砲艦外交の前に   作:休日

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24砲艦外交の前に 広がりゆく世界

 

 

「ふう、漸く全ての謹慎が解けたぞ」

 

 謹慎その物は既に解けていたのだが、完全に政治の場に戻ってくることが出来たドイツ帝国宰相にして、AEU皇帝ハイランドと並ぶAEU最高指導者・宰相アドルフ・ヒトラーは一息を付いていた。

 

 別に彼は日本贔屓ではないのだが、落ち着けるという事で今日は執務室にて、日本から取り寄せた玉露を飲んでいた。

 

「なるほど、これは落ち着くな。この渋みの中に感じる芳醇な香りと甘さが良い。日本人が好んで飲むというのも納得がいく」

 

「宰相閣下に献上するのですから当然最高級の玉露で御座います」

 

「うむ。それは構わんが、ヘルマン。相変わらず太り過ぎだぞ。君は時を一巡しても尚太らずにはいられんのかね?」

 

 くくっ、とファルネーゼとマンフレディ。AEU四大騎士団長たちが笑う。

 

 時を一巡の意味について彼等には分からない。与り知っているのはヒトラーの幼馴染であるAEU兼ドイツ帝国皇帝オーガスタ・ヘンリ・ハイランドだけだ。

 

「ところでマンフレディ君。私は次の会議にAEU代表として出席する訳だが、強硬手段は採用されないと見ても良いのかね」

 

「はっ、宰相閣下。正直過半数の票を獲得するのは難しいかと」

 

「だが、次の会議はAEUの一国一国が参加する。ドイツ帝国、イタリア王国、ロシア帝国、フィンランド大公国、オーストリア=ハンガリー帝国、エチオピア王国等々、単純な数で言えばAEUは圧倒的得票数を得る事となる。それでもか?」

 

「はい、それでもです。特にAEU構成各国は大日本帝国と神聖ブリタニア帝国の動向を見ているようですので。彼の二国次第で盤面はひっくり返されるかと」

 

「ふーむ。解放戦争では南天を抑えて貰った恩義もある事だしな。軽々に事は運べぬか。個人的にはゲート向こうの腐った欧州大陸にF号兵器の二,三発ぶち込んで黙らせてやりたいのだが」

 

 比喩でも何でも無い事を、ゲーリング、マンフレディ、ファルネーゼは知っている。ヴェランス皇帝陛下は見せ札として使うが、ヒトラー宰相閣下は本気で使う男であると。

 

 恐ろしいのは実際に使いかけた。戦略型潜水艦を50艦も動かして、日本の聖域であるゲートの開いた神根島に向けて、各地から進軍させたという事実があるのだ。

 

 この男はやるときはやる。見せかけ倒しではない。ヴェランス皇帝に邪魔ならば民族ごと葬れと解放戦争の折に進言していたのも言葉限りの物ではないのだろう。

 

 

 民族浄化――

 

 

 南天の所謂“浄化”よりはマシながら、近いことをやろうとした事もある恐ろしい男なのだ。

 

 彼を知る者達はヴェランス皇帝という幼なじみで有り、親友が出来た事で、多少丸くなったという。

 

 絵画や芸術にも熱心に取り組み、彼の描いた絵画は日本円にして時に億の値が付くほどの仕上がり。

 

 色んな意味で丸くなったアドルフ・ヒトラーという男は、それが故に苛烈さの部分が目立ってしまうのだ。

 

「まあよい。日本の領海に無断侵入しようとしたのは事実。日本の裏庭である東南アジア……ああ、位置が変わったから日本は欧州大陸に近くなってしまったのだな。お陰で50もの戦略型潜水艦隊を出せたわけだが」

 

 ブリタニアも日本もまず日本の領海に戦略潜で入るのは許さないし、ゲート向こうについては今会議で話しが煮詰まってきているとも言う。

 

「ゲート向こうのブリタニアの全エリアの自治国化か。しかし、そうなると弱腰になったと判断した中華の宦官共の残党なりそれなりに大きな勢力が攻め寄せては来んかね?」

 

 マンフレディが手を上げる。

 

