ! アーッ! 書類仕事が終わりません!!」

 

 パーパルディア皇国皇都エストシラントはパラディス城の奥に住まう皇帝。慈愛の皇帝にして独裁者ルディアスを打倒した絶対皇帝の異名を持つセレミアは、山積みになった書類と一人ひたすら戦っていた。

 

 書類内容はひたすらに、謝れ、謝罪しろ、パーパルディア皇国皇帝としての謝罪を。という要求であった。

 

「これも全てはルディアスのお馬鹿の所為です。なにが余は蛮族を纏め上げ第三文明圏を統一し、中央世界を征服するですか! どこまで勘違いした馬鹿だったのでしょうかあいつは。能力は高くも野心が過ぎますッ! 北側の介入がなくとも中央世界との無謀な戦争で我が栄華を誇るパーパルディアは滅びていたでしょうね!!」

 

 あの頃のパーパルディア皇国は精強な竜騎士団に加え、800~1,000隻の魔導戦列艦を保有していた。確かにあれだけの戦力があれば第三文明圏までは征服できたかも知れない。

 

 第三文明圏にアレを超える戦力を保持している国は無い。第三文明圏第二位の大国であろうリーム王国ですら。

 

 だが、中央世界は不可能だ。あの男は勉学で中央世界を学ばなかったのだろうか。煌煌と光り輝くルーンポリスの夜。眠らない魔都。あれを見ただけでも、我が国程度が到底適うような国では無いという国力差があることに気が付く。

 

 天の浮舟、魔導艦隊、なにを、何処を取っても昨年までのパーパルディア皇国がどうこう出来るような相手ではなかった。

 

 我が国にとって唯一最大の失策があるとすれば、あんな馬鹿を皇帝に推挙してしまったことだろう。おかげで拡大に次ぐ拡大戦争で、戦費により国庫は圧迫され。

 

 その事も知らない外務局のレミール姉様を初めとした、あの男に心酔していた当時の皇族達は散在に次ぐ散財をしていた。

 

 無論声を上げれば処刑という、典型的独裁手法をとっていたあの男に誰も逆らえ無くされてしまっていたからだが。

 

 いずれにせよ、その頃にはもう全てが遅かったのです。領土の租借約500年?! 魔鉱鉱山を寄こせ?! 王女を奴隷に差し出せ?! ただの強盗じゃないですか!

 

 あの頃、大日本帝国と、北側諸国が外圧を掛けてくださらねば、この国は早晩腐り果てて、地図の上から消えていたことでしょう。

 

 大きな出来事として名前を出すのも嫌なあの男と、レミール姉様を引き離せたことでしょうか。

 

 レミール姉様もあの男に心酔し、各地で酷い政策を行ってきましたが、日本の朝田外交官と触れ合ったことで徐々に正気に戻っていきました。

 

 いえ、日本と触れ合い正気に戻ったのはパーパルディア皇国皇軍軍最高司令官のアルデ、外務局のカイオス、エルト、リウス。外務監査室の皇族達。非常に多岐にわたります。

 

 位の高い者から低い者まで、皆正気に戻っていき、自分が一体何をしてきたのかを見つめ直すようになっていきました。

 

 アルタラス大使カストの様な、もう完全に壊れて引き返せないところまで行ってしまっている者もおりましたが、概ねルディアスの洗脳は解けた感じです。

 

 そしてあの北側諸国の大艦隊が国交開設交渉に迫り来た日。あの男は全てをレミール姉様に押し付けて逃げたのです。

 

 誰しもが恐怖を抱き。いつ怒りに触れ国ごと消滅させられるかも分からない状況下で、自分一人、自分に心酔する僅かな手勢とともに逃げ出す。もはや皇帝失格です。

 

 誰もが気付いた頃、北側諸国とパーパルディア皇国の会談が始まりました。

 

 北側諸国全てとなると多すぎるということで、北側よりの代表者。

 

 大日本帝国:辻政信代表。

 

 神聖ブリタニア帝国:シュナイゼル・エル・ブリタニア代表。

 

 AEU:アドルフ・ヒトラー代表。

 

 と、お三方が参られ。ルディアスに心酔し畜生の如き悪行を働いてきた責任の意思もあったのでしょう、パーパルディア皇国の代表には皇族から外務局監査官としてレミール姉様が臨みました。

 

