砲艦外交の前に   作:休日

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8砲艦外交の前に謹慎させよう&烏合の衆の相談事

 

 

 

「なんだと! この私に謹慎処分だと!」

 

 AEUドイツ帝都ベルリンの豪華な宮殿の一室で、怒声が響き渡る。

 

 発しているのは黒髪を七三に分け、横髪を刈り上げている灰色の軍帽を被ったちょびひげの男。

 

 相対するは肩下まで伸ばした長髪を肩で纏めて流した、美髭の美丈夫。AEU共同代表にして№1AEU皇帝を務めるオーガスタ・ヘンリ・ハイランド。彼は伝えにくそうにちょびひげの男。

 

 AEU共同代表にして№1に君臨するアドルフ・ヒトラー宰相に謹慎処分を言い渡していた。

 

「各所からの報告、ムッソリーニからの報告で君が戦略潜水艦五十六隻を動かしたことは分かっているんだ。F号兵器を満載したね」

 

「それがなんだというのだヴェランスよ。然るべき措置では無いか。腐った者どもを根こそぎ耕す最良の手段だと私は考えるのだがね」

 

 と、ヒトラー。彼はゲートという特殊な扉が日本の神根島に開いたときもそうだったが、向こうのブリタニア軍が従わないなら滅ぼしてしまえ。

 

 と、F号兵器を満載した戦略潜水艦を100隻も送り込んだ張本人だ。永久機関を搭載した戦略潜水艦に満載されたF号兵器など放てば、ブリタニアは消滅する。

 

 十億以上に上る犠牲者が出ることをなんとも思わず使おうとしたのだ。それだけフラストレーションがたまっていた証拠とも言えるのだろうが、それだけで殺される向こうの世界のブリタニア人がたまらない。

 

 それも今回は五十六隻と約半数とは言え、聖域神根島のある大日本帝国の領海に、国際共同作戦でも無く無断で送り込もうとしたのだ。これにはムッソリーニもヴェランスも二人揃って頭を抱えた。

 

 目的など分かりきっている、平行世界のE.U.の殲滅だ。ヒトラーは汚職、背信、立場が悪くなれば無責任に逃亡、そんな事を繰り返している平行世界のE.U.を物理的に消滅させたいのだ。

 

 罪業者、無罪の者、一切合切皆殺しにするつもりなのだ。幼なじみとしてアドルフ・ヒトラーという男を長年見てきたヴェランスには分かる。この男は民族浄化でも平然と行うと。

 

 その為の、此度の五十六隻もの戦略潜水艦の派遣なのだろう。五十六隻に搭載された戦略弾道ミサイルがあればE.U.ユーロピア共和国連合ことユーロユニバースなど一瞬で地上から消し飛ばせる。その地に生きとし生ける生物全て皆殺しだ。

 

 だが、派遣先の相手が悪すぎる。よりにもよって北側諸国№2の大日本帝国の領海なのだ。それも事前通達無しの勝手な行軍。

 

 日本からすれば喧嘩を売っているのかこの三下がである。そう三下扱いされても無理は無いのだ。超大国三国と呼ばれて久しいが、超大国と言っても『技術の日本』『力のブリタニア』とAEUでは大きな開きがある。日本・ブリタニア・AEUの国家間は極めて良好。AEUは両国の大切な友なのだ。だがはき違えてはならない部分が一点だけある。日本とブリタニアが家族なのに対して、AEUは友。あくまでも友達だ。あり得ない話だが、もしも友同士の仲がこじれれば……。

 

 まず通常戦力では足下にも及ばない。兵器の質が違いすぎるのだ。常に世界の先を進み続ける日本、それを半歩遅れで追いかけるブリタニア。この二国に対してAEUは精々言って二歩遅れ。

 

 F号兵器も数が違う。数千発のAEUに対して、日本と、ブリタニアの二国は100,000発から保有している上に、一度遥か宇宙まで打ち上げられた弾道ミサイルは再突入体を分離、この際20個以上の子弾に別れて落下する多弾頭式ミサイルさえ保有しているのだ。勝負にならない。序でと行っては何だが、両国共にミサイル防衛システムが完璧で、南天クラスの数でも打ち込まなければ全て撃墜されてしまう。

 

 両国のイージス艦艇、ミサイル艦艇、地上配備型防衛ミサイル、レールガンの数。これは対F号兵器を見据えた物だ。F号兵器は役に立たないとして、もし日本の怒りを買えばAEUは通常戦力でも制圧されてしまうだろう。

 