「その懸念は正直あります。キュウシュウ戦役という形で中華連邦東北軍管区が向こうの澤崎敦を傀儡に立てて攻め寄せておりましたので。ここでブリタニアが弱気な路線を打ち立てると」

 

「下手な戦乱が起きかねんと」

 

「はっ、その通りであります」

 

「火種が燻るのは厄介だな。こちらでもあちらでも。世界一つという巨大市場。こちらも含めれば取りあえずは大東洋経済圏という大市場が手に入った。危険極まる南天もこの世界には居ない。懸念事項は古の魔帝とかいう御大層な国だが、我がAEUだけでも対処可能な上に、日本とブリタニアが地上から、海から、そして宙から狙っている、伝承に聞く分でも通常兵器で対処可能な相手だ」

 

 

 南天までが転移してこなければな――

 

 

 その言葉にゲーリング、マンフレディ、ファルネーゼの三人はぞくっと悪寒が走った。

 

 南天が転移してくる可能性。

 

「絶対にないとは言えんだろう。無いに越したことはないがね」

 

 ヒトラーも冗談で口にしただけで南天が転移してくる可能性は否定した。

 

「しかしジルクスタンと中華連邦は転移してくる。日本とブリタニアが開発した時空間の観測カウンターが指し示しているらしい」

 

 一時周辺の防衛に軍を出さなければならないだろう。

 

 中華連邦は何処の勢力圏にも属さず、ジルクスタンは敢えて言うなら中華の保護国。そして両国共に南天に痛めつけられているその復興も必要と。

 

 場所的には東南アジア諸国、その盟主の日本か。だが日本は今国土ごと欧州よりも西に転移してしまったからな。とヒトラーは考える。綺麗に整えられた七三分けの黒髪の一部が額に垂れ、それを掻き上げるヒトラーは。

 

「しかし、相も変わらず突出しているな」

 

 別の資料を見て愚痴をこぼす。

 

 改大鳳型航空母艦:30艦

 

 新紀伊型強襲揚陸艦:30艦

 

 超重型斑鳩級浮遊航空艦:10艦

 

 重斑鳩級浮遊航空艦:350艦

 

 斑鳩級浮遊航空艦:600艦

 

 軽斑鳩級浮遊航空艦:700艦

 

 小型可翔艦:1250艦

 

 主力水上艦艇:1500艦

 

 小型水上艦艇:520艦

 

 通常揚陸艦艇その他:2550艦

 

 第六~六.五世代統合打撃戦闘機:18000機

 

 作戦機:13000機

 

 戦車・装甲車両:123000両

 

 作戦車両:125000両

 

 第9.5世代KMF:7騎

 

 第9世代KMF:860騎

 

 第8.5世代KMF:4700騎

 

 第7世代KMF:17000騎

 

 第5世代KMF:21000騎

 

 第4世代KMF:22000騎

 

 戦闘用・輸送用VTOL:9500機

 

 大和型戦艦:4艦(満載排水量168000t)

 

 戦略F型潜水艦:300艦

 

 攻撃F型潜水艦:500艦

 

「これに加えて宙にはアレが二基。惑星が変わった事による重力計算や軌道計算やらで今は使えんらしいが、だからなんだというのか」

 

 南天で四十数個群の空母戦闘群を持ち、ブリタニアに至っては56個群の空母戦闘群を持つに至っている。

 

 世界大戦後に日・ブ・南の戦力は肥大に肥大化してしまっている。しかもこれを今後通常戦力として組み込むというのだから、この三国の経済力や科学技術力、資源力には恐るべきものがある。

 

 AEUは確かに超大国へと成れた。超大国へと成長したが、けして二つ名の超大国にはなれないのだ。

 

「そこが歯痒いのだがね……、ふう、まあよい。ゲート向こうのシュナイゼルに、ユーフェミアは飾りか。シュナイゼルに会議場で問い質すとしよう。今後の動きについてを」

 

 

 

 

 24砲艦外交の前に 広がりゆく世界

 

 

 

 

 パーパルディア皇国第一外務局

 

「ロウリアの強盗共の動きは止まっているようですね。そのまま味方同士で内輪揉めでも始めて下さったらよろしいのに」

 