 この会談、盗み見したり盗聴したりとやりたい放題でしたが、北側諸国の方々は気付いていてお気になさらなかったことが印象に残っております。

 

 ヒトラー代表など『もっとオープンにやらんかね』と、こちらを挑発、いえ、お誘いくださるような発言をし。ユーモラスさをアピール。ヒトラー代表が実はAEU共同代表にして宰相閣下だと識ったときには、あわやまんじゅうを喉に詰めて窒息しそうになりました。

 

 シュナイゼル・エル・ブリタニア代表も実は神聖ブリタニア帝国の№3で宰相の地位に就くお偉い御方で、我が国の調度品などをご所望だったことをよく覚えております。

 

 パラディス城の上空に数百騎の鉄のゴーレムが飛び交い、50隻を超える空飛ぶ戦艦が太陽を隠し、海には信じられない巨砲を持つ軍艦や(艦種種別は戦艦と伺いました名をそれぞれ、大和・ペンドラゴン・グロイスドイッチェラント)他にも巨大な竜母(空母・航空母艦と伺い)

 

 揚陸艦を遙かに巨大にしたキイ型強襲揚陸艦。巡洋艦という艦種の艦、駆逐艦という艦種の艦。いずれも巨大な鋼鉄の艦隊が何百隻とエストシラントの海を覆い尽くしていたのです。

 

 勝てるかどうこうの話しではありません。絶対は無いと仰いますが、あれこそ絶対に勝てない艦隊だったのでしょう。レミール姉様がルディアスに心酔したままお三方に非礼を働いていれば。

 

 パーパルディア皇国は一時間以内に滅亡させられていたでしょう。全ての外国の人間をこの会談に際し帰国させよというレミール姉様の指示は見事に的を射たものでした。外国にこのことが漏れてはいけない。

 

 ルディアスの洗脳が解けた証明でしょう。その北側諸国の代表の中で一人、紳士的な壮年男性が居りました。

 

 丸眼鏡を掛けた特徴的な男性。大日本帝国の辻代表です。彼はパーパルディア皇国に多く求めず、国交開設だけを求めて居られました。

 

 ただレミール姉様をジッと見つめる瞳は、まるで行ってきた罪業でも見つめているかのように闇色に輝き。

 

 ふと気が付くと、扉越しにこちらを見つめる瞳が深い深い闇を思わせていて、恐怖を感じさせました。心の水底までを見抜かれているような。

 

 あなたの考えは分かりますよと耳元で聞こえた気がしました。

 

 話は進み、この国の皇帝が国交開設に反対して逃げたというお話を伺ったヒトラー代表は『潰すかね』と小さく、冗談でも無い本気の言葉を発し場は張り詰めました。

 

 もちろん張り詰めたのはパーパルディア皇国だけで、他のお三方は平然としておられましたが。潰すの意味はどちらだろうか。ルディアスを潰すのか? パーパルディア皇国を潰すのか? その両方か。

 

 姉様にお伺いしたお話では、北側諸国はその気ならパーパルディア皇国を滅ぼすのに五分も要らないという。それだけの力を彼の国々はお持ちだと。

 

 そして潰すか? の意味はルディアスを潰すという意味で、当時の私は安心したことを覚えている。仮にも血の繋がったルディアスを殺すことに私には最早躊躇いが無かった。

 

 あの男はこの国の病巣だ。取り除かなければより多くの者が苦しむことになる。平民の命をなんとも思っていない、属領民のことなどゴミとしか見ていない。

 

 人間とは、皇族と貴族だけ。そんな選民思想に縛られたあの男はもうこの国に必要ない。

 

『我々なら100年ほど前の骨董兵器ならば貴国、いやレミール皇女殿下になら貸与できよう。どうかねお二方』

 

 ヒトラー代表が大きな声で宣告した。辻代表、シュナイゼル代表に聞こえるように。そしてレミール姉様に聞こえるように。

 

 彼ら基準の100年前。私たち基準の遙かなる未来兵器を、レミール派に無償供与しようという話しだ。もちろんルディアスを始末しろという遠回しな命令。

 

 でも、姉様は自分が旗頭となって次代皇帝となるより、別の者を選別してその者に次代皇帝の座を任せたいという。

 

 自分は広い世界を見てみたいのだという。では――

 

 誰だろう?

 

 私だった。

 

 計ったなレミールっっ!!

