ケツとタッパのでかい魔虚羅

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もしも魔虚羅が東堂好みの美女だったら

 五条悟が封印され魔鏡と化した渋谷にて、一人の術師が追い詰められていた。

 満身創痍、故に彼は最後の奥の手を切る。

 

「歴代十種影法術師の中に、コイツを調伏出来たやつは一人もいない」

 

「うるさいなぁ、そろそろ殺して────待て!」

 

 伏黒恵を追い詰めていた呪詛師、重面春太が今から起こり得る事象について気付く。

 複数人での調伏が可能であり、今まで誰も調伏出来ていない程の式神。

 重面の頭の中で点と点が線で繋がり、戦慄が彼を襲う。

 

「布瑠部由良由良」

 

 いつの間にか地面から現れた玉犬と蝦蟇に迎えられ、包帯で包まれたそれが姿を表す。

 真っ黒なスーツに身を包み、百九十を超えるであろう女性の姿をして、頭の上に法陣を浮かべて彼女は地上に降り立った。

 八握剣異戒神将魔虚羅、ここに見参。

 

「フハッ、ハハハハハ!ようやく我の出番か!」

 

 それは控えみに見ても美しいと言っていい女性だった、ヨーロッパ系のとても整った顔立ちにブロンドの髪を束ねたポニーテールが調和を生み出していた。

 だが、重面に見惚れるなどという余裕は全くなかった。

 殺意など少しも向けられていないというのに、敵意すら無いというのに、それでも重面は直感的に理解した。

 生物としての格が違うと。

 

「溢れるネオン!ビル群!そして何よりこの状況!やはりここは渋谷か!」

 

 異質なる存在はグルりと辺りを見渡し状況を把握すると、どこからか西洋式の直剣を取り出し伏黒恵の真後ろへと歩き出した。

 召喚者である伏黒が死への覚悟を決めていると───実際にはそれは諦めとヤケクソに近い感情であったのだが───魔虚羅が口を開いた。

 

「であれば、貴様を殺そうとすれば、奴は来るのであろう?」

 

 魔虚羅が腕を振り上げ、

 

「しばし眠れ、伏黒恵よ」

 

 血だらけの伏黒に対して直剣を振り下ろそうとした瞬間、

 

「解」

 

「来たか!」

 

 空中より飛来した呪いの王の斬撃が魔虚羅を襲撃した。

 三つの斬撃が魔虚羅の体を切り刻む、しかし身体を両断されることは無かった。

 法陣が回転し切られた部分の再生を終えると、魔虚羅は宿儺に向き合った。

 対する宿儺も地上へと着地し状況の分析を終えていた。

 

「我は貴様の名を知らんのでな。とりあえずは両面宿儺と呼ばせて貰おう。状況説明は必要か?」

 

「いらん……複数人での調伏が始まり、伏黒恵をダシに俺を呼び寄せたのだろう?」

 

「その通りだ呪いの王よ、伏黒恵が瀕死であり尚且つ近場に宿儺がいるというのは、我としても絶好の機会。悪いが利用させて貰ったぞ」

 

 宿儺は良いように動かされた事自体には苛立ちを感じてはいたが、魔虚羅に対しそれを上回る好奇を示していた。

 通常式神とは主人の命令に従う意思なき存在、いくら調伏前とはいえあれほどの理性と言語機能を持っている式神など宿儺は見たことが無かった。

 そしてこれは呪術界に於いても常識と言える事柄である。

 「リカ」ですらも意識が白濁し正常な意思決定能力を失っていたのだから、魔虚羅がイレギュラーなのは一目瞭然である。

 

「だが、一つ解せんな。確かに俺は伏黒恵に興味を示していた。しかしそれを何故お前が知っている?」

 

 例え影の中から外界を眺めていようと、そんな事を知っている筈がないのだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という事実に、何故気づいた?

 宿儺はいくつかの疑問を抱いた。

 

「ハハハハハ!何故!貴様が何故と問いを放つのか!では、こう言うとしようか───戦えば、わかる。力で示せ、暴力で奪え、それが術師という物だろう?」

 

 宿儺の言葉を聞いた魔虚羅は、腕を組みながら大きく笑うと、獰猛な笑みを浮かべて宣戦布告をした。

 魔虚羅の体から呪力が溢れ出し、その力は右手の方へと集まっていく。

 魔虚羅の右手に握られた直剣、即ち退魔の剣に全呪力が集中する。

 

「開戦の狼煙といこう」

 

 体の一点に呪力を集める事で出力を大幅に上げ、退魔の剣を介する事で呪力を正のエネルギーへと変換、更に守りに回す呪力をほぼゼロとする即席の縛り、これらの段階を経て斬撃は放たれる。