 長い髪をポニーテールに纏めた妙齢の美女。第一外務局長エルトは報告書に目を通しながら吐き出す様に呟いた。

 

「アルデ殿、今後の方針と致しましてはどの様に?」

 

 彼女は、報告に上がってきていたパーパルディア皇国軍最高司令官アルデに尋ねる。

 

 現在のパーパルディア皇国軍には約50艦から成る近代海軍、といっても日本基準で85年も昔、一部20年前後前の近代兵器が使われており(電磁砲、KMF、VTOL)、皇国としてはロウリア軍。引いてはロウリア王国等一蹴出来るわけだが、今現在は動きが無かった。

 

「はい。エルト殿。ロウリア軍は未だ600艦程度の木造軍艦と、200騎前後のワイバーン、飛竜騎士団を保有している様子ですが、我が国への侵攻軍。6000余隻と800騎のワイバーンが全滅した事が本国に伝わっているのでしょう。我が国に向けての再侵攻の兆候はありません」

 

「我が国に向けては? では友好国に向けてはあり得るのでは」

 

「は、考えられるのはクワ・トイネ公国ですが、彼の国には現在我が国の魔導戦列艦80艦が買い上げられ配備されております。陸上には我が国から60式主力戦車と最初期型KMF無頼をそれぞれ200、200の400台配備中ですので防備は問題ないかと。陸上への投入戦力はさらに追加するつもりです」

 

「いつの間に?」

 

「レミール様からの指示で次に狙われるのはクワ・トイネだろうと。国境を超えた瞬間第二戦の開始となり、今度は空母ヴェロニア型4艦とパールネウス型4艦も出撃させて、陸・海・空三位一体の攻撃でロウリア王国を滅すと」

 

 滅す。滅亡させる。ロウリア大王の生死は問わずながら、可能ならば身柄を拘束し、無条件降伏に就かせるべしという言葉を賜っていた。

 

「北側諸国の指示でしょうか?」

 

「恐らくは……北側諸国と致しましては我が国を含めた大東洋諸国が不安定なままなのは、火種を残しているのは良くないとお考えの様でして、パーパルディアがやらねばシーランドが片付けるとシーランド王陛下が非常にお怒りになって居るとか」

 

 シーランド──シーランド王国。北側諸国で最も小さな国で有り、国土面積だけで言えばパーパルディアとは比較にならない豆粒のような国。彼の国は超電磁砲の難を辛くも逃れたロウリア軍船の攻撃で漁民に怪我人を出している。

 

 仲間想いで知られるシーランド王国国王ヴェーツは激怒し、パーパルディアがやらねばシーランドがロウリア侵攻を行うと宣告していた。

 

 しかして、その軍事力はアヴァロン級浮遊航空1艦、カールレオン級浮遊航空艦7艦、88,000t級戦艦2艦、80,000t級空母2艦、8,800t級巡洋艦10艦、7,000t級駆逐艦30艦、攻撃型潜水艦8艦。

 

 第9世代KMF紅蓮聖天八極式量産型4騎、ランスロット・アルビオン量産型4騎。

 

 第8.5世代KMFヴィンセント・カスタム68騎、第7世代KMFウィンダム100騎、ヴィンセント100騎。

 

 第5世代KMFグロースター200騎、サザーランド300騎。

 

 水中用KMFポートマンⅡ300騎。水中用KGFヴァル・ヴァロ、シャンブロ多数。

 

「これらの空母戦闘群というユニットを2個組める戦力でロウリアを、その、完膚なきまでに叩き、滅ぼすと……」

 

「……ッ!」

 

 エルトは言葉に詰まる。空母戦闘群に浮遊航空艦隊、最新のKMFや第六世代の極超音速機。これらがロウリアに向けられる。彼彼女等はこの一年で北側を学んできたがゆえに、空母戦闘群やその他の能力を知っている。

 

 もし対峙するとして、如何に足掻いても、パーパルディア皇国に勝ち目無し。大東洋諸国圏の国々全てとも戦えるだろう強大な戦力。

 

 これをロウリア一国に向けるというのだ。パーパルディア軍の戦力だけでもオーバーに過ぎるというのに、シーランド軍が出向けば一時間かからず片付くのではないだろうか。

 