 

 私は別に皇帝になどなりたくない。皇族ということでただでさえ忙しい政務に忙殺されるというのに、皇帝とは。

 

 結局私は担ぎ上げられてしまった。なりたくなくてもならなければならない時もあるのだということでしょう。

 

 もしも、ここで逃げ出したりしたらヒトラー代表の仰った。

 

『臆病・能なし・現実を見る勇気も無し、三拍子揃って居っては見放されもするか。私としてはその様な無能は直ぐにでも処分するがね』

 

 これに当てはまってしまう。私はルディアスのように臆病でも能なしでも、現実を見る勇気の無い人間でも無い。あんな男と一緒にされるなど不快極まりない!

 

 そうして北側曰く骨董品。私たちからは当然のこと、神聖ミリシアル帝国から見ても充分な未来品の兵器を山のように与えられ。更には無頼改というナイトメアという鋼鉄のゴーレムの力も借りて、私はルディアス派を討ち取っていった。

 

 最早容赦も慈悲も無い。選別の時は終わったのだから。そうして私は暴力革命という非情手段を以て、パーパルディア皇国皇帝へと戴冠した。

 

 

 

 

 

 砲艦外交する?しない?

 

 

 

 

 レミール姉様は北側諸国の第二位の超大国『技術の日本』へ大使として赴任された。ずっとエストシラントはパラディス城と私邸を行ったり来たりで世界を知らなかったあの人は。

 

 自分の目で広い世界を見てみたいという思いから旅立っていったのだ。そこには大日本帝国の外交官、朝田泰司さんと一緒に居たいといった私的な想いもあるようだけど、私はそれを許した。

 

 旅立つ前、彼女は属領統治領や植民地だった自治都市に自らの足で謝罪行脚をして回った。これまで行ってきたこと。これから行う予定だったこと全てをつまびらかにして。

 

 殴られ、蹴られ、殺され掛けたこともあったらしい。それでも殺したいなら殺して欲しいと自らを投げ出す姉様の姿に、『あんたを殺しても親父やお袋は帰ってこねえ』そう、似たようなことを各地で言われ続けたらしい。

 

 最高責任者。それを指示していたルディアスを公開処刑にしたことも大きかった。死の恐怖を徹底的になじみこまされた最高責任者の『たしゅけで、だじゅげで』という醜く哀れな姿を国民皆に見えるようにと北側諸国が携帯テレビという物を配ってくれたのだ。

 

 恐怖の独裁者の正体は実は哀れで汚い汚物その物だった。最後の瞬間になっても民に謝罪をする事が出来なかった。断頭台の刃は降り、哀れな男の首が飛んだ瞬間こそが、真の意味でパーパルディア皇国が生まれ変わった時なのだろうと思う。

 

 そんな謝罪行脚の中、姉様と友達になってくれた人達もいたらしい。現パーパルディア皇国自治都市・地方のハキさんとイキアさんという方。

 

 明日への希望も無い中を生きてきた彼らは、ある日突然解放された。よりにもよって自分たちを苦しめてきた人間の一人であるレミール姉様に。

 

 最初はそれは罵声を浴びせられたという。でも彼らは姉様を殴ったりせず、殺したりもせず、ただその謝り続ける。皇族なのに土下座をし続け、顔を土に突け続ける女をみていたらしい。

 

 

『もういい!!』

 

 ハキさんがいった。

 

『レミール皇女だったな。あんたが心から謝罪してること充分伝わってきた。その美人な顔に付いてる青たんや蹴り跡。それも他の自治都市で貰ってきたもんだろ。でもあんたを殺そうとした奴はいなかった。みんな分かってんだよ。本気で殺してくれって言ってることも。本気で謝罪してることも。だからぁっ!全部水に流してやるっ!』

 

 イキアさんが続いた。

 

『なんかあんたルディアスが任命してた屑な官僚や大使なんかを率先して逮捕しては死罪を言い渡してるそうじゃないか。やることもやって、殺されることを覚悟してここまで足を運んで謝罪する。見上げた根性だよ。俺は許せないけど、とりあえず怒りはもう封印するよ』

 

 クーズ自治都市ではそうやってレミール姉様の謝罪は受け入れられたようです。

 

 他の地でも命をかけた謝罪は受け入れられていって、地方から発展させていくと約束すると。私の了解も無く勝手な約束まで取り付けて。

 

