うーんとね、お姉ちゃんが新しいペットを飼い始めたんだ!!
どんなペットなんだぜ?
狼頭の人間!!
はあ?なんだその気持ち悪いの
魔理沙、そんなこと言っちゃ駄目だよ!!お姉ちゃんのお気に入りなんだから!!あと閻魔とも仲がいいんだよ!!
??
作者「さてさて、今回の小話は、自己評価11点のあの人の甘酸っぱい(当社比)お話です」
さとり「何処が甘酸っぱいんですか??」
作者「では、どうぞ」
私が彼と出会ったのは、比較的涼しい――地底では
「・・・・・」
『暑い。此処は何処だ?済まない。腹が減った。眼の前の女は?綺麗な女だ。先生には悪いことをした。済みません。あの場所でないのならば何処でも良い。疲れた』
「・・・・・ふむ」
その男は酷く衰弱しており、目端は鋭く、まるで手負いの狼の様。
というか、首から上だけ毛皮に包まれていますが被り物でしょうか?
まあ・・・・・私を綺麗だと思った感性には一定の評価をしましょう。
きっと後で恐れ慄くのでしょうが。
私は、男を地霊殿に連れて行こうと思い、声を掛けました。
「そこの貴方。歩けますか?」
「・・・・・」
『無理だ。声が出ない。済まない』
「成る程。歩けず、喋れ無いと。仕方無いですが、私が手ずから運んであげましょう」
「・・・・・?」
『俺の思考を読めるのだろうか?・・・・・こんな半端者の思考を読ませてしまって済まない』
「・・・・・初めてですね。私に謝ろうとした人間は。はぁ、少し我慢してください。生憎、ペットは良く抱えますが人間を抱える機会など無いもので」
私は男の背を起点に男を俵を担ぐ様に抱えました。
男は、驚く程軽くかった。
まだお燐の方が重いですね。
あら、こんな事を言ったらお燐が拗ねてしまうわね。
「・・・・・」
『眠い。安心する。・・・・・済まない、貴女は何と言うんだ?』
「ふむ、貴方の名前を聞くのは後にしましょう。私は古明地さとり。貴方は少し休んでいなさい」
「・・・・・」
『済まない・・・・・眠い。・・・・・ありがとう、さとり・・・・・』
しばらくして寝息が聞こえてきました。
ふふっ・・・・・寝ている顔は犬の様で可愛げがあるじゃないですか。
地霊殿まではあと数分程ですかね。
少し急ぎましょう。
私は地面を蹴って宙に浮き、地霊殿に向かって飛翔する。
・・・・・む?
そう言えば博麗の巫女は動いてないのでしょうか?
身なり的には地上の人間な筈ですが。
◇◇◇◇◇
地霊殿に着いた私はお燐に食事の用意を頼み、狼頭の彼を客室のベッドに寝かせました。
まだ起きそうもありませんね。
丁度いい。
彼はどうしてこんな状態なのか・・・・・少し覗かせて貰いましょうか。
私はベッドの縁に座り、彼の額に手を当てる。
―――想起『スーヴニール』
するすると――断片的にですが――彼の記憶が流れてくる。
眼の前には人里の守護者、上白沢慧音が座っている様だ。
怪我をしている?
『済まない、慧音先生』
『ロウ、大丈夫だよ。生徒を守るのも先生の役割さ』
『だが、傷が』
『心配性だな。こんな傷はすぐに消えるさ。それより、どうして石を投げられていたんだ?』
『俺は、半獣だ。どうやら彼等は首から下が人間の半端者が気に食わないらしい。反撃するわけにもいかない。人里に居られなくなるし、先生に迷惑がかかる』
『そう・・・・・か。吾郎や幾多郎の子が・・・・・差別をするような子では無かったんだがなあ。それに、ロウは人里を護ってくれているだろう?胸を張れ』
成る程、彼は半獣なのですか。
場面が変わる。
雨が降っている。
鈍い痛み。
これは投石の痛みでしょうか。
向こうには刀や槍を持っている人間もちらほら見えます。
『出ていけ!!』
『お前みたいな気持ち悪い奴が居るから!!』
『・・・・・そうか。済まない』
彼の視点が低くなる。
景色が流れていく。
『・・・・・何処か遠くへ』
――哀しい。苦しい。もう嫌だ
彼の思念が流れ込む。
ふむ、爪弾者・・・・・ですか。
彼は半獣なりに影で人里を護っていたが、その事実を人間達は知らなかったといったところですね。
それにしても狼頭の半獣ですか。
私に謝ったことといい気に入りました。
当分の間は地霊殿に住まわせてあげましょう。
「感謝してもいいですよ?」
私はボサボサな彼の毛皮を撫でる。
ふむ、確かに生きている狼の毛の質感ですね。
『温かい・・・・・心地良い・・・・・』
どうやら彼も安定してきた様だ。
半獣ですし、一日と経たずに起きるでしょう。
「さとり様、重湯持って来ました!」
「ありがとう、お燐。そこに置いて頂戴」
「はい。じゃあ、何かあったら呼んでくださいね!」
お燐の持って来たお盆が近くの机に置かれる。
冷める前に起きてくれると助かるのだけど。
しばらく彼の頭を撫でていると、彼の手が少し動いた。
「うぅ・・・・・?」
『眩しい。・・・・・此処は?』
「目が覚めましたか?」
「さ、とり・・・・・?」
『さとり。夢幻では無かったのか』
「ええ。重湯がありますが、食べれますか?」
「す、まな、い」
『済まない。多少は喋れる様にはなったが、身体は動きそうに無い』
