時を渡る正義の乙女たち   作:UBW・HF

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「屑屑屑屑ッ、このド屑がっ!!貴方にシル様を頼る権利などない!死ね!いや私が殺す!!瞳を抉り、この世のありとあらゆる苦痛を味あわせた後殺してやる!!」

 

「どの面を下げてここに来た、この汚物が」

 

「いや、その今日はちょっとシルさんにお願いがあって来たと言うか……。」

 

「屑屑屑屑ッ、このド屑がっ!!貴方にシル様を頼る権利などない!死ね!いや私が殺す!!瞳を抉り、この世のありとあらゆる苦痛を味あわせた後殺してやる!!」

 

「ヒィィィ―――!!」

 

「はい、ヘルンやめましょうねー。ベルも困ってますからねー」

 

とある町娘を頼るために酒場にやって来たベル達一行。

もはや恒例のやり取りとなりつつあるヘルンの殺害宣言(あいさつ)を、ヘイズの協力もあってなんとか乗り越えたベルは、酒場にいるであろうシルを探す。

 

「ベル、あなた何やったの?」

 

「ベル様は何もやってませんよ。ほぼ逆恨みですから、気にしないでください」

 

殺害宣言を見たアリーゼたちのベルを見る目が、一瞬胡乱なものに変わったことを一応ここに書いておく。

まあ、リリの弁明があったのであまり気にはしていなかったようだが。

 

「ウニャ?誰かと思ったら白髪頭とリューたちニャ!」

 

「リュー?久しぶりだね!今日はどうしたの?」

 

「お久しぶりです、アーニャ、ルノア」

 

ヘルンの挨拶を聞いた従業員たちが、続々と厨房から出てくる。

そして、その中にシルもいた。

 

「ミャーの美尻が来たニャ!」

 

「クロエ、ベルさんへのセクハラも程々にしましょうね」

 

ベルにセクハラしようとするクロエを窘めながら、シルはベルに向き合って挨拶をする。

もちろん、ヘルンの挨拶とは違って普通の挨拶だ。

 

「お久しぶりですね、ベルさん。今日はどうされたんですか?私に用があるって、チラッと聞こえてきましたけど?」

 

「用だか何だか知らないけど、もう少し時間帯考えて来れなかったのかい?こちとら開店準備で忙しいってのに」

 

「すいません、ミア母さん。ですが、今回は下手をすれば、都市どころか下界そのものに大きな混乱を招きかねないレベルの緊急事態です。その解決のために、シルの知恵を借りたく…。」

 

「はぁ?」

 

「? 何があったんですか?私が言えることじゃないですけど、派閥大戦を経験したベルさん達がそこまで言うって相当ですよ?」

 

「ホントにアンタが言えることじゃないね」

 

ミアの小言に苦笑するシルだったが、そんな和やかな様子を見てもベルたちの表情は暗いまま。

困り果てたように顔を見合わせ、どうするべきか思案する。

そうして、やがて先陣を任されたベルが、思い切って話を切り出す。

 

「実は、今日ダンジョンで異常事態(イレギュラー)が発生しまして…。」

 

異常事態(イレギュラー)?」

 

「はい。その……。」

 

ベルはそっと、後ろにいるアリーゼたちに視線を送る。

その視線を受け取ったアリーゼたちは、少し悩んだ末に意を決して被っていた外套を脱ぎ捨てる。

外套の下から出てきたアリーゼたちの顔を見たシルは、驚いて目を見開く。

 

「アリーゼ・ローヴェル……?」

 

「ウニャ?アリーゼ?どっかで聞いたことがあるようニャ…」

 

「バカ、リューの元同僚でしょ!アストレア・ファミリアの!!」

 

「アストレア・ファミリア?でも、アストレア・ファミリアって―――」

 

「5年前に壊滅してるね。リューを除いて、団長であるアリーゼ・ローヴェル含めた全員が死んでる」

 

ミアはアリーゼたちを見ながら、ハッキリとした口調でそう言った。

シルの発言である以上、本物であることは間違いないと分かっているのだが、それでも状況が理解しきれず混乱している。

そして、状況を理解しきれず混乱しているのは、シル達だけではなかった。

アストレア・ファミリアが5年前に壊滅したという事実に、リオンは激昂する。

 