 まあ、私も地方から発展させるつもりでした。パーパルディア皇国を今のまま、今の国土と領土のまま国を維持しようとすれば、それは地方からの発展に掛かっています。北側化からの莫大な投資と技術供与、軍事供与を受けた『皇国大改造』です。

 

 

 そうしてがむしゃらに戦い続けたこの一年と少し。パーパルディア皇国は大きく発展を遂げました。

 

 北側諸国からの多大なる支援によって、地方には多くのビルディングやモールなどが建ち、活気に溢れ。

 

 エストシラントには古都のイメージを求めて北側諸国から大勢の観光客が訪れるようになりました。

 

 姉様と朝田さんも上手くいっ、行き過ぎているようで、少し不味いです。辻卿曰く。

 

『朝田さんとレミール皇女殿下の間には一年後にはお子さんがお生まれになっているでしょう』

 

 大日本帝国の元宰相にして影の支配者と噂されている嶋田卿には。

 

『気が付いたら妊娠しているので。二人同時に。朝田さんとレミール皇女は子供出来るのは早いと思いますよ。ですからやるべきことがあるのならお早く』

 

 とご忠告を受けました。

 

 嶋田卿は神聖ブリタニア帝国第三皇女ユーフェミア・リ・ブリタニア皇女と、ブリタニア皇帝の護衛である12人の剣のお一人、ナイトオブトゥエルブ――モニカ・クルシェフスキー卿を妻に持つという重婚を成された方。重婚は、大日本帝国では本来認められていないとのこと。

 

 ただし、嶋田卿は神聖ブリタニア帝国へ婿入りした御方でもあるので法的な面はクリアされているのだとか。過去の功績や家格、ブリタニア皇帝シャルル陛下との関係も大きいらしいですね。

 

 そんな嶋田卿は、今でも度々辻卿に日本へと呼び出されては書類仕事をさせられているらしいです。少し親近感を覚えます。

 

 レミール姉様と朝田さんの関係を識る方々の証言を洗い直しても、レミール姉様が朝田さんの子を妊娠するのは早晩のうち、子供が出来るのは早いと見られている。

 

 だからこそこちらも早く動かなければならないのです。仮にもパーパルディア皇国の皇族であるレミール姉様と平民の朝田さんがご結婚されるのですから。

 

 当然ですが朝田さんがレミール姉様に婿入りする形となります。パーパルディア皇国皇族が平民へと嫁入りするのはあり得ませんので。

 

 これからパーパルディア皇国の皇室典範や法をいじり、皇族のまま平民を婿に取り、または嫁に貰う方法を現在模索中です。

 

 これは恐れ多くも北側諸国第一位の超大国『力のブリタニア』こと、神聖ブリタニア帝国を参考にさせて頂いております。

 

 現皇帝シャルル・ジ・ブリタニア陛下は100人以上の女性を娶っている凄い方なのですが、その中に数名、元平民の方がいらっしゃいます。大きな功績を立てた方。シャルル陛下に見初められた方。

 

 ケースはまちまちですが、平民が皇族と、ましてや皇帝陛下と婚姻関係に至るのはパーパルディア皇国の歴史上では無かったこと。

 

 このシャルル陛下の例を参考に、朝田さんにはレミール姉様に婿入りして頂こうと考えております。

 

 こちらの提案はすでに辻卿にもお伝えさせて頂き、意見をお伺いした結果、パーパルディア側の法律が許せば構わないのではないでしょうか。とのお言葉を賜っておりますので。

 

「はぁ、しかし書類仕事が終わりませんね」

 

 しかし、パーパルディア皇国の皇帝として。迷惑を掛けてきた国へは賠償も行わなければ成りません。

 

 アルタラス、フェンへの賠償は終わりましたがまだまだ。リームには賠償しませんよ? あの国はどちらかといえば我が国が勝手に武装解除したと思い込み、攻め込んでこようと考えている国の一つです。

 

 リームとの国境には60式戦車と近代装備(北側曰く100年前の骨董品)歩兵と、KMF無頼(最初期型)で構成された機甲部隊を配置しておりますので、来るならばいつでも来なさい。

 

 新生パーパルディア皇国の力を見せてご覧に入れましょう。この間のロウリア軍の領海侵犯の時のように。

 

