:オデュッセウス・ウ・ブリタニア×皇神楽耶
:朝田泰司×レミール
微エロ
玉城はその暇を持て余していた。いや、ここに(グリンダ騎士団)に放り込まれてからずっと暇なのだ。
ネット競馬をしようとすれば誰かに端末を取り上げられ。
持ち込んだエロ本(年上巨乳本)を見ようとしたら団長権限で取り上げられ。
パチンコも無ければスロも無い、競技KMFも地上に行かなければどうしようもない。端末取り上げられてるから。女はいるが年下ばっかで好みが合わず。一切手を出さないため、これでも一応男ながら玉城は変態の目で見られたことが無いのだ。意外にも。
故にこれは意外だが第8.75世代機を乗りこなし、顎髭を蓄えて髪を逆立てバンダナで決めた、総団長やナイトオブナイツにすら引かずに物を言う彼は、リドールナイツの女性の一部にモテたりしている。年下には一切興味が無い本人は全く気付いてないが。
そこがさらにクールに映り、リドールナイツにはひっそり玉城真一郎ファンクラブがあったりするほど。
更にそういったリドールナイツの隊員は大方が総団長に呼び出され『兄さまに手を付けたら』と脅迫、もとい、教育されるので玉城に色恋の話は持ち上がっていない。
そこには年下に興味が無いという女性の好みが関係しているのだが、それはそれで困るのが今や13艦37,000人体制となった対テロ即応部隊と言うよりも、限りなく軍に近い規模を誇るグリンダ騎士団。
それというのも第7世代改良型のヴィンセント・グリンダを地上部隊に1,000騎も配備され30,000弱の兵士まで配備され。上空には13艦という浮遊航空艦うち2艦はアヴァロン級(総旗艦二代目ネッサローズと副旗艦二代目グランベリー)と第8世代旧ラウンズ機クラスの機体が200騎、一部は8.5世代機ことエナジーウィング機も配備されるという大規模な軍。最早一即応テロ部隊が持つにしては余りある戦力。
この為、対テロ即応部隊から対テロ即応軍へと昇格しようとしているグリンダ騎士団だが、リドールナイツという総団長の親衛隊は全て女なのだが、これまた全て年下。
と言うわけで、玉城は女にも遊びにもエッチにも飢えていた。そんななか、ネッサローズのブリッジで適当に椅子に座り、足を組んでいたところ。通信が入ったのだ。もちろん映像通信。
玉城は「ふぁ~あ」とあくびをしながらその通信画面を無視していたのだが。
『相変わらずの不貞不貞しさ振りですねタマキ・シンイチロウ』
声を聞いた瞬間ビクンと反応して画面を見る。肩下までの銀髪。全体的に紫色の衣服を身に纏い、大きな羽根飾りを髪に結った女性、神聖ブリタニア帝国第二皇女ギネヴィア・ド・ブリタニアが映し出されていた。
「お、お姉様ぁ~!」
黄色い声を出す玉城真一郎。コーネリア同様、玉城の好みにド直球な女性のいきなりな出現に、気分は上げ上げである。だが。
『わたくしを好いてくれるのは嬉しからぬこともありませんが、私は婚約が決まっております。やがてブリテン島へと嫁入りとなる為にあなたの思いには生涯答えられないと申し上げておきましょう』
ギネヴィアは別に玉城を好きでは無い。だが嫌ってもいない。自分の事を好いてくれる人間を嫌いになるような冷たい女性では無いのだ。だが、残念ながら彼女には既に婚約者が居り、新しく、正式には返ってきたというべきだろう、ブリタニアの領土となったブリテン島を治めなければならない。自身が治めるためにブリテンの王を王配として迎えることが決定している。
これは政治的な話しで有り個人の意思は尊重されないため、致し方の無い部分があった。ギネヴィア個人の玉城への評価としては身分を気にしない態度を取る、無礼ながらも、芯の強い人間だ。けして悪印象は持っていない。
これはコーネリアもそうだが別にコーネリアも玉城を嫌ってはいないのだ。寧ろ無骨者な自分を好いてくれる男と評価し、好感を持っている。ただし、それは玉城という人間に対してであって、恋愛感情は自身の騎士であるギルフォードに向いている。相思相愛なのだから玉城如きがつけいる隙など無いのだ。
「なあ、ギネヴィア皇女よお、その結婚って政略結婚なんだろ? 今時ブリタニアも日本も政略結婚はほとんどねーのになんでそんなことやってんだよ。別に良いじゃん自由恋愛でさぁ」
そうすりゃ自分にも芽が生まれるとでも考えているのだろうとギネヴィアにはお見通しだったが。
『そういう訳にも参らないのです。ブリテンの地は我がブリタニアの父祖の地。特別なる土地なのです。故に私自身が女王となり皇帝である父を仰ぎ治めなければならない。ユーロ・ブリタニアがAEUという一つの形を取っていても、それぞれに国を治めていることと同義です』