「待ちなさい!アストレア・ファミリアが壊滅したとはどういうことですか!?」

 

「ウニャ!?よく見たらリューが二人いるニャ!!」

 

「本当にどうなってんだい、これは…」

 

「質問に―――ッ!?」

 

混乱するばかりで質問に答えない彼女たちに痺れを切らしたリオンはもう一度訪ねようとするが、リューに斬りかかられたことでそれは止められる。

 

「黙れ、未熟者。これ以上場をかき乱すな」

 

「ふざけるな!アストレア・ファミリアが壊滅したなど、今まで一言も―――」

 

「貴様がこうなると分かりきっていたから言わなかっただけだ。それでも、貴様以外全員察していたことだ。それを察することも出来んから、貴様は未熟なのだ」

 

「なんだと―――!?」

 

「店の中で暴れんじゃないよ、このバカ娘ども!!」

 

「「ヘブシッ!?」」

 

互いに武器を取って喧嘩を始めようとした二人は、ミアの拳骨によって沈められる。

それによって、混乱していた場は静まり返った。

シルは一つため息を吐いて、ベルの方を向きしっかりとした口調で尋ねる。

そこに、先程までのようなゆるい雰囲気はない。

 

「説明お願いできますか、ベルさん?」

 


 

ヘスティア・ファミリア+アリーゼたちの真正面にシルが座り、他の面々はシルの後ろか少し離れた場所から彼女たちの話を眺めている。

視線が全て集まる中、ベルの口から語られるのはこうなった経緯の全て。

それを聞き終えた全員は、やはり信じられないと言ったように顔をしかめていた。

そんな中、シルだけは頭を抱えてその可能性について真剣に吟味している。

 

「まさか、カオスのくしゃみに巻き込まれて?それって、どれだけ確率が低いと…。いや、それ以前にそうなって無事で済むわけが……。でも、ベルだからあり得るのかしら?」

 

「口調が戻ってるよ、このバカ娘」

 

「あイタっ」

 

動揺のあまりフレイヤの口調になっていたシルだったが、ミアに小突かれてシルとしての口調に戻る。

小突かれた頭を擦りながら、シルは軽く自己紹介に入る。

 

「えっとですね、まず最初に自己紹介しておくと。私はフレイヤ・ファミリアの主神、フレイヤですが、今は理由あってシル・フローヴァとしてこの『豊穣の女主人』で働いています。ファミリアもほぼ解散状態にあります。私の正体を知ってる人は少ないので、他言無用でお願いします。以上!」

 

早口かつ一息にそう言い切るが、当然のように疑問は湧き上がってくる。

 

「え?待って待って待って。どういうこと?何がどうなったら都市最大派閥が解散して、その主神が酒場で働くようになるの?というかあなた、7年前の時点で働いてなかった?」

 

「あ~、そう言えばあなたには怪しまれたことありますね。あの時は内心冷や汗かきましたよ」

 

「いや、それもそうだけど……。」

 

「バカがバカなことしてこんな結末になったって思っときゃ良いんだよ」

 

「え~、ひどくないですかぁ?」

 

「男にフラレた腹いせに都市全土を魅了するなんてバカ以外の何者でもないだろうが。自業自得さ」

 

「美の女神をフる男がどこにいる…?」

 

「私の眼の前にいますね~」

 

「眼の前って……、え?」

 

一同の視線がベルに集中する。

見つめられたベルは居心地が悪くなったのか、冷や汗をかきながら必死に視線を彷徨わせる。

ちなみに、ヘルンはそんなベルに激怒して殺そうとしているが、ヘイズによって抑え込まれている。

 

「おい兎。ダンジョンの中でも何回か言ってたけど、お前ホントに何やったんだよ?」

 

「話せば長くなるだろうから、後でリューにでも聞きゃいいさ。それより、本題に入りな」

 

ミアはシルを見つめて、話の本題に移るべく切り出す。

アリーゼ達がここにいることの、原因とその可能性について。

 

「一体何がどうなったら、過去に行くことなんて事態になるんだい?そもそも、ここにいる奴等は本物なのかい?その他にも、過去に行ったのに今が変わってないこととか、全部説明しな」

 

ミアにそう言われたシルは、頭を抱えてウンウンとうなり始める。

シルの頭脳を持ってしても、今回の件を説明するのは難しいようだ。

 