 あれも私はノートPCで北側諸国の中継を見ておりましたが物凄かったです。我が国の重巡洋艦が被害を受けたそうですが、塗装が剥げただけという、どう言えば良いのかコメントに困る被害は受けましたが死者0。

 

 我が方側はゼロ式艦上戦闘機、震電改の活躍。止めにパールネウス型4隻による46㎝超電磁砲24門の一斉射をお見舞いし、敵軍を文字通り消し飛ばしました。

 

 最終的にロウリア王国軍は、800騎の竜騎士団、6,000余隻の艦船全滅で、死者は推計で100,000人超えだとか。恐ろしい人数です。

 

 まだ彼の国の本土には70万を超える膨大な陸軍がありますが、海を渡ってくる手段が無い以上は、これ以上の皇国への侵略は無いと見て良いでしょう。

 

 問題は落としどころでしょうか。突発的とは言え、宣戦布告も無しとは言え、我が皇国は戦争を仕掛けられました。

 

 これで何もせずに終わらせるのは私が良くても、国民が納得しないでしょう。旧植民地今の自治都市の方々も今や自分はパーパルディア皇国民であるという帰属意識をお持ちです。

 

 ここで甘い対応をしてしまっては内外に対して示しが付きません。

 

「……」

 

 パールネウス型4隻が圧倒的力を持っていることがこの戦争で内外に大きく知れ渡りました。

 

 クワ・トイネ公国、ムー国の観戦武官が見ておりましたからね。ムー国の大使であらせられるムーゲ様からは私への面会の要請がひっきりなしだとか。

 

 大方アレを何処で作っていたのか。製造方法は。あの砲は何というのかとお聞きになりたいのでしょうが、北側諸国とムー国が接触を持っていない現時点で私の判断で動くのは憚られます。

 

 大日本帝国上帝陛下、今上陛下。辻卿や、御方々はお許しくださるでしょう。

 

 ブリタニアのシュナイゼル殿下や、シャルル陛下もお許しくださるでしょう。

 

 AEUのヴェランス皇帝陛下も……しかし同じくしてAEU最高指導者のヒトラー宰相閣下はどうでしょうか? あの御方はとても気性の激しい御方だと聞き及んでおります。実際にルディアスを殺せと最初に申されたのはあの方です。

 

 他の方、朝田さんにお聞きしたところ、ヒトラー宰相閣下は民族浄化でも為さる御方だと……。

 

 そんな御方の許可無くムーゲ様に艦内を案内するのは。

 

 そこまで考えたところで私は引っかかりを覚えました。北側諸国の首脳方はあの戦艦パールネウスを何と仰っていたか?

 

 そうです“おもちゃ”です。

 

 おもちゃなのです北側諸国の方々にとっては。あの強力な46㎝超電磁砲でさえおもちゃなのです。確か一度来なさいとヒトラー宰相閣下にAEU帝都ドイツはベルリンへとお誘いを受けているのですが。

 

 今は書類仕事が一杯で失礼ながらご招待をお受けすることも出来ない有様。そのドイツで。

 

『我が自慢のグロイスドイッチェラントを案内して差し上げよう』

 

 と、そう上機嫌で仰っていた。

 

 諸元表だけをお聞きしましたがとんでもないものです。初めて国交開設交渉に訪れたとき彼らが海に浮かべていた超巨大艦。

 

 その一つがグロイスドイッチェラントなのでしょう。

 

 

 戦艦グロイスドイッチェラント級

 

 

 

 一番艦:グロイスドイッチェラント

 

 

 

 二番艦:グリードリッヒデアグローゼ。

 

 

 

 三番艦:ウルリヒ・フォン・フッテン

 

 

 

 四番艦:ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン

 

 

 

 基準排水量:123,000t

 

 

 

 常備排水量:132,000t

 

 

 

 満載排水量:142,500t

 

 

 

   :AEU新型フレイヤ炉搭載

 

 

 

 全長:347.0m

 

 

 

 全幅:52.0m

 

 

 

 速力:34.9ノット

 

 

 

 主砲:56.0cm三連装超電磁砲3基9門

 

 

 

   :15cm55口径砲連装6基12門

 

 

 

   :10.5cm65口径高角砲連装8基16門

 

 

 

   :37mm自動機関砲16門

 

 

 

   :20mmCIWS12基

 

 

 

