砲艦外交の前に   作:休日

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CP:朝田さん×レミール


14砲艦外交以前に蕩け合おう

 

 

 

「んん……っあ、ああッ! ふ……うう……」

 

 熱く深く蕩ける愛。どこまでも深く、海よりも深く、それは果てどの無い心地良きひととき。終わる必要性も感じない、永遠にこのまま蕩け合っていたいと思う。

 

「んっ……、あっ……たい、じっ、あんんっ……わた、し、ッ」

 

 終わらなくていい。終わらないでほしい。そう思えるこの愛しき一瞬。一瞬だから愛おしいのか? 終わりがあるから愛おしさが募るのか? その答えは永遠に分からない。

 

「レミール皇女……、愛しております……レミール皇女……っ」

 

 男──朝田泰司は愛を謳い。無駄な肉の付いていない肉体を以て、そして何よりもその純粋なる心を以て彼女を愛し。

 

 その終わりのあってほしくない時を先導しつつ、終わりへと向かいゆく。

 

 レミールという女をただ愛し、愛するが故に愛し合い。

 

「たい、じッ、愛、してッああ――んん──っ!!」

 

 女──パーパルディア皇国皇族レミールは、朝田泰司の純愛を受け。

 

 最後の時と与り知りつつ、刻の終わりを静かに受け入れる。

 

「くっ――!!」

 

 そう最後まで二人は共にあり共にその果てへと至るのだ。これが終わりと知りながらも。

 

 ああ、だが、幾度目となろうか? 幾度目の終わりなのか? いや、これまでが続きであったのに対しての今の終局だ。終局。なんて嫌な言葉か。

 

 俺はレミール皇女と、私は泰司と。時を忘れてもっともっと愛を紡ぎたいと願うのに。終局という言葉その物は好きだ。レミール皇女と泰司と共に終局を迎える瞬間が心地良く愛おしいから。

 

 だが、最後の瞬間の終局は切ない。募る想いがはち切れそうになる。

 

 長い夜も半分ほどが過ぎた。パーパルディア時刻──皇都エストシラントを基準に合わせられた時計の時刻は夜の2時。草木も眠る丑三つ時。

 

 本当に、本当に長く愛を奏で合わせていたが、時と共にこの秘めやかなひとときを終わらせ。互いの心と体にしっかりと互いを刻み合わせつ、二人は静かに身体を離す。

 

 お互いを抱き合ったまま身体だけは離れた状態。このまま眠るのだ。いつものこと。そう、いつもの……。

 

 ベッドに散らばる長い銀の髪。放射状に散らばる髪は。

 

「ふう、」

 

 息を吐く朝田のその身体にも、そのレミールの膝下まで流れる銀色の長い髪が纏わり付いている。

 

「疲れた、のかっ……、泰司……」

 

「いいえ、レミール皇女を愛する行為に、疲れなど在りません……しかし、まあ、少し一息ついただけです」

 

 愛する行為に疲れなど無い。時が許すのならばもっともっと、何度だって彼女を愛したいさと朝田は思う。

 

 どこまでも蕩け合い、溶け合って、一つになり続けて果てるのだ。愛し合っているのだから求め合わずにはいられないだろう。

 

「これで……、お終い、なのにか?」

 

 これでおしまいなのに一息吐くというのが何だかおかしくて、レミールは小首をかしげる。色気ある大人の女性。二十代後半と三十ほどの朝田自身よりも若干年下のレミールのそんな姿がとても愛おしく、可愛らしい。

 

「何事にも終わりはあるものです。まあ、私個人の意見としては、レミール皇女との愛しい時間に終わりなど在って欲しくはないのですが。もし可能であるのならば一日中だって貴女と愛し合っていたいですよレミール皇女」

 

 明日、仕事が無ければ、このまま彼女と更なる深みへ潜り込むだろう。どこまでも、いつまでも。そうなれば止まらない。終わらない。そんなことは彼女自身が一番よく知っている。

 

 朝田は自身の身体に纏わり付いている美しい銀糸を指でなぞる。月明かりに輝いて更に美しい。

 

「私もだ、泰司……私も終わりたくないぞ……だが、明日を考えるのならば、終わらねばならぬのだな。切なきものよな」

 

 かつては巻き髪にしていたレミールの髪。今は真っ直ぐに伸ばされているのはそちらの方が綺麗だという朝田の言葉と、現代日本の公館で巻き髪をしている女性は少ないんじゃないかなあ、という、彼の個人的アドバイスによるもの。