「カオスについてや時間遡行について……それ以前に平行世界や可能性世界についても…。下界の住民に分かるかな?ルートの話や未来分岐の方を先に説明すべき?それとも……。あぁ~、説明することが渋滞してる~」

 

「煮えきらないね。ハッキリ言いな」

 

「ハッキリ言えないから煮えきらないんですよ…」

 

シルは悩み続けていたが、やがて煮えきらないなりに考えがまとまったのか、ゆっくりと説明を始める。

 

「まず最初に言っておくと、今回の件に関して私はあくまで推測を述べるだけで、ハッキリとしたことは何も言えません。なので、間違っている可能性があることも理解しておいてください。ちなみに、これは他の神々でも同じです。誰に聞いても、同じような答えしか帰ってきません。決して、私が無学なわけじゃありませんから」

 

「全知零能である神々でも、分からないことがあるんですか?」

 

「そうですね。まずそこから説明していきましょうか」

 

シルはベルの疑問に対し、説明を始めた。

分かりやすいように、どこからか取り出した紙に図解を描いて。

 

「大昔…天界にいた時から、多くの暇を持て余した神々が過去や未来への渡航に挑戦し続けてきました。それこそ、数え切れないくらいに」

 

「? 多くの神々が挑戦してきたんなら、それこそ簡単に説明できるんじゃないですか?実例がたくさんあるわけですし」

 

「それが全部成功してたら、の話ですけどね」

 

シルは大きなため息を吐いて、落胆を表しながら続ける。

 

「過去、天界において数え切れない神々が神の力(アルカナム)を使用して挑戦してきましたが、成功例は一つもありません。その尽くが失敗し、その全員が悲惨な末路を遂げています」

 

「……え?」

 

「ちょ、待ってください!それじゃあベル様はどうなるんですか!?それに、今ここにいるこの方々も!!」

 

「だから、私もこうして頭を抱えて悩んでるんですよ~」

 

「いや、でも……。」

 

「おそらく、アストレア・ファミリアの方々とそこのアーディさんに関しては、ベルさんと深く交流したのが原因です。それによって、ベルさんが通った道に引っ張られる形で、こっちの世界に来てしまったんだと思います」

 

「つまり、僕のせいで……」

 

「ベルさんのせいじゃありませんよ。どうしようもなかったことですし、そもそも彼女たちはあなたに命を救われてるんですから。恨まれる筋合いなんてありません。カオスの前には、人間はおろか神々ですら無力なんですから。というか、まだ運が良い方だと思いますよ。彼女たち以外にも、もっと別の何か恐ろしいものが来る可能性もあったわけですし。あるいは、今後来るかもしれません」

 

責任を感じ自分を責め立てるベルをシルはフォローする。

だが、そこに疑問を抱いたミアが、疑問を投げかける。

 

「その“カオス”ってのは何なんだい?」

 

「世界や神々を生み出した力の塊です。意思も何もなく、ただそうあるだけの力の奔流。世界そのものと言えるような存在ですね」

 

「そんな壮大なものに、そこの坊主は巻き込まれたと?」

 

「普通は巻き込まれるなんてことありえないんですけどね。数億年生きてきた神々ですら、巻き込まれた存在なんていないですし。落ちてきた隕石にぶつかる可能性の方がまだ高いくらいですよ」

 

「そんなにかい…?」

 

「そんなにです。もうこればっかりは、そういうものだと納得するしかありません。本来ありえないことですが、あり得た以上それを否定するのも馬鹿らしいですし。理解できなくとも、そういうものだと無理矢理納得してください。ベルさんは色々あって過去に行って、その影響でアリーゼさんたちもこの時代に来てしまった。これでこの話は終わりです。というわけで、次の疑問に移ります」

 

「なんで過去が変わったはずなのに、現在が変わらないのか…ですか?」

 

「ええ、そうです。ですが、これに関しては説明は簡単なんですよ」

 

「簡単?」

 

リリの反芻に、シルは一つ頷いてから答え始める。

 

「皆さんも一度は考えたことがあるはずですよ。あの時ああしていたら、こうしていたら。ああなっていたら、こうなっていたら。あり得たかもしれない可能性を」

 

「それは…、まあ、ありますけど……」

 

