砲艦外交の前に   作:休日

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砲艦外交の向こう側

 

 

 ここはAEU帝都ドイツは帝都ベルリン。AEUとは王政復古した国家の国家連合の通称である。フランス王国、スペイン王国、ポルトガル王国、イタリア王国、マグレブ王国、帝政ロシア。

 

 オーストリア=ハンガリー帝国、国土は小さくなったがオスマン帝国、スウェーデン王国、ノルウェー王国、フィンランドも独立しフィンランド大公国を建国。その他にもスイスなど中小沢山ある。

 

 そして中核であるドイツ帝国。人はこのドイツの帝都をグロスベルリンと呼ぶ。そのくらいに芸術性に溢れながらも幾何学模様を描く超巨大都市なのだ。

 

 無論、ヨーロッパという地に於いての話しで有り、極東、いまは極西に行けばグレータートーキョーが有り、東へ行けばペンドラゴンがある。

 

 彼の二大都市を前にしてはグロスベルリンも負けてしまう。いいとこ大阪やニューヨークと良い勝負になるくらいか。それでも十二分に過ぎる巨大都市なのだが。

 

 世界五指に入る。これは中々出来ることでは無い。ヒトラーとヴェランスは欧州開放後各国の荒廃した都市を日ブの力を借りて僅か数年で立て直した。最早奇跡である。

 

 近年ではヨーロッパの奇跡とも呼ばれており、これを成し遂げたヒトラーとヴェランスを讃え『ジークハイル』『ハイルヒトラー』『ハイルヴェランス』と叫ぶ者もいる。

 

 そのグロスベルリンの首相官邸、宰相官邸で刈り上げに七三分け。目つきの鋭いちょびひげの男が、いらだたしげに執務机をトントンと人差し指で叩いていた。

 

「リッベントロップくん、あの件は。ゲート向こうのE.U.を解放する件はどうなっとるのかね」

 

 ちょびひげの男、アドルフ・ヒトラーAEU初代宰相は怒りで机に手を叩きつけんばかりの勢いで、AEU外務大臣を務める少しばかりいかめしい顔をした男に問う。

 

「は、宰相閣下。その、日本外相リョウタロウ・アソウ。ああそう言えばこちらの世界では言葉が……その、麻生良太郎外務大臣と外相級会談を行ったのですがまず」

 

 AEUがF号兵器を満載した戦略潜水艦を我が国、とくに聖域たる神根島に向けて派遣しようとした行為は、我が国に対する明確なる敵対的行為で有り侵略行動である。

 

 これについてまず公式なる謝罪を要求する。

 

「これについては宰相閣下が不在だった為、ヴェランス皇帝陛下御自らが公式に謝罪を致しました」

 

「ヴェランスが謝罪をしただと?! なぜあいつがッ、我が友が謝罪をせねばならんのだッッ!!」

 

「宰相閣下の不用意な戦略潜水艦発進の号令が原因かと愚行致しますが……」

 

 ヒトラーの顔色を窺いながら、リッベントロップは言葉を発す。この男。ヒトラーは激情家タイプで怒りだしたら止まらないところがある。

 

 転生してから磨きが掛かったようだと思わないでもない。とくに大切な親友であるヴェランスが絡むと感情的になりやすい。

 

 それだけ気心の知れた仲だということで、旧ナチスの幹部達は好意的に捉えていたが。それにヴェランス皇帝陛下。こちらも出来た御仁である。

 

 ヒトラーの怒りを静めたり、国際会議の場でも攻めるところは攻める。あの大日本帝国や神聖ブリタニア帝国が相手であっても一歩も引かないときがあるほど豪胆な人物で。

 

 北側諸国会議で両国より最良の条件を引き出したりすることもあるくらいだ。流石はヒトラー閣下のご親友。出来る男であった。

 

「むううう……だが、最も手っ取り早くやる方法は、フレイヤを空中で爆発させ、この力を以て、現E.U.の全面降伏を迫る。この手が一番犠牲も少なく早い手なのだ」

 

 こうしている間にも、愚かな為政者は向こうのE.U.を腐らせて行っている。

 