   :全長6.02m533㎜誘導魚雷発射管(水中)を艦首両舷各3門計6門装備(最大射程は205㎞)

 

 

 

   :艦載機:VTOL6機

 

 

 

 はっきり申し上げてこんな艦と比べられたらパールネウス型なんて駆逐艦と同じ、いえ、それ以下。話になりません。

 

 ですが、北側諸国ではこれくらい普通だそうです。特に超大国と呼ばれる国々にとっては。ブリタニアのペンドラゴン型は150,000t強。

 

 大日本帝国の大和型に至っては160,000tに達するそうで砲は60㎝三連装砲3基9門だそうです。他の国も80,000t級の戦艦を保有している国が普通にあると言います。

 

 その戦艦(超大国三国の戦艦を除く)を撃沈してしまう駆逐艦や、巡洋艦。戦闘機、KMFなどもあるそうで、まさに魑魅魍魎の世界。

 

 ともあれ、そんな国々の技術のずっと昔の、それもムー国では解析不可能な技術くらい見せても。

 

 いいえ、しかし辻卿やシュナイゼル殿下、ヒトラー閣下はレミール派でありセレミア派であるから100年前の技術を渡したと仰ってお出ででした。

 

 そんな技術を軽々しく開示するなど私には……。

 

 

 ともかく話を戻して。パールネウス型の力は神聖ミリシアル帝国や南方世界、現場に居なかった中小国にはしられておりませんがムー国を通してやがて知れ渡るかも知れません。

 

 ならば我が国もやってみましょうか? 砲艦外交。どうしましょうか。普通に攻め込んで敵軍を潰し、無条件降伏を迫るのもありなのですが。

 

 それをやるとまた血が流れてしまいます。どうするべきか、悩みどころですね。

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

「ねえ、兄さま?」

 

 腰下まで届く長い薄紅色の髪をした美女が、ベッドの上でささやきかける

 

「……」

 

 が、ささやきかけられた仏頂面をした、茶髪を威勢良く逆立てた男は答えない。

 

「シン兄さまったら」

 

 薄紅色の長い髪の美女がもう一度ささやきかけると、男はもぞっと動いて口を開いた。

 

「あのよー。お前いい加減にしてくれよな。今日は未遂で済んだから良いけど、ネッサローズに乗せられてから何回俺のこと襲おうとしたと思ってんだよ。一回はまじで襲われたし。お前皇女様なんだろ? お姫様なんだろ? どういう教育受けてんの? 親の面が見てーって、親の面はテレビでも写真でも見てるわ」

 

「うふふふ、シン兄さま。女は愛している男性にはとことんまで愛情を注ぐ物なのですわ」

 

「似たようなことクララも言ってたな」

 

「クララ……」

 

 クララの名を聞きぞわりと闇の気配を出す美女、こと、神聖ブリタニア帝国第八十八皇女マリーベル・メル・ブリタニア。

 

 彼女に取ってその名、クララ、ことクララ・ランフランクは永遠にわかり合えないライバル同士。恐らくだが威勢良く髪を逆立てた男。こと、玉城真一郎のファーストキスはクララに奪われている。

 

 だからマリーベルは我慢が出来なかった。愛しい愛しい、心が壊れてしまいそうなほどに狂おしく愛おしい玉城真一郎を自分だけのモノにしてしまいたいと。

 

 そして先日実行した。このネッサローズで。散った花は大輪の薔薇。薔薇と言えばローゼンクロイツ家のシンク嬢を思い浮かべる者も居ようが。

 

 同じくらいにマリーベルを思い浮かべる者も多く、彼女という薔薇が、薔薇の側から襲ったのだからこれはもう多くの男が泣いた。

 

 マリーベル皇女のような美女が何故にあの様なニートの能なしをと悪し様に彼を罵る声で一杯なのだ。

 

 マリーベルはその様な者を目の前にすると無礼討ち寸前にまで痛めつけてしまう。それをナイトオブナイツことオルドリン・ジヴォンが止めるのだが。

 

「私、なんであんなアホが関係していることに態々首つっこんじゃってんのよ~ッ! もう~ッ! アホ~ッ!! タマキのアホ~ッ!! マリーも落ち着いて落ち着いてッッ!!」

 

 と、それほどに、どこかの誰かが玉城の悪口を言うだけでキレるくらいに、玉城真一郎を好きで、恋して、愛してる。

 