「小さいことだと、おやつをつまみ食いしなかったらミア母さんに怒られなかったのに~とか。大きなことになると、ベルさんがフレイヤ・ファミリアに入ってくれてたらな~とか。色々考えたことが絶対にあるはずです」

 

「それがどう繋がってくるんですか?」

 

「これらの可能性世界…神々はこれを“平行世界”と呼んでるんですが、これらは無限に存在しているとされています。世界が誕生した瞬間から、全ての動植物にあり得た無限の可能性。それらは枝分かれするようにして、分岐し続けています」

 

「えっと、つまり…?」

 

「つまり、ベルさんが過去に行った時点で、その世界は私達のいるこの世界とは全く別の世界になってしまったということです。そこにいるアリーゼさんたちも、厳密に言えばよく似た別人です」

 

「よく似た別人って……」

 

「そこの輝夜さんがベルさんに言った通りなんですよ。過去に行った時点で、その者にとってそこは不確定な未来になる。その推察は正しいです。あるいは、ベルさんが行った場所は、最初から平行世界だったのかもしれません。平行に並んだ道を斜めに横切るように、ベルさんは平行世界の過去に行ったのかも」

 

「そっちの世界と、こっちの世界とじゃ、坊主以外にも何らかの違いがあるってことかい?」

 

「かもしれない、って話ですよ。それを推察するのはほぼ不可能です。なにせ、たった一人の些細な気まぐれですら世界は分岐していくんですから。余程大きな違いじゃない限り、分かりませんよ。離れた街に住んでる家族の夕飯の違いとかだったら、それこそ知りようがありませんし」

 

「そんなくだんないことでも分岐すんのかい…?」

 

「かもしれません。というか、平行世界の存在って神々でも証明できてないんですよ。あるだろうなって言われてるだけで。一説だと、すべての可能性はやがて一つに収束していくって言われてたり、無限に分岐して成長がないと世界が判断した時点で剪定されるって言われてたり。色々説がありますし、そのどれが正しいのかは分かりません。一番可能性が高いのを上げてるだけです」

 

シルはあくまで可能性を上げてるだけで、何一つ断言はしていない。

それだけ、この件については分からないのだろう。

 

「そして、最後に。皆さんが一番気になってるであろうこと。アリーゼさんたちは、元の世界に戻れるのかどうかについて」

 

「戻れないんですか!?」

 

「戻れますよ。安心してください。それについても、今から説明していきます」

 

話を一度区切り、間をおいて話を続ける。

 

「戻れるには戻れるのでしょうが、それがいつになるかは分かりません。平行世界とは言え、過去から未来への移動。不確定要素が多すぎます」

 

「ベル様は一度眠ったら戻ってきたそうですが、今回は違うのですか?」

 

「ベルさんは向こうに行った瞬間から眠れば戻れると何となく分かってたそうですが、あなた達は?自分たちの口で言わない以上、分からないんでしょう?」

 

シルにそう言われたアリーゼたちは、小さく頷く。

 

「未来から過去への移動は、川の流れに逆らうような行動であるため、その分世界の修正力も大きいと考えられています」

 

「世界の修正力?」

 

「ええ。大前提として、“未来は確定せず、過去は変えられない”。平行世界であろうと、これだけは変わらないと断言できる絶対のルールです。それに則れば、過去の存在は未来の出来事を知ってはいけないし、未来の存在は過去に居座ることを許されない。それにより、ベルさんは世界に弾かれてしまったんです。七年前にもベルさんは生まれていましたから、意識を失うまでというタイムリミットがあったんでしょうけど…。」

 

「あの、もしかして、私達がベルのことを忘れたのって……」

 

「世界の修正力が原因でしょうね。元々別世界の住民である神々であれば多少の融通は効くのでしょうが、あなた達はその融通が効かない以上、未来の出来事を先に見聞きすることは出来ません。アストレアとヘルメスは覚えてるでしょうけどね」

 

「やはり、記憶喪失についてベルは関係なかったわけですか……。」

 

「はいはい。過去の自分に怒るのは後にしてね、リュー。話の本題はここから。逆に過去から未来に渡る場合は、修正力から受ける影響が少ないとされています。もちろん、あくまで未来から過去に行く場合と比べて多少マシ、という程度なんですが。それでも、過去に行ったベルさんと違い、大きな猶予があるはずです」

 

「具体的にいつ戻るかとか、分かる…?」

 