AEUには数多くの王制国家が存在する。それぞれが父祖の地としてその地を治め、それでありつつ、皇帝及び宰相のハイランドとヒトラーを仰いでいることと同じなのだ。
「ちッ、結局はあんたら地位に縛られてるって訳かよ」
ふてくされる玉城に、ギネヴィアはやんわりと返す。
『そういう部分がなきにしもあらずということです。我々皇族や貴族に自由恋愛は認められておりませんので。もちろん、一部例外もありますが。それでも第11皇子ルルーシュはアッシュフォード公爵家と縁を深めんが為に幼き頃よりご息女ミレイ殿と婚約が決まっていたように、それぞれ政治的な意味を持つ婚姻が多いのです。近く認められた婚姻で言えば、ナナリーと、日本の枢木家のスザク殿との婚姻は自由恋愛でしたが、やはり政的意味が無くは無いのです。シマダ卿とユフィ、クルシェフスキー卿も自由恋愛の末に婚姻となりました、ヤマモト卿、ヴェルガモン卿も自由恋愛、ナグモ卿とエルンスト卿も自由恋愛、ですがやはり全てに政治的意味があるのです』
「じゃあ結局平民の俺にゃチャンスねーじゃん」
『タマキ、あなたは皇族や貴族と結婚したいのですか? 皇族や貴族になればそれは大きな責任が発生します。今のように自由には生きられなくなるのですよ? 本来はクララ皇兄女との婚姻でさえ責任が発生するのですジ家の人間としての。クララ皇兄女があなたに自由な暮らしを約束している意味をお分かりですか? 全ての責任は自分が負うと言っているのです』
「あのガキ……生意気な奴だぜ高校生のガキの癖して、ガキはガキらしく遊んでろっての」
『タマキはクララ皇兄女のことがお嫌いなのですか』
「別に嫌いじゃねーよ。ただ今まで妹分としてみてきたから今更女として視るのは抵抗感があるって言うか」
『そうですか。ではあなたの後ろでずっと怖い顔を為さっている我が妹にもまだチャンスはあると言うことなのですね』
クスクス笑うギネヴィア。逆に凍り付く玉城。後ろを見てはいけない。今後ろには鬼がいる。たぶんニコニコしているがあれは笑顔の鬼だ。
そう思いふとネッサローズのガラス窓を見た瞬間玉城は悲鳴を上げた。「ひいッ!!」いた。鬼が見ている。背中越しに振り返ってはいけない。振り返らなければ攻撃はされないからだ。
『我が妹にも当然ながら大きな責任が付きまといますが、その責任を平民であるあなたに押し付けようと為してはいないのです。つまりタマキあなたにはクララ皇兄女と我が妹の二人からの求愛を既に受けている。これを不意にするのはそれだけでもある意味で大罪です。あなたの頭の中には一般人の年上の女性でもいいやと浮かび始めていることでしょうけれど、この状況下でその選択肢を選ぶのは悪手としか言えません』
「あ、あ、あのよ、用はそんなんじゃねーだろ。要件はよ要件は」
背中に感じる冷たい視線に耐えられなくなった玉城は、用件を聞き出す。
『ふふ、そうですね我が可愛い妹が本物の鬼となってしまう前に要件を伝えましょう。マリー、シュバルツァー将軍』
「はい、ギネヴィアお姉様、オールハイルブリタニア。お久しぶりです」
「オールハイルブリタニア、ギネヴィア皇女殿下お久しゅう御座います」
お前なんでずっと黙ってやがったんだよと背後のシュバルツァー将軍に対して、筋違いな怒りを向ける玉城は席を立つと、静かに静かに移動を始めた。目的の場所はブリッジの出入り口のドア。
アイツらが話しに夢中になっている間にブリッジから出て隣を飛行中のグランベリーに避難しようという寸法だ。我ながら名案と席を立った瞬間。
カツンッッ!!
ビクッ、ヒールが床を付く音。
「三回までです♪」
『如何したのですかマリー』
「無作法者が逃げようとしている様子なので警告音を少々」
『クスクス、無作法者ですか。それはいけませんね。皇族に対する礼儀に欠けているというよりは、女性に対するなんたるかに欠けている男性には困りものですからね』
「姫様から逃げようなど困った婿殿です」
何で勝手に婿にしてやがんだコイツッッ。く、くそ、あと二回。全速力でダッシュすれば二回以内には扉まで行ける。扉まで行ったら後は俺の愛機に乗って逃げてソキアのところに雲隠れを。
ダッ、走り出した瞬間。カツカツンッ。連続で二回ヒールの音が鳴ったつまり。
「ゼロ……、よほどわたくしを鬼にさせたいご様子ですわね兄さまぁぁぁぁ~~ッ」
口裂け女みたいになったマリーの美人顔。ギネヴィアは画面の向こうから止めること無く見ている。
シュバルツァー将軍は「婿殿お諦め下さい」と念仏を唱え始めた。お前その念仏何処で覚えたんだよ!!
