砲艦外交の前に   作:休日

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CPコードギアス

 :玉城真一郎×マリーベル・メル・ブリタニア

 :嶋田繁太郎×モニカ・クルシェフスキー

 :嶋田繁太郎×ユーフェミア・リ・ブリタニア

  備考:嶋田さんは重婚です。

 日本国召喚

 :朝田泰司×レミール


6砲艦外交の前に消してしまえ

 

 

「さて、本日の議題ですが」

 

 異星大転移後四回目となる北側諸国会議は、パーパルディア皇国をオブザーバーに迎えた翌日に始まった。

 

 パーパルディアを迎えたと言うことは、本来この場には十七ヵ国地域が在籍していないといけないことになる。

 

 だがパーパルディアが外されている理由。それは彼の国が居ても仕方が無いと判断されたこと。また彼の国には早急におもちゃを本国に持って帰って貰い、戦力化を果たして貰わなければならないこと。

 

 もちろんそれは彼の国がロウリア王国より狙われていることが大きくあったが、正直な話そこは問題では無い。今のパーパルディアは全盛期を遙かに超えている。次元が違うといっても良い超好景気に国内が沸いている。

 

 戦列艦800隻? 精強なる竜騎士団? そんな物は全て今のパーパルディアの前では虫と同じだ。はたき落とされて、叩き潰されて、おしまい。そのくらい彼の国は強くなった。

 

 無論、ありえんだろうが、彼の国が危機的状況に陥ったその時は、オブザーバーとはいえ北側諸国同盟の一員。全力を以て助けに入るが、彼の国に近い日本とシーランドが出張ればもう他の国にやることは無いだろう。

 

 少し思い思いにパーパルディアの簡易席を眺めた全員は(改めてきちんとした席を設ける)思い思いの事を考え、先日に引き続き議長をしているアラウカニア=パタゴニアの第二王女アリシアを見る。

 

 薄紫色の美しいロングヘアを頭の後ろでシニヨンで纏め、威厳でも出したいのだろうか、黒縁の伊達眼鏡を掛けて、茶色のタイトスーツに身を包む年の頃二十前後の女性。一見やり手の弁護士に見えるが、まだ弁護士資格を取ったばかりのヒヨコを、皆の目が見つめるも、彼女は昨日同様動じない。流石は弁護士一族の王族である。

 

「本日の議題は何かな? 正直連続での会議とは物々しい。例の中華連邦とジルクスタンが転移してくる話だろうか」

 

 この世界の、という変な肩書きを付けなければならない、北側諸国条約機構第一位の国力を持つ神聖ブリタニア帝国第二皇子にして同国宰相、シュナイゼル・エル・ブリタニアが割って入った。

 

 それほど連続となる会議開催は異常なのだ。頬杖を付いてニコニコと微笑みを浮かべるシュナイゼルの心の中を見通すのは難しい。

 

「お兄様不謹慎ですわよ皆様の前で」

 

 その隣、ブリタニアの席に着いていたもう一人の、ブリタニアの皇族、日本に立ち寄っている同国第八十八皇女、薄紅色の美しい髪を腰の下まで伸ばし、背中の羽のパーツをマントとして広げた。桃色を基調としたドレスに身を包む女性、マリーベル・メル・ブリタニアが注意する。

 

「はっはっは、不謹慎どうこうを君に言われたくないなあマリー。君、玉城君のこと抱いただろう?」

 

「なっ!?」

 

 顔がリンゴみたいに一瞬にして赤くなるマリーベル。皆は皆で興味津々。

 

 既に北側各国の皇族・王族・貴族・政治家・政財界では有名で、事の真相も大きく広がっていたのだ。マリーベル皇女と日本の一般人平民が同衾したと。

 

「噂にはなっていたが本当にやっちまったのか?!」

 

 おもしれーとばかりにシーランド王がぽつりと呟くと。

 

「あなた、浮気は許しませんよ?」

 

「そんなことしねーよ!」

 

「言葉遣いが粗暴になっておりますわ。それにブリタニア皇室の方に何と御無礼な」

 

「う!? い、いかんな。こういった色事を聞くとつい軍人時代が出てしまう」

 

 シーランド国王夫妻が夫婦漫才をする中。

 

 インドネシア代表がしゃしゃり出る。

 