「しかし皇帝陛下は如何様にお考えなのです?」

 

 アルデが聞くと、麗しの美女エルトはハアーっと溜息を吐き。

 

「今一度チャンスをお与えになるそうです。つまりロウリアがクワ・トイネの領海、領土、領空侵犯するまでは様子見と」

 

「それでは北側諸国に示しが付きません! 我が国も加盟しているのですから北側でロウリアは早期に潰すべし! ただしパーパルディア皇国の采配に委ねると仰られた以上はっ」

 

「これ以上はロウリアの出方次第と、後はレミール様の総会での方針説明に掛かっております…………ただ、レミール様は外交官でもあります。その外交の点に於いて大日本帝国の辻卿から共に参りませんかと伺っているとか」

 

「何処へです?」

 

「2万5000km程西へと」

 

「…………は?」

 

 

 ※

 

 

「こ、これが皇都防衛隊陸軍基地、ですか?」

 

 対沿岸戦用の大砲が全て取り外され、これでもかという超砲身の砲台に据え付け変えられている。

 

 命を大事にと言おうか、防御面でも大きく配慮された長射程砲台に、一部には長距離ロケット弾まで据え付けられており、以前のエストシラントの守護塔を知る者からすればまるで別物。

 

 連装式対空銃座や、一分間に1000発発射可能という驚愕にして意味不明な対空連装機銃もあちらこちらに取り付けられており、最早ハリネズミの如き武装と化していた。

 

 この基地一つでムーのマリンが全機撃墜されてもおかしくはない変わりように、案内された列強国第二位のムー国駐パーパルディア皇国大使ムーゲは背筋が凍る思いをしていた。

 

「これが現在のエストシラントの守護塔の姿だ。百以上の対空銃座と、数十の対空機銃、数十の対艦船用砲台とロケット弾で武装された、守護塔というよりかは要塞だな」

 

 強い陸風が吹き付ける中、陽光の輝きを帯びた膝下にまで届くほどの真っ直ぐな長い銀髪をたなびかせながら、その胸の豊かさと同じくらいの自信たっぷりに言い放つのは、頭に金のサークレットを戴いた二十代後半くらいの美しい女性、パーパルディア皇国皇族レミール皇女。

 

 彼女を豪風から守る様にして抱き抱える姿勢で支えるのは、七三分けにした黒髪に黒縁眼鏡を掛けた年の頃三十路ほどの男性、大日本帝国外務省外交官パーパルディア担当朝田泰司。

 

 本日は、ムーゲ大使に現在のパーパルディアを知ってもらおうと、各基地や守備隊、施設など、レミール皇女自らが案内しているのだ。

 

 丁度辻卿より2万5000km程、または2万km西のかなたまで行かないかというお誘いが有り、皇国に帰郷中のレミールは考慮中であった為に、気分転換に現在の皇国の姿を知りたいと予てより申請があったムーゲ大使を案内していた。

 

「泰司」

 

「何です?」

 

 基地、否、要塞の様子に見入るムーゲ大使を余所にひそひそ話を始める二人。レミール皇女と朝田は結婚こそまだだが婚約状態にある間柄で、普段から夫婦として接していたりする。

 

 パーパルディア皇国の皇女が結婚ともなれば大々的に式を挙げることになってしまうので、朝田としてはこのままでもいいと考えているのだが、世間的にも外交的にもそれでは不味いので、何れは大事になる事を覚悟していたりはするのだが。

 

 大体にしてレミールは皇女殿下で朝田は平民なのだ。あり得ない結婚をするのだからあまり大事にはして貰いたくない。

 

 それはさておき、ぼそぼそと話しをする二人。

 

「2万5000km程西のかなたへ或いは2万km、外交官である私が赴くというのは何かあると思うか?」

 

「あるでしょう。といいますかね、レミール皇女が行くなら私も御同行しなければならず、知っていれば情報の共有は致しますよ」

 

「む、むう、確かにそうだな。2万kmならばムー大陸だが、それよりも5000kmのかなたとなると……訪れたこともなければ見た事も無い」

 

「辻閣下より他に何か伺っておりますか?」

 

