砲艦外交の前に   作:休日

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軽い描写ですがR16ですのでご注意くださいませ。


23砲艦外交の前にレミール邸で

 

 

 23砲艦外交の前にレミール邸で

 

 

 

 パーパルディア皇国の新戦力の標的艦予定となっていた最新鋭魔導戦列艦230艦。

 

 当初は1千艦という、あまりにも多すぎる数を揃えていた皇国は、残艦の処分について、大東洋諸国圏の国々への売却を決定した。

 

 決定については皇帝セレミアの裁可が必要であったが、この裁可には駐日パーパルディア皇国大使兼外交官であるレミール皇女の意見が採用されており、事実上レミールが下取りの売却を決めたと捉えても過言では無く。

 

 皇国皇帝セレミアはちょっとしたお小遣いを手に入れたが、これは皇国にとって最も近場に存在し、交友関係も深い重要なる同盟国。大日本帝国式の福祉政策である国民皆保険・生活保護・国民年金制度の予算に充てられる事となった。

 

 微々たる物だが税金には違いなく、無駄金食いにして無意味な魔導戦列艦の売却益の使い道としては適当であったと言えようか。

 

 230艦、元は1千艦という大量の魔導戦列艦は、北側諸国から見ても地球で戦列艦が採用されていた同時代の戦力数から見て多すぎると言った意見が上がっていた事を、レミールは大日本帝国の外交官であり自身の夫でもある朝田泰司より直接耳にしていた。

 

『我々の星では随分昔の軍艦となりますが、数・性能両面に於いて当時独立した国々であったAEUの中の大国に匹敵し、一部は超えていた戦力数であったと思われますよ』

 

 レミールやセレミア、皇国軍最高司令官アルデらをして、世界最強の神聖ミリシアル帝国すら弱小国となってしまおう強大極まると考えている大日本帝国や神聖ブリタニア帝国。AEUの構成国家群の軍事関係者らが、数が多いと語るのだから、一年と少し前までの皇国軍は異常な状態であったのだろう。

 

 これだけの艦数になってしまっていた理由は、覇権主義と世界征服の愚かな夢想に染まっていた前皇帝ルディアスの軍拡が原因であったのだが、その戦力も北側諸国の一員となり、彼の国々よりの支援の下で超強化された皇国軍にとっては無用の長物となってしまっていた。

 

 北側諸国という、地球よりこの星へとやってきた国々から見て、骨董品以下の戦力でしかないと判断され。

 

 これを一部はブリタニアやAEU構成国の好事家が買い付けた以外は、標的艦として次々と海没処分にしていたパーパルディア皇国であったが、大東洋諸国圏の国々から待ったが掛かったのだ。

 

 曰く。“現在のパーパルディアにとっては無用かも知れないが、大東洋諸国にとっては喉から手が出るほど欲しい軍艦。要らないなら売却して頂きたい”との由。

 

 現在も継続中のパ・ロ戦争で、大幅に弱体化したとは言えまだまだ強力なロデニウス大陸の人族至上主義覇権国ロウリア王国。

 

 周辺諸国への侵略や併呑の機会を虎視眈々と窺っている、フィルアデス大陸の野心国家リーム王国。

 

 大東洋諸国という小国家群にとって、これらの脅威に対抗する手段が必要なのだ。

 

 愚かなりし前皇帝ルディアスを排除し、北側諸国に迎え入れられたパーパルディア皇国は、同時に大東洋諸国にも迎え入れられており、いざとなれば友好国防衛の名の下、要請があれば軍を派遣するという約定を交していたが、それとて間に合わなければ意味が無い。

 

 パーパルディアにおんぶに抱っこという訳にもいかず、自国は自国の力でまず守ることが重要であるとして、役目を終えた魔導戦列艦の売却を申請してきたのだ。

 

 大東洋諸国圏の安全保障能力の強化の名目の下で1艦100パソという、大日本帝国で言うところの100円相当でこれらを大東洋諸国へ売却することに決めた。

 

 まずはレミール皇女と共にセレミア皇帝の下へやってきた、クワ・トイネ公国首相カナタが、レミールとアルデに案内され、100門級や120門級といった種類別に80艦を購入。

 

 続き、軍港へと押し掛けてきた大東洋やフィルアデス大陸諸国の大使・公使が加わり、1艦残らず売れてしまったのである。

 

