TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手 作:可愛ケイ@VTuber兼小説家
サイコロステーキ先輩のやられっぷりはさすがだった。
惚れ惚れするほどで、つい俺は笑みがこぼれてしまう。
そんな俺の表情を見た周囲の隊員たちが、悲鳴じみた声を上げていた。
え? な、なんでみんな怖がってるんだ?
よくわからないが、先にやることをやってしまおう。
俺はそのまま無言で足を振り上げ、そしてまた刀の峰へと振り下ろすのを繰り返した。
――ガンッ! ガンッ! ガンッ!
音が鳴るたびに、どんどんと彼の頸が圧迫されていく。
それはまるで”裁断機”のようだった。
「がっ、かはっ……や、やめっ……首……締まっで……じ、死ぬっ!? ……殺ざれ!? だれ、がっ……だずげ、っ……!?」
サイコロステーキ先輩の身体がジタバタと悶え、地面を掻きむしりはじめる。
俺はみんなに講義を行う。
「わたしはみんなとちがって筋力がない。けれど、鬼の頸を斬れないわけじゃない。正確には……鬼を頸を斬るのが
ガン! ガン! ガン!
ブクブクとサイコロステーキ先輩は泡を吹き、白目を剥きはじめていた。
「だから、手段は選んでる余裕がなくて」
「も、もう……許じっ……が、ぁっ……あ、ばばばば……!?」
「鬼を殺すためなら、道具だろうが
言って、ひときわ――ガァン! と強く足を踏み下ろした。
次の瞬間、サイコロステーキ先輩はビクゥンッ! と身体をけいれんさせて……。
――ガクッ、と意識を失った。
俺は足を木刀の峰からどけると、地面にめり込んでいた切っ先を引き抜いた。
みんなにきちんと伝わっただろうか?
そう、ゆっくりと周囲の隊士たちへと順繰りに視線を向けた。
彼らはまるで猛獣にでも睨まれたみたいにビクゥッ! と怯えた目になった。
「な、なんて荒っぽい戦いかたなんだ」
「あんなにかわいい見た目をしているのに……お、恐ろしい」
「蟲柱さまだってそうだろ。柱はみんなおっかないんだよ!」
さっきまでとはまるで真逆の反応。
……あ、あれっ? なんでみんな引いてるんだ? 怯えてるんだ?
――俺は
というか、しのぶと同類扱いされるのは本当に心外なんだが!?
俺は絶対にあんなに恐くない!
「う、うーん……」
誤解をなんとかしないと。
そう思って、俺は口頭でさらに説明する。
「わたしが荒っぽいんじゃないよ。あなたたちの剣が
「――
俺はなかなか伝わってくれないことに焦っていた。
そのせいですこし言葉選びを間違えたかもしれない……。
彼らは余計に怯えていたが……大丈夫、説明すればちゃんとわかってくれるはずだ。
これはあくまでただの技術なのだ、と。
「みんな……鬼の頸が硬いからって、自分の頭まで固くしてどうするの?」
べつに鬼の頸を斬る方法は『型を使うこと』――それひとつだけじゃない。
たとえば、俺がさっき使ったのは……。
――”合戦剣術”。
「戦国時代、お侍さまは合戦でこうやって敵の頸を斬っていた」
俺はそれを当時の侍に教わった。
彼は「オレはそうやって大将首を討ち取った!」と自慢していた。
なぜなら合戦では敵が鎧を着ており、単純な腕力だけで頸を斬り落とすのは難しいから。
そんな中で生まれ、広まった技のひとつが――さっきの。
……まぁ、その侍の話がウソかホントかは知らないけどな!
俺は合戦に参加したことがないし、この技が使われるところも直接は見ていないから。
だがそんな真偽なんてどうだっていい。
重要なのは、あくまで鬼の頸が斬れることだ。
そして、その点においてこの技は有用だった。
泥臭いが……これまで、実際に活躍してきた
「つまり――
この技に限らず、俺の剣は完全な実戦剣術だ。
だって俺は弱いから。カタチやなりふりに構っている余裕なんてないから。
「まぁ……みんなの剣がおきれいになってしまっても、仕方ないとは思うけれど」
なにせ今は
明治時代の廃刀令を転機として、剣術は武道的な側面が強くなっている。
けれど「仕方ない」で死ぬわけにも、死なせるわけにもいかない。
だから、ここでみんなに教え込む。
「実戦はお遊戯でも見世物でもない。斬れればなんでもいい。腕の力で斬れないなら、脚を使えばいい。脚の筋力は腕の3倍とも4倍ともいわれてるんだから」
とくに、この技は体重もかけられる。
本来の自分の何倍もの力で頸を落とすことができる。
「繰り返すけど――斬れればなんでもいいの」
俺はそう言葉を重ねた。
最初に反応したのは、さっき俺が開始の合図を頼んだ女性隊員だった。
「では、その……氷柱さまの技を学べば、力のない私たちでも鬼の頸を斬れるのでしょうか?」
なにか力不足でも痛感する事件があったのだろうか、切実な表情で尋ねてくる。
というか……あれ? そういえばこの人もモブっぽいけど見たことがあるような?
……あっ、そうだ! 那田蜘蛛山で糸に操られていた女性隊員じゃないか!
サイコロステーキ先輩だけでなく、彼女も生き残っていたのか。
「そうですね……あなたはわたしより身長も高いし、体格もいいですね。わたしに斬れるなら……だれにでも斬れる、って思えてきませんか?」
「「「……!」」」
ほかの女性隊員たちもみんな、まるで希望を見つけたみたいにイキイキしだす。
と、俺は今さら気づいた。
そういえばこの柱稽古、参加者に女性隊員の割合が多いな。
……いや、ちがう。
そもそもの女性隊員の数自体が、本来の歴史よりも多いのだ。
もちろん男性隊員のほうが圧倒的に多くはあるのだが……それでも、かなり増えている。
「あぁ、そうか」
その答えは彼女らの腰元にあった。
女流刀鍛冶たちが打っただろう女性用の刀をみんな差していた。
「それじゃあ、みんな……打ち込んできて。ほかにも実戦的な技がいくつもあるから、わたしの動きからきちんと盗むように」
「「「――は、はひっ! 氷柱さま!」」」
「……えぇ~」
最初の反応とは大ちがいだった。
俺が声をかけた途端、ビクゥっ! とまるで怯えるみたいに隊員たちは背筋を伸ばしていた。
……なんでだー!?
俺、ちゃんと説明したよな!?
さっきのはただの技術で、恐いことじゃないって……!
ナメられるのも困るが、こんなのは望んでないっ!?
俺はひきつった笑みを浮かべるしかなかった――。