砲艦外交の前に   作:休日

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ムー国技術士官マイラスの朝は早い。


26砲艦外交の前に砲艦外交?

 

 

「戦艦パールネウス型。満載排水量76,800tの巨大艦。未知の強力な主砲を持ち、その射程は300kmか」

 

 嘘か本当か。真実を知る特派員が自ら見たそのままをラジオが垂れ流している。

 

 本当にいいのだろうかと思わなくもない。自分自身の目で見たのは自分もまた同じなのだが、神聖ミリシアル帝国のプライドが傷つくのでは?

 

 とにかくあの国の指導部はプライドが高い。以前までのパーパルディア皇国や、レイフォル、パガンダ、ロウリア等、異様なまでにプライドの高い国に霞められて見えていないだけなのだ。

 

 そして、ムー統括軍所属 情報通信部 情報分析課の技術士官マイラスこと私は考えていた。

 

 東の第三文明圏唯一の列強国――パーパルディア皇国が彼の巨艦を建造だと?

 

 そんな事がある筈もないだろう。

 

「あんな隔絶した科学力の結晶体を、あんな代物を、我が国よりも五十年から六十年ほど遅れた技術力しか持たないパーパルディアが保有している筈がない。だが、現実に第八帝国と同等か上回る程の大戦艦を4艦も保有している。その他にもラ・カサミに匹敵する巡洋艦が4艦、その他も全てが総甲鉄製」

 

 ミリシアルなどはパーパルディア如きと無関心だが内心はどうだか。

 

 それに我が国はそれなりに諜報員もいるのだ。にも関わらず、ふっと湧いて出たかのような軍艦達。

 

 彼の国の既存の軍艦──魔導戦列艦1,000艦は爆破処分され、国力に見合わない戦争の繰り返しと、無秩序な領土拡大で、遂に財政が底を突きかけてきたかと思っていたところだが……。

 

 エストシラント沖大海戦観戦より帰国して幾日。マイラスはあの謎の巨大軍艦群と科学技術大国にして列強第二位のムーでさえ持ち得ない単葉戦闘機群の事ばかり考えていた。

 

 レミール皇女殿下に問い質せば「北側が」と言い、どこかの国の存在を暗喩。そして、レミール皇女の傍仕えの様にして一緒に居た、眼鏡に七三訳の髪型。パリッとしたスーツ姿の男性──朝田泰司といったか。

 

 彼は別にレミール殿下の傍仕えや所謂男娼的な存在でもない。歴とした役人。それもパーパルディア皇国のではない役人だ。

 

「ムーゲ大使ならすべて御存じかな?」

 

 これらの事、全てに絡んでくる名前がある“北側諸国”

 

「北側諸国……そのままを意味するのならばフィルアデス大陸北部。若しくは未開の地である魔物の巣窟グラメウス大陸……」

 

 答えを出そうとし。

 

「いや、違うな」

 

 彼の聡明な頭がそれらを否定した。

 

「或はだが、まだ知られていない地域。誰も行かない地域……」

 

 この第一、第二、第三文明圏。アニュンリール皇国より侵入が禁じられている南方世界。西にあると思われる第八帝国。

 

 では東は? 東はどうなのだろうか? 東は何処までも続く広い大海原が広がるのみで果ての果てまで何も無い海域。そして誰も調査していない地域でもある。

 

 広すぎる上に陸が無い。航続距離が足りないなどの理由がある。

 

 正確には調査こそした物の何も無かったというわけだ。そして、調査するにはあまりにも広すぎた。

 

「うーん、あの空飛ぶ戦艦なんかはもうさっぱり分からない代物だからなあ」

 

 あれもこれもどれもお手上げとしか言い様がないのだ。

 

 あまりにも技術格差がありすぎる。どう考えてもおかしい。

 

「他にも60式主力戦車という装甲車両にKMFと呼ばれていた鉄のゴーレム。VTOLとかいう垂直離着陸可能な機体。説明を受けたが、60式主力戦車は一撃でリントブルムを爆砕するというが、これは諸外国が述べるように軍縮した。減らしたどころじゃない。反対だ。数十倍単位で戦力が増強されている。数ではなく質的戦力に置き換えられているのだ。相当な戦力だぞ」

 

 まず整理しよう。

 

 空飛ぶ戦艦が3艦。

 

 ヴェロニア型大型航空母艦が4艦

 

 パールネウス型巨大戦艦が4艦。

 

 パール型重巡洋艦が4艦。

 

 ミシュラ型駆逐艦が16艦。

 

 名前のない№で呼んでいるらしいコルベット艦が12艦。

 

 こちらも№リングで呼んでいるらしい戦車揚陸艦が4艦。

 

 航空機がVTOLとかいうのを含めて2600機と少し。

 

 KMFがブライというのが500騎、グラスゴーというのが500騎の計1千騎。どちらも見た目は同じだが、細部に僅かな違いが見られる。

 

「違う。やはり違う。これはやはりパーパルディアの独自技術じゃない。恐らくその北側諸国の物だ……ではその北側諸国とは何者かとなるが、まず偏にまずすぎる。第八帝国の超巨大戦艦処じゃないぞ」

 

 これがもし、第三文明圏を軸とする侵略行為の始まりだとしたら?

 

「北側諸国とやらには更に強大な戦力がある筈だ。覇権主義的な国家群であったなら……」

 

 マイラスはいや~まいったまいったと頭の後ろをぱしぱしと叩く。

 

 

 

 26砲艦外交の前に砲艦外交?