 その日本を不用意に挑発した。もちろん日本は我々の目的など察しているだろう。日本に危害を加えるつもりは寸土も無い。目的は平行世界のE.U.であると。だが、だからといってそれとこれは別なのだ。

 

 

 

 

 

 砲艦外交の前に謹慎させよう&烏合の衆の相談事

 

 

 

 

 

「ヴェランス! 私を謹慎などすればAEUが回らなくなるぞ!」

 

 AEUには独自にシステムがある。共同代表制を採用しているからなのだが、代表者であるヴェランス皇帝とヒトラーが対立した際には、№2のムッソリーニがどちらに付くかで采配が決定するという物だ。

 

 今回ムッソリーニはヴェランスを支持した。当たり前だ。会議で日本の怒り、シゲタロウ・シマダ前宰相にして日本の真なる支配者の怒りを受けたのは彼なのだ。生きた心地がしなかった。故にヴェランス支持に回った。

 

 ヴェランス自身は平行世界のE.U.を滅ぼそうとまでは考えていない穏健派だ、甘いと言わせれば甘いが、ヒトラーの場合は逆にやり過ぎ。

 

 中間点としては丁度良い落とし処だろう。

 

「一ヶ月だよ。一ヶ月我慢してくれれば良い。その間ベルヒスガーデンででも静養してきたらどうかね? 少しは落ち着くだろう。それに君だって分かっているだろう。万が一日本と戦争になれば我が国は灰にされる」

 

 過去数度、日本とは戦争をしてきた。その全てで降伏を余儀なくされたユーロピア。狂った様に戦場に新兵器を万単位で送り込んで来るような化け物に勝てるはずが無い。とにかく技術力と物量が圧倒的すぎるのだ。

 

 日中戦争も見たし、それ以前の戦争も見た。全て日本の圧勝だ。そんな国に愚かにも挑んだE.U.ユーロピア共和国連合は完全敗北を喫した。常に最先端の兵器を万、ときには100万の単位で送り出してきては平然としているモンスターは、ついに皇歴1940年の8月、同じモンスターの神聖ブリタニア帝国とぶつかった。

 

 冒頭いきなり日本はそれまでの航空機の概念を覆すジェット戦闘機を送り出してきた。10,000機という恐ろしい単位で。ロケット弾や初期のミサイルまで。弾道ミサイルさえも。80,000t戦艦や80,000t空母を何事も無く繰り出してきたときは歴史の教科書を読んで寒気を覚えた。

 

 これに追いつくブリタニアもブリタニアだ。日本がジェットなら、こっちもジェットだ半歩遅れで繰り出し、60,000、70,000、80,000t級の戦艦や空母を次々と建造し送り出してくる圧倒的物量。

 

 負けじと日本も60,000、70,000、80,000t級空母と戦艦を送り出し新型機を作り出す、太平洋戦争は激烈を極めた。そして日本はとうとう最終手段として次々と建造していった総計にして85,000機という頭のおかしくなりそうな数の超重爆撃機富嶽でブリタニア全土を爆撃する作戦に出た。出るはずだった。

 

 これに待ったを掛けたのが当時のシマダ伯爵とクルシェフスキー侯爵だった。彼らは御帝、現在の上帝陛下と。ブリタニア皇帝、現在の先帝陛下に極刑物の直談判をしたのだ。そして互いに『積極的戦争の意思無し』のお言葉を引き出し、戦線は縮小していった。

 

 この戦争で日本は嶋田、辻、山本、東条、南雲、春勢といった英雄を生み出し、ブリタニア側もヴェルガモン、シュタットフェルト、ソレイシィ、アッシュフォード、クルシェフスキーといった大きな英雄を生み出したが。財務関係者は被害状況とこのまま戦争を続けたら両者共倒れしていただろうという概算に卒倒したとか言う話も残っている。

 

 とにかく、日本との戦争は金輪際行ってはならないのだ。無論、ユーロ・ブリタニアとして培ってきた友好関係が今更崩れるとは思わないが。

 

「ムッソリーニもいる、バルボも。ヒムラー、デーニッツ、ボルマン、ゲッベルス、リッペントロップ、マンフレディ、ファルネーゼ、ヴィヨン、ジルもいるシャイング兄弟ブレイスガウ家も。君が静養中でも政権は回るんだ。たった一ヶ月の謹慎だ。その間、私は私でゲートの管理について日本側と協議しよう」

 

 一拍おいたヴェランスは鋭い瞳を見せて。

 

「無論、平行世界のE.U.ユーロピア共和国連合の処分についてもな」

 

 これらを聞いたヒトラーは。

 