こ、こうなったら取りたくない手段だが肩の骨を折られるよりマシだ。
くるっと振り返った玉城は何をとち狂ったのか、マリーベルの身体を抱き締めた。
「え!? えッ兄さま!?」
当然混乱するマリーベル。逃げようとしても足の速さで逃がさない。そう思いかぎ爪を用意していたところ、逆に振り向かれて抱き締められたのだから、彼女の混乱に歯止めがきくはずも無い。
「いつか(競馬の予想の)返事はする。必ず(競艇の予想の)返事もする。何なら二人の(競技KMF)のことを考えてもいい。一緒にこれから(パチ打つかスロ打つか)を考えようぜ」
ぼそぼそっと高速で言葉と言葉の間にギャンブルの単語を入れていく。その間、背に回した手でマリーベルの髪を五指で梳き、掬い撫で。彼女の髪と背中を愛撫する。
嘘は一切言ってない。ただ言葉と言葉の間に高速でぼそぼそ呟いた。それをマリーが聞き取れなかっただけであって、悪いとしたら、勘違いしたマリーベルが悪いだけだ。
はたして――。
「は、い兄さま、こ、これからのこと、兄さまとのこれから…………わ、わたくしは、わたくしは…………」
マリーベルの手の形がかぎ爪から元に戻って、こちらを抱き締め返してくれた。
「マリーベル俺はキミを(ギャンブルを)愛している」
「に、にい、さま」
「だから、そう怒らないでくれ」
「は、い、に、にいさま」
マリーベルは顔を真っ赤にしてもじもじと指をいじる。玉城は止めに彼女の頬のキスまでして舐め上げた。
この間、シュバルツァー将軍はひ、ひ、ひ、姫様、む、む、婿殿、このような場所で、は、はしたないですぞ。と注意しながらも祝福し。
ブリッジ員の女性スタッフは顔を真っ赤にしていた。リドールナイツの数人の玉城を崇拝している女性達は気落ちし。他の女性達は皆頬を真っ赤にさせて二人の様子を見ていた。
「に、兄さま、わたくしは、わたくしは兄さまを愛しております」
「嬉しいぜ(お前もギャンブルを)愛しているなんて」
この高速ぼそぼそ話術。玉城の得意技だった。彼には誤魔化さなければならない場面が多くあるため身に付けた、誤魔化しの特技なのだ。
ギネヴィアはスピーカーを通しているため音を拾っていたので聞こえていたが敢えて黙っていた。
(マリーベルが気付いたとき、地獄を見るのはあの男自身ですものね、ふふ、タマキ、一時の誤魔化しなんてするものではなくてよ)
砲艦外交の前にVIP方
その後、タマキは逃げた8.75世代機ヴィンセント・カスタム・グリンダ玉城専用機で。直後に気づかれたからだ。何故気付かれたかというと、どうにもいつもの玉城と違うおかしい、態度が決定的におかしいと気付いたマリーベルが、室内スピーカーをヘッドセットで何度も何度も再生してようやく音声データが出てきたのだ。玉城は愛の囁きの合間合間にギャンブルの話しを入れて誤魔化していた。これにはさしものマリーベルもキレた。愛しておりますと告白した分余計にキレた。
兄さま――ッッッ!!!の怒声はネッサローズ中に響き、ことを察した玉城は逃げた。
『流石は我が妹です。一瞬で気付こうとは。しかしこれでは重要事項が伝えられません。それでは代わりにシュバルツァー将軍』
「はッ!」
『貴殿にお伝えしておきましょう』
「イエスユアハイネス!」
「逃げたら殺しますからッッッ!!」
逃げなくても殺すだろと逃げたわけである。ネッサローズからヴィンセント・カスタム・グリンダ玉城専用機が出てきて何事とみていたオズは、続いてエルファバが出撃したのを見て、「ああ、玉城がまた何かやらかしたのね」と、事態の推移を見ていた。
が、最終的に捕まったのはヴィンセント・カスタム・グリンダ玉城専用機だった、悪運は強いが普通の運は無い、このとき、脱出装置も働かなかった。軍学校オールSパイロットであるマリーベルに近距離で適うわけが無いのだ
そして連れ戻されたネッサローズで、玉城はマリーに抱き締められた。
「兄さま、わたくしは兄さまを愛しておりますの」