 

 

 

 対処も分析も何一つ出来やしない。何せパーパルディアに供与されたのだろうこれらは、二線級か三線級下手をすればそれ以下の骨董品の代物な可能性が極めて高いからだ。

 

 何故なら普通の国家は、国家同士での軍事物資の売買で優れている方が購入側に対し同等の性能の物を売却したりはしない。意図的にスペックダウンした物を売り渡す。常識だ。

 

 北側諸国とやらは、別に売却しても問題が無いと判断した兵器のみを、パーパルディア皇国に売却したのだ。スペックダウンはしていないとみた。恐らくだが行う必要が無いと判断して。

 

 それどころか名前からしてスペックアップしている。

 

 とんでもない巨大戦艦パールネウス型戦艦を初めとした海上戦力。

 

 震電改という名の戦闘機を初めとした各種の航空戦力。

 

 60式主力戦車とKMFという陸上戦力。

 

 残念ながら何れもがムーから見て完全にオーバーテクノロジーであった。見てきたからこそ分かるという物ながら複雑な気分だ。

 

 空飛ぶ戦艦に至ってはおとぎ話の中の物でしかなく、対抗手段がない。

 

「ああ~もう、第八帝国といい、北側諸国といい! 何故こうも訳の分からない巨大新興国がいきなり現れたんだッ!」

 

 まず第八帝国。

 

 こちらは6~70,000t級の超巨大戦艦を以てしてパガンダ王国と、列強第五位のレイフォルを滅亡させた。そして滅亡させた二国を植民地化して、更なる膨張への野心を剥き出しにしている様子が窺えた。

 

 次にパーパルディア皇国。こちらは手札であった魔導戦列艦を全廃、一部売却し、自国は少数の艦隊と2千機を超える航空機。2千を超える機械式陸上戦力を手に入れ、目下自国へと侵略してきたロウリア王国軍を、文字通り“全滅”させてしまった。

 

 その後は戦車揚陸艦・ドック型輸送艦という、全通甲板を持つ大型の艦でクワ・トイネとロウリアの国境に続々と60式主力戦車、KMFを集めて警戒に当たっているらしい。

 

 そう言えばそのクワ・トイネ公国のあるロデニウス大陸上空に13個の黒い点が浮かんでいるとシオスに駐在している同僚が言っていたが、最近になってその点が30個に増えたとも言っていたな。

 

「……ッ!! ま、まさか……」

 

 ロデニウス上空の点も空飛ぶ戦艦だったりするのではないだろうか? そ、そんな大量の空飛ぶ戦艦があるのか?! では…………、では、仮にそうだとして目的は? 何故動きを見せない? ロウリア側の謎の勢力だろうか……?

 

 いいや、そんな筈はない。あの強引な外交に下手くそ外交を足したようなハーク・ロウリア大王の手腕で其処まで出来る筈も。

 

「見張っている、のか? ロウリアを?」

 

 だとしたら、空飛ぶ戦艦を手に入れたパーパルディアの動きといい辻褄の合うところも出てくる。

 

「パーパルディアをせっついている? うむ……早く叩き潰せ、とか?」

 

 可能性としてはあるな。

 

 陸にはパーパルディア軍以外の、実に、これでもか、と洗練された軍隊も上陸してきているらしい。

 

 グリンダ騎士団と彼らは名乗っており、何でもパーパルディアとクワ・トイネ軍の側面支援に参上したとか。

 

 クワ・トイネ在住の諜報員がそのグリンダ騎士団の所属を伺うと、『神聖ブリタニア帝国軍』の名が出てきた。

 

 私は察した、その神聖ブリタニア帝国は北側諸国の一国だと。

 

 更に海の方に目を遣ると、この一年でパーパルディア、クワ・トイネ、クイラの順で大拡張されていた港に、白地に赤い太陽が陽光を放っているような旗を掲げた、とてつもなく巨大、超巨大では収まらないほど巨大な軍艦が入港してきたのだと。

 

 目測で全長350m超だというのだからもう笑うしかない。そんな空母がこの世にあってたまるか。しかし事実なのだろう。空飛ぶ軍艦を見た後だとインパクトもインパクトとして感じない。感覚が麻痺してきているな……。

 

 彼の巨大軍艦も全通甲板であるという処からして空母なのは間違いない、此処でもまた北側の軍艦だ、間違いないだろう。この情報、クワ・トイネやパーパルディア、アルタラス、シオスといった第三文明圏、パーパルディア皇国皇族レミール皇女殿下の言によれば『大東洋経済圏』の北側友好国では何処ででも手に入る大したことではない情報とのこと。

 

『私の言葉に疑いを持つのならばエストシラント内の書店で『別冊宝大陸大日本帝国陸海空海兵隊+宇宙軍最新事情・皇歴2023年度下半期』と、やたらと見出しの長い本が販売しているから、それでも見よ』

 

 とのありがたいお言葉を頂いたので、早速購入しようとしてみれば、見事に売り切れだったというオチなのだが。

 

 話を戻すと、そのクワ・トイネの港に入って来た軍艦や、港の沖に停泊している軍艦は航空母艦1と軽巡洋艦2、駆逐艦4、潜水艦2、大型補給艦1の10艦で構成された1ユニットの部隊。空母機動部隊らしい。

 

 潜水艦というのが何かは知らないが、潜水という言葉の意味から察しが付いた。もう驚かない。十中八九海の中を潜り進む軍艦だ。ふぅ~、信じられないな。ともあれ。

 

 目視の範囲では17,18艦程で、とても大艦隊とは言えないらしく、砲門の数も5インチ程度の単装砲しか兵装が無い小艦隊に見えるとの事で。

 

 彼らに伺ったところ、軍人さんは快く答えてくれて「第11空母戦闘群」「第2遠征打撃群」という部隊名まで判明した。

 