「お聞きに及んでおりますが、マリーベル皇女殿下は幼い頃よりその玉城という青年を恋い慕い、想い続けていたそうではありませんか。おめでとうございます」

 

 インドシナ連邦代表も。独自に挨拶をする。微笑ましい笑顔を浮かべて。

 

「連邦代表として祝辞を述べさせて頂きます。おめでとうございますマリーベル皇女殿下」

 

 ここでイタリア統領兼王国国国代表にして、超大国AEUの№2。ベニート・アミルカレ・アンドレーア・ムッソリーニ。が言葉を発す。色事と言えば我がイタリアだと言わぬばかりに。いらんことを言わねば良いのだがこの男は事色恋とパスタについては一言多い。

 

「祝辞としてはおめでとうと述べさせて頂こうかプリンセスアミーカ。だが多くの問題が生じるのでは無いのかね? 日本とブリタニア両国の皇室の問題、華族・貴族・両国国民を納得させられるかの問題。一番大きな問題としてプリンセスクララ・ジ・ブリタニア皇兄女殿下についての問題。彼女、裏の世界でも有名な暗殺者でね。狙った獲物は皆殺しにしてきている。彼女の宝がアミーコ玉城だと聞く。その宝にアミーカ、いや失礼。プリンセスマリーベルは手を出した。この情報は当然プリンセスクララも知っている。最悪お家騒動になっちまうぞ~?」

 

 超大国第一位のお家騒動と、これに巻き込まれる第二位。北側諸国としてはシャレにならない話だ。異星大転移の混乱がようやく落ち着こうとしているこの時に新たな火種は御免被る。

 

 それでも毅然とした態度を崩さないマリーベルは。

 

「何れは決着を付けなければならなかった……クララには勝たせて頂きます……! シン兄さまはこのわたくしの物ですわ!!」

 

 ひゅ~っ。誰かが唇を拭いた。まさかの宣戦布告の宣言をこの場でやられるとは思っても見なかったからだ。

 

 

 ※

 

 

「シン兄さまを抱いたあの日より、あの悪夢を見なくなりましたの……あの、燃える炎の悪夢を」

 

 ぼそっとシュナイゼルに告げたマリーベル。

 

「それほどかね。玉城君の存在の大きさは。君に取っての悪夢を消し去ってしまう程に玉城君の存在は大きいというのか。我々家族よりも。家族が手を尽くしても消せない悪夢を消してしまえるほどに」

 

 マリーベルの悪夢。恐らくは南天が関与したであろうテロにメル家の宮殿が爆破炎上させられた彼の火事は、その最中に何者かと出会ったらしいマリーベルに深い傷を残していた。

 

 以降、マリーベルは毎日を悪夢と戦い続けている『選択肢を与えよう』そんな奇怪な声と共に、燃える宮殿の様子がありありと浮かぶ。使っていた枕、ベッド、ドレス衣服が炎に包まれ、炎の中を逃げ惑う使用人たちの姿が焼き付いている。

 

 自分を守ろうとする騎士。怯えるユーリアと母様の表情。みんな炎に包まれて。幸いにも犠牲者は一人も出なかった火事ながら、その炎の記憶は毎夜マリーを苦しめていた。何もかも夢は再現を成し、日々繰り返してきた。その夢を初めて見なくなったのは、シン兄さまと奇跡の再会を果たしたあの日。

 

 兄さまと共に居るとき、兄さまのお側で眠るとき、兄さまは夢の中で。

 

 

『逆質問だテメェ! テメェに選ばせてやらァ! 俺様の丁稚になるか逃げだすかッ! 好きに選ばせてやんぜ野郎ォッ!! 俺様の大事なモンに手ェ出してンじゃねーよこのくそペテン師がァァッッ!!』

 

 

 そう叫んで、あの悪夢を壊してくださいます。

 

 そうして仰るの。

 

 

『マリーよォ、随分前にも言ったけど、お前はまだまだ親に甘える子供だ。そんなガキが無理してこんなとこで耐え忍んでんじゃねーよバーカ』

 

 

 ニッと白い歯を見せて笑う兄さま。くしゃくしゃとわたくしの頭を撫でてくださり、同時にガラガラと音を立てて崩れていく悪夢の世界。

 

 そして兄さまは居なくなり、かつて兄さまに頂いた金平糖だけが光り輝く宝石の様にその場に残されるのです。

 

