Meltdown Mind   作:古岩 はかね

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試験は死んだ


OWN MOTIVES 4

 

 医務室で迎える朝は嫌いだ。充満する薬品の匂いとカーテンで閉め切られて朝日が見えないため、辛気臭くなる。それに左腕をギプスで固定されているため体が洗えず不衛生だ。まるで環境が私の気分を下げにかかっているようにすら思える。

 

 

「いやー臭いね~」

 

 

 私が起きたのを気配で察知したのかカーテン越しにマクシミリアン先生が話しかけてくる。その言葉の真意は何日も体を洗っていない私が臭いのかそれとも医務室の薬品の匂いのことを言っているのか、考える間もなく前者だろう。そろそろ体を洗いたい。

 

 

「まだギプスは外せないんですか?」

 

 

「できないんじゃないかな。まあまだ早いとは思うけど触診でもしてみるかい?」

 

 

 面倒くさいと言いたげな表情をしている。露骨に嫌そうだ。

 

 

「……じゃあ、せめてシャワーを浴びさせてください。臭いなんて言われたくは無いですから」

 

 

「たしかナノマシン投与から四日目だったね。誰か付き添いをつければいいよ。一人じゃ洗えないだろうからね。あ、僕はそっちの趣味無いから勘弁してね」

 

 

「レイチェルに頼みます」

 

 

「分かった。連絡しておくね」

 

 

 記憶喪失で実年齢不詳なため、私の年齢を体の成長具合から考えると15歳程度であるとジゼルが言ったことがある。クォーターであるらしいため自分基準でそう判断したらしい。私の民族の血は他の人たちに比べると身長が小さくなるとも。だがジゼル自体他の人と同じような体格のため全く信用できない。

 書類上の年齢は18歳ということになっているが明らかに体が見合っていない上、子ども扱いされるのは若干コンプレックスになっているようだ。

 先生がレイチェルを呼んで二分後、扉が唐突に開けられた。

 

 

「咲良が私呼んでるってホントですか」

 

 

「早すぎだよ。私はこれから出るから本人に直接聞いてくれ」

 

 

 そう言うと先生は白衣を翻して医務室から外へと出た。残されたのは私とレイチェルのみ。

 レイチェルは金髪ロング、出る所が出ているグラマーな美女と私は形容している。身長その他全てにおいて自分は女として負けている。服はフェイドの制服である胸が隠せる程度の丈の白を基調としところどころにあるラインには赤色が使われたノースリーブジャケットを、普通はボタンを留めずに下に何か着て肌を隠すところをストラップレスのブラジャーのみで前ボタンを一つだけ留めて露出過多だ。

 そんな彼女は、普段からあまり話さない私にいつも話しかけてくる。フェイドにほぼ同時期に入ったが、当時の私は言葉がわからなかったためジゼルと二人で面倒を見てもらい、今こうして私が共通語を話せているのは8割がジゼル、2割がレイチェルのおかげだろう。

 

 

「久しぶり。一週間会えなくて寂しかった」

 

 

 優しく言葉をかけてみる。一週間というのは起きてまだ4日程度しか経ってないが3日は寝ていたらしいため、レイチェルと会っていないのは一週間ぐらいだと思ったからだ。

 

 

「無事そうでよかった。心配してたんだから。それで、用事は?」

 

 

「一週間も寝っぱなしで動くことが許されなかったから……ね?腕もこの通りだし」

 

 

 ギプスで固定された腕を見せる。レイチェルはそれを見て納得といった表情を見せた。

 

 

「察したわ。許可はもらっているから呼ばれたのよね。まかせなさい」

 

 

「……お願いします」

 

 

「じゃあ早速シャワールームまで行きましょう」

 

 

「……」

 

 

 久しぶりに足を地面につけて、立つ。下着などは一切つけていないためシーツを抱き寄せながらである。

 

 

「もしかしてその格好で浴場まで行く気かしら?」

 

 

「これ以外にないから……」

 

 

「……部屋まで制服を取りにいくわ」

 

 

「ごめん……」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

シャワールーム奥、大浴場

 

 

 右腕が動かないのは思った以上に辛いものであった。まず、服を着るのも自分一人では満足にできず結局レイチェルに手伝わせてしまったし脱衣所で脱ぐことも手伝わせてしまった。

 一週間全く運動していなかったため真っ直ぐ歩くことすら気を遣う。

 

 

「基礎訓練からやり直さないと……」

 

 

「それ以前に右腕のリハビリ」

 

 

 復帰できたとしてもやることは多いらしい。

 私がそうため息を吐くとレイチェルは桶のお湯を一気に私の頭にかけた。

 この大浴場はシャワールームの奥に設置されており、基本的に実践で活躍しているこの施設所属のフェーデ搭乗者と技術者チームのリーダー格しか使ってはいけないという暗黙の掟があるが、今回の私は特別らしく使ってもいいらしい。

 

 

「反撃できないのが悔しい」

 

 

 左手だけでできることなんてたかが知れてるし、シャワーノズルはレイチェルが持っていて為す術がない。

 

 

「そんなこと考えるぐらいならもっと前向きなことを考えましょう?もっと背を高くしたいとか」

 

 

 椅子に座っている私の背中に豊満な胸が押し付けられる。これで前向きなことを考えろだなんて無理だ。

 

 

「人形みたいでかわいいって言われちゃうわよ」

 

 

「みんなから言われてるからもうそれはいいの。ところで、特別な事情って何?」

 

 

 嫌な話題を無理やり引きはがし、別の話題を振る。

 

 

「それって私の下の方の事情のこと?」

 

 

 レイチェルも話題替えをしようとしたことに気づいたのか、笑いながら下品な話題を振ってくる。

 

 

「特別にこの先輩達専用の大浴場を使ってもいいってやつ」

 

 

「ああそれね。ここを使ってもいい人の条件は覚えているかしら」

 

 

「戦場で戦っているか、メカニックチーフだけでしょ?さすがに頭までは腐ってない」

 

 

 少し不貞腐れて言うとレイチェルは鏡越しに申し訳なさそうな顔をした。

 彼女は私の体の下腹部あたりから、タオルとボディーソープで丁寧に一週間分の垢を落としていく。

 

 

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