「そ、そ、っか、いや、俺も嬉しいわマリー」
「愛して、おりますの」
ぎゅううう。強くなる抱き締め。玉城もマリーを抱き締めてあげる。
「あ、いや、ちょっと、痛い、かなぁ、なんて」
「愛しておりますの兄さま」
ぎゅうううううう
嚮導学校でトップだったオールSの屈強な力が個人に対して発揮されたのだ。愛している、心から愛している。故にあの様な裏切り行為は許せない。
「愛して、愛して、愛しておりますの、ねえ兄さまわたくしの気持ちがお分かりですか。騙されたわたくしのこの気持ちが、だから、ですから、わたくしは精一杯の愛を兄さまに伝えとうございます」
精一杯の愛。このまま抱き締めて骨を折ってしまうほどの愛を。
「いだいいだいいだいッ、マリーしゃん分かりましたもうしませんから許して下さい」
「本当に?」
「ほ、本当本当今度こそ本当に」
「ではわたくしも止めて差し上げます」
抱き締める力が緩んでいく。
ほっとなってマリーを思わず抱き締める玉城。
「ご、ごめんな」
「よろしいのです。きちんと謝って頂けましたら。兄さま、兄さまはわたくしを裏切りませんわね?」
玉城を抱き締める優しいマリーベル。力が入っていなければ絶世の美女なのだ。ただそれでも玉城の恋愛対象外。本人はだからこそ努力をしている。玉城に振り向いて貰うために。
だからこそ玉城が他の女にうつつを抜かすのがどうしても許せないのだ。それが雑誌であったり、Blu-rayや映像機であったりしても。他の女を観て欲しくないのだ。
玉城はマリーベルを見る。真剣な顔で瞳を潤ませている彼女を。…………俺がコイツ泣かしてどーすんだよバカ。
玉城は思い、そっとマリーベルを抱き締めた。羽マントのままで急いでエルファバに乗り込んだから衣服がくしゃくしゃだ。
「マリー、ちょっと待ってろ」
言うと桃色のロングスカートの皺を取っていき、衣服に付いた皺や埃を綺麗に取っていく。
「兄さま……」
最後に羽のマントの埃を取るも、純白の羽マントは完全には綺麗にならない。
「ごめんな俺のせいで服汚しちまって」
「いいえ、そのお気持ちだけで、わたくしは……」
目をつむるマリーベル。何も言わないで何かを待つように。
これはあれか。あれ、だよな。どうみてもあれしかない。マリーベルとは何度もしてきたからわかる。辺りを見回して。誰もいないのを確認。玉城はそっと静かにマリーベルの唇に自分の唇を重ねた。
静かな口付けは、啄み合う程度の唇の擦れ合いに移行。
「ん――んん――」
それ以上はしない。それ以上の口付けは夜、眠る前だ。マリーベルは本心では身体を重ね交わりたい。二人何処までも交わりあって最後の時を共に。
それで子供が出来ても良いと思っている。クララには悪いが自分にも兄さまとの御子を作る権利があると思うのだ、どれ程の間兄さまとお会いする日を夢見てきたことか。どれほどに兄さまを想っているか、彼女も同じだからこそ分かるはず。そしていつかは決着を付けなくては成らない。
静かに離れる唇。本当はもっとキスをしていたいいつまででも、だが、誰が来るか分からない場所でいつまでも口付け合ってはいられない。
KMF射出口は開口したまま。風が入ってきて私の髪が風に踊る。すると兄さまは私の身体を抱き締めて下さり、踊る髪の毛へと指を差し入れ優しく優しく撫で梳いて下さいます。
「あいつもそうだけど、女の長い髪って綺麗だよな」
兄さまが言うアイツとは彼女の事でしょう。我が生涯のライバル。クララ・ランフランクこと、クララ・ジ・ブリタニア。伯父様の娘、ブリタニア帝国皇兄女。
「御髪が傷ついていると言われたことがあるので、極力綺麗にしておりますの」
「別に無理せんでも普通に綺麗だけどな」
「う、嬉しゅう御座います」
こういうことなら幾らでも開口口を開けておいても二人で此処に立っていても――!?
その開口口の前に船が立ち塞がりました。こんな近くに危険です。オペレーター達は何をしているのです!