 ああ、いつも助けてくださるシン兄さま。わたくしのお慕い申し上げておりますシン兄さま。

 

 故にあなた様をネッサローズのわたくしの部屋へと引きずり込んだとき、わたくしはわたくしを止めることが出来なくなりました。

 

 兄さま、シン兄さま。わたくしの、マリーベル・メル・ブリタニアの全てを識って、全てを、全てを、わたくしの全てを。

 

 そしてあなた様の全てをわたくしに教えてくださいまし。玉城真一郎の全てを、このわたくしだけに。

 

 そうしてわたくしとシン兄さまは朝になるまで抱き合いました。幾度も、幾度も、果てども、果てども、終わる事なき愛の時間はネッサローズが日の光を帯びた頃、ようやくの終わりを迎えました。

 

 ですがそれは、わたくしとシン兄さまの新たなる日々の始まり。誰の邪魔も許しません。オルドリンであっても邪魔することは許しません。

 

 わたくしと兄さまだけの日々ですもの。

 

 

 ※

 

 

「シュナイゼル兄さま。シン兄さまはわたくしの全てですわ。もしもシン兄さまをこの世界にも訪れている南天の魔手より守り切れなかったその時は、きっとわたくしがわたくしで無くなってしまう」

 

「……それほどまでに、か……。そうか、それほどにか……」

 

 シュナイゼルは一度目をつむり。再び開くと、かわいい妹を目に入れる、愛して止まない可愛い妹を。

 

「いいだろう。私はマリーの側に付くよ。皇族や貴族への根回し、幸いにもオデュッセウス兄上はあの性格だからね、きっと味方になって祝福してくださる。今度オデュッセウス兄上が皇神楽耶皇女殿下にお会いするため日本に訪れるとき、私も時間を合わせて来日しよう。そこでオデュッセウス兄上はもちろん神楽耶皇女殿下も味方に引き入れる。他の皇室・華族の方々、政財界の方々についても上手く根回しをしよう。出来る範囲で何とかしてみせるよ」

 

「お兄さま……」

 

 力の限りを尽くしてくださるという兄シュナイゼルの言葉に、マリーベルは意を決して立ち上がると、各国代表のいるこの場で宣告した。これはある意味、彼女の最大のライバルへの宣戦布告だ。

 

「各国代表の皆さま。私情をこの場でお話すべきでは事、重々承知の上ですが、宣告させていただきます。わたくし、神聖ブリタニア帝国第八十八皇女マリーベル・メル・ブリタニアは一身上の都合により大日本帝国平民、シンイチロウ・タマキを我が夫君としてメル家へと迎え入れることを此処に宣言いたしますッ!」

 

 

 ※

 

 

 テレビで流れていた国際会議の生中継。インターネット配信でも当然ながら流れているこの宣告を。当然視ていた少女、桜色の髪の毛を膝まで伸ばし、黒を基調としたゴシックドレスに身を包んだ小柄な少女──クララ・ランフランクこと、クララ・ジ・ブリタニアは虚ろな瞳でその‟宣戦布告”を眺めながら、髪と同じ色をした両の眼に赤い翼を羽ばたかせる。髪が背で翼のように広がり、まるで悪魔のように見えなくもない。いや、これはすべてを刈り取る死神だろうか? 

 

「それってさあ~、クララの宝物を横取りするって宣言で良いんだよねェ~ お姫様ァァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!!」

 

 怒りに燃える瞳と赤い翼ギアスを煌煌と煌めかせながら、テレビに映るマリーベル皇女を憎しみを持って睨み付けるクララ。

 

 クララ・ランフランクの大きく成長したギアスは条件さえ整っていれば、テレビの画面越しでもターゲットを殺害できるほどに強大だ。

 

 玉城真一郎、クララ・ランフランクがこよなく愛するお兄ちゃん。初めて出逢った公園で、何でもない不良に絡まれたところを身を挺して、あばらの骨を折ってまで助けてくれた変なお兄ちゃん。

 

 仕事で疲れて帰ってきたとき、いつも傍に居てくれたお兄ちゃん。私のお兄ちゃん私のお兄ちゃん私のお兄ちゃん。クララだけのお兄ちゃん、一生を尽くすと決めているお兄ちゃん。クララが養ってあげるお兄ちゃん。

 

「くそ女がぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」

 