 

「我の名は魔虚羅!そしてこれは先程の斬撃の真似事だ!受け取れ宿儺!」

 

 構えなどまるでなく、無防備の姿勢から振り下ろされる直剣、エネルギーの塊である 刃が宿儺へと飛ぶ。

 石流のグラニテブラストや乙骨の砲撃と原理は変わらない、それは単なる呪力の放出に過ぎない、宿儺の術式のように洗練されていない。

 しかしそれが刃の如く鋭利であった場合、話は別だ。

 この渋谷にて初めて、宿儺は回避という選択を取った。

 

「クックック、『力で示せ』か。そんな事を言われるのは千年振りだな。良いだろう」

 

 十五本の指を以って現代へと降り立った呪いの王、彼が今初めて戦闘の構えを取った。

 千年振りに受肉し、十分な力を蓄え、檻から一時的に解放され、漏瑚との戦い(への虐め)を楽しんだ宿儺はいつになく上機嫌だった。

 傲慢不遜な挑戦者の誘いに乗るくらいには。

 

「お前()魅せてみろ!魔虚羅!」

 

 刹那、二つの暴虐が空中へと飛び上がった。

 地上には既に気を失っている伏黒恵がいる、彼への被害を避けるために両者は戦いの場を移したのだ。

 

「我には天与呪縛のはフィジカルギフテッドのように空の面を捉え空中を移動する事が出来ない、彼らのような無生物の魂を観測する目を持たない。ではどうするか?」

 

 次の瞬間、法陣が回転し魔虚羅は何もない空中を蹴った。

 

「先に術式の開示をしておこう。我の能力はあらゆる事象への適応。今のは空中での戦闘行為に適応したに過ぎない」

 

「成る程、八岐大蛇に近いものだな。そしてお前は先程俺の斬撃を受けた際にも頭上の法陣を回転させている……だからと言って俺の術を完全に無効化したというわけではないのだろう?───解」

 

 再び不可視の斬撃が放たれる。

 適応には段階もしくは制限がある、それが宿儺の見立て。

 もしも無条件に際限なく適応できるというのならば、空中を自由自在に動けるようにすれば良いだけの話だ。

 だというのに魔虚羅は一度の適応で空気の面を蹴るだけに留めている、それが宿儺の一つ目の根拠。

 八岐大蛇でさえそれほど無法な存在では無かったというのがもう一つの理由だ。

 

「見えているぞ!」

 

 魔虚羅は直剣で斬撃を弾いた、それは不可視が可視となった瞬間でもあった。

 弾かれた斬撃は後方へと飛び、ビル看板の一角を切り落とした。

 すかさず打撃による追撃を加える宿儺、魔虚羅は直剣を振り下ろして対処しようとするが、その時ノーモーションで二発目の斬撃が放たれた。

 斬撃と打撃、二つの脅威に対し魔虚羅が取った戦法は直剣を上に投げ呪力出力を最大にして身を守る事だった。

 

「そんなものか⁉︎魔虚羅!」

 

 案の定後方に吹き飛ばされた魔虚羅は、ビルの屋上に着地して体制を整えると再び方陣を回転させた。

 一度目の適応で不可視を可視へと、二度目の加速した適応で()()()()()()()()()()()

 

「いやしかし貴様本当に人間だったのだな。伝承では確かに人間と言われてはいるが、四本腕に口二つで重眼化け物を人間とは思えず正のエネルギーで攻撃したのだが……貴様には呪力の方が良さそうだ」

 

 今度は直剣を通さずに左手から連続で呪力を放出する、単純な攻撃だが普通の術師にとっては必殺に一撃になりうる威力だ。

 だがそれも宿儺相手には時間稼ぎにすらならない、呪力が当たろうと怯みもせずに向かってくる宿儺に対して魔虚羅は次の対策を考えていた。

 

 ・また宿儺が懺悔で攻撃してくる→ダメ押しの適応を進めて宿儺の斬撃でのダメージを最小限に抑える。

 ・宿儺の打撃での攻撃→逃げ回って斬撃への適応を時間経過で進める、何処かの体育館のプールに入り水への適応をして攻撃手段を増やすのもいいだろう。

 ・領域展開→一か八か全力で範囲外に逃げる→できなければこれまた一か八かアレの習得を試みる。

 

 兎にも角にも斬撃をどうにかしなければ勝機はないと魔虚羅は理解していた、同時に()()()()()()()()宿()()()()()への対策もしなければいけないとも考えていた。