 マリーベルの最大の宿敵がどこから入り込むか分からないと、地上へと降りるときなどには特に注意をしている。

 

 なにせマリーベルはズルをした。玉城の身柄を一時預かりその才能を活かさせて頂くというバイト的な名目でV.V.に訴え了承を貰い、クララの元から玉城を引き離したのだから。

 

 その上で、ファーストキスがクララなら、兄さまの初めてはわたくしのものと玉城を奪った。

 

「クララのこと、兄さまはどうお思いですの?」

 

「そりゃま、可愛い女の子だと思ってるぜ。あそこまで可愛い子はそうそういねェだろ」

 

 ちくッ。胸が痛くなるマリーベル。クララのことを可愛いとはっきりと言った。愛する男性に他の女性が可愛いと言われることの辛さ。兄さまはお分かりなのでしょうか。

 

 だが、同時に言った。玉城はいつもの調子で軽く。

 

「マリーも可愛いぞ?」

 

「……へ?」

 

「薄紅色の艶やかな長い髪はキレーだし、整った目鼻立ちも最高だし。深い、海の色みたいなディープブルーっつーのか? そんな色の瞳も綺麗だしよ。胸も大きいケツも女らしい身長だって俺に近いくらいある。クララには無い可愛さが、お前にはあるんだよ」

 

 クララにはクララの。マリーにはマリーの可愛さがある。

 

「だから、そんなに焦んな。ここ来てよ~く知ったが、お前ら俺みてーなアホのこと本気で好きなんだろ? 俺は二人とも好きだがまだ妹分的な好きだ。俺に女として好きにさせて見ろよ。愛させてみろよ。俺みたいなやつで良けりゃ、そんときを待ってる。だーかーらーねー? 無理矢理はやめよーな?」

 

 マリーベルの長い髪を優しく撫で梳く玉城。髪の中にて指を入れて優しく、優しく、髪に指を絡ませながら梳いていく。

 

「う、ああッ。にい、さまぁぁっ」

 

 ディープブルーの瞳からポロポロと涙をこぼすマリーベル。自分は何をしていたのか? 同意も無しにあの様な行為に及んで兄さまにご迷惑をお掛けした挙げ句、勝手に自分のものにしようとしていた。

 

 兄さまをお慕いしているのは彼女も同じなのに。その上で兄さまに甘えてしまって、慰められて。

 

「いいんだぜ別に。男ならお前みてェ良い女に抱かれたら男冥利に尽きらァ。気持ち良かったし、ああマリーベル・メル・ブリタニアって女はこんなにも俺の事が好きなんだなってことが良く伝わってきた。あんがとな。俺みてーななーんにもねーアホを好きでいてくれて」

 

 だからクララとも正々堂々やってくれ。

 

 結果がどうなったって俺が二人を好きなのは変わらねーから。

 

 

 ぷちゅん

 

 

 マリーベルの居室のモニターが付く。

 

 相手は副旗艦グランベリー。ナイトオブナイツのオルドリン・ジヴォンから。

 

 さっと布団に隠れる玉城。見られたら偉いことだ。

 

『マリー、ちょっといい。シュバルツァー将軍がさっき受け取ったんだけどグリンダ騎士団13艦全艦に待機命令が出たわ』

 

「ん、ぐす、たいき、めいれい?」

 

『どうしたのマリー』

 

「な、なんでもありません。それより待機命令とは?」

 

『ええ、なんでも北側諸国同盟に新しくオブザーバー加盟した小国、パーパルディア皇国がもしも砲艦外交の選択を取るならば、グリンダ騎士団にサポートにあたって欲しいと』

 

 マリーベルの瞳が鋭くなる。

 

「そのようなくだらないことの為に我が栄光あるグリンダ騎士団を?」

 

 あらたに加盟したオブザーバーとはいっても、汚職が蔓延り国の体制が禄に機能をしていなかった屑のような国家だ、正確には一年と少し前まではだが。

 

 最近ようやくマシになったといえど、その為にシュナイゼルお兄様やヒトラー閣下、嶋田卿がおもちゃを与えたと聞いた。それで充分だろうと。

 

『インパクトが欲しいみたいなの、あとはグリンダ騎士団のKMFかしら。グリンダ騎士団13艦の浮遊航空艦に約200騎のKMF、ロウリア軍も戦う気も失せるでしょ?』

 