 クララは叫ぶ。その大切な宝物を。至宝を、一方的に奪うという宣言を、寄りにもよって世界会議の場で行った、お姫様。くそ女マリーベルに。赤い翼の輝きが増していく。見境無く扱いそうなほどに。

 

「く、クララ様落ち着いてくださいっ!」

 

「クララ、皇族と平民の結婚なんだそんな簡単に行くわけが──」

 

 クララのお付きの騎士や、丁度V.V.邸に来ていたロロ・ランペルージが止めに入るも。

 

「黙れェェェェ! 殺されたいかァァァァァァァっっっっ!!!」

 

 瞳を向けられた騎士達は怯える。その赤い両目の力を知っているが故に。

 

 そしてクララ自身の暗殺術。お兄ちゃんの為にと一途に磨かれてきたその暗殺術は、本気のクララには、ギアスを使ったロロでも勝てない。だが、止めなくてはならないと、ロロは気丈に立ち向かう。ここに今日この日、ブリタニアファミリーがいなくてよかった。いたらマリーベルの兄弟姉妹というだけで何をしでかしていたかわからない。

 

 それくらい今のクララは危険だった。

 

「クララ、とりあえず父さんに事情を話してそれからだ。僕らで勝手なことをしたら父さんも容赦の無い罰を僕らにお与えになられると思うから。それに玉城さんはいまグリンダ騎士団預かり。相手の手の内だ。こちらは手を出せない」

 

「クララなら忍び込んであのくそ女の寝首を搔くこともできるんだけどさぁ、ロロ、クララのこと舐めてる?」

 

「舐めてないけどそんな簡単にいく話でも無いんだよ。君も知っての通り、マリーベル殿下はグリンダ騎士団の個としての最強の戦士でもある。たぶん全力の君と互角くらいには強い。だからこそ事態の合間を縫って父上の権力を利用する。父上は皇籍は無くともブリタニアの皇兄殿下だ。発言力はそこらの皇族よりも強い。きっと良い落とし処を探してくれるよ。それに今は異世界大転移してまだ一年、身内(北天条約機構=北側諸国同盟)で揉めてる場合じゃないってことは君だって分かってるだろう」

 

「……そう、そうだね。確かにロロの言うとおりだよ。……でも、絶対にうまくいかさせない。お兄ちゃんはクララの物だもん」

 

 

 

 

 砲艦外交の前に消してしまえ

 

 

 

 ※

 

 

「また議題がずれてしまいましたが、ひとまず日本を巻き込んだブリタニアのお家騒動に発展しないことをお祈りしております。なにせ両国はAEUと共に北側諸国の要、内部で揉めていらっしゃると他の国々も混乱してしまいますので」

 

 アラウカニア=パタゴニアの第二王女アリシアは、目眩を覚えながら本題へと戻った。

 

 この間、平行世界のシュナイゼルはこちらの世界のマリーベルの行動力に、やはり世界は違えどもマリーベルだなと納得。行動力がものすごい。

 

 平行世界のユーフェミアなどは玉城という人物に抱かれたのでは無く、自ら抱いたと知ったマリーベルに「マリーお姉様はした無いです」と縮こまっていたと共に「マリー姉さまかっこいい」という憧れも持つ。

 

 

 そして問題は平行世界に移る。

 

「議長、ここからは私が発言、いやさ説明させて貰ってもかまわんかな?」

 

 声を発したのはAEU№2のムッソリーニだ。

 

「いや、済まんな諸君。態々連日で集まって貰ったのは他でもない我が国の問題なのだよ」

 

 この場にいる全てとは言わないが、大国の首脳はあのことだなと気が付いた。なにせ監視衛星が捉えているからだ。AEUの各所のドックで待機状態だった、航続距離無限のフレイヤ炉を搭載した戦略潜水艦が移動を始めていることに。

 

 公海上では問題ない、公海とは特定国家の主権に属さない海域なのだから、練習航海でもなんでも好きにやれば。

 

 問題発言が飛び出したのは此処だった。

 

「どうも全艦日本へ向かっているらしい」

 

 日本へと聞いた瞬間、議場に緊張が走った。まさか日本と戦争でもするのかと、馬鹿なのか? AEU如きが大日本帝国に勝てるとでも思っているのかと──ではない、恐らく日本の神根島だ。

 

