今日も今日とてパーパルディア皇国皇都エストシラントの大拡張された基地。
何の為に拡張されたか言うまでも無かろう。ゼロ式陸上攻撃機隊の為で有り、後続としてやってきた、震電改、BF109改、P51改を受け入れられるためにと、北側諸国が超が付く拡張を施していたのだ。それに技術の日本もシムシティ好きな夢幻会元老たちが案を出していったのでとてつもなく丈夫な物に仕上がっていた。
この基地に今、たくましい肉体を持つイケメン男ムー国大使ムーゲと、どこにでも居そうなサラリーマンな風体ながら、現場を渡り歩いてきた物が持つ独特の雰囲気を醸し出す大日本帝国外交官朝田泰司、そしてパーパルディア皇国皇族にして、駐日大使館大使(形だけ)本業は一外交官な二十代後半の美女、レミール皇女の姿があった。
こんな場所でも長い髪は膝下まで真っ直ぐ流し、頭には金のサークレットを戴いているところが、皇族らしいのか見栄っ張りなのかと、内心クスクス笑う朝田。
レミールがいるからといって、皆かつてのように恐れたりしない。レミールは日本で文物に触れ丸くなり、一般人の感覚を身に付けるようになってからだ。
狂犬レミールだなどと呼ばれていたかつての面影は欠片も無く、隊員達の激務・苦労をねぎらってくれる優しい皇女となっていた。
噂にはうわごとに『白い紙がァ!書類がァ!』と叫んでいるそうだが、仕事熱心になったと言うことだろう。
「ほう、では貴国は正確には約1000隻もの戦列艦を保有していたと?」
朝田がレミールに尋ねながら。レミールが自慢げに悲しげに答える。
「表上は800隻だが監察軍や色々と掻き集めるとな1000艦くらいは行く。まあ次々に標的艦にしておる故に大分と減ってしまったがな。間もなく0となるだろう。壮烈なる戦列艦隊の雄志を一度はお前にも見せてやりたかった。北側諸国の前ではゴミだが、あの勇壮さは他では語れぬ物が在った故になあ」
すこしもの悲しそうに語るレミールに、時代の流れという物ですよと励ました朝田は。ムーゲ大使に驚かないようにと、飛行場内に連れて行く。
そこには。
「こ、これはッ」
複葉機ではない、単葉機の群れ、群れ、群れ、それが格納庫から出てくるところだった。
「あ、朝田殿ッ。これ、この飛行機の形態はッ?! まるでマリンと違うッ!」
形態と言われて思わずスマホを取り出すレミールを無視した朝田は。ムー国の、マリンとの大きな違いを指摘し始める。
これはゼロ式陸上攻撃機という戦闘機で、最大速度700㎞、巡航速度600㎞前後、これを現パーパルディア皇国皇軍は240機保有しており。
海軍の運用型は360機で同クラスの諸元性能を誇ります。形態ほら形態だぞッ! スマホを突き出すレミール、レミールが喚いているが朝田もムーゲ大使も無視。
更にまあ震電改ですが、あれです。出てきたのは異形の形をした飛行機。前方に突き出した機体前部、後方左右に突き出し機体後部。プロペラは後部真ん中に着いていて、とても飛行機とは思えない形をしている。
「ムー国とは未だ国交がありません。故にマリンという機体がどういう物か与り知りませんが、推測するに複葉機ですね。我が国も使っておりましたよ丁度130年ほど昔、日中戦争の頃には使用していた骨董品です。単葉機につきましては日欧戦争の頃ですから100年前後昔ですか」
事実だけを指摘するとムーゲは慌てたように、この震電改のスペック表を要求した。
「まあ、こんな骨董品の諸元性能くらい見せても構いませんよ」
砲艦外交の前についてけない
制式名称:震電
機体略号:J7W1
乗員:1名
全幅:11.914m
全長:10.76m
全高:3.65m、3.92m
主翼面積:22.50m²
翼面荷重:261.5kg/㎡
自重:3,625kg、3,465kg
正規全備重量 5,050kg
発動機:倉崎重工製ハ43-42(MK9D改)エナジーフィラー
出力:2530HP
:1790kW
最高速度:875km(計画値)/h 925㎞(計測値)
高度:9,700m時
巡航速度:625km/h
航続距離:3000㎞~4000km
(装備で変動)
実用上昇限度:13000m
上昇率:850m/min
最大離陸:5,882kg
離陸滑走距離:530m
着陸滑走距離:550m
武装:六式 30mm 固定機銃一型乙(機銃一門あたり弾丸120発携行、発射速度は毎秒7発から11発) ×4
訓練用:7.9mm 固定機銃×2 写真銃×1
爆装:60kg×4
:30kg×4
動力:ユグドラシルドライブ最初期型
プロペラ:スメラギ社の定速6翅(量産型では4翅に簡略化予定)
プロペラ直径:3.40m
主翼:低翼、単葉
動翼:前翼型式
構造:全金属製、応力外皮構造、主翼・層流翼型、前翼・開閉式スロット翼
降着装置:引き込み脚、前輪式
「100年前の日欧戦争の終わり頃に戦線投入された機体の改良型です。当時の機体は博物館に在る物しか残ってませんから」
「い、いや、そうではなく、何なんですかこの化け物!?」