 

 統計を取っていないので分からないのだがそのアドバイスを受け、レミールはロールヘアーから直毛に変えたのだ。そうしたらそうしたで今度は髪が膝下にまで届いてしまい、長すぎて手入れに困ったものだが、朝田がお手伝いしますと朝出かけるときにセットの手伝いをするようになったのである。

 

 レミールはもちろん嫌がっていない。快く受け入れている。ある人が言った。レミールよりもまだ長い髪の、身の丈よりも長い髪の持ち主である神聖ブリタニア帝国のローゼンクロイツ伯爵家の五女、シンクは。

 

『女が髪を触らせるのは、それだけその相手を信頼し、愛していることの証明』

 

 そう告げ、彼女の手を取る、大日本帝国枢木内閣外務大臣、麻生良太郎に他には見せない微笑みを見せていた。

 

 レミールは朝田泰司という男を心から愛している。だからこそ、彼に自身の髪に触れて貰い、髪の手入れを手伝って貰うのだ。件の伯爵家の五女が仰るように。

 

 その銀色に輝く美しい髪はいま、汗に濡れていた。いつも頭に戴いている金のサークレットは外され、棚の上に置かれていた。レミールと朝田はいつも静かなに、そして長く時間を掛けて深く愛し合うことを基本としている。

 

 時間を掛けてじっくりと愛を交わしたいのだ。そのさなかに置いてレミールの美しくも長い銀髪は乱れる。乱れた髪は吹き出す汗によって彼女の肌に張り付くが、朝田の肌にも張り付く。それだけ長いから。

 

 そしてそれは、愛の時間の長さと幾度もの愛の時を過ごした証、濡れた銀糸はぺったりと朝田の肌に張り付いている。

 

 だが、気持ち悪くは無い。とても良い感触で、とても香しい匂いがして、ずっとこのままにしていても良いくらいだと彼は思う。

 

 

 

 

 

 砲艦外交以前に蕩け合う

 

 

 

 

 

 いつまでもこのまま静かな二人だけの時をレミールと過ごしたいと思う朝田は、彼女の唇に優しい口付けを贈った。

 

「ん――」

 

 軽く優しい口付けながらも、熱いベーゼでもある想いを込めたもの。少し啄み合う唇、口付けを受け取ってくれるレミールの心が良く分かる。伊達にそれなりの時を彼女と過ごしてきたわけじゃない。

 

 1年と少しの間共にいて、共に暮らし、お互いを好き合うようになったのはいつ頃からだろうか。

 

 意識していたが言い出せなかった。どちらもが。それはこの艦での部屋割りにも直結することで。

 

 ここは浮遊航空艦デュロの艦内。型は古いが立派な空飛ぶ戦艦。全長191mと大きな艦内部屋は幾つもあるが、朝田とレミールが相談し、艦内の日本人乗組員とも話し合って決めた二人の部屋だ。

 

 朝田と、レミール。別々の部屋の方が本来ならば正当だろう。

 

 なにせ二人は共に外交官という身で、国は違えど同僚ではあるが、朝田は日本人の平民。

 

 一方のレミールはパーパルディア皇国の皇族。

 

 前述の意こそがこれ、身分の差というものが横たわっている。

 

 如何にパーパルディア皇国が北側諸国の中では“超”の付く弱小国家であっても、小国シーランド王国以下の弱小国家であってもそこはそれ。北側諸国という緩やかにして強固なる国家連合は加盟国間で大きな差別をしない。

 

 一部かつてのパーパルディア皇国の所業を知っている国からは少々蔑視的に見られることはあっても、自分たちもまた歴史上に於いてその様な行為を一度たりともしたことが無かった訳では無いと、自国を見つめ直し、パーパルディア皇国は北側諸国に受け入れられた。

 

 と言いつつ、まだオブザーバー加盟の段階で有り、議決権は無い。本来ならば。

 

 だが、パーパルディア皇国には特別に一票が与えられている。理由としては、この惑星の現在北側が積極的に交流を持とうとして行っている第三文明圏の大国だからだ。

 

 良くも悪くも顔役として、また防波堤としても使えるとのことで大きな大きな一票という票を与えられたのだ。ゆえにパーパルディア皇国の責任は重大。

 

 以前のような覇権主義は破棄し、地域の平和と発展のために北側諸国と協力していかなければならないのだ。

 