「ふん、随分と回りくどいことをする。戦略潜水艦の五十隻でも送り込んでF号兵器をぶちこめば済む物を」

 

「そのやり方は暴力的に過ぎると行ってるんだ。ドゥーチェからも連絡があったよ平行世界のシュナイゼル皇子、ユーフェミア皇女の言によれば、時間を掛ければE.U.も変われるはずだとね」

 

 それで無理なら――。

 

「我らAEUが制圧して矯正するしか無いがね」

 

 どれだけ言って聞かせても分からない者には最終的に教育を施すしか無い。それがどのような教育となるかは不明ながらも。

 

「馬鹿馬鹿しい。最初からそうした方が早いだろうに」

 

 無駄な時間だ。それをするくらいなら戦略潜水艦という選択肢は消したとしても、通常戦力を送り込んで実践的教育を施せば良い。

 

「確かにそうだが、リッペントロップが言ってたよ、戦争は外交の延長線上だと。それは私も分かっている。だからこそ慎重に事を運ぶのさ」

 

 優しげながら、一端の政治家らしく、そう語るヴェランスに。

 

「ヴェランス、君は優しすぎる。清濁併せのむ政治家には向いていない。皇帝としてどっしり構えていたまえ」

 

「実務は君に任せて居るつもりだヒトラー。ただ今回は私が出るしか無かった。君の命令で出された指示を撤回できるのは私だけだからな」

 

 とりあえず君の動かした戦略潜水艦は皇帝権限で格ドックに戻すよう指示を出して置いた。かまわないね?

 

 構わんが、君たちがもたもたして腐れに腐れたまま変わらずだったのなら、今度こそ日本に許可を貰って戦略潜水艦五十隻並べてE.U.を灰にするぞ?いいな。

 

 それはやり過ぎだから通常戦力で。それなら私もドゥーチェも納得できる範囲内だ。

 

 承知した。F号兵器は極力使わんようにするよ。……極力な。

 

「それならいいんだが、ヒトラー、君は昔から無茶をする男だからな」

 

「その無茶に助けられて来た男が良く言う」

 

「ははは、まあ確かに。それじゃあ私は行くよ。呉々も謹慎期間中にAEU軍を動かすような真似は止めてくれよ」

 

「さすがにするか!!」

 

 ヴェランスが出て行った扉を見つめて執務机に突っ伏したヒトラーは面白くなさそうにごちた。

 

「つまらんなあ。折角腐れたE.U.を灰に出来たと――」

 

 瞬間、悪寒が走る。そういえば日本の領海に、ましてや聖域神根島に無断で侵入するところだったのだな。

 

「怒りに我を忘れていた。いずれにせよ日本側と協議はしないと行かんな。ゲートは国際共同管理する方針で決まっているのだから」

 

 

 ※

 

 

 ロウリア王国 王都ジン・ハーク ハーク城 御前会議

 

 ロデ二ウス大陸の西側半分を占め、人口3800人にも達する大国、ロウリア王国。

 

 元々は中規模国家であったが、侵略戦争を繰り返した結果、現在のような大国へと至った。

 

 この国は人間至上主義に偏重しており、純粋な人間種のみが住まうことを許されている。エルフ、ドワーフ、獣人族を亜人と呼び醜い生き物として迫害してきた。

 

 亜人殲滅という不可能な事を国是としており、亜人比率の高い隣国のクワ・トイネ公国、クイラ王国とは上手くいくはずも無く、国境は常に緊張状態が続いていた。

 

 だが昨今、この緊張状態が緩和されている。なぜか。それは別にロウリア王国が亜人殲滅の国是を降ろしたからでは無い。

 

 本来目標とすべき亜人共よりも、更に大きく容易に手に入る目標を得たからに過ぎないのだ。

 

 ロウリア王国の首都であるジン・ハークは三重の城壁に囲まれた都市で、中には70万人ほどが暮らしている。夏に成り。暑くなってきた月の綺麗な夜、松明が焚かれる薄暗い城の一室、炎の揺らぎがいくつかの人影を作る。

 

 この部屋で国の行く末、新しい攻略目標についての重要な会議が開かれていた。

 

 ロウリア王国の最高会議、機に野運営を左右する重役達が集まっている。

 

 ロウリア王国大王ハーク。ロウリア34世を筆頭に。

 

 王国防衛騎士団将軍パタジン。

 

 宰相マオス

 

 三大将軍 パンドール

 

      ミミネル

 

      スマーク

 

 王宮主席魔導師ヤミレイ

 

 他にも国の幹部達が勢揃いし、真剣な面持ちで席に着いていた。

 