「慮外者! ここを神聖ブリタニア帝国第八十八皇女マリーベル・メル・ブリタニア殿下の御召し艦と識っての狼藉かッ!!」
隠れていたリドールナイツの数名が飛び出します。ああ、今の兄さまとのひとときを見られていたのですね。少し恥ずかしいです。
相手方の浮遊航空艦は、日本の艦随分古い型の。軽斑鳩級の初期の初期型でしょうか。
「ひょっとして、お邪魔しちゃったかなッ!」
え、その声は。口ひげが一杯、とても平凡的な空気の、まるで皇族とは思えぬ一般人の風貌を持つ背の高い男性。
「お、オデュッセウス兄さま!?」
「これはこれは無粋な真似をしてしまいましたわねオデュッセウス様!」
風で声が乱れるけど。これもまた知ってる声。艶のある腰下までで切り揃えられた長い黒髪。大きな目に緑の瞳。神聖さを醸し出す装い。
「え? その声ッ! 神楽耶ちゃんかっ!?」
「どうもお久しぶりです真一郎兄様」
「す、皇神楽耶様あッ!?」
大日本帝国第八皇女皇神楽耶。
日本の皇室の御方まで。こちらに来るなら来ると。あ、もしかして先ほどのギネヴィア姉様の通信は。
「とりあえずこちらでは何だからそちらへ参りますね。あとお客人が二人付いて参りますがそちらの方々もよろしくお願い致します。
神楽耶様はそこまで仰ると一度艦を放し。
エナジーウィング機で飛び立たれたのです。抱きかかえるように一機の古いKMFを持ちながら。
と申しましょうか、神楽耶様エナジーウィング機を操縦できたのですね?! 流石は日本の皇族でありオデュッセウス兄さまのご婚約者。
こちらもグランベリーから、両肩マントの装着された赤い機体――ランスロット・ハイグレイル、真っ赤な機体――シェフィールド・アイ、橙色の機体――ブラッドフォード・ブレイブ。
黒い無骨な角張った機体――ゼットランド・ハート、そしてシン兄さまの蒼と銀色に輝く、銀光の翼を持つエナジーウィング機ヴィンセント・カスタム・グリンダ玉城専用機が勢揃いでお出迎え。それ程の賓客なのだから当然です。
本来ならばわたくしもエルファバでお出迎えすべきなのですがアレは威圧感とサイズの問題で歓迎用には向いていないのです。
そうして歓迎の整列の中をゆっくり入ってくる、おそらく紅蓮聖天八極式量産機と思われる機体。ソレイシィ卿やリドールナイツも歓迎の整列に加えるべきなのですが。あまり仰々しいのはお兄様も神楽耶様もお好みではありませんからね。ソレイシィ卿は夜番でお疲れのようですし。
しかし恐るべきは日本の生産力と開発陣です。南天との軍拡競争の過激化があったとは言え、紅蓮聖天八極式量産型、蜃気楼弍式、ランスロット・アルビオン量産型、ごちゃ混ぜで第9世代機を次々と開発し送り出し、8.5号機蜃気楼・改、斬月・改、ヴィンセント・カスタムと恐ろしい速度で量産していき。
9・5世代機フリーダム=フローレンス含む5騎をデヴァイサーもいないままに創り上げた。唯一フリーダム=フローレンスだけはクルシェフスキー卿がデヴァイサーを務めておりますが。とにかく日本は異常な国です。何故其処まで技術を先取りし開発することが可能なのか? 完全に謎に包まれております……。
未来見の能力者がいるという噂もありますが。
とにかく今は歓迎です。お兄様と神楽耶様を。
コックピットが開き降りてくるお二人。神聖ブリタニア帝国第一皇子にして皇太子オデュッセウス・ウ・ブリタニアお兄様、大日本帝国皇神楽耶皇女殿下。
「お久しぶりです。オデュッセウスお兄様、神楽耶皇女殿下」
「やあ久しぶりだねえマリーベル。ずっと前線でテロリスト掃討の任に就いていたんだろう大変だっただろう」
「わたくしもマリーベル様とグリンダ騎士団のご活躍は随所にて語り聞いております。お役目ご苦労様です」
「勿体ないお言葉、団員一同歓喜の念に堪えません」
ランスロット・ハイグレイル、シェフィールド・アイ、ブラッドフォード・ブレイブ、ゼットランド・ハート、そしてヴィンセント・カスタム・グリンダ。次々と開口口から入って来て閉じる。
同時に降りてくる皆は膝を突いて来訪の歓迎の挨拶をする中。
「よっとっとっと、はいはい前ご免よお」
兄さまだけはまったく違う行動を取った。
「オデュッセウスの兄ちゃん久しぶりだな」
「ちょっとあんた不敬」
オルドリンが止めるけれどお兄様は。
「いいんだよ。彼とはタマキくんとはタマキくんがまだ高校卒業したばかりの頃からの付き合いでね、よくお小遣いを上げたものだ」
「ちっす、世話んなりました」
「真一郎兄さま、わたくしへのご挨拶は?」
玉城は神楽耶の腰を持ち上げて、皆がぽかーんとする中。
「おっきくなったなあ。伏見宮のおじさんがよく連れてきてくれてた頃はこーんなちっちゃかったんだぜ」
伏見宮の“おじさん”?! まさか兄さま、誰も皇族・王族・貴族・大物政治家だとお気づきで無かった?
「あんたらがすげー人だって知ったのは最近だから、なんかしっくりこねえんだよなあ」
「いいんだよ。タマキくんはタマキくんのままでね。まあギャンブルのやり過ぎと、風俗の嵌まりすぎはちょっといけないところだけれどね」
風……俗……?
