砲艦外交の前に   作:休日

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27砲艦外交の前にその頃の北側諸国総会では

 

 

 今回の北側諸国会議。

 

 十日後に開かれる予定であった総会とは別な意味で開かれている。

 

 総会の場所は、北側諸国盟主国の一国である大日本帝国にある為か、内装は大日本帝国の帝国議会会場と似ている。つまるところは洋風なのだ。

 

 強大なるアジアの盟主、北側の盟主国の一つである日本。

 

 別段卑屈なように様式を取り入れずとも、古式ゆかしい和式で良いのでは無いのか?

 

 そんな事を考えるAEUの独立国家群、ポルトガル王国。

 

 スペイン王国、スイス王国、ルクセンブルク大公国。

 

 フランス王国、ベルギー王国、オランダ王国、ドイツ帝国。

 

 ギリシャ王国、イタリア王国、オーストリア=ハンガリー帝国。

 

 オスマン帝国、マグレブ王国、リビア王国、チュニジア王国、エジプト王国

 

 ルーマニア王国、フィンランド王国、ノルウェー王国、スウェーデン王国、ロシア帝国

 

 リヒテンシュタイン公国、デンマーク王国、ギリシャ王国、ブリタニア領グレートブリテンとアイルランド等々、他にもあるが、多くのAEU構成国に不思議がられている。

 

 欧州の現AEU構成国は嘗てのナポレオンによる欧州革命の際に、マグレブ及び日本の機関(夢幻会)よりの援助によりその王室・皇室は全てがブリタニアという広大なる大地に避難することが出来た歴史を持つ関係上、マグレブ王国と共に、大日本帝国へも多大なる感謝と親しみを感じていたが。

 

 それとこれとは話が別と行った臨時総会となっていた。

 

 

 

 その頃の北側諸国総会では

 

 

 

 上は超大国ブリタニアから、下は小国ナウルまで。今回の大日本帝国が議会も通さずに求めた結果の独断行動について説明を求めていた。

 

 AEU――数多くの中小大国から構成されたこの超大国は、国家の重要方針については必ず総会なりを開き、リヒテンシュタイン大公国、スイス王国など小国の意見も聞き入れるようにしている。

 

 AEUは超大国である。然れどモザイク国家でもある。全体の方針は全体で決めるべきというのが一つの指針としてあった。

 

「モナコ公国です。この度、大日本帝国は、北側の幾つかの国に、あろう事か我々の頭越しにハイランド皇帝陛下・ヒトラー宰相閣下の了承を得て、AEUの軍を動かした。相違ありませんね?」

 

 アラウカニア=パタゴニアの第二王女アリシア弁護士が『大日本帝国』と求めると、求めに応じ、参考人として呼ばれていた吉田茂が『相違ありません』と答える。

 

「この際、日付については無視を致しますが、去るとき。一人の青年が帝都中央病院に緊急搬送されて参りましてね。いや、これが酷い、吐き気を催すような外見となっておりまして」

 

 吉田が其処まで喋ると、突然会議室が暗くなり、一台の8Kモニターが現れた。会議室に設置されている物だが、普段は開閉扉で閉ざされている。

 

 この時を見越して用意されていたビデオ映像がそのモニターに流れる。

 

「うっ」

 

「これはっ」

 

「ひ、酷いな」

 

 嗚咽、いや嘔吐きの声がそこかしこで漏れ出た。

 

 無理もない。ケロイド状になり、ぐぢゅぐぢゅに焼けただれた皮膚。鞭で叩き付けられたようなミミズ腫れ。削がれた肉、紫色に腫れた数々の殴打の後。

 

 身体のあちらこちらから見える刺し傷や切り傷は、刃物でやられた後だろう。

 

 はっきり言おう。戦場で転がり腐敗した死体その物よりもまだ酷い。凄惨な拷問の後が覗えた。

 

「この方の他にも、この方の供回りの者とみられる方にも同様の措置が施されている事が分かりました」

 

「ん? 吉田卿。この方という仰り方から為されると、この死体のような怪我人は身分の高い方なのでしょうか?」

 

 オーストリア=ハンガリーの代表が意見を求め、吉田は直ぐに返答。

 

「ええ、この方、グラ・ハイラス殿下と申します」

 

 グラ・ハイラス?