 空母機動部隊ではなく、空母戦闘群か。空母機動部隊を遙かに強力にした物といったイメージだが。

 

 どうせ明かしても問題ない範囲の情報なのだろう。我が国では軍機に当たる内容でもその国――大日本帝国では軍機ではない。

 

「しかし第11という事は、大日本帝国とやらはその巨大空母で構成される空母戦闘群とやらを最低でも11個群編成可能。つまり、110艦の海上戦力があり、遠征打撃群とやらが同数なら……まずい、やはりまずいな」

 

 大日本帝国、こちらも北側諸国の一つなのだろう。彼の国にとって重要でも何でも無いお話しでしかなく、簡単にユニット名を教えてくれたということだが。

 

 もしも我がムーと事が起きれば、最悪76,800tの戦艦をして曰く“おもちゃ”等と断言できてしまう様な列強を凌駕した国々の一国を相手に、200艦からの主力艦が敵に回る……。

 

 空母以外の艦が単装砲なのも何か意味がある筈だ…………要らない? 砲が必要ない兵器を保有している……!? そして航空機は! パーパルディアには“おもちゃ”しか渡していないというのならば……くそ、想像が付かない。悪魔的な戦闘機だということしか。

 

 つまり、その空母戦闘群というユニット、考えるまでもなく強い。ただの強いではなく、圧倒的に強い筈。

 

「……考えたくないな」

 

 それ以上の情報は今のところ届いていないが、陸から、海から、空から、ロウリアは全方位から封じ込められている。

 

 これは技術士官以前に軍人としての考えだが、パーパルディアとクワ・トイネにロウリアの首を落とさせるつもりかも知れない。

 

 昨年まで魔導戦列艦なんて古風な軍艦を使い有頂天になっていた処へ、頭を殴りつけられるかのような衝撃があったであろう我が国ムーを超える兵器の数々。それを慣らすための実戦のようにも。

 

 クワ・トイネには魔導戦列艦の実戦使用を経験として積ませる。そうして何れ近いうちにパーパルディア並みの戦力を持たせる。

 

 まあ、クワ・トイネはともかくとして、パーパルディアには間違いなく練習相手としての的にされたなロウリアは。

 

 これは北側諸国の描いた絵だろう。そして取りあえずの選択はロウリアに与えられた。

 

 最後の一手としてロウリアが攻めてくるか? それとも停戦講和の運びとなるか? 選ぶのはロウリア次第だが。

 

 6千余隻の軍船を消し飛ばされて、800騎の飛竜騎士を落とされて、この状況下でまだクワ・トイネへと攻め込む算段を立ていたりしているのだろうか? 兵だけはまだ70万は居るらしいが。それで行くか?

 

「だとしたらもう思考回路が壊れているとしか思えないが、ロウリアの大王は人族至上主義者の人種・種族差別主義者の権化みたいな男らしいからな……。ああ、あとクワ・トイネが購入したパーパルディアの魔導戦列艦は80艦とかいう話しだったな」

 

 一年数ヶ月前までの間は一線級かそれ以上に輝いていたパーパルディア皇国の魔導戦列艦。ロウリアは未だ木造船の小型船とはいえ600艦程度の海軍戦力があるという。ならばとパーパルディアが駄目ならクワ・トイネへと馬鹿なことを考えるかも知れない。

 

 一度戦争を始めて頭に血が上り、興奮状態になってしまった為政者や軍部は、中々止まらない物だ。特にロウリアのような国は。

 

「こう言っては悪いが、一年と少し前のパーパルディアと同じくらいに品性の欠けた覇権主義国家だからな」

 

 解析本が手に入らなかった以上は北側諸国の実態を窺い知ることは出来ない。

 

 だが、今のパーパルディア皇国ならばロウリア等一蹴してしまうだろう。

 

 零式艦上・陸上戦闘機、震電改、BF109改、P51、総数2,100機から成る航空隊。

 

 我が国を全ての面で上回る海軍艦艇。特にあのパールネウス型巨大戦艦。

 

 陸上に於いては60式主力戦車なる戦闘車両500台と、人型自在戦闘装甲騎ナイトメアフレームなる初めて見る兵器群1,000機。

 

「パーパルディアが負ける要素がなければ、ロウリアが勝てる道理もない、か……しかし、ここまでの援助を片手間のように行えてしまう北側諸国。本当に何者なんだろうか?」

 

 彼の国々が現れてよりだろう。パーパルディア皇国の異常発展が始まったのは。

 

「たった一年でGDP驚異の2,800%アップだからなあ。普通に考えてあり得ないぞこれ。皇国大改造の前から上昇を始めた分まで含めると優に3,000%を超えている。奇跡としか言えない。とても世界に覇を唱え、世界征服などという愚かな野心を抱いて戦争経済で不健全な国家の回し方を行っていたルディアス前皇帝が治めていた国と同じ国とは思えない」

 

 この間、観戦武官としてパールネウスに乗船して、他の都市の状況も見てみたいと、皇都近郊の街を見たがあれはもう別の国の都市だ。高いビルディングが乱立し始めていた。

 

 下手をすると皇都よりも発展している。皇国のレミール皇女殿下や第一外務局長のエルト氏、第三外務局長のカイオス氏に直接お伺いしたが、皇都より地方の都市や工業都市デュロの方が発展していると言っていたし。

 

「いずれ足を運んでみよう。我が国を追い越して行った。それも我がムーの得意分野である科学分野で追い越して行ったあの国の全貌を見に」

 

 あれこれと今戦争についてや、パーパルディア皇国現皇帝陛下のセレミア皇帝が打ち上げた『皇国大改造』の一年少しについて思いを馳せていたところ。

 

「ん? もうこんな時間か」

 

 考え出すと思考が止まらなくなる。

 

 何事に於いてもそうだが自分という人間は考え事の多い人間なんだろうな。

 

 そして純粋に機械いじりが大好きだ。

 

 機械や技術的な何かを触るためにこの職に付いた様な物だからだ。

 

 

 

 タクシー乗り場まで来てタクシーが来るのを待つ最中、ふと通り過ぎていく路面電車を見る。

 

「いいな。いい日常の絵だ」

 

 だが、最近思うことが増えた。このまま車が、自動車が発展していけばあの路面電車が邪魔となり、撤廃されてしまうのではないか?