 この時、各国大使に詰め寄られ、もみくちゃにされたレミールは、大使達の唾を飛ばされ汗を飛ばされ、自身も汗まみれとなってしまった為に。エストシラントにある自身の邸にて、昼の日中より湯浴みをする運びと相成った。

 

 

 ※

 

 

「まったく、皆さんレミール皇女のドレスやら顔やらに唾と汗を飛ばして……人の迷惑を考えて貰いたい物ですね。困った物だ」

 

 一見、中世洋式のレミール邸。いや、エストシラントだが。日本の最新式家電製品等も導入されていて、街並みや建物の内装はそのままに近代化が為されている。

 

 街並みが弄られないのは北側諸国会議にて、エストシラントの美しい街並みに手を加えるのは反対といった意見が上がっていたからだ。

 

 無論、事を決めるのはパーパルディア皇国であったが、セレミア皇帝やレミール皇女。他の皇族や貴族達、国民含め。

 

『強大極まる北側諸国の国々が美しいと見る我が国のエストシラントはそれだけで誇らしい。それに、北側諸国。大東洋諸国からの観光需要も相当に高く、今現在皇国の地方で行っているような高層ビル群の建築などはせず、古都としての景観を守るべき』

 

 といった一致した合意形成も為され、街の景観は保たれる事となったのだ。

 

「ドレスも洗濯しなければなりませんね」

 

 浴室の前で侍女宛ら。朝田はいずれ妻となる、レミールの衣服を脱がせていく。

 

 本来はレミール邸の侍女の仕事なのだが、夫である朝田は日本の家でいつも彼女の衣服の着付けなどを手伝っていることもあって、この日の湯浴みでは朝田が服を脱がせているのだ。

 

「まあよい。皆安全保障が掛かっていては目の前が見えなくもなるだろう」

 

 レミールは困った表情で苦笑いし、朝田の言葉に応じながら、先ほどのことを思い出していた。

 

「しかしフェンやアワンの大使や王は本当に維持費を加味して購入したのか心配だ。幾ら100パソと子供のお小遣い程度の価格設定とは言え、アルデが言うのだから維持費は高く付くぞ?」

 

「まあ、それこそ自己責任でしょう。身の丈に合った軍備を整える。安全保障の基本の一つです。無理な軍拡をして財政が逼迫するところまでは貴国も責任を負えないでしょう」

 

「確かにな」

 

 それなりに慣れた手付きで袖までを脱がされ、脱がされたドレス。宮廷服飾職人が仕立てたドレスなので高級品であり本来はクリーニングが適切かも知れないが、ここ一年、朝田の家で生活をしてきたレミールは、日本製の最新型洗濯機で衣服を洗濯している為、その性能には全般の信頼を置いている。

 

 レミールの浴室前に置かれた朝田のマンションの部屋の物と同じ洗濯機は、彼女のエストシラント本邸にもある、そう目の前に。

 

「いつも思いますが、宮廷の服飾職人の方が仕立てた高級ドレスをこういった洗濯機で洗う事には抵抗感がありますよ。職人の方に申し訳ないような」

 

「何を言う。日本製の白物家電の性能の素晴らしさはこの一年、私自身がこの目と肌で確認しているのだぞ?」

 

「まあ、そう仰って頂けるのは日本人として誇らしい限りですが」

 

 朝田は面映ゆい気分になりながら彼女のドレスを洗濯機の中へと入れた。

 

「では、失礼して」

 

 ドレスに続いてレミールの下着を脱がせていく朝田。彼女の下着は日本の高級品。日本製品への信頼感はパーパルディア人の生活必需品は大体が日本製であるところにも表れている。これはレミールに限った話では無く、皇帝セレミアも日本に色々と発注しているのだ。

 

 因みにレミールはソーシャルゲームに深くのめり込んでおり、前に朝田のクレジットカードで課金しまくっていた“廃”課金ゲーマーでもある。特に最近はKMFのソシャゲに嵌まったりしていて、大使館執務室で仕事の息抜きにとかでゲームをしまくり、書類が溜まって怒られた事も。

 

「あ、相変わらずのボリューム感……」

 

 妻レミールのブラジャーのホックを外して、拘束を解かれ現れた大きく揺れる二つの実りを目に、朝田は呟いた。

 

 彼女の豊かなバストは並大抵以上に大きく、彼の手に収まらない程なのだ。激しやすくも真面目なところがある彼には、そういった気分で無いときは堪えがたいボリューム感だった。

 

「た、泰司、あ、あまり胸ばかり見つめるな。恥ずかしいではないか……今更感満載だが」

 