「風……俗……、兄さま、風俗に行かれているのですか」
「いやー年上ねーちゃんと付き合える場所はもう風俗しかねーなと思って軽ーく行って――はっ!?」
「あ、あれ、言っちゃまずかったかい?」
「うわ、玉城最低っ」
お兄様の言葉を受けてオルドリンが最低というと。
ソキアが。
「行くところまで行っちゃってるにゃー」
と批判的意見を述べる。神楽耶様も真一郎お兄様最低ですと明らかに批判的。
なれど男性陣はと言えば。
「た、玉城さんそういうとこいける勇気があって凄いです」
ソレイシィ卿に言いつけますから覚悟しておいてくださいねレオンハルト。
「玉城さんの行動も理解できる。持てない男はもてなしてくれる場所で一夜を明かすのだ」
レオンに続きティンクまでが肯定的。
これだから男はっっ!!
ですが神楽耶様は。
「オデュッセウス様。万に一つもその様な場所には」
と詰め寄ります。それこそが当たり前の反応なのです。皆さんがそろいもそろって兄さまに甘すぎるだけですわ。
「に~い~さ~ま~あ」
「ひっ!?」
「わたくしだけを愛すると言ってすぐお破りになるのですかあっ!」
「お、オルドリン助けてっ」
「あんたの自業自得でしょうが!っていうかよるなさわるなバッチイ!」
「そ、ソキアぁ~~っ」
「今回ばかりは擁護できないさーキモい」
「オデュッセウス兄ちゃんあんただけが頼りだぁ!」
「あっはっはっは、神楽耶ちゃんがね、君の味方するなって」
その時の玉城は見落としていた背後から忍び寄る人影を。
「に~い~さ~ま~♪」
優しく優しく、恋人を掻き抱くそれ。後ろからの抱き締めである。
「思えばヒールの三回分の罰をまだ与えておりませんでした♪」
黒いオーラが吹き出しているマリーベルには、誰も怖くて声を掛けられない。あのにこやかなオデュッセウスすらにこやかなまま冷や汗を浮かべていた。
「兄さま~わたくし信じておりましたのよ?」
可愛く言いながら、玉城の左耳たぶを優しく甘噛みするマリーベル。
左を噛めば優しく舐めて、次は右の耳たぶを優しくかぷりと甘噛みをする。あなたは誰のものなのかというマーキング。
地上にいるクララが知れば怒髪天だが此処は空の上で、この艦はマリーの艦。玉城はマリーの体内にいるのと同じ状況なのだ。
「わたくしはあ~兄さまのもの」
玉城の胸元に手を入れるマリーベル。率直に言ってエロいのだが、今はただ怖い。
「兄さまはあ~わたくしのもの」
玉城の胸元をまさぐりながら優しく優しく彼を撫でる。
アホは考える。無い頭で考える。マリーベルは玉城真一郎を愛しているこれは事実。そしてマリーベルは独占欲が強い。物凄く強い。これも事実。
要はマリーベルの独占欲を満たしてやれば怒りのメーターは下がる。ここは最低でもやるしか無い。
「ま、マリー、お、俺は、俺はなにも年上目指して風俗行ってた訳じゃねーんだ」
後ろを振り向いたとき。予想通りの爽やかな笑顔があった。マリーベルは怒ると微笑むタイプだこれは相当怒っている証拠でもある。
「では、どの様な目的で風俗へ?」
答えを間違えたら一発アウトだ。此処はもう決まってる。
「ま、マリーに、マリーベル・メル・ブリタニア皇女に似た女性を探して風俗に通っていたんだ」
「え……?」
よし。表情に変化が出た。
「わたくしに、似た? なぜ、そのような?」
食いついた。
「そりゃ簡単だ俺は平民、マリーベル・メル・ブリタニア皇女って女は皇族だ。そんな簡単に抱けるわけもねえ。だから、さ、悲しいけどよ、風俗でそっくりなの探して、寂しく耽るしかねえんだ」
しんみりした顔して、早業で涙を出して、この辺は大学の面接で落ちまくってお涙頂戴演技で身に付けた特技だ。そう簡単には見破れんぞ? 何せ本物の涙だからな。
「そんな理由が」
みんなも絆され始めた。ほけっとした顔で見てるのはソキアだけ。奴は勘が良い。だから時間が経てば見破る。見破っても納税しときゃ黙っといてくれる。
「は、話は聞いた。平民と皇族でも抱き合えるぞ。私と泰司が毎日のように抱き合っておる」
はえ? いきなり声が聞こえた方を向くと、そこには黒風のドレスを着たボンキュボンの膝下まで届く長く真っ直ぐな銀髪の女が立ってこちらをみていた、若干ぷるぷる震えていてもう一人立っている隣の男、スーツ着た省庁の官僚様みてえなのが女を支えてた。
「うおおおおお! 年上銀髪美女来たコレェェェェェェェェ」
「やっぱ玉城だわ少しでも感動した私がバカだった!」
オルドリンの声が聞こえた瞬間。
「兄さま~」
はっ?!