「確か今の代表は」

 

「ジーン・スマイラスという男です。こちらでも同じ男はおりましたが我々の攻勢の前に降伏。いまはパリで一政治家をしているそうですが」

 

「使える男なのか?」

 

「失敗するタイプですな。おそらく平行世界のブリタニアという敵がいなくなったことで、彼の男の権勢が盤石に近い物になった物かと」

 

 引っかかりを覚える言い方に、ヒトラーは近い物? と、問い返した。

 

「はい。近い物です。向こうの世界にも当然我らと同じくしてユーロ・ブリタニアは存在し。ブリタニアが戦争を止めようともユーロ・ブリタニアには無関係。彼らは父祖の地の奪還を目指しているのですから。ただ」

 

「勢いは落ちる。ということか? 向こうの世界のブリタニアからの援助の先細りが考えられるからな。自らが起こした戦争の戦地復興をブリタニアはやらねば成らん。あの夢に夢を見ていたという向こうの世界のユーフェミア殿下の目指す道であるエリアの自治国化や整備にも金や人員、時間は掛かる。戦争のみに力を入れている訳にはいかんと」

 

「はい。なので我々には二つの選択肢が御座います。我々が変わって向こうの世界のユーロ・ブリタニアを支援するか。日本に申し立てて通常戦力を差し向け一気に」

 

 ユーロユニバースを潰してしまうか。

 

 出来るか出来ないか。可能か不可能か。で、言えば出来るし可能だ。

 

 フレイヤなど持ち出さずとも通常戦力だけで彼方の世界の型落ち兵器を相手に戦うなど、蚊を潰すのと同じくらいに簡単。

 

 少し古い戦力表だがその時の戦力でも。

 

 

 

 皇歴2019年

 

 

 

 欧州貴族連盟軍ユーロ・ブリタニア

 

 

 最高司令官:オーガスタ・ヘンリ・ハイランド大公(ユーロ・ブリタニア宗主ヴェランス大公)

 

 最高指導者:アドルフ・ヒトラー(ユーロ・ブリタニアでありヴェランスと共同代表)

 

 次席指導者:ベニート・アミルカレ・アンドレーア・ムッソリーニ(ヴェランス、ヒトラー、両共同指導者に次ぐ席次)

 

 

 

 

 志願制

 

 

 

 陸海空三軍

 

 総兵力:4,570,000名(予備役含む)

 

 

 

 作戦機:7,900機(第五世代戦闘攻撃機5,100機)

 

 

 

 VTOL:4,600機

 

 

 

 浮遊航空艦艇:31隻

 

 

 

 KMF:8,500騎+予備役機5,300騎(スメラギ製・ブリタニア製混成第5第7世代。第4世代予備役機。)

 

 

 

 G-1ベース:30両

 

 

 

 戦車:14,000両(第3~4世代)

 

 

 

 装甲戦闘車両:29,000両

 

 

 

 自走砲・野戦砲:21,000門

 

 

 

 航空母艦:10隻

 

 

 

 主力水上艦艇:220隻

 

 

 

 揚陸艦艇:400隻

 

 

 

 潜水艦:90隻

 

 

 

 他補給艦・支援艦・ミサイル艇・哨戒艇・掃海艦艇等:280隻

 

 

 

 各種兵員輸送車等作戦車両多数

 

 

 4年前の時点でこれだった。今ならば兵力だけで通常招集で6,000,000~8,000,000、限界で10,000,000。根こそぎならそれ以上動員可能であるし、事実第二次シベリア戦争では6,000,000の兵を以て盗人清国を叩き潰し、清国その物と高麗を踏み潰してきた極東の巨人大日本帝国とシベリアの地で握手をした。

 

 この戦力表の戦力や兵器もまた古く、南天の北進政策の顕在化が切っ掛けとなり、ここ5年ほどの間で異常進化を遂げてきたこちらの世界の兵器は、第8.5世代エナジーウィング機のKMFなら当たり前に量産されている。

 

 我が国にも第9世代機は既にある。第六世代統合打撃戦闘機も出そろいつつある。艦船など、日ブには及ばんが向こうの世界のブリタニア関係者からの情報で得た向こうのE.U.など勝負にならない格差がある。