「分かりません。なにせ、前例がありませんので。その時が近づけば体感で分かるはずですから、それを頼りにするしかありませんね」

 

「過去に戻った時、アタシらの記憶は?」

 

「おそらくですが、ベルさんが過去に行った時と同様、すべてを忘れます。いい夢を見たけどなんか内容を思い出せないな、みたいな感じになると思いますよ」

 

「ッ―――あの!?」

 

シルの言葉に、アーディは突然立ち上がり大きな声を上げる。

そして、どこか悲痛なその面持ちのまま、シルに尋ねる。

 

「どうにかして、アルのことを覚えていることって出来ませんか?」

 

「…………。」

 

「本当に、どんな方法でも良いんです!全部は覚えていられなくても、ほんの少しだけでも!」

 

壊れた首飾りを握りしめて、アーディは叫ぶ。

だがそれでも、シルは首を横に振るだけだった。

 

「―――ッ!?どうしても、無理なんですか…?」

 

「無理です。もし仮に、私が今ここで魅了を使ってあなたにすべてを刻み込んだとしても、世界を渡るその瞬間に修正されてしまいます」

 

「…………でも、兎はアタシらのことを覚えてたんだろ?だったら―――」

 

「それはベルさんが未来の存在だったからですよ。未来を確定することも、過去を変えることも出来ないとしても、過去を知ることは出来ますから。おそらく、今回のことも同じように、ベルさんや私達は覚えていても、あなた達は覚えれないでしょう」

 

「そんな……っ!」

 

アーディは絶望してしまう。

二度もベル(アル)を忘れてしまうことに、恐怖して。

ベル以外の全ての記憶を改竄したことのあるシルではあるが、その様子に少しだけ同情してしまう。

自分だって、彼を忘れると知らされればどんな手を使っても足掻くだろう。

でも、こればかりは無理だ。

仮に神の力を全力で行使したとしても、大いなる混沌の前には無力なのだから。

 

「ごめんなさい……。」

 

シルに出来るのは、ただ謝るだけ。

無責任なことを口にすることは、出来ないのだから。

その謝罪を最後に、この話し合いは終わりを迎えた。

 

…………………………

………………………

……………………

…………………

………………

……………

…………

………

……

 

「アーディさん、一つ良いですか?」

 

「………なんですか?」

 

酒場を後にしようとするベルたちに隠れて、シルはこっそりとアーディに話しかける。

少しだけ目元を腫らした彼女の姿は、どこか痛々しかった。

だからこそ、シルは最後の最後に慈悲とも言える希望を彼女に話すことにしたのだ。

不確定すぎて、ほぼゼロに等しいような可能性で、皆の前で話すには憚られた話を。

 

「これは可能性がゼロに近いから、さっきは言わなかったことなんですが……。」

 

「? なんでしょう?」

 

「――――――――――――、――――――――――――――――」

 

「!? それって!?」

 

「可能性です。ゼロにも等しい、ありえないくらい低い可能性です。あまり期待しないでくださいね」

 

シルは最後に突き離すようにそう言った。

彼女が思い出すことはないとしても、彼女を苦しませないようにするために。

 

「なんで、私にそこまでしてくれるんですか?」

 

「……ただの同情です。同じ人に救われた者として、流石に不憫に思えたからですよ。……あなたの未来に幸運があることを、女神として祈っているわ」

 

そして最後に、シルは町娘ではなく、女神としてアーディに言葉をかけた。

酒場でのやり取りはこれでおしまい。

シルがアーディに言った言葉は彼女しか知らない。

その言葉を含めた全てを、彼女が思い出せるのかどうかは、誰も知らない。

 


 

あとがき

 

長々と説明パートばかりを書いて頭がこんがらがってきました。

全部律儀に読んでくださった方、ありがとうございます。

あとね、ヘルンさん書くのムズいです。

すんごい長文喋るし、常時的に殺意MAXだし。

作者さん本当にすごいと思います。

訳わかんねえ、何言ってんだこいつ、って思っても文句は言わないでください。

そして、俺のほうがもっとうまく説明できるぜ!って思った方、書いてみませんか?

この設定で、もっと面白い話を書いてみませんか?

 

書いてください!

後生ですから書いてください!

お願いしますから!!

 

私はいつまでも待ってますからね!!

 

以上、あとがきでした!!

 

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