「あっはっはっは、これで化け物とかいってたら、我が国の第六世代統合打撃戦闘機秋水など視たらどうなるのでしょうかね」
「形態ッ! 形態だぞッ! これが形態なのだぞッ!?」
レミールが煩いので。朝田が。
「分かりましたよレミール皇女。形態凄いでちゅね~」
と、彼女の頭を撫でてあげると、顔を赤くして押し黙った。可愛らしいが、もう行くとこまで行って置いてのこの初心な反応は、普通に可愛くて朝田の方がドキッとさせられてしまった。
(いかんな、昼の日中なのにレミール皇女のことを抱きたくなってしまった。煩悩退散だ)
煩悩を退散させた丁度その頃、一機の震電改が飛行場に降り立ってくる。管制室からメイガ将軍までやって来た。
「おお、これはレミール皇女殿下、いつもお美しく、ご機嫌麗しゅう」
「うむ、大義であるメイガよ。訓練の方は上手くいっておるか?」
「はッ! さすがは我らが元竜騎士隊。速度にはもう慣れ、敵艦と見立てた標的艦への攻撃も順調に進んでおります」
(ゼロ戦にはもう慣れたか。さすがは職種は違えど空の戦士だけある。おもちゃとはいえあれに早期に慣れるとは)
ゼロ式陸上攻撃機。日欧戦争で活躍した機体だが、相手が複葉機なのもあってまるで勝負にならなかった。疾風や震電が数万機と揃う頃にはもう降伏を言い渡してきた、ユーロユニバース。腐りきっていた時代の欧州本当に情けない連中である。
その疾風や震電も寿命は短く、直ぐにジェット戦闘機橘花が登場したおかげでスクラップ。お役御免となった寂しい機体である。
その震電が今飛んでいる。胸の高揚感を抑えられない朝田はゼロ戦陸上から震電に乗り換えたらしい、元特A級竜騎士、現在のパーパルディア皇国皇軍航空隊№1エースに駆け寄った。
震電の後ろからはゼロ戦52型陸上式が並んで飛んでくる。
風防を開けて出てくる三人のパイロット。隊長機は言うまでも無く震電改を操っていたレクマイヤ。続いてゼロ戦のデリウス、プカレートが降りてきた。
ぶおおおおっと回っているプロペラに、メイガが物を掴み耐え、レミールはその長い銀髪を煽られながら朝田の身体にしがみつく。朝田も彼女を抱き締め。
「お三方ッッ! ユグドラシルドライブの電源を落として下さいッッ!!」
電力が入りっぱなしではプロペラは止まらない。そんな基本的なことも忘れていた三人は鍵を回し電源を切った。
「も、申し訳御座いませんレミール皇女殿下。その、高揚感につい」
「かまわぬ。分からぬでも無い。あれだけの速度なのだ。気分が高揚することこそ寧ろ普通だ」
レミールは応用に答える。髪がボサボサなので様になっていないが、かく言うレミール自身も、滑走路に入ってくる震電改の速度に驚き感嘆していた。
こんなものが後500機。他にも匹敵する物、ゼロ戦合計にして2,100機。無敵皇軍とは言う物の、これでは第三文明家無敵。第二文明圏でさえも無敵だろう。
髪は乱れに乱れているため、使用人よろしく、朝田が丁寧に整えてあげている中、彼女は夢見る。かつては悪辣だった我が国が弱き国の守人となる姿を。
信用されないかも知れない。白い目で見られるだろう、実際に石を投げられて怪我をし血を流したこともあった。だが、だからなんだ? これ以上の血と命を私は流させて来たのでは無いか。
北側諸国と、朝田泰司と出逢うまでの私は、紛う事なき屑女だった。だからこそ行動を以て信を勝ち取っていくのだ。私は変わったのだと、私は償うのだと、パーパルディア皇国は変わったのだと。昔の覇権主義国パーパルディア皇国ではないのだと。
彼女の思考を余所に、彼女の髪を整え終わると、今度は朝田もレミール皇女の髪を整えるのに使用していた櫛を使って、自分の乱れた髪を七三分けに整えていく。
「物凄い速度でエストシラントに接近していた機がありましたけどッ!!」
かつて魔信技術士をしていて、今はレーダー員をしている女性パイは管制室から飛び出しメイガ将軍の傍により、レミールの姿に気付くとははーっと頭を下げた。
日本ナイズされているレミールはいい加減うんざりしてきて、一々頭など下げずとも良いと言い置く。
「し、しかし、皇女殿下に対し不敬では」
「この場は良い。無礼講だ。気安く話しかけてくれたら良い。他の皇族に対して同じようにするなよ? それよりも、お前パイだったな? 仕事は良いのか?」
レミールの指摘を受け、あ、そうだった、失礼致します、と、パイは三人のパイロットの元に駆け寄っていく。
「先頭機誰が乗ってたんですか!?」
「私です……いや、どこまで限界行けるか挑戦していたんですよ。そしたら」
「900㎞超えてましたよ?! て、敵軍の来襲か、さもなくば北側諸国の来訪かと疑ったくらいです。凄いですね震電改ッッ!!」
喜ぶレクマイヤとパイに。デリウスと、プカレートが隊長の無茶振りには付いていけませんでしたよと文句を言う。
それもそうだと朝田も思うゼロ式52改は最高速度700㎞を超えたあたり。それに引き換え震電改の最高速度はカタログスペック以上を考慮するなら900㎞は出るだろう。
