「しかし早いな。我が浮遊航空艦デュロは。昨日戦地に居たかと思えばもうすぐエストシラントだ」
戦地からそれほど離れていないとはいえ、そこはこの巨大な惑星、分類スーパーアースの表面距離を考えるのなら、かなりの距離となろう。
なにせ表面積が軽く地球の6倍以上となる巨大惑星なのだ。地球の常識で考える方がおかしくなってしまう。
しかし、それはこの星の住人にとっても例外ではないようで、パーパルディア皇国皇族レミール皇女は、浮遊航空艦デュロの早さに驚いていた。
だが、朝田からしてみれば。とろい。眠たくなるほどにとろい。おかげで一昼夜を明かし、レミールと行く度も愛し合えたほどにとろかった。
レミール皇女とあれほどに熱く深く、静かしめやかな、愛と愛を深く紡ぎ合えたのは僥倖ながら、とろいものはとろい。巡航速度の450㎞で進んでいるからとろすぎて欠伸が出る。
「レミール皇女、貴女はまだお勉強が足りていない御様子ですね。辻閣下の座上だった斑鳩級浮遊航空艦‟亭子”と比較してご覧に入れましょうか?」
後ろから急にレミールへと声をかける朝田。手にはハンドブックを持っている。
「な、なんだ泰司いきなり急に。驚くではないか」
スペックの比較表を見せられるレミール。まず「……」となり、最後は呆然としていた。
「よ、良いのか泰司。このような軍事機密を友好国とは言え他国の皇女に漏らす等、後で何か仕置きでもあるのではないのか?!」
突然の諸元表の閲覧に第一に身を案じたのは朝田の事。どれだけ朝田を愛しているかの証明でもある。朝田の身に何かあっては自分は生きてはいけないという。
朝田はそのレミールの気持ちに嬉しくなる。彼女は、レミール皇女はスペックに驚く以上に自分のことを心配し、身を案じてくれた。
泰司っと感極まって朝田に抱き着くレミール皇女。ここはブリッジ他の艦橋要員もいる。
恋人のいない男などはそれだけで、「部屋でやってろよテメーラァァっ、こちとら女イネーんだよぉぉぉっ!!」と涙を流して口に出して言う程だ。
格下の国とは言え仮にもパーパルディア皇国皇族レミール皇女に向かってである。昔のレミール皇女なら銃殺刑だっただろう。
まあ、それ以前に大日本帝国の臣民に手など出せよう筈も無いが。が、無理もない。レミールほどの美女と抱き合う朝田に嫉妬するのもむべかるかな。持たぬ男のひがみである。
「レミール皇女大丈夫ですよ。これは皇女が良くお読みの別冊宝大陸の詳細版の本です。つまり誰でも観れるんです、子供でも」
そういってレミールの膝下にまで届く長い銀色の美しく艶やかな髪を、優しく優しく撫でて安心させる朝田。
さり気なくレミールの腰に手を回し自分の方へと引っ張りながら、身体同士でくっつき、抱き合う格好となって居る。
レミールはパーパルディア皇国皇族。朝田は日本の一平民。身分の差が違い過ぎる二人がこうして甘い合えるのも、特例として二人の婚姻が認められているから。
本来ならば言葉を交わすことも不可能な二人。あの日、北側諸国の折衝としてパーパルディア皇国を朝田が訪れなければ生まれなかっただろう縁。
その縁をこよなく大切にし、レミール皇女と朝田は朝からのブリッジに関わらず、「んっ、ちゅ」キスをし愛し合うのだ。
ブリッジ員は総出で思った。「そんなに愛し合いたければテメーラの部屋あるんだから部屋いけや部屋」と。
砲艦外交の前に諸元表の違いを見てください
軽斑鳩級浮遊航空艦 デュロ
使用国:パーパルディア皇国
全長:191m
時速巡航:450㎞
最高速度:1000㎞
ブースター装着時:マッハ2~3
乗員:230名
充足時:340名
フレイヤ炉搭載
航続距離:∞
兵装:単装砲(リニア砲)5門
:ミサイル発射機2基搭載
:スラッシュハーケン(近接用武装)
:ブレイズルミナス
斑鳩級浮遊航空艦亭子(休日版)
全長:236m
全幅:72m
全高:36m
速力:巡航速度1,200㎞
:最高速度2,800㎞
実用上昇限度:42,000m
兵装:ハドロン重砲4門
:単装リニア砲7門
:大型リニア砲2門
:32連装ミサイル発射機3基
:スラッシュハーケン4基
動力:フレイヤ炉
航続距離:∞
特殊武装:ブレイズルミナス(強化発展型)
「ん──……」
銀色の糸、口付けの証である唾液がレミールと朝田の間を繋いでいる。
「この、兵装のハドロン重砲というのは荷電粒子砲であったな。通常のハドロン砲と重砲ではどのくらい異なる?」
「赤ん坊と大人くらい威力の差が違いますね。ブレイズルミナスの強化型も。デュロの薄い膜とは違い、角度にもよりますが同じハドロン砲でも防ぎます余裕で」
「恐ろしいな。この速力にしてもそうだ。この巨体でマッハ2.5、実用上昇限度42,000mなど想像もつかぬ」
「ブースターつけてなくてこれですからね……、ちなみに30,000m付近にまで上昇すれば周囲は暗くなり、惑星が丸くなっていることが分かりますよ」
そういえばこの世界は丸いのであったと思いだすレミール。とても信じられぬが幾つもの衛星写真、地球の歴史なる本を見。惑星について学びようやく理解した。
その丸くなっている場所まで上昇することが出来る。とても魅惑的な話だ。
「ま、真か……、うむ、私も見て観たいが、このデュロでは」
デュロの実用上昇限度はそこまで高くない20,000m行けるかどうかの瀬戸際だ。だが、それを朝田は解決した。
「こちらもブースターを付ければ高度30,000m行けますよ。スピードも無駄に早くなりマッハ2にはなりますが、このデュロでも成層圏の高くまでいけます。そこまで上がればこの星が丸くなっていることが目で見えます」
これを聞いてレミールの中にワクワクとした冒険心が生まれた。彼女は男ではなく女、それも見目麗しいパーパルディア皇国皇女なのだ。だが、一人の人間でもある。冒険者的な気持ちを持つこともある。行ってみたことの無いまだ見ぬ景色という物に、人間は未知にあこがれるのだ。
この仕事が終われば密かにいってみようと思うレミール。デュロは自分預かりの艦。多少は自由に使っても良いのではないかと。日本の艦なら増幅器無しでも行けるという未知なる異空間。
その異空間で泰司と二人寄り添い、愛を交わし合いたい。愛し、愛され、泰司の全てをこの身の奥にまで受けたい。素敵なる空間での愛し合いはきっといつもと異なる何かを私と泰司にもたらすはず。
泰司はきっと了解してくれるだろう。私用に使うのは反対とも言いながら、ならば任務で使っても良い。ムー大陸などに飛来する機会があれば増幅器を使う事もあろう。なにムー大陸、第二文明圏はパーパルディア皇国のある第三文明圏からはるか遠くにあるのだから。
そのとき、私と泰司は、星を見下ろし、丸い星を眺めながらの、睦み合いに興じるのだ。それはさぞかし。心に刻まれん。ああ、新しい愛の一ページ、泰司、レミールは泰司を愛しているのだ。
(どんな傾向かを知りたいのもありまして
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ロウリアは徹底的にやっちまうべき
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ロウリアにも救いを