 

 グラ?

 

 グラとは、もしかして。

 

 ああ、第八帝国とかいう西の西に存在するグラ・バルカスか?

 

 馬鹿なっ、日本の情報員や工作員の手はこの一年数ヶ月で其処まで伸びているのか?

 

 しかし、我々もパーパルディアに浸透を図ってきたグラ・バルカスの諜報員を幾人も逮捕し中央世界行きの船へと勝手に送り出しているからなあ。

 

 国籍不明の潜水艦も何隻と狩っている。

 

 ざわめく会議場。今回AEUはAEUとして、インドシナ連邦は連邦としての参加では無く、構成国の一国一国としての参加である為、参加国数が三倍近くに増えている為にざわつきも耳に触るほど。

 

 アラウカニア=パタゴニア王女アリシアが再び『静粛に願います』と凛と響く声を響き渡らせ議場を黙らせた。

 

「吉田卿、続きを」

 

「ええ、皆様ご承知の通り、この方はグラ・バルカス帝国の皇族本人で間違いありません。ですがこの様に重体で運び込まれており、もう回復は見込めないだろうと考えておりましたのです」

 

 誰が見てもそうだろうと思う議員一同。

 

「しかしながらこの方、まるで自分は死ねないのだとばかりに一週間、二週間、一ヶ月、三ヶ月。と、長期に渡り昏睡状態こそ続きながらも生を掴み続け、生き続けました。そうして、医療機器と手術に頼りながらではありますが、見事回復為されたのです」

 

 流石日本の、“技術”の日本の超最先端医療技術だな。

 

 我が国にも是非導入したい。

 

 オスマン帝国の基礎技術を上げたい物だ。

 

 各々の意見が飛び交う中、アリシアは先を促した。

 

「そして意識を回復し、真っ先に知りたいとハイラス殿下御自身が望まれたのは――」

 

「第八帝国の現状、ですか」

 

 扇状に広がる大会議場。丁度対局に向かい合う形で座っていた神聖ブリタニア帝国第二皇子にして同国宰相――シュナイゼル・エル・ブリタニアが冷たくも甘いマスクで声を発した。

 

 吉田から見て遙か若造ながら、けして油断できない心強い同盟国宰相の言葉を吉田は再び引き継いだ。

 

「穏健派の筆頭であったハイラス殿下には辛い現状だったでしょうな。力による開国へと方針を180度切り替えた帝国の在り方は、超巨大戦艦グレードアトラスター――といっても、まあ我々からすると100年ほど前の遺物で博物館行きの艦ですが、ハイラス殿下を拷問に掛けたパガンダ王国にとっては異星人襲来レベルだったようで。王国はあっさりと滅亡させられ王族は処刑されたようです」

 

 当たり前だ。自国の皇族を殺した(と思っている)グラ・バルカスにとっては遠慮も呵責も要らない相手。パガンダ国民の民度も手伝い悲劇は幕を開けた。

 

「続いてパガンダの宗主国であるレイフォルをもグレードアトラスタ単艦で滅亡させ、レイフォルの王族は死に絶えたようです。パガンダ、レイフォルを占領統治し始めた帝国ですが、自分たちにとってのお上を潰された上に隷属しろと迫る帝国の、文明圏外の新興蛮族如きに従うなど恥辱であるとして尚抵抗に出た末、二つの王国民に多大な死者が出た模様です。これを皮切りとして帝国は異世界人をすべからく蛮族であるという考えへと思考が切り替わっていった様子ですね」

 

 

 ―――

 

