TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第132話『合戦剣術』

 

 サイコロステーキ先輩のやられっぷりはさすがだった。

 惚れ惚れするほどで、つい俺は笑みがこぼれてしまう。

 

 そんな俺の表情を見た周囲の隊員たちが、悲鳴じみた声を上げていた。

 え? な、なんでみんな怖がってるんだ?

 

 よくわからないが、先にやることをやってしまおう。

 俺はそのまま無言で足を振り上げ、そしてまた刀の峰へと振り下ろすのを繰り返した。

 

 ――ガンッ! ガンッ! ガンッ!

 

 音が鳴るたびに、どんどんと彼の頸が圧迫されていく。

 それはまるで”裁断機”のようだった。

 

「がっ、かはっ……や、やめっ……首……締まっで……じ、死ぬっ!? ……殺ざれ!? だれ、がっ……だずげ、っ……!?」

 

 サイコロステーキ先輩の身体がジタバタと悶え、地面を掻きむしりはじめる。

 俺はみんなに講義を行う。

 

「わたしはみんなとちがって筋力がない。けれど、鬼の頸を斬れないわけじゃない。正確には……鬼を頸を斬るのがニガテ(・・・)なだけ」

 

 ガン! ガン! ガン!

 ブクブクとサイコロステーキ先輩は泡を吹き、白目を剥きはじめていた。

 

「だから、手段は選んでる余裕がなくて」

 

「も、もう……許じっ……が、ぁっ……あ、ばばばば……!?」

 

「鬼を殺すためなら、道具だろうが脚だろうが(・・・・・)なんだって使う。――こんな風に、ねッ!」

 

 言って、ひときわ――ガァン! と強く足を踏み下ろした。

 次の瞬間、サイコロステーキ先輩はビクゥンッ! と身体をけいれんさせて……。

 

 ――ガクッ、と意識を失った。

 

 俺は足を木刀の峰からどけると、地面にめり込んでいた切っ先を引き抜いた。

 みんなにきちんと伝わっただろうか?

 

 そう、ゆっくりと周囲の隊士たちへと順繰りに視線を向けた。

 彼らはまるで猛獣にでも睨まれたみたいにビクゥッ! と怯えた目になった。

 

「な、なんて荒っぽい戦いかたなんだ」

 

「あんなにかわいい見た目をしているのに……お、恐ろしい」

 

「蟲柱さまだってそうだろ。柱はみんなおっかないんだよ!」

 

 さっきまでとはまるで真逆の反応。

 ……あ、あれっ? なんでみんな引いてるんだ? 怯えてるんだ?

 

 

 ――俺は普通に(・・・)頸を斬ろうとしただけなのに。

 

 

 というか、しのぶと同類扱いされるのは本当に心外なんだが!?

 俺は絶対にあんなに恐くない!

 

「う、うーん……」

 

 誤解をなんとかしないと。

 そう思って、俺は口頭でさらに説明する。

 

「わたしが荒っぽいんじゃないよ。あなたたちの剣がおきれい(・・・・)なの。わからない? ……うーん、じゃあこう言ったほうがいいかな? あなたたちの剣は……」

 

 

「――ヌルい(・・・)

 

 

 俺はなかなか伝わってくれないことに焦っていた。

 そのせいですこし言葉選びを間違えたかもしれない……。

 

 彼らは余計に怯えていたが……大丈夫、説明すればちゃんとわかってくれるはずだ。

 これはあくまでただの技術なのだ、と。

 

「みんな……鬼の頸が硬いからって、自分の頭まで固くしてどうするの?」

 

 べつに鬼の頸を斬る方法は『型を使うこと』――それひとつだけじゃない。

 たとえば、俺がさっき使ったのは……。

 

 

 ――”合戦剣術”。

 

 

「戦国時代、お侍さまは合戦でこうやって敵の頸を斬っていた」

 

 俺はそれを当時の侍に教わった。

 彼は「オレはそうやって大将首を討ち取った!」と自慢していた。

 

 なぜなら合戦では敵が鎧を着ており、単純な腕力だけで頸を斬り落とすのは難しいから。

 そんな中で生まれ、広まった技のひとつが――さっきの。

 

 ……まぁ、その侍の話がウソかホントかは知らないけどな!

 俺は合戦に参加したことがないし、この技が使われるところも直接は見ていないから。

 

 だがそんな真偽なんてどうだっていい。

 重要なのは、あくまで鬼の頸が斬れることだ。

 

 そして、その点においてこの技は有用だった。

 泥臭いが……これまで、実際に活躍してきた実績(・・)がある。

 

 

「つまり――きれいに(・・・・)斬れる必要はないんだよ」

 

 

 この技に限らず、俺の剣は完全な実戦剣術だ。

 だって俺は弱いから。カタチやなりふりに構っている余裕なんてないから。

 

「まぁ……みんなの剣がおきれいになってしまっても、仕方ないとは思うけれど」

 

 なにせ今は時代がちがう(・・・・・・)

 明治時代の廃刀令を転機として、剣術は武道的な側面が強くなっている。

 

 けれど「仕方ない」で死ぬわけにも、死なせるわけにもいかない。

 だから、ここでみんなに教え込む。

 

「実戦はお遊戯でも見世物でもない。斬れればなんでもいい。腕の力で斬れないなら、脚を使えばいい。脚の筋力は腕の3倍とも4倍ともいわれてるんだから」

 

 とくに、この技は体重もかけられる。

 本来の自分の何倍もの力で頸を落とすことができる。

 

 

「繰り返すけど――斬れればなんでもいいの」

 

 

 俺はそう言葉を重ねた。

 最初に反応したのは、さっき俺が開始の合図を頼んだ女性隊員だった。

 

「では、その……氷柱さまの技を学べば、力のない私たちでも鬼の頸を斬れるのでしょうか?」

 

 なにか力不足でも痛感する事件があったのだろうか、切実な表情で尋ねてくる。

 というか……あれ? そういえばこの人もモブっぽいけど見たことがあるような?

 

 ……あっ、そうだ! 那田蜘蛛山で糸に操られていた女性隊員じゃないか!

 サイコロステーキ先輩だけでなく、彼女も生き残っていたのか。

 

「そうですね……あなたはわたしより身長も高いし、体格もいいですね。わたしに斬れるなら……だれにでも斬れる、って思えてきませんか?」

 

「「「……!」」」

 

 ほかの女性隊員たちもみんな、まるで希望を見つけたみたいにイキイキしだす。

 と、俺は今さら気づいた。

 

 そういえばこの柱稽古、参加者に女性隊員の割合が多いな。

 ……いや、ちがう。

 

 そもそもの女性隊員の数自体が、本来の歴史よりも多いのだ。

 もちろん男性隊員のほうが圧倒的に多くはあるのだが……それでも、かなり増えている。

 

「あぁ、そうか」

 

 その答えは彼女らの腰元にあった。

 女流刀鍛冶たちが打っただろう女性用の刀をみんな差していた。

 

「それじゃあ、みんな……打ち込んできて。ほかにも実戦的な技がいくつもあるから、わたしの動きからきちんと盗むように」

 

 

「「「――は、はひっ! 氷柱さま!」」」

 

 

「……えぇ~」

 

 最初の反応とは大ちがいだった。

 俺が声をかけた途端、ビクゥっ! とまるで怯えるみたいに隊員たちは背筋を伸ばしていた。

 

 ……なんでだー!?

 俺、ちゃんと説明したよな!?

 

 さっきのはただの技術で、恐いことじゃないって……!

 ナメられるのも困るが、こんなのは望んでないっ!?

 

 俺はひきつった笑みを浮かべるしかなかった――。

 

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