「ふむ・・・・・仕方ありませんね。少し身体を起こしますよ」
彼の頭と背を支え、壁に寄り掛からせる様にして彼の上体を起こす。
重湯と匙を持ち、ひと掬い。
「あむ・・・・・良い感じに温くなっていますね。口を開けて下さい」
「・・・・・」
『?』
彼は私に言われた通りに牙の並んだ口を開ける。
見た目は狼ですが、まるで幼い雛鳥の様で・・・・・少しゾクゾクしますね。
あら、いけない。
私は重湯を匙で掬い、その匙を彼の口の中へと運びます。
「むぐっ?!」
『?!』
「食べて下さい。体力が戻りませんよ?」
「・・・・・んぐ」
『・・・・・済まない』
それから私は黙々と彼の口に重湯を運び続け、重湯は空になりました。
私は布巾で彼の口を拭い、その布巾を重湯の乗っていたお盆に乗せました。
「お燐」
「お呼びですか?あ、狼頭の人。起きたんですね!」
「だ、れ・・・・・?」
『誰だろうか?猫耳・・・・・妖怪?』
「ええ。彼女は火車の火炎猫燐よ」
「り、ん?」
『燐?』
「お燐って呼んでね!・・・・・あ、さとり様なんで呼んだんですか?」
「これ、下げて頂戴」
「はーい。わかりました!」
お燐がお盆を持って去って行く。
再び部屋には私と彼の二人だけになった。
「そういえば、貴方の名前は何と言うのですか?」
「ろ、う・・・・・た、だの、ろう」
『ロウ。唯のロウだ』
「ふむ・・・・・貴方はロウと言うのですか」
「・・・・・さ、とり・・・・・きみ、わるく、ないか?」
『・・・・・さとりは俺を気味が悪いと思わないのか?』
「いいえ?頭が獣の妖怪なんてざらにいます。それに覚り妖怪である私の方が気味が悪いと言われる側ですよ」
驚いた。
私が他者を気遣った嘘を言うとは。
本当は、頭が獣で下は別の怪物の妖怪ならざらにいますが、狼頭の人間の様な妖怪なんて聞いたこともありません。
気味が悪いと思わないのは本当ですが。
「・・・・・?」
『何故だ?』
「彼彼女達は私の持つ"心を読む程度の能力"が怖くて、妬ましいのでしょう。だから気味が悪いと言うのですよ。無様ですね」
「つ、らくな、い?」
『辛く無いのか?』
「ええ、少しも。むしろ笑えてきますよ。それだけ隠したいことが多いということなのですから」
「・・・・・?」
『普通、隠したいことなんて無くないか?』
「ふふっ・・・・・貴方の様な者は妖怪だろうと人間だろうと少ないんですよ、ロウ」
私はロウの頭を撫でる。
私の手に彼は気持ち良さげに目を細めた。
「ロウ、今日はもう休みなさい。今は療養が先です」
「わ、かった・・・・・あ、りがとう」
『わかった。ありがとう、さとり』
私は彼をベッドに寝かし、布団をかける。
「おやすみなさい、ロウ。また話しましょう」
「お、やすみ、なさい・・・・・さとり・・・・・」
『おやすみなさい、さとり。・・・・・眠・・・・・い・・・・・』
しばらくして、ロウは寝息を立て始めました。
私が言うのもなんですか・・・・・
「ロウ、良い夢を」
◇◇◇◇◇
狼頭の彼――ロウを拾ってから数ヶ月が経ちました。
ロウは二週間程で日常生活を送れる程度まで回復し、地霊殿のペット達と庭を駆け回っり、今では怨霊の管理や書類仕事を手伝ってくれています。
・・・・・少し優秀過ぎません?
半獣は皆こんなに優秀なのでしょうか。
「さとり、書類終わった・・・・・ました」
『む、敬語は難しいな』
「ふふっ・・・・・言葉遣いが変になっていますよ?別に敬語は外して良いですよ、ロウ」
「む・・・・・さとりには世話になっている」
『さとりには世話になっている。慧音先生も目上の人や恩人には敬語は必須だと言っていた』
「その私が良いと言っているんですから良いんですよ」
「・・・・・わかった」
『さとりが言うのなら』
敬語を使われると違和感がありますしね。
ロウは敬語が苦手ですから。
私はロウから書類を受け取り、一纏めにする。
後で閻魔に渡しに行けばいいでしょう。
「ロウ、少し散歩に行きましょう」
「わかった」
『楽しみだ』
そうしてロウと地底を散歩する。
これもまた最近の習慣だ。
運動不足の解消もできるという理由だけでなく、ロウの反応を見るのが楽しいから結構気に入っている自分がいる。
だって、
・・・・・これが無くなると少し落胆しそうですね。
半獣の寿命は長いと聞きましたが・・・・・
「・・・・・ロウ、出来るだけ永く生きてくださいよ?」
「さとり、どうした?」
『?』
「ふふっ・・・・・何でもありません。行きましょうか」
「わかった」
うーん。どうしたもんかねえ・・・・・
『ロウ』
半獣。半端者の爪弾者。首から上が狼、それ以外は人間という半端な姿をしている。作画コスト低そう。こんな見た目して聴力とか嗅覚は人間と同レベル。代わりに身体能力が高い。四季映姫と仲が良いとか。
『古明地さとり』
ロウの飼い主さん。ロウを気に入っている。気味が悪いと言われるのはどうも思わないがサードアイが疲れるため、単純な動物や正直者のロウと一緒に居ることや、読書を好む。言わずと知れた東方で一番イイ性格をした女。