 

 話しが長くなってきたな、とシュナイゼルは思う。

 

 日本に駐在して大使館補佐の任に付いている妹ユーフェミアもこの場にいたが、顔色が悪くなってきていた。

 

 無理も無い。次々と切り替わる映像の中、本当の戦争がもたらす悲劇とはこういう物だと知ったから。

 

 もしも世界大戦の南天の大虐殺等見てしまえばショックで精神的に病んでしまうかも知れない。

 

 無論、そこは嶋田卿がなんとかするだろうが、しかし吉田卿もずいぶんな爆弾を投下してくれた物だな。

 

 これを全北側諸国に見せることで、この度の独断専行を帳消しにしようとしているのだろうけれどもね。

 

 恐らくは上手くいく。ブリタニアとしては当然日本を支持をするし、既に軍とグリンダ騎士団からも10艦百数十機のKMFを引き抜いて派遣している立場だ、AEU構成国もこの惨状を見れば支持に回らざるを得ない。

 

 北側全体の支持を取り付けた日本は悲劇の皇族を助ける事で株を上げる…………この度のグラ・バルカスの暴走を抑える遠征は差し詰物語の勇者とその一行の冒険だな。

 

 

 

「そして帝国が起こす悲劇、対異世界強硬派の台頭により起きる差別は全て現地民へと移り一方的な搾取が始まります。事ここに至りハイラス殿下は我が帝国に“祖国の暴走を止めたい。力を貸して頂きたい”と申し出られて参りました。我々としてはこれを快諾致しました。快諾せざるを得ないでしょう。このままではグラ・バルカスの野心は留まること無く、ムー大陸全土に、やがては世界に向けて覇を唱え出す。更なる悲劇が生まれる前にと」

 

 

 

 そうして大日本帝国はまた新しい絵を描き、神聖ブリタニア帝国は絵を模写し、AEUが絵をばらまいた。

 

 シーランドから、インドシナ連邦、インドネシア、アルガルヴェ連合帝国、ギアナ公国、アラウカニア=パタゴニア王国。

 

 これらの国々は初版を手に入れたわけだね。初版に値打ちを求める者も多いし、初版にありつけなかった国は重版を求める。

 

 いずれにせよ日本、ブリタニア、AEUはグラ・バルカスという恐らくは億単位の人口を持つであろう経済圏を手に入れる形となっていくわけだ。

 

 資本も、軍事力も、技術力も、経済力も、我々が圧倒的上位に立つ。その上で現地民とは対等に商売をしていく。

 

 最早地球で失われてしまった現地の物を購入し、現地の住人は地球の高品質な物を手に入れる。

 

 差別も貧困もなくしていく。WINWINな関係が築かれていく素晴らしい形だ。

 

 

 ―――

 

 

「ふむ、そういう事情ならばAEUとしてではなく、我が国オーストリア=ハンガリーとしても軍を出そう。うちもカールレオン級と軽イカルガ級浮遊航空艦が何隻かある。無論フレイヤ炉が搭載されているので2万5千kmでもひとっ飛びだ」

 

「我が国も後詰めが必要ならば出してもいいですぞ。オスマン帝国としては先の大戦で日本・ブリタニアに助けられた借りがありますからな」

 

 我も、我も、と手を上げていく北側諸国の国々。

 

 吉田は立ち上がり深く一礼をする。

 

「ありがとうございます。この吉田、各国の皆様よりの親愛なるお言葉を賜り歓喜の念に堪えません。恐らくこの一回で開いた風呂敷を畳むことが可能でしょうが、皆様の温かいお心に恐れ多くも御帝に代わって御礼申し上げます」

 

 吉田茂は再び深々と頭を下げた。

 

 

 ふう、これで全世界を引き込み納得させられる。

 

 夢幻会の意向ではあるが今上陛下までが。

 