「うむ、そうだな……、ああ! ブリタニアの英雄皇女殿、マリーベル殿下もグリンダ騎士団旗艦ネッサローズと第二旗艦グランベリー、護衛艦たるカールレオン級浮遊航空艦8艦で赴かれるとか」

 

「そういえばグリンダ騎士団の艦艇と団員増員したんでしたね30艦11万人体制に。30艦中20艦をロデニウス大陸に張り付けて、10艦で西のかなたへ向かいますか」

 

「後はAEUのリッペントロップ外相がアヴァロン級で向かうとか。パーパルディア、大日本帝国、神聖ブリタニア帝国、AEU、四ヶ国が外交的意味合いで向かうとすれば、噂の第八帝国だろうか」

 

 レミールの流れ落ちてきた髪を朝田はそっと彼女の背中へと戻し、彼女の頬に静かに唇を落とし、自身の髪型も崩れていないかをチェックしてからレミールの目を見る。

 

「第八帝国。噂には聞いておりますし、我が国の衛星でもキャッチしております」

 

 朝田が言うと、レミールは愛用のノートPCを開き電源を入れる。

 

「このOSの立ち上げ時間だけはイライラするな」

 

「それはソフトウェアの会社に文句を言って下さい。後、変なアプリを入れ過ぎです。まあそこは置くとしましても、一国の皇女殿下よりのクレームならば多少は改善されるかも知れませんので」

 

 ピ、ポン、パン。

 

 立ち上がるPC。鮮やかなグラデーションが眩しい。

 

 パーパルディア皇国では余程の山の中でも無い限りはどこでもネット回線が繋がる。

 

 当然、皇都防衛隊陸軍基地なら当たり前のように繋がる。

 

「えーっとだ、この大東洋に広がっている大陸群が北側諸国で、それより西の弓状列島が大日本帝国の本土。その北が樺太と神坂、千琴、アリューシャン。グラメウス大陸。九州・沖縄の南が台湾で更に西が海南島。ここがアルタラスで、その南がロデニウス大陸。パーパルディア皇国が此処でエストシラントが此処、と。ずーっと西に進みミリシアルを超え、ムー大陸ここで2万kmだ。その西5000km…………この大陸か。泰司これがそうか」

 

「はい、第八帝国本土ですね。こんなところまで何をしに行くのかは知りませんが、レミール皇女の御召艦である浮遊航空艦デュロと、2艦の護衛艦は高度こそ2万m程の高さが限界ですが、フレイヤ炉を搭載しておりますので航続距離は無限。最高速度も音速に近い亜音速ですので、行って帰ってくるのにそれほどの時間はかかりません。ブースターを使用すればもっと早いのですが……」

 

「しかし日本、ブリタニア、AEUの浮遊航空艦の様に速くはない故に、鈍足の我らに合わせてもらう様で気が引ける……。ま、まあ、それはそれとしてだ。距離2万kmの方について、この距離で第八帝国繋がりとなると。奴らに占領されているレイフォル辺りか?」

 

 レミールが其処まで話したところで、二人の横からぬっとムーゲ大使が顔を見せた。

 

『わっ!?』

 

 驚く二人。二人以上に驚いているムーゲ大使。

 

「こ、こ、こ、これ、は、この正確なる地図は一体?! 我が国が、世界が丸見えではないですかっっ!!」

 

 レミールが目で合図。

 

“話しても良いのか?”

 

 朝田が目で答える。

 

“どうせパーパルディアでは誰もが知っている情報です。一般国民の口に蓋は出来ない。それに書店に行けば軍事関係の情報も手に入りますし……構いません”

 

“わかった”

 

「ムーゲ大使。信じる信じないは御貴殿次第だが、これはこの星を周回する人工の星から発された電波を受けとった電波を使い、仮想の空間の中で電波を実体化させた物だ。この様に地図を見ることも出来る」

 

「う、噂に聞く僕の星、ですな?……それも、話しに聞く物よりも余程に高度な……。こ、これは、貴国が」

 

 動揺するムーゲ大使にレミールは頭を振った。

 

「まさか。元々が魔導の国であった皇国にこの様な高度な科学技術があろう筈がないだろう。これもこの一年と少しの間に異常発展を遂げて行っている皇国の発展を促している北側諸国よりもたらされた物だ」