「ま、まあ確かにレミール皇女と私の間で今更気にすることでもないのでしょうね……ですから私も見入ってしまうわけなのですよ、お許しください」

 

 気にするも何も、日々の生活の中で愛し合うときや入浴時に普通に目にしている事だ。

 

「しっ、下は自分で脱ぐ故に泰司も早く衣服を脱げっ! 湯浴みが出来んっ!」

 

「は、はい、では失礼して」

 

 朝田はいつも通りのぱりっとしたスーツ姿。上着のボタンを外し脱ぎ捨て、ネクタイを緩め外してカッターシャツ、ズボンと続きざまに手早く脱いでいく。

 

 そうして全てを脱ぎ捨てた朝田のたくましい身体を目に映しながら、レミールは自慢の夫、愛する夫、朝田泰司の肉体に惚れ惚れとし、頬を赤らめる。

 

 別段これから愛し合うわけでも無いのに、彼女の胸の鼓動が早鐘を打ち出すのだ。

 

「このまま……抱き合いますか?」

 

 こちらはこちらで朝田も妻の美しさに鼓動を早めながら、彼女の頭を飾る金色のサークレットを外してあげた。

 

 レミールはその言葉を受けて朝田の方へと身体を近づけ、彼の胸板にその柔らかく豊かに過ぎるバストを押し付ける。

 

 朝田の身体がびくっと震えた。お互いの身体に電撃が走る。まるで愛し合うときのように。

 

「私は……構わんが、すぐ外には侍女が待機して居るぞ?」

 

 彼が抱きたいというのならば大人しく抱かれよう。この身は泰司の物なのだから。レミールはそう思い、朝田に身を任せる。

 

「聞こえないように……、お声を我慢していただけますかレミール皇女」

 

 膝下へと流れるレミールの真っ直ぐな長い銀糸の髪の毛に指を差し入れて、しゅっ、しゅっ、っと、幾度となく梳き通し、指に絡めながら撫で行く朝田はそのままにレミールを抱き寄せ口づけた。

 

 

 んんっ――……。

 

 

 くぐもった声が彼女の唇より漏れ出す。

 

 

 んっ、ふうう――……。

 

 

 舌と舌が互いを求めて縺れ合い、宛らレミールと朝田が抱き締め合っているのと同じように、口の中で抱き合っている。

 

 口付けならば声は出ない。数分の長い口付けの中でレミールも朝田の背中に手を回し抱き締め、唇を重ね合わされたままに彼女は床へと寝かされた。

 

「ん……」

 

 唇が離れるとき、つーっ、と。銀色に輝く糸がレミールと朝田の唇を隔てた空間に伸びては、音も無く切れる。

 

 床に大きく乱れ広がる美しい銀色の長い髪。膝下まで届く程の長さがあるレミールの髪は、毛髪量の分だけ銀色の面積を彼女の顔周り、身体周りに広げ。ひとときの銀世界を浴場前へと作り出していた。

 

「レミール皇女……参りますよ……」

 

 お互いにそのつもりは無かったが。

 

「か、構わん……ここまで来ながら抱かれん方が、お前の妻として余程に恥辱だからな」

 

 薔薇色に色付くレミールの頬。銀世界の中に白い肌と薔薇色の頬が合わさり、一種の宗教画を思わせる美しさを描き上げている。

 

「美しい……私のレミール皇女――」

 

 静かに、静かに、静かに。ただただ静けさを保ちながら二人は一つになる。

 

「んっうう――」

 

 朝田を受け止めきるレミールは、声を出さないようにと唇を噛んで、自分自身を押さえつけた。

 

「んっんん……んんう……、――……た、泰司、我慢、し抜いたぞ? 声……」

 

 本当は声を上げたかった。泰司のその聴覚で自慢の妻だと言ってくれる自分の愛の声を捉えて貰いたかった。だが、悪戯にそのようなことを行えば、外に待機中の侍女の耳にまで届いてしまう。

 

 届いてしまえば侍女が踏み込んでくるかも知れない。あられも無い姿を見られてしまうやも。

 

 パーパルディア皇国皇族としてそれは恥ずべき事だろう。

 

 それに踏み込んで来ずともスマホ等で録音されてもし万一にもネットに上げられてしまえば?