「いいわけはなにかおありですか~」
「ま、マリーしゃん、許して」
「ゆ・る・し・ま・せ・ん」
優しーく腕の関節を撫でてくれたと思うと、瞬間無表情になって。
ごきんっっ
いやーな音がして両腕に激痛が走った。
「本当は全身の骨を折って差し上げようと考えましたが、戦力の低下を考慮して腕の関節を外すだけに留めました。後で誰かに戻して頂きなさい。誰もいなければ……わ・た・く・し・が優し~く戻して差し上げますわあ」
コレは絶対誰も構ってくれんなと玉城は両腕の激痛に本気の涙を流しながら思った。
※
結局オデュッセウスと神楽耶の目的は前線視察もあったが、この二人を送り届けてくる名目もあった。一人は大日本帝国外務省外交官、朝田泰司黒髪を七三分けにして黒縁眼鏡を掛けた、出来る男と言った感じの男だった。
もう一人の黒いドレスの玉城より少し年上だろうか二十代後半の膝下まで届く長い真っ直ぐな銀髪と、周りが美女ばかりなので霞んでしまうが充分絶世を付けてもいい部類に入る美女、その正体はパーパルディア皇国皇族レミール皇女であり、駐日パーパルディア皇国大使館大使にして自らも一外交官として自分の脚で文明圏内外を飛び回っている女性でもあった。
因みに年上銀髪美女と玉城が反応したことからレミールを警戒していたマリーベルだが、レミールが朝田と事実上の婚姻関係にあると聞いて、警戒は解いた。ただなぜグリンダ騎士団を訪れたのかを聞き出し興味をなくす。
「つまり貴国は今与えられたおもちゃ、失礼兵器の力の海上戦力航空戦力には圧倒的優位性がある事を認めたが、KMFが初期の初期の初期型と聞いて不安が出た。この際、側面支援を要請されている我がグリンダ騎士団にも参戦頂きたいと?」
「う、うむ、貴国と我がパーパルディア皇国は同盟関係にある故に貴国には」
「無価値、無駄、無意味、この戦争その物に意味を見出しませんね私としては。確かに地域の安定に不確定要素であるロウリア王国を始末する方針に舵を切った貴国の在り方は認めましょう。それで? 貰ったおもちゃに自信が無いから助けて欲しい? 折角戴いた力を使わないのは無関心主義に近いのでは無くて? これ、貴女が言い出したことでは無いでしょう」
「お、仰るように我が従妹にして現皇帝陛下が不安を抱かれて」
「民の上に立つ者が不安を見せては成らない。絶対的に強くあらねばならない。我が国の皇帝陛下や大日本帝国の御帝、上帝陛下も同様の事を仰るでしょうね。この際ですからはっきりと申し上げましょう。貴国の現有兵力と戦力だけでロウリア王国を全面制圧可能です60式戦車は60年以上昔の兵器、貴国のKMFは25年以上昔の兵器。ですがこの第三文明圏。いいえ第二第一文明圏を含めても最強に近いでしょう。少なくとも我が国が調べた範囲では西の果てに現れたというグラ・バルカス帝国とも戦える戦力です数の面では劣勢でしょうけれど。その時は我々北側諸国が出て行きます。間もなく北側諸国にはパーパルディア皇国を含めゲート向こうあなた方には分からないでしょうがそこのブリタニア帝国が加盟します。向こうは向こうで問題があり一朝一夕に事が運ぶわけではありませんが。いずれにせよ貴国の皇帝陛下は戦争に怯えがあるようにみえますね。上に立つ者がそれでは幾ら強力な兵器を手に入れたところで力を発揮できません」
「はい、真に仰られるとおり。戦争とは縁遠い性格をしているので」
「ならばこの戦争に限りご貴殿が指揮官代行として戦い、勝利を勝ち取ってみては?」
「わ、私が、か?だが私は一外交官に過ぎぬ。……そのような」
「しかし外交官であってもレミール殿も皇族は皇族。皇族である以上は民を守り導く義務があるはずですが」
「しかし、私は失敗しかけた人間なのだっ! 皇国を滅亡へと導いていた自覚すら無かった操られるがままに、甘い言葉に誘われて……」
「失敗しかけたからこそ過去の汚辱を注ぐのです。滅亡へと導きかけたのは貴女でしょう。しかし、滅亡の淵より救ったのもまた貴女の筈。だからこそ此度は貴女が動き、皇帝とはなんたるかを現皇帝に教えて差し上げるのです。その為に必要とあらば我がグリンダ騎士団は力をお貸し致しましょう」
ネッサローズの案内としてKMF射出口たる開口部までレミールを案内するマリーベル。
いかに格下の国と言えど皇女の案内は同じく皇女がすべきだろうと、そうマリーベルは考え自ら艦内の案内を買って出たのである。
因みに同時刻、ネッサローズ艦内に設けられている和室では、オデュッセウスと神楽耶がお茶を飲んでいた。両腕の関節を外されだらんと腕を下げた玉城を見ながら。
「オデュッセウス兄ちゃんさあ、妹のことしつけてくんね?」