 

 

 

 皇歴2023(中央歴1640) AEU軍

 

 

 最高司令官:オーガスタ・ヘンリ・ハイランド皇帝

 

 最高指導者:アドルフ・ヒトラー宰相

 

 次席指導者:ベニート・アミルカレ・アンドレーア・ムッソリーニ(イタリア王国国王)

 

 

 

 志願制

 

 

 

 陸海空三軍

 

 総兵力:6,500,000名(予備役4,700,000)

 

 作戦機:10,500機(第五世代戦闘攻撃機5,100機、第六世代統合打撃戦闘機2,000機、その他作戦機約3,000機)

 

 VTOL:6,700機

 

 浮遊航空艦艇:205隻

 

 KMF:13,300騎+予備役機7,200騎(スメラギ製・ブリタニア製・AEU製混成。第5第7世代。第8.5世代、第9世代少数騎。第4世代予備役機)

 

 G-1ベース:122両

 

 戦車:18,000両(第3~4世代)

 

 装甲戦闘車両:39,000両

 

 自走砲・野戦砲:26,000門

 

 航空母艦:15隻

 

 主力水上艦艇:320隻

 

 揚陸艦艇:500隻

 

 潜水艦:125隻

 

 他補給艦・支援艦・ミサイル艇・哨戒艇・掃海艦艇等:380隻

 

 各種兵員輸送車等作戦車両多数

 

 

 日本とブリタニアの二大巨人と、自分自身の力とを合わせて増大に増大したAEU軍。とにかく恐ろしいほどに増産スピードが速かった。

 

 これには南天が本格的に動き出したことと、南天の加速度的な軍備拡大が関係していた。この目で見てきたが恐るべき軍拡の3年だった。それが出来てしまう日本・ブリタニア・南天を心底恐ろしく感じたが。南天はたった2年で空母を8隻就役させ、まだ増産中。

 

 日本は2年半で同数の130,000t級空母と戦艦信濃、戦艦尾張を就役させてみせた。これに追随してブリタニアが空母10隻、明らかに大和タイプを意識したであろうペンドラゴン型を4隻同時就役させてみせた。

 

 更に日本・ブリタニアは片手間でユーロ・ブリタニア軍ことAEU軍にまで軍拡の波をもたらし、AEUの戦力が一気に増えていった。この時ほど大日本帝国、神聖ブリタニア帝国、南天条約機構を恐ろしいと感じた事は無かった。なにせやつらにとってはそれで八割の力なのだから……。

 

 元より同世代の兵器でさえこちらの世界の兵器の方が強いのだ。こちらの第5世代騎はゲート向こうの第7世代騎に相当し、こちらの第7世代は向こうのラウンズ騎に相当する。こちらの9世代機などもはや向こうで相当する騎が無い。

 

 これだけの軍があれば通常戦力だけでも欧州を取れるだろう。欧州から始まり、アフリカ、シベリアと。

 

「リッベントロップくん。ヴェランスは?」

 

「まだ日本にご滞在中です」

 

「ふむ。向こうの世界のブリタニアの姫君と皇子殿は?」

 

「同じく日本にご滞在中です」

 

「ふ~む」

 

 どうするか。ゲートの向こうは出る場所が神根島近海。現在は向こうの世界のブリタニアの領土だ。無論向こうのブリタニア軍など質と数で蹴散らせば良いだけ。

 

 だが、穏健に事が運び、向こうとも平和裏という名の砲艦外交の下に接触した物を、態々荒立てて余計な戦争をする必要も無い。

 

 要は今のジーン・スマイラスとかいう者が実権を握る欧州を解放し、向こうの欧州の地でも王政復古をさせ、これにより生じる副次的利益が得られれば良いのだ。

 

「スマイラスは紛い物かね?」

 

「こちらのスマイラス議員であれば箸にも棒にもかからない男と行った印象ですが、向こうのスマイラスは、情報が正しければ紛い物です。まあ向こうのユーフェミア殿下とシュナイゼル殿下に聞き取りをしていないのでなんとも」