「これより会議を始めます」

 

 宰相マオスが進行で、厳かに口火を切った。

 

「まずは国王からお言葉があります」

 

 国王ハーク・ロウリア34世が話し始める。

 

「皆の者。これまでの準備期間、ある者は厳しい訓練に耐え、ある者は財源確保に寝る間も惜しんで奔走し、またある者は容易になったとは言え命をかけて敵国の情報を掴んできた。皆大義であった。一年前、突如途絶えたパーパルディア皇国からの支援と同国の政変。砲艦の突如とした処分に竜騎士団の解散。これは彼の列強を称していた国の凋落その物である。財源が枯渇したのだ。その証明と言わんばかりかパーパルディア皇国からの使者は姿を消して一年消息不明だ。よって余は方針を定めた。ロデ二ウス大陸の統一よりも先にまずは丸裸となったパーパルディアに攻め入ると」

 

 その為の準備は全て整ったという国王。

 

「まず第一にパーパルディア皇国の併合は目前です。彼の国には既に砲艦は無く、竜騎士団もおりません。情報として24隻ほどの大型船があるようですが、なに、この一年艱難辛苦に耐え、軍事力を強化し6,600隻にも達する艦船を揃えた我が国の敵ではありません。ましてやいまの我が竜騎士団は1,000騎にも達します。竜騎士の居ないパーパルディア皇国など物の数ではありません」

 

 黒髭を生やした三十代の男パタジンは自信を持って言い。パンドールが引き継ぐ。

 

「兵力は相変わらず100万と多いようですが、現在では我が国も100万。艦船6,600隻で押し寄せれば何、竜騎士の居ない国の軍など」

 

 パタジンが変わって宰相に懸念事項を伝える。

 

「宰相、風の噂ですが一年前パーパルディア皇国にも北側諸国の接触があったとか」

 

 宰相は外交のトップでもある。一年前ロウリア王国に接触してきた北側諸国とかいう蛮人共は、先んじてクワ・トイネ公国、クイラ王国と国交を結んでいたため、敵性勢力として追い払っていた。今度来たら殺すぞと脅しを付けて。

 

「なんでも最も近い大日本帝国という国がクワ・トイネ公国から北東に1,000㎞以上沖合だそうで、その他の国は大東洋にあるです。何処まで見渡し進んでも海しか無い大東洋にその様な国々は存在し得ません。当時も奴らは我が国の竜騎士団とワイバーンを見て『初めて見た』と驚いていました。竜騎士の存在しない蛮族でしょう。情報は余りありませんが」

 

 ワイバーンはこの世界における唯一と言って差し支えない、軍隊の航空戦力だ。そのワイバーンがいないということは、地上、洋上、における火力支援が受けられない。空爆だけで騎士団は壊滅しないが、常に火炎弾の脅威にさらされ続けるため、精神力が持たない。北側諸国使節団が『ワイバーンを初めて見た』と発言したことで、ワイバーンのいない弱小国家群とみなされたのである。実際には高高度無人偵察機で既に目撃されているのだが。

 

 そして、少なくとも今までの第三文明圏の常識ではワイバーンの居ない国=弱色国であった。だからこそ今のパーパルディア皇国も弱小国なのだ。

 

「そうですか。では万が一、パーパルディア皇国が北側諸国とかいう国家群に助けを求めたとしても大したことはないでしょうな」

 

 パタジンは口の端をつり上げた。

 

「しかし、我が代でついにフィルアデス大陸に攻め込み、我々を散々見下して来た第三文明圏を支配できるのだ。そう思うと余は嬉しいぞ」

 

 ハーク・ロウリア34世が嬉しそうに発言する。

 

「途上にあるシオス王国、アルタラス王国には目もくれるな。彼の国々はまだ武装をしているだろうからな、中継点としては欲しいが。パンドールよ。上陸後のことも考えるなら艦船は6,000隻は必要だろう。ワイバーン800騎と共に貴様に与える。見事パーパルディア皇国を平定して見せよ。アルタラス、シオス、については現場の判断に任せる」

 

「ははーッ、必ずや大王様にパーパルディア皇国を献上してご覧に入れます」

 

 

 ロウリア王国がパーパルディア皇国へと攻め込む一ヶ月半前の事であった。

 

 

 

 

(どんな傾向かを知りたいのもありまして

  • ミリシアル好き
  • ミリシアル嫌い
  • グラ・バルカス好き
  • グラ・バルカス嫌い
  • ロウリアは徹底的にやっちまうべき
  • ロウリアにも救いを
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