 

「北側、諸国……」

 

 腕を組み、口許に手を当てるムーゲ大使。イケメンがやると実に様になっている。

 

「レミール皇女は」

 

「ん?」

 

「レミール皇女はその北側諸国の盟主国の大使を務めていらっしゃるともお聞き致します。一体どの様な国なのですか? パーパルディア皇国、アルタラス王国、フェン王国、マール王国、クワ・トイネ公国、クイラ王国、何れの国でも乱れ飛ぶ情報が錯綜して真実が分からないのです」

 

 基地の要塞化、巨大戦艦の出現、その他鋼鉄艦船の出現。見たことも無い単葉航空機の群れ。全てがオーバーテクノロジー。だがしかし現実にパーパルディア皇国はそれを実践配備している。

 

 仮に今、ムーとパーパルディア皇国が戦争になれば、口惜しいことながらムーは確実に負けるだろう。それだけの差がある。特にあの76800tという巨大艦4艦と、2000は超える単葉機群。

 

 あんな化け物と相対して勝ち得る要素など僅か足りとて存在しない。おまけにレミール皇女の御召艦とその護衛艦の3艦の空中戦艦。あれに至ってはもう意味不明だ。

 

 ここで朝田が口を開く。

 

「ムーゲ大使。北側の、日本の何を知りたいのですか? 軍事力ですか? 文化ですか? 歴史ですか?」

 

 瞑目するムーゲ。顔を見合わせるレミールと朝田。

 

 そしてムーゲは口を開く。

 

「全て――叶うならば全てを見知りたいのです」

 

 レミールが言う。

 

「全てを見知るとなると、貴国ムーも日本……ああ、いや、北側諸国と伝手を持つことだな」

 

 パーパルディアの場合は伝手も何も無かった。砲艦外交で無理矢理国家元首を変更させられ経済圏に入れられたのだから。

 

 無論、今となってはその結果がとてつもないプラスとなって皇国中を潤すという素晴らしい還元となった訳だが。

 

 信じられないことに皇国のGDPは前年比2800%で、まだ上昇中なのだという。国力がいきなり30倍近くになったのだ。もう国民総出でお祭り状態である。

 

 しかもデュロ工業地帯への北側諸国の無茶苦茶な投資と援助による超絶的近代化と重工業化を果たし。

 

 各地方都市の怪物的近代化によって、パーパルディア皇国はミリシアルやムーを一足飛びに超えて凌駕する近代国家へと改造されつつある。

 

 軍事力に至っては既にミリシアルを超え列強に固執していれば、列強一位となっているのだ。

 

 だが、パーパルディア現皇帝も、レミールも、北側諸国との出逢いから、この星の恐るべき広さを知る事、宇宙という途方もない世界を知る事で、自分たちが如何に小さな地域で列強列強と争っていたのかを知るにつれ、列強には意味は無いと考えるようにもなっている。

 

 無論のこと、看板としての列強の意味はある為、看板は掲げ続けるが。ミリシアルでさえもシーランドにすら適わない事実の前には陳腐化したとも言えようか。

 

 恐ろしいのは北側諸国にとってはこれでもそんなに大したことないという事実だ。レミールはどれだけやねんと慣れない関西弁を呟いた。

 

「パーパルディアの皇族であらせられるレミール殿下に対して真に以て御無礼ながら無礼を承知の上でお頼み申します、レミール皇女殿下に北側諸国に対しての伝手となって頂く事は可能でしょうか」

 

 朝田は思う。いや、あなたね無礼も無礼でしょう。一国の皇女殿下に伝手になれって。

 

「別に構わんが」

 

 安請け合いするレミール。朝田は目を剥く。この人のプライドは柔らかくなったとは言え高い方。

 

 そんな彼女が簡単に引き受けようとは。

 

「えっ?レミール皇女宜しいのですか?」

 

「不遜だの非礼だのならば私は近所の悪ガキに受けて居るぞ? この前水玉風船をぶつけられた……。不敬という意味では泰司、お前にもな」

 

「私は礼節を以て接しているつもりですが」

 