 確かにそうだろう。未開の文明に近いロウリア王国が相手ならば、グリンダ騎士団だけで制圧できる。

 

「くだらないッ! そんなことの為にわたくしの騎士達を戦場に送るですって。ああいえ、戦場とも言えない蛮族の地でしたわね」

 

 なんでもエルフやドワーフ、獣人を差別している野蛮人共らしい。

 

 ブリタニアはクワ・トイネ公国ともクイラ王国ともそれなりによくやってきている手前、ロウリアの蛮人共が攻め込んできたならばグリンダ騎士団が制圧してみようかとも考えていた。

 

 だが今回の話しは元野蛮人の小国と、現野蛮人の戦い。そんなくだらない戦いのために自分たちが手を貸すのは気が引けた。

 

 まあパーパルディア皇国が今頑張って変わっていこうとしている努力は認める。うん、少し言い過ぎた。だがロウリアは駄目だ。言ってることやってることが蛮族にしか見えない。

 

『まあでも、上からの命令だし、しかたがないわよ』

 

「はああ~ッ、自分を強いと勘違いしていたところを正して、おもちゃまでくれてやって、まだ足りないなんて。長年E.U.と戦い続けて文句一つ言わなかったシーランドのヴェーツ国王陛下の爪の垢でも呑まさせて差し上げたいところですわ」

 

『まあまあ、要請があったわけじゃないからそこまで辛く当たらなくても。パーパルディア皇国だって自分たちなりにこれまでを反省し、変わろうと頑張ってるんだから』

 

「ええ、そこは認めますわ。一度パーパルディア皇国のセレミア皇帝やレミール皇女とお会いしたことがあるけれど、確かに変わろうと自分磨きを頑張っているわね」

 

『努力をしている分は認めてあげなくちゃね。ん? それよりタマキのアホはなにしてんの?』

 

 いきなりの玉城の話題である。マリーベルの布団の中に隠れていると知られたら大変だ。オルドリンの性格だ。ハイグレイルでネッサローズに突っ込んでくるだろう。

 

「え? あ、に、兄さまはいまネッサローズ艦内をランニング中ですわ。少しは体力付けないとって。やる気いっぱいで」

 

 やる気なんか無い。だらだらしているだけだ。

 

『そうなんだ。んー、あいつがやる気出してるときっていっつも調子くれて失敗してるイメージしか浮かばないんだけどなぁ』

 

 これはいけない。長話をしているとボロが出る。そうそうに話しを切り上げなくては。

 

 マリーベルは急いで回線を切りに掛かった。

 

「と、とにかく待機命令承りましたわ。ありがとうございます」

 

『う、うん、じゃあね』

 

 ぷちゅん

 

「ふううう~」

 

 一息吐いたところ。マリーベルの布団がもそもそ動いて玉城が這い出てきた。

 

「お前、ケツで押さえんなよ! 息できなくて苦しいだろうがッ!」

 

 ラッキースケベなくせに文句を言う贅沢な奴、その名を玉城真一郎という。

 

「ご、ごめんなさい」

 

 しゅんとするマリーベル。彼女は玉城に怒られると悲しくてすぐに弱気になるのだ。泣いてしまうときもある。

 

「あ~もう、わーったよ! 今日は一緒に寝てやるよ! でも変な事すんなよ? お前前科持ちなんだから」

 

「……」

 

「どしたよ」

 

「兄さま!」

 

 玉城に抱き着き、頬擦りをしまくるマリーベル。

 

「兄さま兄さま兄さま兄さまシン兄さまぁぁぁぁ愛しておりますわぁぁぁぁぁ!!!」

 

「お、おいおいおいおい、お前なあ……ま、いっか」

 

 自分にしがみついて頬擦り攻勢をしてくるマリーベルを玉城は、なでこなでこと撫でてやる。

 

 可愛い嬢ちゃんはもう大人。13艦の浮遊航空艦隊の艦隊司令で総騎士団長様。はあ、俺ももう現実見て衆院選諦めるかなあ……。

 

 

(どんな傾向かを知りたいのもありまして

  • ミリシアル好き
  • ミリシアル嫌い
  • グラ・バルカス好き
  • グラ・バルカス嫌い
  • ロウリアは徹底的にやっちまうべき
  • ロウリアにも救いを
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