 伏黒恵を巻き込む事は避けたいだろうという予測の元、常に百メートル以内に伏黒恵がいるような戦闘状況を心掛けるのが魔虚羅の作戦。

 その勝機が張りぼてであることに気づいたのは、それから一秒後の事だった。

 

「─────領域展開」

 

 その言葉は聞こえるか否か、掌印を結んだのは見えたかどうか、それ程に素早く魔虚羅は伏黒恵の方向へ駆け出していた。

 

「伏魔御廚子」

 

 結界を閉じずに領域を展開するのは神業である事は言うまでもない、そうつまり『閉じない領域』は通常の領域よりも高等技術なのである。

 宿儺は領域を閉じないと、心のどこかでそう思っていたのだろう。

 それが裏目に出た。

 

「お前、俺の領域が閉じない事を知っていたのだろう?あれほど伏黒恵の方向を気にしていれば嫌でもわかる」

 

 結果は閉じられた、領域は展開された。

 魔虚羅が領域に適応する暇もなく、領域そのものを破壊する時間もなく、必中必殺の斬撃が魔虚羅に襲いかかる。

 

「……ほう、適応していたのは解ではなく斬撃そのものか」

 

 解と捌、二種類の斬撃をその身に浴びながらも魔虚羅は立っていた。

 いや、それどころか宿儺の方に進んで行っているのだ。

 

「我には意思がある、他の式神とは違う。ならば……適応する対象だって適応した後に得る物だって選べるのだよ」

 

 斬撃そのものへの適応は三回で中断していた、それだけで凌ぎ切れると判断したからだ。

 予想外の領域だったが、その分適応は早まっていた。

 代わりに魔虚羅は対策としての適応を進めていた。

 

「昔、影の中から見たことがあるアレを……今なら……」

 

 構えを取り、魔虚羅は嘗て一度だけ五条悟が使っていたそれを思い出す。

 斬撃への適応は今この瞬間にも進んでいる、それを利用して無理矢理アレを習得せんと試みた。

 

「御三家秘技・落花の情」

 

 御三家に伝わる対領域の術の一つ、落花の情。

 それは体に敵の術が触れた瞬間、呪力をカウンターで放出して身を守る術。

 

「斬撃には完璧に適応した、もはや解でも捌でも我は殺しきれない。ならば──使うしかないだろう?漏瑚に使ったアレを!」

 

 魔虚羅は賭けに出た、成功すれば宿儺にすら勝利できる可能性が見えてくる賭け。

 一度も適応していない炎、それに耐えられる筈もない。

 だが今の魔虚羅は落花の情を使用している。

 魔虚羅の知る原作とは違う結果を導き出せる可能性は十分に存在している。

 

「耐え切れれば適応した我の勝ち!耐えられなければ我の負け!さぁ!撃て!貴様の最大火力をぶつけてみろ!宿儺!」

 

「クハッ、そうか。ならば耐えてみろ!魔虚羅!」

 

 この夜最大の笑みを浮かべた宿儺は弓矢を引き絞るかのように炎を生み出し射出の用意をした。

 

(フーガ)

 

 狭い領域の中、現時点での宿儺の最大火力が魔虚羅を襲う。

 轟音と共に火柱が魔虚羅を中心に吹き上がり、宿儺の領域内を炎熱が染め上げる。

 御廚子の中心にある神社のような何かすら溶けかけていたその時、小さな声が宿儺の耳を掠めた。

 

「あぁ……」

 

 顔面は焼け爛れ、服は消え去り、それでも尚魔虚羅は立っていた。

 

「勝てなかったか……」

 

 だが、それでも戦闘続行は不可能であった。

 もはや腕すら動かせず、声帯を震わせるのが精一杯。

 炎への適応は進んでいた、だが法陣一回転では再生すらままならない。

 

「魅せてくれたな、魔虚羅。想像以上だったぞ」

 

 宿儺は魔虚羅に近づき、ダメ押しの攻撃でケリをつけようとしていた。

 魔虚羅はそれから逃げることすらできないため、最後の言葉を残そうとした。

 

「なぁ、宿儺」

 

「なんだ」

 

「次は我が勝つ」

 

 勝算があるわけではない、ただそれでも魔虚羅は敗北したままで終わる気はなかった。

 

「クハッ、楽しみにしているぞ」

 

 至近距離から放たれたトドメのフーガ、数秒後結界が開かれ領域展開が終了した後、そこには魔虚羅の影も形もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 






オリ主は江戸時代に魔虚羅にTS憑依した男
色々と事情はあったらしい。

次に書く話

  • この世界の読者視点掲示板
  • 虎杖とか東堂ととの戦い
  • 伏黒宿儺とのタッグ

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