 パーパルディア皇国を砲艦外交という名の武力で押さえつけた上で、平和的に議決権を与える鞭と飴の使い分け。一つの罠とも言えよう。皇国のこれ以上の拡大は出来なくなってしまったわけだから。

 

 無論、そのような拡大主義者・覇権主義者なる愚者を次代皇帝や重役に選んでいたならば、パーパルディア皇国と最も近い北側諸国である大日本帝国とシーランド王国によって地域に害成す国として滅ぼされていただろう。

 

 とにもかくにも、朝田泰司は平民でレミールはパーパルディア皇国皇族・皇女であるという身分差があり、本来同室はあり得てはならないのだ。

 

 だが、日本人乗組員に『朝田さんとレミール皇女には今後の日パの未来のこともありますので』と、押し込められるように同室にされた。

 

 これには私的に二人の仲を応援してあげようという意味と平行して政治的意味が隠れている。

 

 それは日本の外務省の無役職員の平民がパーパルディア皇国という、この惑星の、この文明圏での大国の皇族と結婚し子を成すことで得られる大きな発言権だ。

 

 この地域だけでも充分に広い上に、パーパルディア皇国自体も7000万人と小粒ながら第三文明圏では秀でた人口数を誇り、そこには市場もある。これが外務省の無役の平民と彼の国の皇女が結婚するだけのことでまるごと手に入る。北側というより日本の政略結婚的な外交戦略なのだ。

 

 最も、本人たちが好き合っていることが条件としてあった。夢幻会も日本政府も鬼じゃ無い。なによりも上帝陛下と御帝がそれを良しとはしないだろう。つまり現代になって本気で政略結婚などさせようとは誰も考えていない。だからこの二人なのだ。朝田泰司とレミール皇女は恋人同士。ならば丁度良いじゃないか乗っかってしまえという寸法だった。

 

 無論政略的婚姻について例外も存在する。神聖ブリタニア帝国第一皇子にして皇太子──オデュッセウス・ウ・ブリタニアと、大日本帝国第八皇女──皇神楽耶の婚約は政略的に進められた。こちらもまあ、交流を重ねていくうちに本人たちが恋人関係になったので、結果良しと言う形だが。

 

 大日本帝国と神聖ブリタニア帝国は元をたどれば超古代文明国として同じ国へと行きつく。対南天対策のこともあり、将来的な二国二制度の連合国家化を目指している節が端々に見られるのだ。

 

 あるべきものが、あるべきところへと帰る。ただそれだけのことだとして。それはともかく朝田泰司とレミールについてだ。二人の婚姻とレミールが朝田の子を産むことについて。

 

 これにはパーパルディア皇国側の法律なども当然として関係してくるが、パーパルディア皇国新皇帝はこの二人を例外として皇族と平民ながら婚姻を認めるというお触れを出す予定だった。法をいじれるならそれまでに法の方をいじってしまおうとも考えていた。

 

 パーパルディア皇国としても日本人を皇室に迎え、列強など遙かに超える超大国大日本帝国の臣民の血を皇族に入れることで、日本との国際関係を盤石なものとしたいという意思がある。

 

 もちろん肝心の日本人側が平民では知れていると考える皇族や貴族も居ようが『パーパルディア皇国の皇室には日本人の血が入っているんだってね』この言葉の意味の大きさは、後々になって大きく影響を及ぼしてくると新皇帝は見ていた。

 

 特にレミール皇女が朝田泰司の子を産むことはそれ自体がパーパルディア皇国に大きな恩恵もたらすのだ。『パーパルディア皇国の皇室には日本人の子が居る』これは日本の臣民との絆を考えた上で、とても無視できない経済効果と日本との関係強化を生み出すのだ。

 

 何せ4億2千万という超巨大市場。パーパルディアの6倍の前代未聞の市場。棚から牡丹餅である。

 

 おかしな話しだが、本来は皇族が相手国の皇族の子を産んで貰うことには意義があるが、この場合、パーパルディア皇国皇族であるレミール皇女に、日本の平民・朝田泰司の子を産んで貰わなければならないという、不可思議な状況になっていた。

 

 いずれにせよ日本にとってはこの状況使えたら良いな程度だが、パーパルディア皇国側からしてみれば絶対に掴まなければならないチャンスなのだ。

 