 現在神根島には平行世界とこちらの世界を繋ぐゲートが固定化されて開いている。平行世界のブリタニアと穏当なる接触を計り、向こうのブリタニアを変えることに成功したのはこちらの世界側からの力による砲艦外交が始まり。穏当とは大きく矛盾しているが、それをやらなければ世界間戦争になっていただろう。無論勝利はこちら側の世界だ。戦力差が圧倒的なのだ。勝負にならない。

 

「で、ま、ヴェランス皇帝は止めたんだがヒトラー宰相がな。ブリタニアは良い。平行世界のブリタニアは良き方向に舵を切り始めた。いずれは世界間を超えた友情を築き北側諸国に受け入れられる日も来るだろうとね。そのことについてはヒトラーの奴も大いに機嫌を良くしていたよ。これでまた一つ巨大市場が手に入るとな」

 

 ヒトラーらしい言い方だと皆思った。本人にそのつもりは無くともヒトラーという男は生まれ持ってのアジテーターの気質が強い。ヴェランス皇帝もカリスマが強いが、ヒトラーほどでは無い。ヒトラーに引っ張られている節がある。彼らが幼なじみだという事実も其処には影響を及ぼしているのかも知れない。

 

 なにせ、あの強烈なヒトラーとずっと一緒に遊んでいれば、影響の一つや二つ受けるという物だろう。

 

『だが、E.U.ユーロピア共和国連合。ユーロユニバースはいかんッ! あれは完全に腐りきっておるッ! 汚職に暗殺ッ、責任のなすり付け合いに挙げ句処理しきれなくなったら現実逃避に逃亡ッ! あんな腐れた物共は一刻も早く処分一掃せねばならんッ! 一刻も早くだッ!』

 

 それで最も早く速やかに処理する手段として、とうとうキレたヒトラーは戦略潜水艦艦隊を日本の神根島ゲートへと差し向けたのだ。

 

「事後報告で悪いし、どうせそちらもこっちの動きは捉えているだろう、嶋田繁太郎代表」

 

 嶋田代表、何故か前日は澤崎代表だったのが、本日は嶋田代表に交代している。日本側でも何か相談があったのだろう。ある意味でパーパルディア皇国代表のレミール皇女が居なかったのは良かったかも知れない。議場は暖まったり騒がしかったりを繰り返していたが常に一定の緊張感に包まれていたのだから。それが嶋田繁太郎から発されている圧だと誰もが気付いていた。この圧、経験の無いレミール皇女が受けていたら気絶していたことだろう。

 

 なにせ経験のある北側諸国の国々の代表も中小国の代表に至っては、嶋田代表の方から視線を逸らしている。真っ直ぐ見ているのは数国。神聖ブリタニア帝国代表シュナイゼル・エル・ブリタニアと、マリーベル・メル・ブリタニア。AEU代表のベニート・アミルカレ・アンドレーア・ムッソリーニ。あとは日本の衛星国家群の代表が主人を見ないわけにはと見ており、議長国アラウカニア=パタゴニアの第二王女アリシアが立場上見ざるを得ず、アルガルヴェ連合帝国の代表すら視線を逸らし気味という、失礼なのか、異常なのか、通常なのか? よく分からない状況に陥っていた。

 

 フランクなのは、日本より、最恵国として指定されているシーランドのヴェーツ国王くらいだろう。

 

「……」

 

 嶋田代表は何も言わない。嶋田の両脇をガードしているのは、左手に、長い桃色の髪を大きな白い髪留めで大きくポニーテールに纏めた白いタイトスカートの女性。腰部から後ろは薄紅色の羽をもしたスカートを着けている、瞳の色はアメジストのような美しい紫。こちらの世界の神聖ブリタニア帝国第三皇女ユーフェミア・リ・ブリタニア皇女。

 

 逆隣右手には、表地が緑色、裏地が紫色のナイトオブラウンズのマントを着用した、癖の無い真っ直ぐな長い髪の毛を腰下まで伸ばした透き通った蒼いマリンブルーにもスカイブルーにも受け取れる双眸を持つ女性、嶋田とユーフェミアの護衛であるナイトオブラウンズの一人ナイトオブトゥエルブ、モニカ・クルシェフスキーだった。

 