 

「街が発展していくことには大いに結構なのだが、風情がなくなるのは寂しい物だ」

 

 考えてる間に丁度タクシーがやって来た。

 

 パッと高く手を上げると、乗り場の前にて停車する一台のタクシー。

 

「お客さんどこまで?」

 

「アイナンク空軍基地までお願いします」

 

 私の朝は早い。

 

 

 ※※※

 

 

「失礼します。技術士官マイラスです」

 

 しかし、わざわざ空軍基地に呼び出すとは、一体何の用だろうか……?

 

 控え室に通され、外務省から呼び出された意味を考える。

 

 最近赴いたパーパルディア皇国での報告について、何か記載漏れでもあったのだろうか。

 

 包み隠さずに、有りの儘を報告させて頂いた筈だが。

 

 眼前には畑違いの衣服を着た二人、外交官がいる。

 

 外交官と言えばレミール殿下も外交官に成られたそうだな。広い世界を見てみたいか。

 

 それもまたいい。知らない土地、知らない風習、未知を既知へと変えていく。昔風に例えるのなら冒険者といったところか。

 

 おっと、いかん。余計な事は置いておこう。今は仕事の時間だ。

 

「紹介しよう。彼はこの若さで我が軍一の技術士官になった天才だよ」

 

 天才とは言い過ぎですが、努力してきた自負はある。

 

 外務省の外交官らしき人物が歩み寄ってきて握手を求められた。

 

 二人の外交官の握手に答え、席に着く。

 

「君を呼び出したのは他でもない。実は外交の場でとある新興国家群の技術水準を測って欲しいのだよ」

 

 技術水準を測る? グラ・バルカス……第八帝国だろうか?

 

 パーパルディアにはもう行ったし、それとも正体不明の北側諸国?

 

 いや、新興国家群と言ったな。

 

「グラ・バルカス帝国ですか?」

 

 一応探りを入れたが。

 

「いや違う。そちらも新興国家だが、君に調べて貰いたいのは大日本帝国、神聖ブリタニア帝国、AEU、シーランド王国、これらの国々だ」

 

「4ヶ国!?」

 

「まあまあ、本当は全てを調べて貰いたいのだが、重要なのは大日本帝国と神聖ブリタニア帝国となるな。彼の二国の内の一国は大東洋諸国圏に突然現れた国だが、もう一国は東の果ての果て、大東洋の海域に突然大陸ごとこの世界に転移してきた転移国家なのだよ」

 

「転移国家っ!? そ、それでは我がムーと同じ」

 

「そうだ。君は既に一方の大日本帝国の名と存在は知っているね?」

 

「はい。パーパルディア皇国に多大な支援を行い、彼の国の国力を飛躍的に増大させつつ、彼の国の軍事力を根底から覆してしまった国ですね」

 

 あれは何もかもが驚きの連続で、今でもあの18インチ三連装超電磁砲の斉射の瞬間を忘れられない。

 

「うむ。その大日本帝国の方が本日我が国に立ち寄って下さるというのだ」

 

「立ち寄るとは?」

 

「いや、恥ずかしい事だが最近出回っているだろう。ほら、流れてきているインスタントラーメンなど。それを上の方が大層お気に入りになってね。まあ食べ過ぎは良くないですよと先方には注意を受けてしまったが、とにかく日本製品の質の素晴らしさ。これを我が国も取り入れたいというのは」

 

「いうのは?」

 

「上辺でな。本音は第八帝国に対する切り札になれば良いと考えている御仁を大日本帝国の最高の医療で助け、無事回復し、以てグラ・バルカス帝国の覇権主義の楔となって頂きたいという事で、グラ・バルカス帝国が占領中のレイフォルが我がムー大陸にあるだろう? 何とか此処で押し止めたい。そして技術士官の君にはそれ以外に彼の国々……マイラス君程の人間ならばもう察しているかと思うが“北側諸国”の技術力を見極めると同時に、その国民性や文化、思想や主義を戦術士官のラッサン・デヴリンと共に調べてきて貰いたいのだよ」

 

 あの横暴にして傍若無人な第八帝国への楔となる人物……誰だ?