 本当に、本当に、幸いとしか言えないのは二人が恋人同士で好き合っており、すでに身体の関係も持っていること。平民が以前に皇族を抱き抱かれ、抱き合ったのだから、もう後戻りは出来ない状況が仕上がっていること。

 

 別に誰かが二人の身辺を探っていたわけではない。二人にもプライベートがあるのだ。

 

 だが、ご近所さん的な会話はすごいもので、二人の住む朝田泰司のマンションでも普通に恋人同士と見られる行動を取っているところを見られている。

 

 街角のカメラにも写っている。

 

 パーパルディア皇国大使館内でも普通に話題になっている。

 

『レミール皇女と朝田さんははっきりと、“子供が欲しいですね”“そ、そうだな”と申されているようですよ』

 

 そんな会話をしておりましたという諜報部の話しも上がってきている。

 

 つまりもう恋人関係にして子作りを考えているくらいに、それが二人の普通という枠にまで落とし込まれてしまうくらい、色んな場所で見聞きされていたわけだ。

 

 積み上げられた既成事実の数々。知らぬは本人ばかりなり。

 

 そういうことで朝田とレミールの部屋は同室で良い。今更だろうと乗り組み員に決められたのだ。

 

 

 ※

 

 

「皇国まであと7時間ほどか」

 

「この星広いですからね」

 

 朝田とレミールは抱き合ったままシーツを被り、眠りに入ろうとしていた。

 

 窓の外には星が流れていく。月も出ていて月明かりが綺麗だ。

 

「地球は小さかったのか?」

 

 レミールが問う。地球という見知らぬ星について。

 

「小さくは無いですけどこの惑星に比べると。この惑星は直径が地球の2.5倍。表面積に於いては6.3倍もある巨大な物でして。既に衛星は100基以上打ち上げており宙からの探索は済んでいるのですが」

 

「地上の探索はまだまだという訳か」

 

「ええ、大東洋の更に向こうや、ムー大陸の逆側にも陸地は有り、国や集落もあるでしょう」

 

「私たち外交官の出番というわけだな」

 

「そうなります」

 

 流れていく星空を見つめながらレミールが呟く。

 

「北側諸国は地球では常に緊張状態に置かれていたのか? その、軍備が凄すぎてな。別冊宝大陸2023年度各国軍事力表という本を読んだのだが。日本はあの鳳凰級・大鳳級巨大空母を100,000t~130,000t超え空母を24隻、ブリタニアに至っては100,000t超えの空母を36隻保有しているそうではないか。AEUでも100,000t級の空母を15隻。他の国も強力な戦力を保有しておる。地球は戦争前夜だったのか?」

 

 戦艦大和型は160,000tそんなものを日本は4隻まだ増産中だったとも言われる。ブリタニアもペンドラゴン型を8隻保有。AEUもグロイスドイッチェラント型を4隻。他の国もやはり戦艦・空母を多数。

 

 戦闘機や戦車・KMFに浮遊航空艦、通常艦艇も尋常な数では無い。日本の計画中のまで合わせた大型浮遊航空艦の数は500隻を超えている。小型可翔艦まで合わせれば1,000隻を余裕で超えている。その性能も旧式と最新式で雲泥の差があり、世代更新が恐ろしく早い。KMFも北側諸国全てを合わせれば100,000騎近くあるのではないだろうか。

 

「常――とは言いませんが、ここ5年ほどの間は。正確にはここ10年になるのでしょうか。我々北側諸国と対立していた国々のことはレミール皇女ももう御存じでしょう」

 

「南側諸国――南天条約機構だな」

 

「はい。その南天が大軍拡を始めたばかりか、北半球への侵略を始めたのです」

「北半球への侵略? しかし北半球全てが北側諸国に加盟していたわけでも無かろう。色分けされた地図も見たがアジアという地域がすっぽりと抜けておった。あとはE.U.という地域が」

 

 そうだ。北側諸国とは現在でこそそのE.U.、もとい元E.U.、現在のAEUも入っているが、いずれにせよ中東からアジアは抜けていた。

 

「ええ、その抜けていた地域への侵略を始めたのです。南天に抗せるのは日本・ブリタニアだけ。これは世界の常識でしてね。実際に生産力・軍事力・経済力・GDPで見ても南天は日本・ブリタニアの次にくるのですよ。総兵力では世界一位でしてね“死兵”といって、神に命を捧げるための戦闘マシーンが8000万もいるのです」