 

 うちの侍女に限りそのようなことは行わないと知り置いているが、万一ならぬ億一の大改造を北側諸国より受けているパーパルディア皇国。

 

 万一は十二分に起こりうる範疇。

 

 そうなればSNSで拡散されてしまい、マスゴミの餌食にされてしまいかねない。あの舞朝新聞とかいう妙ちくりんな新聞社。

 

【特報っ! パーパルディア皇国皇族レミール皇女殿下情事の瞬間っ!】

 

 そんな見出しと共に明日の朝刊にでも載せられてしまう可能性とて。

 

 ならばやめておけ? それこそ不可能だ。やめられるはずもない。互いに高まりあった状態で無理にやめようとしても、お互いを止める術が無いであろう。

 

 泰司が冗談めいて『抱き合いますか?』等と問うてくるからだ。なれば泰司が止まらなくなる。だからこれは予定調和に過ぎん。

 

 熱い吐息を吐き出しながら、そう、レミールは心の中で自分に言い聞かせていた。

 

「上出来ですよレミール皇女。私も静かに行う事を努力致しますので、ここから先もお互い静寂のままに……愛し合いましょう」

 

「無理ばかり言うな泰司……。私にも無理なことは無理なのだぞ? 女の私は男のお前のようにはいかん」

 

「ですが、我慢していただくしかないでしょう。それに……我慢しているではないですか。大使館で愛し合うときなどは」

 

「ご、強欲な……。――しかし、私はそんなお前が愛おしい……」

 

「お褒め頂きありがとう御座います。私も好きな貴女だからこそ、私の妻だからこそ、我慢できずには居られない――自分でも盛りすぎだとわかってますが愛故に止まらないわけです。私たちは新婚ですしね」

 

 

 んんっっ――

 

 

 息つく間もなくレミールの全身を貫いた熱い痺れ。

 

 それを生じさせた朝田の胸に響く鼓動と同じくした衝撃。

 

 二人の熱い刻は今日もまた始まった。

 

 

 ※

 

 

 ザーッ。

 

 浴場に取り付けられているシャワーから出るお湯。

 

 丁度良い温度に調整された湯で背中を流して貰いながら私は文句を言う。

 

「泰司。お前一度で終わりではなかったのか?」

 

「はは、いやまあ、いつものことでしょう?」

 

 椅子に座る私の背中を流れる湯が気持ちいいが、我が夫は反省しているのだろうか。

 

「どうせ入浴するのですから一も二も同じですよ」

 

「二ではないぞ三だ。……まったく」

 

「まあまあ、そう怒らずに……さ、お背中を洗いますから」

 

 湯で流された背に、泰司の手にするボディソープの染み込まされたタオルが宛がわれる。

 

 タオル越しに感じる泰司の手の感触が気持ちいいな。

 

 ごしごしと、優しくながらもしっかりと私の背を洗ってくれる泰司。

 

「夫婦で入浴するのはパーパルディアでは少ないですね」

 

「そうだな。まあそれは普段私とお前は日本だから仕方が無いことだ」

 

「ええ、外交官の手前、大東洋中や新しく発見された国などにも派遣されますからね。エストシラントでゆっくりしながらパーパルディアを観光してみたい物ですが。上役があっちこっち派遣させますので」

 

「それは私も同じだ。私は広い世界を見て識れていいと思うが、お前と二人でなら」

 

 背中を洗う手は止まらない。背中側から泡が立ち、泡が浴場の床に落ちていく。

 

「ええ、私もレミール皇女と二人であちこちと足を運べる今の生活には満足しておりますよ……ですが、たまには夫婦二人だけで旅行とか行きたくなる物でしょう」

 

「その意見には賛成だな」

 

「では、洗い落としますよ?」

 

「ああ――いいぞ」

 

 ザーッ。

 

 私の背中を洗い終えた泰司がシャワーを手に持ち、背に湯を掛け、泡を洗い流していく。

 

 旅行。旅行か……。

 

 うん、そうだな、パーパルディア旅行ならば日本人にはエストシラントが一番人気だが、ここには私の邸にして泰司の邸でもあるこの本邸があり、泰司はエストシラントには何度も訪れている。

 

 ならば、聖都パールネウスはどうだろう? 泰司もきっと気に入ってくれると思うのだが。

 

 ああ、しかし背を流れる湯が気持ちいい。泰司手ずから流してくれているからこそか。

 

 床に目を落とすと泡が流れていくのが見える。

 

 私の本邸の浴場は、日本の銭湯風に造り変えられている。私は日本が好きだし日本の風情を気に入っているからな。

 