 最初は高慢ちきなクソ女と考えていた物だが、お互いに情を交し、彼女が変わっていき、情交を交わす様になってからは常に彼女を立てているつもりだ。

 

 男と女として濃密に愛し合うようになったからこそ、よりパーパルディア皇国皇族レミール皇女としての彼女に接している。公私を問わずして。

 

 だがそのレミール自身が否定してきた。それも実に大人げない、どちらが大人げないのか分からない痴話喧嘩で。

 

「礼節を以て接しているつもりならばどら焼きの一つや二つ食べたくらいで頭をはたくな! 私はパーパルディア皇国の皇族ぞ!」

 

「皇族であらせられるのでしたら手癖を直して下さい! 大体アレ高かったんですよ!」

 

 ごちゃごちゃと痴話喧嘩を始めたレミールと朝田、そんな二人を見遣りつつ北側諸国とはと考えていたムーゲ大使。

 

 その上空を。

 

 

 何かが通り過ぎ──キーンっと甲高い音が鳴り響き通り過ぎて行った。

 

 間違いでなければ音が無かった。音よりも先に機体が通り過ぎて行った、

 

 

「なっ、なっ、なななっ、なんですかあれっ、速いっ、プロペラが無いっ!?」

 

 普段の冷静さはどこへやら。飛び去り消えて行った物を指さして叫ぶムーゲ大使に、朝田は冷静に。

 

「ああ、橘花弐式ですね。最高速度はM1.4~6です、大したことありません」

 

「マッハ?」

 

「音の速さを示す単語です。先日パーパルディア皇国追加支援項目に100機入ってたやつですよ。戦闘用ですが、今は練習用です」

 

「お、音の、速さ」

 

「早う物にならぬか?」

 

「無茶言わないでください。そもそもレシプロ機とは全くの別物ですので。そもそも貴国には2100機もの単葉機があるでしょう。震電改に至っては亜音速まで行けるんですから。それに橘花弐式も戦力化は遠くないでしょう」

 

「そうか」

 

「レミール皇女、朝田外交官」

 

「どうされた?」

 

「どうしました?」

 

「あれは、日本から見て」

 

 ムーゲが言おうとした言葉を遮るようにして、ノートPCのWikipediaを開いたレミールは。

 

「75年前の骨董品らしい。信じ難いがな」

 

 無情な一言を突きつけた。

 

「ああ、それとムーゲ大使に言い置いて置こう。あの機体、橘花弐式とその先を見据えることに合わせて大日本帝国・神聖ブリタニア帝国・AEUのモノ好きな方々とスメラギ・倉崎・ランペルージの重工業連が二艦の航空母艦を我が国に供与してくださるらしいのだ」

 

 名は星の如き美しさを誇るエストシラントから取った。

 

「あ、あの40000t級の大型空母にまだプラス供与っ!?」

 

「ああ、あれらは橘花弐式には使えんらしいからな。どうすればいいかと掛け合ったところ。良いでしょう!やりましょう!と使わなくなった空母を一艦新造艦艇と同じくらいの物に仕上げて贈ってくれるそうだ一ヶ月でな」

 

「ば、馬鹿なっ!」

 

 朝田が補足程度に付け加えた。

 

「月刊空母とかが可能なんですよ我々の国」

 

「ムーゲ大使、常識とはな。掃いて捨てる物だそうだぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 パーパルディア皇国

 

 スターロード級航空母艦

 

 一番艦:スターロード

 

 二番艦:アースロード

 

 

 基準排水量:62000

 

 満載排水量:77000

 

 全長:324m

 

 最大服76.0m

 

 水線幅38.7m

 

 吃水:11.0m

 

 主機:フレイヤ炉

 

 推進機:スクリュープロペラ4軸

 

 出力:300000馬力

 

 速力:37ノット

 

 航続距離:∞

 

 乗員:個艦要員3002名

 

   :航空要員2500名

 

 搭載機:90機、橘花弐式

 

 

 

(どんな傾向かを知りたいのもありまして

  • ミリシアル好き
  • ミリシアル嫌い
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  • グラ・バルカス嫌い
  • ロウリアは徹底的にやっちまうべき
  • ロウリアにも救いを
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