 

「……ぞっとするな」

 

 死を恐れぬ8000万の兵が最新式の兵器で身を固めて攻めてくるのだ。地獄の蓋が開いたとしか思えない。

 

「その南天が2~3年で30個空母戦闘群体勢を創り上げまして、まだ増産に入っているのを見て。これは本格的な北半球への侵略を始めようとしていると事態を重く見た北側諸国は大軍拡に入ったのです。そして立て続けに起きた第二次シベリア戦争、日本による高麗・清国侵攻、南天の中華・ジルクスタン同時侵攻、日本・ブリタニアの中華出兵とジルクスタンでの日・ブ・南激突。この世界大戦によって荒廃した中華連邦とジルクスタンの復興。南天側も中東まで引きそこを停戦ラインとして緊張状態が続いていた中」

 

「我々の惑星への北側諸国大転移が起きた」

 

「そういうことです」

 

 レミールは思い出す。自宅、つまり朝田の家の自分の部屋に置いてある別冊宝大陸2023の内容を。

 

 北南世界大戦が起きれば世界は10回以上滅びるという一説を。

 

「泰司……」

 

「なんです?」

 

「我々の世界にも恐怖の国としておとぎ話に語られる古の魔法帝国の話があるが、その魔法帝国と南天条約機構ではどちらが危険か?」

 

 少し溜めを置く朝田。彼ももう一年と少しの間この世界に身を置いている。この大きな惑星に。

 

 古の魔法帝国のことも調べた。どれ程の物かというものも分析した。各国の演算装置が割り出した答えの中にはこの古の魔法帝国の復活についても触れられており。

 

 復活したらまず多種族と友好関係を築き、平和的に発展を目指すかと問い掛け、NOという返事が出た場合、F号兵器で大陸ごと消し飛ばす算段が立てられていた。

 

 そして、もしも南天諸国が転移してきたら? 彼らの行動を見て慎重に事を運ぶ算段が立てられている。南天を刺激するのは危険すぎるからだ。

 

「まず種族的危険度で言えば魔法帝国です。全ての種族を奴隷にしていたという点を鑑みても。ですが、同時に思想的危険度で言えば南天が上です。南天には教化か浄化の二択しか無いのです。唯一神を崇め奉るか?それとも浄化=死刑か」

 

「魔法帝国並みに危険では無いか!!」

 

「ええ、まあある意味ではそうかも知れません。そして、軍事的危険度で言えば―――南天条約機構の方が圧倒的に危険です。彼らはこの巨大な惑星でも5回以上は滅ぼせる力を持っております。最低ラインで」

 

 北側のF号兵器は日本ブリタニアでそれぞれ100,000発はある。現時点ならばAEUも1,000発は保有しているだろう。

 

「まず日本のF号兵器は半径300㎞、最大出力で350㎞の範囲を消滅させられます、ブリタニアは半径300㎞。AEUは半径200㎞――南天の物は半径200㎞」

 

「な、なんだ、出力は日本よりも低――」

 

「但し、保有数は推定50,000発です」

 

「……ッッ!!」

 

「分かりますか? 直径400㎞の円形範囲を消滅させられる兵器が50,000発です。この巨大な星でさえ滅ぼして余りある力なのです」

 

 レミールは言葉を失う。たった50~100で大陸まるごと消滅させてしまう兵器を50,000発も持った狂信者の国。

 

 死をもいとわず向かってくる8000万の死兵。多種多様な北側諸国と同等の兵器群。そして世界を滅ぼすF号兵器。

 

「南天は魔法帝国を滅ぼすのに1,000分1の力で滅ぼせるわけだな……」

 

 震えるレミールを少し強めに抱き締めた朝田は優しく話す。

 

「想定の話ですから意味はありません。演算装置の結果でも転移してくるのは取り残されている中華連邦とジルクスタンです。南天ではありません。魔法帝国は話の通じない相手ならば大陸ごと消し飛ばします。空間ごと消滅させるF号兵器にはシールドの類いも役に立ちませんからね」

 

 いずれにせよ、全ては事が起こってからでないと手の打ちようがない。万全の準備はするが。

 

 願わくば南天条約機構がこの惑星に転移してこないことを祈る。朝田とレミール、思うことは同じであった。

 

 

 

 

(どんな傾向かを知りたいのもありまして

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  • グラ・バルカス嫌い
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  • ロウリアにも救いを
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