 

「おっと、時間も差し迫っている。まずは技術力の見極めの第一歩だ。頼むよ」

 

「はい。任されました」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 うん。科学技術という得意分野で有り、大好きな分野だから意気揚々と承諾してしまったが、果たしてどん……

 

 

 ヒュイイイイイイ――。

 

 

 な…………空の果てから音が聞こえ。ふわりと静かに降り立ち、砂埃を吹き上げて雑草も根こそぎ吹き飛ばし一瞬の竜巻のような現象を起こした後に。

 

 ソレは静かに降り立った。静止したまま動かないのは、見上げんばかりの空飛ぶ船。

 

 集まっていた飛行場の作業員も飛行士も、軍人も。フェンスの外に居る民間人も見上げている。

 

 いや、見上げずに居られようか? 金属の船というよりも、山が現れた様な物なのだから。

 

「なっ、なっ、なっああ!!」

 

 ラッサンも隣で口を開けている。埃まみれだ。

 

 私は埃を振り払い、ラッサンの埃も振り払ってやる。

 

「わ、悪いマイラス」

 

「いや、今のは仕方が無い。アレで唖然としなかったら私は財布の中身を全部渡してやるところだ」

 

 そんな遣り取りをしながらも、対面する相手の事を考えて襟を正す。

 

 グラ・バルカス帝国の横暴に歯止めを掛けられる人物となれば、身分高き人物に違いないから。

 

 と思いつつ、内心ではこの巨大な空飛ぶ船を見て膝がガクガク笑っているのだが。

 

 とにかく大きい。目測全長350,いや370mはあろうか?

 

 全高は100m近いんじゃないのか? 100mって我が国の超高層ビルの高さだぞ?! こんな巨大な空飛ぶ船が来るとは予想外に過ぎる。

 

 外務省の方々も口が開いたままになっていた。それはなあ、これを見てしまうと……。

 

 

 ガコン。

 

 

 ゆっくり、ゆっくり、静かに背部の扉が、下部ハッチらしき場所が開く音。

 

 降りていくハッチの向こう側に見えたのは、幾人かの人影。

 

 全幅でも150mは在ろう巨大艦。ラ・カサミがちっぽけな戦艦に思えてしまう。

 

 ああ、確かにこんなのがあるのならばレミール皇女殿下の仰ったように、パールネウス型でもおもちゃと言われるなあ~っと、ほけ~っとしているとハッチは開ききり。

 

 艦内より数人の人間種の人が出てきた。

 

「どうも初めまして、大日本帝国外務省の御園です、こちらは補佐官の佐伯です。申し訳ありません、急降下でしたので。お怪我をされた方は?」

 

「あ、だ、大丈夫です、私はムー国技術士官マイラスです。こちらは戦術士官のラッサンです」

 

 紹介されたラッサンは御園と握手。

 

「ラッサン・デヴリンです……それにしても、その、何と言えば良いか……、す、凄いですね……、こんな巨大な船が空を飛ぶだなんて」

 

 迷彩は全体的に青。青色と白。雲と空の色に溶け込めるような迷彩だ。

 

 その大きさ足るやラ・カサミの三倍はありそうな。

 

「さあ、乗って下さい。急ぎますので。正直ある程度は遅くなってしまったかも知れませんが」

 

「遅くなった?」

 

「ああ、いえ」

 

 乗り込むと、扉が閉まり始める。この床も、やはり鉄か…………。

 

 其処は巨大な格納庫だった。私の知る物、パーパルディアの物とは全く似ても似つかない人型機動兵器の群れが整然と並び、ラッシングされ、待機状態に置かれていた。

 

「こ、これ、は」

 

 佐伯が答えた。

 

「ああ、これは第9世代KMF紅蓮聖天八極式の量産型ですね。量産型と言ってもその性能はオリジナルと変わりません。此処には紅蓮聖天八極式量産型60騎と、フリーダム量産型60騎が搭載されています。かつてはどちらも乗り手を選ぶ機体でしたが、現在は対G対策も施されてB判定以上のパイロットでも乗れますよ。各60騎ずつ。計120騎搭載されております」

 

 それがどこまで凄いことなのか? 全く頭に入ってこない。ラッサンも同じ状態だろう。120騎とはまるで空母だなと思いはした物の比較対照が無いので、何とも。

 

 確かレミール殿下に聞いて――。

 

「おお、其処に居るのはいつぞやの観戦武官殿ではないか」

 

 長い銀髪が膝下へと流れ、煌めきを放ちながら揺れ、頭には金のサークレットを戴いて、宮廷服飾職人が仕立て上げたのだろう黒を基調とした豪奢なドレスを身に纏った二十代後半の美女が廊下の先に居た。

 

 一度見たら見間違えようが無い、パーパルディア皇国皇族レミール殿下であった。

 

「れ、レミール様、でしょうか?」

 

 ラッサンが尋ねる。

 

「私が私以外の誰に見えようか? 何なら本物の証に大日本帝国パーパルディア方面外交担当官の泰司、うう、んっ、朝田泰司も居るぞ」

 

 眼鏡を掛けて七三分けの髪型に、ぱりっとしたスーツ姿の、自分たちが会ったことのある人物に、強張っていた緊張がほぐれていく。

 

「お久しぶりです、と言いましても、そんなに久しぶりでもありませんね」

 

 彼と別れて未だそれ程日数は経っていない。なので久しぶりでは無いな。

 

「まあ、ついこのあいだお会いしたばかりですからねえ。あ、もう飛行しますので気を付けて下さい」

 

 ふわっとした雲の上に乗るような感覚と共に、外の景色が変わっていく。重力のような物を感じさせずに高く高く船は上っていく。

 

「この艦は本当の最新鋭艦でしてね。ただまあそちらの技術体系とこちらの技術体系が異なるので大丈夫だろうというのと。最も安全性の高い艦この『月夜見』か、または『大和型戦艦』で行こうかと考えていたところだったんです」

 

 朝田を引き継ぐようにレミールが。

 

「だが、海を進む大和型と空を音速で進む月夜見とでは圧倒的に速度が異なる故に、現時点で10艦しかない日本最大の浮遊航空艦の1艦──月夜見に決まったというわけだ」

 

「こ、これが、日本最大の空中戦艦ですか?」

 

 ラッサンがレミール皇女に尋ねると。

 