どうやったってゼロ式が追いつくはずも無いのだ。
「れ、レミール皇女、朝田殿。あれで普通なのですか?」
此方を伺ってくるムーゲ大使。いきなりマリンの二倍近くと二.五倍の速度を目の前で見せられたのだ、目も疑うし、常識も疑うだろう。
「いや、大日本帝国……北側諸国同盟風に言うならあれでおもちゃ、骨董品の域だ。新品なのだがな。既に何度も練習飛行をしている。あの震電改は昨日荷揚げされた物だろう。夜通し沖合から作業してくれていたらしい。それにしてもレクマイヤよ。北側が如何に点検済みと太鼓判を押してくれ、エナジーフィラーもエネルギー満載状態とは言え、よくもまあいきなり乗る気になったな」
「はは、なあに簡単な事ですよ。それが空の男って物です」
「なるほど。女の私にはちーっとも分からぬ」
聞いていたメイガ将軍がパーパルディア皇国皇族らしくないレミールの言葉遣いに思わず口を挟む。
「皇女殿下のお言葉使いとは思えませぬな」
「ふん、放っておけ。私の勝手だ」
何度も何度もこれは骨董品、あれも骨董品と聞いて目眩のするムーゲ大使は、本国にどうやって報告をしたら良いのかと頭を悩ませていた。
時速600㎞が巡航速度の戦闘機?! 時速900㎞を超える戦闘機で30㎜機関砲を装備?!
しかもパーパルディア皇国如きがそんな物を2,100機も配備だとォォ?!
昨日見た超巨大戦艦のこともある。諸元表までポーンッと寄こしてくれて。
だがこれでパーパルディア皇国の戦列艦処分と、竜騎士隊の廃止の辻褄が合った。こんな物を持っていたら要らないに決まってるだろう!! それに空飛ぶ戦艦!? 反則過ぎる!!
こんな、そんな事を本国に報告したら頭がおかしくなったとおもわれてしまう。
「そうだ! そういえばレミール皇女はいま一外交官でしたな?!」
思いついた。彼女を連れて行けば良いのだと。パーパルディア皇国皇族の言葉なら信用するだろう。
「であれば、ムーは貴女に是非とも外交関係を見直すことを前提として、本国へ起こし願いたい」
「列強間の繋がりの強化でもお考えか? しかしミリシアルの妙な疑いを呼び込むことになるかも知れぬぞ?」
ミリシアル? いまのパーパルディア皇国の前では吹けば飛ぶ蝋燭の火のようにも……、いや、そういう考えはいかんな。我が国は別にミリシアルと敵対したいわけでも。無用な戦乱を望んでいるわけでも無い。
だが、西より迫り来る脅威にパーパルディア皇国の戦力は、特に空飛ぶ戦艦と巨大艦パールネウスの力はどうしても借りたい。
今日判明した2,100の戦闘機の半分でも借りれれば! いや、はあ、いや冷静になれムーゲ。連中が第八帝国が未だ何を望んでいるかも分からぬうちに……軽挙妄動に過ぎるか。
ここ、は、そうだな。私は朝田殿に向き直る。
「朝田殿、一年以内に開かれる先進十一ヶ国会議に、大日本帝国、いやあなた方の言う北側諸国同盟としてどうかご参加願いたい。正式な話は私では無く列強国第一位の神聖ミリシアル帝国の外交官が決めることですが」
そう反応を見た私だが、予想外の言葉に面食らってしまった。
「あの~大変名誉なことなのですが、北側諸国同盟はパーパルディア皇国をオブザーバーに迎え、これより半年以内にもう二ヶ国増える予定で、それから一ヶ国増える予定でして、二十ヶ国地域となり、どの国も申し上げては気分を害されるかと思いますが、この世界の他の国よりも圧倒的に国力が上ですよ」
パーパルディア皇国も今では列強一位と張り合えるようですし。という朝田殿に
「ふん、列強という順位など無意味だ」
そうレミールが合わせる。
今度こそ顎の骨が外れそうになった。あの、一年前まではプライドの塊だったレミールが、列強の順位など無意味と宣ったのだ。
つまりそれだけ北側諸国の国力は圧倒的だという証明なのだろう。
パーパルディア皇国に一年遅れたが、これは我が国も本格的に考えねばなるまい、北側諸国との接触を。
というか、信じてくれるのだろうか私の報告……。
(どんな傾向かを知りたいのもありまして
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ミリシアル好き
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ミリシアル嫌い
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グラ・バルカス好き
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グラ・バルカス嫌い
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ロウリアは徹底的にやっちまうべき
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ロウリアにも救いを