「あはは、申し訳ない、でも今回のはキミが悪いよ。マリーがキミの事を好きなの知ってるのにあんな事するから」
「真一郎兄様腕だけで済んでよかったではありませんか? 女を怒らせると最悪殺されてしまいますのよ♪」
「じょ、冗談キツイぜ神楽耶ちゃんいででで、くっそーマリーのやつめー」
そのころ、レミールを案内しながら、マリーベルは一つ、気になることを、尋ねていた。
「ところでレミール殿、此処だけの話、子作りとはどの様なものなのです。初めてはどうでしたの?」
「なっ?!」
面食らった武を重んじるだろうマリーベルがそんな事を聞いてきたことに。そう言えば、自分たちが着いたときに兄さまと呼ばれる人物がいたが、平民と皇族がどうとも言っていたから口を出したが。
「一言で申せば、……その……気持ちが、良い……と言うところ……だろうか」
「き、気持ちがいい」
マリーベルは生唾を飲み込む。
「い、入り口より、身体の深部までを貫かれ、幾度も、幾度も、擦らせ合うのだ。心地良く、気持ち良く、切なく、愛おしく、やがて互いぐしょぐしょに濡れてくる。水気を帯びて潤滑油となり、より深くお互いを擦らせ合うのだ……。そうして行為を繰り返している間に思うのだ。この行為に、愛し合うという時に終わりが来て欲しくないことに、幾度も出され、幾度も受け、子を育む行為を行っている自覚を持ちながらも、ただの男ただの女として互いを求め合う、その様な感じだろうか……泰司はそう、言っている、レミール皇女を求めている間に、だんだんとレミール皇女以外の何もいらなくなるのです。言葉通り、泰司は最後の方は、レミール皇女、レミール皇女っ、レミール皇女っっ、そう、私の名だけを呼び、深く深く私を求めてくれる。私も同じような感じだろうか……」
マリーベルの顔は真っ赤になっている。初心な処女のように。実際にまだ一回だけ。一年生なのだあのお馬鹿とは。
「キスは、キスはどうなのですっ」
「何度も、幾度も行う。口付けを交わし、舌を絡ませ合わせながら互いの唾液を相手へ送り合い、嚥下しては、また唇を吸い合うのだ。それとご貴殿、平民と皇族の差の話しを為されておられたようだが、愛に平民も皇族も無いと相手の男に申しつけておいた方が良い。私に欲情するような男だ。タイプは年上と見た」
「当たっておりますね年上がタイプで階級差を持ち出しました」
「恐らくだがそれは逃げだと思う」
「レミール殿もそう思われますか。何だかんだと逃げるのです。わたくしというものがありながら」
「私は反対に泰司に抱かれた方故に参考になることは申せぬが。とにかく逃がさないようにすることが先決だろう。他を見て欲情する男は究極的にはタイプの女について行く。それをさせぬようにすべきかと」
※
「しかしネッサローズは広いな」
「ふ、アヴァロン級ですからね艦その物がカールレオン級より二回りほど大きいのです。この上に重アヴァロン級があり、現在超重アヴァロン級を開発中です。日本は既に超重級を保有しています」
「別冊宝大陸2023で読んだ。やはりとてつもないな北側諸国は。我がパーパルディア皇国が如何に弱小国かを思い知らされる」
「自助努力あるのみでしょうね。努力無き者は高みには登れない。今与えられているおもちゃで満足せずそのおもちゃをどのように作り出すか? どのように改良していくか頑張れば小国くらいにはなれるやもしれません」
「厳しいな。それでも小国か」
「シーランドと戦えば分かりますよ貴国はおもちゃを与えられただけの極弱小だということが。別冊宝大陸には北側諸国同盟軍事事情が載った本もあるのでお勧めです」
「幾度もお聞きしたが、シーランドでもそれほどに強いのか」
「パーパルディア皇国より遙かに」
「はあ、尚更に列強という基準が無駄だと言うことが分かった」
(どんな傾向かを知りたいのもありまして
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ミリシアル好き
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ミリシアル嫌い
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グラ・バルカス好き
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グラ・バルカス嫌い
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ロウリアは徹底的にやっちまうべき
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ロウリアにも救いを