「浮遊航空艦だ…………ま、戦艦とも呼べるし空母とも呼べるがな。食堂で諸元表でも見てみるか?」

 

「あ、あるんですか?」

 

「当たり前だ。私を誰だと思っている駐日パーパルディア皇国大使なのだぞ」

 

 そう言えばそうだったな。ほぼ日本に住んでいる彼女なら、こういった物の諸元表くらいはお持ちだろう。

 

 私とラッサン。御園さんと佐伯さん。レミール殿下と朝田さんの六人で廊下を歩いて行く。

 

 世間話的に喋りながらも艦内を見て行く。何処がどうなっているのかを……そうして意気込んで直ぐに無理だと悟った。

 

 明らかに技術体系の異なる科学だと分かったからだ。

 

 どうやらこれはほぼ全てが電気で動いており、ガソリン、石油を使っていない。

 

 それでも盗み出せる物は在る。見いだせる価値もある。何故ならこの艦は無しとしても、この艦の外には護衛の艦も見え隠れって、あれ?

 

 戦闘機が護衛ではない? 艦隊直轄の護衛が艦だけでいいのか? 護衛機はどうするのだろうか?

 

「あの~……朝田さん、レミール殿下……あの飛行機、護衛の戦闘機等が無いんですけど……」

 

「ああ、護衛の戦闘機か。考えてもみよ、日本やパーパルディアからムーまで何㎞離れていると思っている。統合打撃戦闘機秋水と言えども航続距離が足りない。まあそれでも何とかならんこともないが。昔のプロペラ機でもない故な」

 

「はあっ!? に、日本の戦闘機にはプロペラが無いのですかあ?! ぷ、プロペラ無しでどうやって飛ぶんですか!?」

 

 驚く私に御園さんが微笑みながら。

 

「日本とムーが国交を結んで頂けたら、簡単な設計図や原理が載った書籍が幾らでも購入できますよ。ジェット戦闘機といいます」

 

「ジェット、戦闘機」

 

 力強い響きだ。それに、御園さんはジェット機という未知の世界の飛行機に付いて掲載されている書籍が手に入ると仰った。俄然技術者魂が燃えてくるぞ。

 

「しかし、高出力化やエンジンの燃焼温度に耐える素材の具体的な作り方については、法で禁じられているので公開は出来ません」

 

 それでもいい。単葉機さえもまだ未知であるムーには早すぎるが、進化すべき先と順序が分かっていれば辿り着く期間も短くなるからな。

 

「我がパーパルディアでも練習機として大日本帝国よりの供与で橘花弍式を100機導入しているぞ。倉崎F1の契約も終えている。こちらも100機。有償だが100機纏めてお安くパックだから今のパーパルディアなら一括払いも可能だ。何せ古いらしい。日本からすれば三世代以上昔の戦闘機らしいのでな。因みにだが橘花弍式の最高速度は最も早い元最高ランクの竜騎士であったレクマイヤがM1.6を叩き出した。音速の1.6倍だ」

 

「マッハ1.6~ッ?! お、音速……といいますか、レミール殿下の国はジェット機を導入為されていたのですか?!」

 

「ああ。北側諸国の一員として今後を見据えた配慮とやらだ。他では掃海艦4艦、掃海母艦1艦、軽巡洋艦8艦と77,000t型空母が2艦確定で此処までが無償援助枠だ。以後は有償か或は自国生産をするか。その為にデュロ工業地帯は異常近代化を進めているのだ」

 

 ラッサンが呟く。

 

「そ、そんなにっっ!? ぱ、パーパルディアの皇女殿下に対し御無礼とは存じますが、何かずるくないですかそれ。立場を利用されておりません?」

 

 本当に無礼だ。昔の狂犬と呼ばれていた頃の彼女なら某かの刑罰が下るところだぞ。

 

「その分だけ大東洋の入り口の防備は我がパーパルディアが責任を持って為さなければならんのだ。受けた恩の見返りとして、見返りの要求など無いがな。何せ今揉めているロウリア、北側最小の国シーランド王国でも制圧できるのだから最早戦力の土台が違うのだよ」

 

「そ、それは……」

 

 引き攣るラッサンの顔。私の顔も引き攣っていることだろう。北側最小の国でロウリアは壊滅?

 

 ロデニウス大陸で覇を唱え、人口は3,800万人と多いのに、そのロウリアを制圧って……どんな国か知りたいところだが。

 

 因みに聞き漏らさなかった。レミール皇女殿下は確かに仰った。パーパルディア皇国は北側諸国の一員であると。つまりパーパルディアの後ろには強大な北側諸国が居るということだ。

 

「さて、お二人さん。ここが食堂です」

 

 フードコート風に作られた食堂。日本人らしく日本料理が目立つ物の、ブリタニア料理やAEU料理もある。

 

「おお~あるある~。東方から流れてくる食の起源は此処にあったのかぁ~」

 

 ラッサンは湯気の匂いに誘われてお蕎麦を注文。対する私は讃岐うどんなる物を注文。

 

「おお、この口の中でだしが広がり行くハーモニー。わかめと天ぷらが丁度会う。合うではなく会う。君たちに出逢った瞬間に任務の事なんてどうでも良くなってしまった」

 

 はふはふ、ふぅ~っ、ふぅ~っ、ちゅるるるる。ごくん。ああ、最高だ。日本食万歳。

 

 ラッサンはラッサンでお蕎麦を黙々と食べている。ふむ、次に来る機会があるときはお蕎麦を。

 

「マイラスよ貴様口に出すか任務について」

 

「食は任務にも勝ることを教えられました。ですが任務は任務。技術水準を測る事もやらなければ成りません。こんな雲の上、いえ、空が暗い、星が近く見えている気がする……どこまでの高さなのでしょうか?」