 嶋田繁太郎は大日本帝国華族伯爵位を持ち、ナイトオブトゥエルブ、ブリタニア第三皇女よりも下の位だが、日本の上帝陛下および御帝。皇室・華族。ブリタニアの皇帝兄妹、皇室・貴族から認められ、二人を共に伴侶としている異色の経歴の持ち主だ。

 

 それも現役時代から現在までの彼の功績が大きく認められた結果。一応の処彼自身はブリタニア皇室とクルシェフスキー侯爵家(まもなく大公家)双方に籍を置いているため、厳密には現在日本代表というのもおかしな話だが。

 

(辻さんが無理矢理してるんだよな~、夢幻会の席も普通にあるし。俺、ブリタニアの皇族で貴族なんだけど。しかし両隣が奥さんだからこう肩身が狭いというか。ちょっと脚でも運動させて)

 

 

 ガンッッッ! 

 

 

 会議場の机を蹴る音。酷い怒りを感じさせた。

 

 緊張が走る、ムッソリーニでさえ背筋を伸ばしている。

 

 忘れてはならない。この男は一度ならず二度までもオセアニアに勝ち。南天としてのオセアニアを退けた陰の功労者とまことしやかに囁かれている大人物だと。

 

 この男が居なければアジア・ユーラシア大戦=世界大戦は、北南全土の全地球規模での世界大戦にまで発展していただろう。

 

 そして容赦が無い。大清連邦を踏み潰し。高麗共和国を蹴り飛ばし。中華連邦に出兵し中華の地を道路代わりに、ジルクスタンで南天と一戦やらかしたとんでもない男なのだ。

 

 この男がその気なら世界を滅ぼす選択も容易に取る。それほどの恐ろしい男が、では何故その方針をとらないのか? それは彼を抑える存在が居るからだ。

 

 ユーフェミア・リ・ブリタニア。

 

 モニカ・クルシェフスキー。

 

 この二人がいなければ恐らく、今頃は北南世界大戦が起きていた。

 

 優しさに溢れた女性と、全ての人に平等なる正義をという信念を掲げる女性。二人がいなければこの男は何の躊躇いも無く世界を滅ぼしていた。

 

 その男が怒っている。理由など簡単だ。二つのことに対し怒りを覚えているのだ。

 

 議長役のアリシアも固まって動けない、怖いのだろう。それは誰もが怖い、この世界のシュナイゼルも、エルファバの魔女として名高きブリタニアの戦姫も、平行世界のシュナイゼル、ユーフェミアも、誰もが恐怖に包まれている。

 

 男は、嶋田は口を開いた。

 

「ドゥーチェ。動かした戦略潜水艦の数は?」

 

 ムッソリーニ頭領とも、ムッソリーニ代表とも呼ばず、ドゥーチェと呼んだ嶋田繁太郎。この場ではどう考えても格下相手に呼ぶ名だ。どっちが上でどっちが下か。言わずとも分かっているだろうと。それほどに怒っているのだ。

 

「ご、五十、い、いや、五十六隻だ」

 

 血と闇の色を思い起こさせるどす黒い瞳は、正確な数を答えろと訴えていた。

 

「五十六か」

 

 にやりと笑みを浮かべた男の唇が弧を描き、裂けた三日月のようになった。

 

「消し飛ばすには充分な数だな」

 

 議場が静まりかえる。消し飛ばす相手が何かとは聞かない。みんな分かっている。そんな、殺伐としたこの議場を支配している男は続けて口を開いた。

 

 

「ですがまあ、神根島は我が帝国固有の神聖なる聖域である領土。それを何の連絡も無しに……ましてやF号兵器を満載した戦略潜水艦を送り込んでくるとは」

 

 

 

 潰されたいのかね──。

 

 

 

 言葉には出していないが確かに聞こえた嶋田の声に、AEU№2ムッソリーニは背筋に汗を流しながら震え上がる。超大国といっても日本とブリタニアが国力的に近いのに対して、AEUは劣る。

 

 それに日本は潰すと決めたらブリタニアでさえ潰そうとするだろう。その危険さは百数十年の間、日本を見てきたムッソリーニは知っていた。ごくりと息を呑み込みながら反論のための反論をした。

 

「ま、ままま、待ってくれプライムミニスター嶋田ッ、我がAEUもヒトラーもヴェランス皇帝も、けして貴国の領海侵犯をするつもりでこの度の戦略潜水艦を派遣した訳では無いんだッ」

 