 泰司が初めて見たときは古い洋風に見えると言っていたが、広さには驚いていた。ブリタニアやAEUにはとても及ばんが、我が国も中々に広い。土地が広い分、広い邸に広い風呂場が作れるという物だ。

 

 これを日本風に改装したのだ。

 

「それでは続いて髪を洗いますよ?」

 

「頼む」

 

 私の頭の上で纏めていた髪が泰司の手で解かれ、さらりと落ちた髪にシャワーの湯が染み込まされていく。

 

 床に付かないように片手で持ち上げてくれているところはやはり気遣いの出来る自慢の夫だな。

 

 湯を掛け終わると、今度は日本メーカーの高級シャンプーが髪に揉み込まれていく。

 

 私の髪は膝下にまで届いてしまう程に長いからいつも大量のシャンプーを使う。だからすぐに無くなってしまうのでシャンプーの買い置きはかなりある。

 

「いつも済まんな。大変だろう私の髪を洗うのは」

 

 男の泰司には、これだけの長さの髪を洗うことはさぞかし手間が掛かろうが。だがこの優しい夫は。

 

「いいえ。自分の妻の髪を洗うのは夫として当然ですよ。いつもしている洗いっこは楽しいですし気持ちが良いので不満などありません」

 

 そんな優しい言葉を私にくれるのだ。

 

「そ、そうか。わ、私もお前の髪や身体を洗うの、好きだぞ?」

 

「それは光栄です」

 

 会話の間にも長く洗いづらいだろう私の長い髪を泰司はしっかりと手指で揉み込みながら洗ってくれている。

 

 本当に私は幸せな女だ。泰司のように優しい夫を持てて。

 

 ただ、こちらは仕方が無いのだが、泰司は基本いつであれ私に対し敬語、丁寧語で話す。理由を聞くと。

 

『レミール皇女はパーパルディア皇国皇族、皇女殿下ですからね。一平民の私と致しましては何処であれ言葉遣いを変えてはならないのです。ですが、接し方はきちんと夫として接しているつもりですよ』

 

 そんな理由を話してくれた。

 

 ああそうだ。私はパーパルディア皇国皇族。

 

 泰司は大日本帝国の民とはいえど皇族、華族でもなければ士族でもない平民。

 

 身分差による結婚が故に、例え夫婦となろうとも言葉遣いは変えられないのだそうだ。

 

 泰司自身が外交官であるからこそ、自身でより明確にしているのだろうなと思う。

 

 他国の皇族と身分差のまま夫婦となったわけであるからな。

 

 これが泰司がパーパルディアの皇室に入るのならば違うのだが、我が国の頭の硬い皇族と貴族は、圧倒的格上の国の民であっても平民が皇室に入ることには是とは言わないのだ。

 

 皇帝陛下が良しとすると言ったところで今度は泰司が良しとしない。泰司自身、どちらかと言えば自由な平民の身で居る方が性に合っているようだから無理強いも出来まい。

 

 だからといって私が平民になることも今度はやはり我が国の皇族と貴族が許さない。

 

 ただ、まあ、うん、それでも、こうして夫として接してくれていることも事実だ。

 

 情交を重ね合うことも毎日欠かさず。そう、この身を毎日愛してくれるのだ。夫として接していなければそのようなことも無いだろう。

 

 多くを求めたいが、これ以上無いくらいの今を与えてくれている泰司に、これ以上の以上を求めるのは贅沢という物か。

 

「レミール皇女」

 

「うん?」

 

「御髪、髪を洗い終えましたのでシャンプーを洗い流しますよ?」

 

「あ、ああ、頼むぞ?」

 

 ザーッ。強めに出された湯が私の髪に染み込まされたシャンプーを洗い流していく。

 

 洗い流すのに床に付いてしまわないよう、私も自分の手で髪を上げて、泰司の洗い流しやすいようにと手伝う。

 

「レミール皇女の髪は長いですから洗髪剤を洗い落とすのも大変ですね。ですがそれもまた貴女との入浴時に於ける楽しみの一つです」

 

「ふふッ。面倒なのか好きなのかどちらだ」

 

「好きですね」

 

「ならばよい」

 

 私の髪を洗い終えたなら、次は私が泰司の背を洗い流してやる番だ。

 

 泰司のたくましいその背中を……。

 

(どんな傾向かを知りたいのもありまして

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  • グラ・バルカス嫌い
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  • ロウリアにも救いを
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