 

 疑問を呈していると、その答えは後ろから返ってきた。

 

 

 高度3万5千mです――

 

 

「えっ?」

 

「高度3万5千mですよ。ムー国技術士官マイラス・ルクレールさん、戦術士官ラッサン・デヴリンさん」

 

「つ、辻卿っっ!!」

 

 ババっと身なりを整えて立ち上がるレミール殿下。辻卿と仰っていたが何処かの貴族だろうか。

 

 少し古めかしい丸眼鏡にスーツ姿の男性。年の頃は壮年と行ったところだろう40前後。見た目で判断してはいけないな。エルフ等の長寿の種族もいることだし。

 

 とても丁寧な物腰でレミール皇女殿下から順に、朝田さん、御園さん、佐伯さん、ラッサン、そして私へと握手を求めて、わたくしこういう物です、と。

 

「大日本帝国元財務相、辻政信……」

 

 

 ええええええ~~~~っっ!!

 

 

 大日本帝国について調べて欲しいと言われたら、いきなりトップに近いところが来てしまったぞ。ど、どうする?

 

「美しいでしょう。窓から見える景色。ここは言わば宇宙と星の境目になります。この星、惑星がどれだけ巨大で丸いのか? 蒼く美しい星なのかが良く分かりますね」

 

 辻さん……いや、辻閣下からのお言葉に私たちは皆、天窓やそこらの窓から見える壮大な景色に見とれていた。

 

「星はこんなにも美しいというのに、はぁ~っ、くだらない争い事は耐えません。ですね。グラ・ハイラス殿下――」

 

 その後ろから、4,5人ほどの男女がやってくる。

 

 一人は美丈夫と呼ぶべき人物。誰が見ても王者だという雰囲気を纏う男性。

 

「全く以てその通りですな。辻卿……しかもその争いを起こしているのが我が故国であるとは、いかんともしがたい……戻れるのならばあの時に」

 

「戻ったら死んでますよ。偶々パガンダにまで手を伸ばしていた私の指先があなたに触れただけなのですから。事実、お供の方お一人は残念ながら命を失いました」

 

「そう、ですね……日本の、大日本帝国の高度な医療を受けていなければ私も持たなかったでしょう。改めて感謝を」

 

 深々と頭を下げている人物は、パガンダで不敬を働いたとかで誅殺されたというグラ・バルカス帝国皇族、グラ・ハイラス殿下なのか?!

 

 為人を知らないので私には分からない。だが、王族特有のこの感じ、嘘では無いと分からされてしまう。この方は本物だと。

 

 戦術士官なだけあって皇族・王族と触れ合うこともあるラッサンも礼をしている。

 

「頭をお上げ下さい。私は対話に失敗した愚かな者でしかない。祖国が暴走する切っ掛けを作ってしまった」

 

 純粋に国を憂うハイラス殿下の瞳から一筋の涙がこぼれ落ちる。

 

 外が暗い事もあってまるで流れ星のような涙だった。純粋で美しい。

 

 同じ皇族として思うところがあるのか、レミール皇女殿下も唇を噛み締めていた。そうだ。ハイラス殿下の祖国はパーパルディアのようなレイフォルに弄ばれた挙げ句……。

 

 何かの歯車が違っていればレミール皇女がレイフォルとなっていたのかも知れない。

 

「さあ、ハイラス殿下レイフォルで待っているのは強硬派です。あなたの側近達や穏健派ではありません」

 

 

 まあ、正直なお話、砲艦外交で行ってしまっても良いのですけれどね。

 

 

 辻閣下が瞳の奥をギラつかせた時、窓の外には数えられないくらいの空飛ぶ戦艦。浮遊航空艦艇が陣形を組んで暗い空、宇宙との境目を覆い尽くしていた。

 

「これらの艦艇は大日本帝国が120,神聖ブリタニア帝国が190,別働隊としてグリンダ騎士団から10,AEUから70,シーランドから8,、インドシナ連邦から17,インドネシアから20,アルガルヴェ連合帝国から32,ギアナ公国から13,アラウカニア=パタゴニア王国から24。総計504艦の浮遊航空艦隊の合流地点が此処であったという訳です」

 

 飛んでいるKMFは全て第9世代機。既に各艦から発艦を終えて待機中です。つまりは遥か下、1万5千m付近の合流地点に人型機動兵器の群が飛行している飛んでいるという。

 

「こちらの戦力は浮遊航空艦504艦、KMF第8.5世代機以上が約7,000騎、輸送・戦闘用VTOL約5200機、これらKMFとVTOLは艦載機です。海には我々北側の軍の潜水艦隊が遊弋しているでしょう。深い深い海の底で、ね。他には海上艦艇も何もありません。陸にも何もありません……が、勝つのは私たち北側諸国同盟です。さあ、ハイラス殿下。参りますよ? あなたの話し合いをしに」

 

 全部合わせて飛行艦艇やらなにやら合計して12,704って、これもう空飛ぶ戦艦と、人型兵器と、何か良く分からないVTOLとかいうのの雲だよなあ~とぼんやり考えながらマイラスとラッサンは現実逃避。

 

 反対にレミール、朝田、御園、佐伯は事前に与り知っていた為に覚悟を決める。戦争じゃない。話し合いに、国交開設に行くのだと。

 

「ええ、了解です。これ以上の祖国の暴虐は見過ごせない」

 

「一応念のため、これは見せ札ですが、失敗したときは貴帝国の軍部と政治局と占領行政地区が全て壊滅すると思って頂きたい、本国や北側からも追加派兵を要請しておりますので。未来の戦乱の種を残しておく程、御帝も嶋田前宰相も、私も、私“達”も、甘くは無いのでお覚悟を」

 

 ……、私達は、意図せずして何かとんでもないことに巻き込まれてしまったのでは?