 慌てて否定した。当たり前だ。言葉を間違えればAEUが滅ぼされてしまう。F号兵器なんていらない。通常戦力だけでAEUを滅ぼせる。日本とは、大日本帝国とはそれほどに隔絶した国家なのだ。伊達に二つ名を冠しては居ない『技術の日本』『力のブリタニア』『数の南天』この三つは超大国の中でも桁外れなのだ。

 

「正確には前総理ですがね。まあよろしいでしょう。貴国にそのつもりが無い事はこちらも承知しております」

 

 すっと手を上げるこちらの世界のシュナイゼル。額は汗で濡れ、着ている衣服はじっとりと湿っていた。

 

「シュ、シュナイゼル殿下」

 

 司会進行である議長国が何もしないのは不味いと、声を震わせながらアリシア王女はシュナイゼル皇子を指名した。

 

「嶋田卿、嶋田卿もご承知の通りゲートは国際共同管理です。AEUの妙な動きについても一定の理解を認めますし、またゲートへと至る道の共同通行権の確保等も認めて貰いたいところです。それでなくてはゲートの恩恵が貴国一国の物となってしまい不公平。ここは公平を期するべきかと提案します」

 

 

 ──。

 

 

 今一度静まりかえる議場。

 

 ここでまた嶋田が口を開いた。質問相手は平行世界のシュナイゼル皇子とユーフェミア皇女。

 

「お二人にお尋ねをします。端的に申し上げてくださって構いません。E.U.ユーロピア共和国連合ことユーロユニバースについてです、彼の国家連合に今後自浄作用は期待できそうですか?」

 

 シュナイゼル皇子が答える。

 

「不可能では無いでしょう。事実我が国も現時点で腐敗を浄化していっているさなかであり、時間さえ掛ければ可能かと」

 

 続くユーフェミア。

 

「わ、わたくしも同意見です。世界中の皆が笑って暮らせる世界、それが不可能と知り、手の届く範囲で皆が平和にと考えを改めたわたくしですが、E.U.も時間さえ掛ければ、けして腐敗を一掃すること、不可能では無いと」

 

 E.U.の擁護に回る二人。そうでもしなければ汚職とは無関係な、罪も無い人達まで共に殺されてしまうだろう。それを実行できる力を北側諸国は持っているからと。今回のことで良く分かった。AEU一国でも可能なのだと。そしてこの男はやる。この血と闇とを孕んだ瞳を持つこの男なら。数度お会いしているが、常の優しい彼ととても同一人物とは思えなかった。

 

 そしてその言葉を、嶋田が引き継いだ。

 

「如何でしょうムッソリーニ頭領。向こうには中華連邦もジルクスタンも中東の国々もあります。ブリタニアのエリア自治国化を眺めながらまずはそれら国交の無い国と事を当たっていっては。E.U.の処分はそれからでも遅くは無いと私は見ますが」

 

 空気が穏やかになっている。嶋田が見せた血の色の瞳も元に戻っていた。

 

 議場に穏やかな空気が戻ってくる。

 

「い、一応伝えてみよう。だがそれでもヒトラーがE.U.抹殺に拘ったときは」

 

「その時は私が差しで首脳会談を開きましょうと言っていたとお伝えください。それとどうやら朝田君、我が国の外交官ですがその朝田君の話ではこの世界のムー国が接触を掛かってきたと」

 

 ここで一気に場の空気は変わった。殺伐としたものは欠片さえ残されてはいなかった。嶋田が闇と血の空気を霧散させたのだ。おかげで皆は異世界についての意見交換を行い始めた。

 

 ムーか、確か列強第二位で我々の文明に通ずる処もある文明か。

 

 機械文明らしいな。石油なんて効率の悪い物を主原料としているらしいが。

 

 石油は石油で役に立つのですよ。おかげでクイラ王国には助けて貰っております。ああ、なにもクウェートを侮辱するつもりでは無いのであしからず。

 

 思いっきり侮辱しておるではないかねッ! 

 

 どちらにせよ時期的にパーパルディア皇国とロウリア王国の戦争を見てからになるか? 