『他国とはいえ、国交なきとはいえ、平和を望む同じ皇族の方が、己が立場に置かれて苦しんでいるのです。朕には見舞うことしかできませんが、お早い回復を願うばかりです』

 

 そういって陛下は幾度か見舞われたのだ。今回は単なる経済圏欲しさに軍を動かしたのではない。陛下の望みも其処にはあるのだ。失敗などできようはずもない。

 

 試算上と情報で得たグラ・バルカス第八帝国の戦力は航空機二千数百乃至三千台。主力水上艦艇二千ほど。潜水艦もかなりの数はあるだろう。

 

 だが問題ではない。格差は100年は昔の骨董品・アンティークと来ている。

 

 第7世代機はまだしも第8.5世代機以上のKMFや海・空用ナイトギガフォートレス。浮遊航空艦艇には手も足も出まい。ブレイズルミナスというシールドもある。

 

 苦戦するようなら帝国議会を通して空母戦闘群8個群でも送ってやれば丸裸にしてしまえるだろう。

 

 まあ、帝国臣民が殺されてもない以上はそれはやりすぎだが。

 

 まずは経済圏としても使えそうにないロウリア王国への処置か。

 

 

 ───

 

 

 ふむ、吉田卿ならグラ・バルカス帝国を滅ぼすのではなく、市場として考えてくるだろう。

 

 我々は帝国という形態ながら市場経済を導入している。その意味で億を超えるムーやグラ・バルカスは市場としての価値が非常に高い。

 

「あ、あのお兄様」

 

「ん? なにかなユフィ」

 

「少しばかり難しいお顔をなされておりましたので」

 

「いろいろ考え事をしているのだよ」

 

 天上に浮かぶアレらは日本はもう復旧させ、軌道周回へと移行したらしい。我が国のダモクレスなどもそうだが復旧は早く見込めるようだ。

 

 日本は早々に魔帝とやらの識別味方でない人工衛星を次々に消し飛ばしているらしいが無茶をするものだ。

 

 まあ、この世界で聞く伝説のラヴァーナル帝国とやらが鬼畜な国だと判明したからだろうが。

 

 日本という国は、兎角自国の敵判定した国には容赦がない。太平洋戦争の時など我が国を焼き払うつもりであったとか……。

 

「現在は親族的同盟国というのが信じられないよ」

 

「シュナイゼル兄さま?」

 

「ああ、また独り言さ」

 

 しかしこれはこれで重要だがゲート向こうの市場も魅惑的だ。

 

 市場として使えるのは旧エリアとブリタニア本土。中華連邦はまだ混乱の立て直しで大変だろう。

 

 

 ───

 

 

 まったくV.V.レクイエムとはやってくれたわ。

 

 あれさえなければ真っ先にゲートブリタニアとゲート中華を巨大経済圏として活用できたというに。

 

 まあ、原作が碌でもないことを考えるとああなってしまうのも必然か。

 

 とりあえずはグラ・バルカスを夢幻会──もとい、北側諸国の優良な市場として迎え入れなければならん。

 

 その為には彼の国の強硬派は邪魔でしかないのだよ。

 

 あとはロウリアが邪魔か。

 

 人口3800万の大きな市場は魅力的なのだが。

 

 資源などもいろいろと見つかるかもしれんが。

 

 多くの貴族と共に国王の考えが腐りきっている。

 

 パーパルディアモデルも使えん事はないが、アレは馬鹿が見ると張りぼてだとか言い出しかねんからな。

 

 市街戦や、市民もろともなら戦術F号兵器で一発だが、アレは下手に使用すると北側内でも評判が落ちる。

 

 やはり当初の予定通りプラン1かプラン2かかな。

 

 

(どんな傾向かを知りたいのもありまして

  • ミリシアル好き
  • ミリシアル嫌い
  • グラ・バルカス好き
  • グラ・バルカス嫌い
  • ロウリアは徹底的にやっちまうべき
  • ロウリアにも救いを
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