 

「ああそれとマイラスさん、こんなことに巻き込んでしまったあなたにお土産です」

 

 ひらっと渡されたのは冊子。冊子? この緊急時に?なんだろうか。

 

 ぴら、開いてみると。

 

 

 超重型斑鳩級浮遊航空艦(現在10番艦まで保有)

 

 全長:374m

 

 最大幅:165m

 

 全高:105.5m

 

 巡航速度:1,000㎞

 

 最大速度:2,200㎞

 

 ブースター装着時マッハ4~5

 

 乗員:1,550名

 

 倉崎・スメラギ共同開発大型フレイヤ炉:1機搭載

 

 航続距離:∞

 

 兵装:連装リニア砲24基

 

   :単装リニア砲36基

 

   :CIWSバルカンファランクス機関砲8基

 

   :ハドロン重砲8門

 

   :32連装ミサイル発射機8基

 

   :艦首超大口径地上破壊用ハドロン超重砲2門(2個1で発射に30秒程度の充電が必要・九州くらいの島ならば一撃で消し飛ばす・指定分類は大量破壊兵器に指定され時の総理など幾人かの許可を経て使用を許される)

 

   :スラッシュハーケン12基

 

   :超強化型ブレイズルミナス(ハドロン重砲をはじき返す)

 

 KMF搭載能力:120騎 VTOL:120機

 

 

 備考:現在大日本帝国だけが保有する超大型浮遊航空艦。艦体全面には100の銃砲塔や武装を持ち敵を寄せ付けない空飛ぶ要塞といった風体を持つ。

 

 大型フレイヤ炉から潤沢なエネルギーを得ることでエネルギー切れを起こすことも無く、大量のKMFを戦場に運ぶ事を可能とする。

 

 

 大和型戦艦(こちらについては此処が無理があるとかいったご指摘、ご指南を頂けると嬉しい、というか助かります)

 

 全長:368.8m

 

 全幅:58.0m

 

 速力:35.1ノット

 

 主機:フレイヤ炉

 

 推進器:スクリュープロペラ

 

 主砲:60.0cm超電磁砲3基9門

 

 副砲:15cm60口速射超電磁砲12門

 

 中長距離極超音速巡航ミサイル4連装発射筒:8基

 

 極超音速対空ミサイル発射機:2基

 

 525mm3連装単魚雷発射管:4基

 

 VTOL:2機

 

 KMF:紅蓮聖天八極式:8騎

 

 航続距離:∞

 

 

「そ、そうです。これですっ、こういうのが知りたかったのです! し、しかしなんというかとてつもない物を見てしまいましたね……航続距離∞ってこんなの報告しても信じてもらえは」

 

「近く2個空母戦闘群と2個遠征打撃群を引き連れてムーとの合同演習でもしてみようかと思案しました。私個人の勝手な考えなので通るかは分かりませんが」

 

 それだけを告げられると、辻閣下は手に持つ通信端末に一言。

 

『それでは皆さん、作戦準備は整いましたか?』

 

『はっ、辻閣下の御意思のままに』

 

『私の意思ではなく御自身の意思で立ち向かってください』

 

 ぷつ。内線が入る。辻卿に。

 

『マリーベル・メル・ブリタニアです。意見具申を』

 

『宜しいでしょう。……本来であるならばブリタニアの皇女殿下である貴女には、私の側より下に出なければならないのですが』

 

『緊急時ですので。ううん。本作戦僭越ながら辻卿に変わり臨時に指揮を取らさせて頂きますが宜しいでしょうか?』

 

 ぶ、ブリタニアってまさか。神聖ブリタニア帝国の皇女殿下って事なのか!? この軍の中にブリタニアの皇女殿下が居る。一目お目通り願いたいところだが、今はそんなときではない。

 

『イエスとだけ。私の忠誠は御帝と仲間に対してのみありますのであしからず。それとまあ私はKMFによる現場の戦いに付きましては素人ですからね。マリーベル殿下にお任せいたしましょう』

 

『承りました。では、全騎全機全艦ブレイズルミナス全開ですっ、手持ちのミサイルは全てが極超音速ミサイルなのです。態々辻卿が工面して下さったのですから無駄にしないでくださいね?』

 

 極超音速ミサイルとは音速の五倍から二十五倍の速度のミサイルの事であるとレミールからの説明を受け、これを知ったマイラスは最早調査を諦めた。やる分にはやる物の到底頭が追いつけない。

 

 150年は技術格差があるだろうとして。それでも魂は負けないと色んな場所を探し、あらゆる知識を吸収していくさまは流石技官ではあったが。

 

 それが私の使命ならば、ただ粛々と行うだけだ。皆が戦っている様に。私も私の戦いをと。因みにレミール皇女が月夜見に乗艦していたのはそのグラ・バルカスと国交を開設するためと、ムーと北側諸国の橋渡しの為だ。彼女にもまだロウリア戦争の後始末が残っているのだから気は抜けない。

 

『100年近くも昔の骨董品の攻撃などを通すようなことがあれば許しませんよっ! 全軍降下~~っ!! 目標は──っ!』

 

(どんな傾向かを知りたいのもありまして

  • ミリシアル好き
  • ミリシアル嫌い
  • グラ・バルカス好き
  • グラ・バルカス嫌い
  • ロウリアは徹底的にやっちまうべき
  • ロウリアにも救いを
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