 

 しょぼい戦争だなぁオイ。

 

 戦争に大きいもしょぼいもないかと。外交の延長線上が、戦争である以上は、外交の失敗が戦争なので。

 

 お堅い弁護士様で。

 

 貴方パタゴニア第二王女殿下に対して失礼ですよ。

 

 つーか今列強第二位はパーパルディアだろう。

 

 我々がテコ入れをしてやったからな一位かもしれんぞ。

 

 二位だろうが一位だろうがシーランドに勝ってからいうんだな。

 

 テメェ、シーランドのこと馬鹿にしてんのかぁ! 

 

 貴方、お言葉遣い。

 

 

 

 本当の意味で議場に平和が戻ってきた頃。

 

「みんななんであんなピリピリしていたんだろうな」

 

 嶋田率いる日本の席で。

 

「まあ、御自覚がございませんの?」

 

「博之さん物凄い殺気でしたよ。ラウンズである私が気圧されるほどに」

 

「え? いや、ただ机に脚をぶつけて痛かったのと、空気を読んで発言しなきゃなァと思っただけで。他意は無いよ。潜水艦の件も五十隻が五十六隻でいそろくで山本のことを思い出してね。山本とリーライナさんなにしてるのかなーって考えてただけで」

 

「ムッソリーニ閣下に対しドゥーチェと呼んだのは?」

 

「いや、昔からの仲だからね。親しみを込めて。え、なんかまずったかな?」

 

 ちょっとした事実だけを美しい二人の奥方に伝えた嶋田は、両頬に柔らかいキスを受けながら抗議を受けた。

 

「紛らわしいですわヒロユキッ!」

 

「紛らわしいですよ博之さんッッ!」

 

 ちゅっと。暖かい唇の感触を受ける中。ドゥーチェが懲りて居るのか懲りていないのか。

 

 その瞬間をデジカメに収めていた。

 

 

 

 その頃、パーパルディア皇国・レミール邸・レミールの寝室では。

 

 大日本帝国外務省外交官、朝田泰司と。

 

 駐日パーパルディア皇国大使にして、やってることは一外交官なパーパルディア皇女レミールが。

 

 ベッドの上で一糸まとわず身体を絡ませあいながら。事を終え、PCの画面に被りついていた。

 

 

「ほら見ろ泰司ッ、ブリタニア帝国のマリーベル・メル・ブリタニア皇女殿下が平民との結婚を宣言なされたぞッ!」

 

「た、確かにッ、し、しかし国際会議の場で宣言してはもう取り返しが付かないのでは……」

 

 インターネットのゆーちゅーぶライブ中継を視ていたパーパルディア皇国皇族レミール皇女は飛び上がらん勢いで喜んでいた。

 

 彼の超大国『力のブリタニア』の皇女殿下が平民との結婚宣言を、北側諸国会議で行ってしまったのだ。

 

 平民である朝田泰司に恋するレミールにとってはこれほどに嬉しいニュースは無い。

 

 これでレミール自身も皇族にして平民の朝田と堂々と結婚が出来るのだから。

 

 それほどに超大国ブリタニアの皇女殿下の発言は大きな意味を持つのだ。

 

「マリーベル・メル・ブリタニア皇女と言えば、エルファバの魔女、ブリタニアの戦姫、数々の異名を持つ武闘派です。そんな御方がまさかニートの男と結婚宣言するだなんて」

 

 以前より噂自体はあった。マリーベル皇女殿下らしき人物が、アホの玉城と界隈で馬鹿にされているニートと二人きりで歩いている姿を視たという報告が。

 

 外務省の方までその噂は流れてきていたのだ。

 

「つまりは関係ないのだ。皇族も平民も好き合えば。私と泰司も結婚できるということだな」

 

 パーパルディア皇国の皇族も皇族として平民の婿を迎え入れるようにすればよいだけ。

 

 簡単に言うレミール。実務で法律をいじるのはレミールの従妹なのだが。

 

「レミール皇女と私の場合、色々と法をいじくりまわしてらっしゃるセレミア皇帝陛下が骨を折るのですが……」

 

「それもまた皇帝の仕事だ。私は一外交官故に外交官としての仕事をするまでのこと」

 

 レミールは朝田の唇に口付て、さあ、続きをしようぞと張り切るのであった。

 

 

 

(どんな傾向かを知りたいのもありまして

  • ミリシアル好き
  • ミリシアル嫌い
  • グラ・バルカス好き
  • グラ・バルカス嫌い
  • ロウリアは徹底的にやっちまうべき
  • ロウリアにも救いを
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