 

「そうか……」

 

 やはり我慢がならんな。無能が支配する欧州が向こうの世界に存在しているというのは。そんなものが存在し続けるくらいならばいっそ消し飛ばしてしまった方が。

 

 いや、いかんな。それで謹慎処分を食らったのであった。ベルヒスガーデンの空気はとても美味しかったが。たまには都会を離れてみるのも良いものだ。

 

「確か日本人も向こうの世界の欧州では植民地人扱いされておると聞いたが、日本はどういう態度なのかね」

 

 にやっと笑うリッベントロップ。

 

「現時点では枢木内閣発表として――誠に遺憾と」

 

 これを聞いたヒトラーも笑う。

 

 遺憾という言葉には日本政府の発表として幾つかの段階がある。

 

 大きく分けるなら。

 

 遺憾である。

 

 誠に遺憾である。

 

 そして極めて遺憾である。

 

 この極めて遺憾まで行くと、日本人は戦闘民族状態と成り、一気に戦争状態へと突入していくのだ。そしてこの世界で極めて遺憾まで行ったのは過去4回。歴史の記録で残っている限りでは。

 

 日中戦争、日欧戦争、日ブ太平洋戦争、そして今は平時に戻ったがつい1年と少しまでの南天との北南世界大戦いった競り合い。この時の日本の超大軍拡と最終戦争移行体制は物凄かった。

 

 同様のことはブリタニアでも起きていたが、第二次シベリア戦争もその一環として数えられているらしく。第二次シベリア戦争それ自体が日ブ対南天の代理戦争に数えられるほどのものだったのだ。

 

 過去を振り返るならば、日中戦争では中華連邦は海軍をまるごと消し飛ばされた。日欧戦争では腐れ欧州の陸軍が消滅の憂き目に遭った。日ブ太平洋戦争では両国が消滅する寸前までいった。

 

 極めて遺憾とはそれほどに恐ろしい意味を持つのだ。一度戦闘民族化した日本人はこと戦闘分野では止まらなくなる。それが現時点で誠に遺憾。

 

「ふ、ふふふ、誠に遺憾か。日本人共も腹に据えかねておるようだな。では当然こちらの世界のブリタニアも怒っているわけとなるわけか。あの二国は家族的な繋がりがあるからな。83,4年ほど前に大喧嘩しているが。当時の記録を見たこともあるが両国共に化け物共だよ」

 

「それを言うと我が国も当時日本と戦っていたわけで」

 

「はっはっは、我々もまた化け物か。丁度良いのでは無いかね? 化け物が三匹揃っているのだ。また三勢力合同でE.U.を解放するというのも」

 

「しかしながら腐り果てた人心を改善させるのも難しいかと」

 

「そこは父祖の地奪還を目指す向こうのユーロ・ブリタニアがやるべきことではないのかね。少なくとも我々は成し遂げたぞ」

 

「それはヒトラー閣下とヴェランス皇帝陛下、お二人の人心掌握術の相乗効果のたまものかと」

 

 そこでヒトラーは下を向く。何の変哲も無い執務机には欧州の地図が貼り付けられていた。自分たちの巨大な領土の地図が。

 

 南は中央アフリカ以北。西はマグレブ、ポルトガル。北はロシア・フィンランドの北極圏。東は極東シベリアまで。

 

「そうか、向こうには私はおらんのか」

 

 そうなるとこの地図の全てを回収するのは。

 

「ですが良い情報もあります」

 

「なにかね」

 

「向こうのユーロ・ブリタニアは極東から攻め入ったようなのですが」

 

 すでにバルカン半島に達しています。

 

 その言葉に宰相の目はギラついた。

 

「向こうの世界のお姫様と皇子様、それと嶋田前首相、シュナイゼル宰相と会談を開きたい。場合によっては北側諸国会議も開催したい。当然私が出席する」

 

 

(どんな傾向かを知りたいのもありまして

  • ミリシアル好き
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  • グラ・バルカス好き
  • グラ・バルカス嫌い
  • ロウリアは徹底的にやっちまうべき
  • ロウリアにも救いを
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