ハリーポッターと花曇の魔女 作:madなサイレント
もしかしたら2回に分けるかも。
パチュリー成りすまし事件が起こってから数週間が経った。
数日前、3人がポリジュース薬の調合をしたというゴーストの嘆きのマートルのいる女子トイレが水浸しになるという事件なのか事件じゃないのかよくわからないことがあった。蛇口という蛇口から水があふれていたのである。
「どうしたの、マートル」
「誰なの?また何か、私に投げつけにきたの?」
ハリーは水たまりの中を歩いてマートルいる個室へ近づく。いや、ここ女子トイレなんだが?なんでロンとハリーがいるのだろうか。
パチュリーが混乱に陥っている中でハリーが答える。
「どうして僕が君に何かを投げつけたりすると思うの?」
「私に聞かないでよ」
マートルはヒステリック気味に叫ぶと、大量の水をまき散らしながら姿を現した。
「私、ここで誰にも迷惑をかけないで過ごしているのに、私に本を投げつけて面白がる人がいるのよ...」
そんなことをハリー、ロン、ハーマイオニーが話しているところでパチュリーが今その話題に上がっている”本”を拾い上げる。
その”本”は不思議なことに、水たまりの中に落ちていたにもかかわらず、まったく濡れていなかった。
どうやら日記のようだった。
表紙の文字は消えかかっているが、書いてある年号によるとおよそ50年前のものであるらしい。中身は真っ白である。
持ち主の名前は―
”T・M・リドル”
それをパチュリーからひったくり3人はどこかへ行ってしまった。
何故だろう。嫌な予感がする。あの日記は絶対にロクなものじゃない。
なんせあの日記には―
不完全な人の魂が入っているのだから。
こんなことを3人に言ってもわかってもらえないだろうから、自分だけでも注意しておこう。そうパチュリーは決意したのであった。
さて、またしばらく日が経った。
学校を覆っている雰囲気は少しずつだがよくなってきている。ほとんど首なしニック以降、襲われている人がいないからである。
マンドレイクが思春期に入ったという、言われてもよくわからないが吉報であろうことが通知されたもの要因の一つだ。
しかし、パチュリーの気分は急降下している。
グリフィンドールの生徒が変身術の授業を受けるために教室の前で並んで待っていたところ、ロックハートがマクゴナガル先生に自慢げに話しているのである。どうやらロックハートは自分が襲撃事件をやめさせたとうぬぼれているらしい。
「ミネルバ、もう厄介ごとはないと思いますよ。今度こそ秘密の部屋は永久に閉ざされましたよ。犯人は私に捕まるのは時間の問題だと観念したんでしょう。私にコテンパンにやられる前に辞めたとはなかなか利口ですな。そう!今学校に必要なものは気分を盛り上げることですよ。先学期の嫌な思い出を一掃しましょう!今はこれ以上申し上げませんけどね、まさにこれだ、という考えがあるんですよ...」
そうロックハートは満足そうに語り、ウインクをして去っていった。
絶対にロクなことじゃないと思ったのはパチュリーだけではないだろう。
ロックハートの言う気分を盛り上げることとは何か、それはバレンタインの日の朝食の時に明らかになった。
パチュリーは朝に、昨日クィディッチの練習をしていて寝不足だというハリーと一緒に朝食を食べに大広間へ向かった。
そして大広間の扉を開け、すぐに閉じ、一つ下の階へ行こうとしたところ、ハリーに止められた。
「待ってパチュリー。朝ごはんは?」
「もちろん食べるわよ。でもどうやら部屋を間違えたらしくて。大広間は、多分一階下よ」
「え?ここが大広間だよ?」
「だって中が全然違ったから...私も寝不足で幻覚を見たのかしら...」
何故2人がこんな摩訶不思議な会話をしているかというと...
そこにはいつもの大広間の姿は無く、壁という壁がけばけばしい大きなピンクの花で覆われ、淡いブルーの天井からはハート型の紙吹雪が舞ったいたためである。グリフィンドールのいつも座っている席に行くと、ロンが吐き気を催しそうな顔をして座っていた。
ハーマイオニーはなぜかうっとりとしている。
ハリーとパチュリーが不思議そうな顔をしているとロンがゆっくりと先生たちのテーブルを指さす。
そこには部屋の飾りとほぼ変わらないほどけばけばしいピンクのローブを着たロックハートがいたのである。
ロックハート以外の先生はまるで石になったかのように無表情であった。
マクゴナガル先生は頬をひきつらせ、スネイプ先生は何と言ったらいいのかわからないほど険しい顔をしていた。
「バレンタインおめでとう!今までのところ46人の皆さんが私にカードをくださいました。ありがとう!そうです。皆さんをちょっと驚かせようと私がこのようにさせていただきました。....」
となにやらロックハートが話始める。
それを聞いてロンが不快そうに口を開く。
「はぁ。僕も朝食を食べに来たときは驚いたよ。こんなに不味い朝食は初めてだ」
「あら、いいじゃない。素敵なサプライズだと思うわよ?」
「まさかとは思うけど君、あの46人には入っていないよね?」
「...」
「...僕もう、何も言えないや.......パチュリー!?」
ハリーがロンの一言によって黙りこくってしまったハーマイオニーを見て肩をすくめる。
そして、食事を取ろうとしたとき横目に見えたパチュリーを見てすくみあがり思わず声を上げる。それを聞いてロンとハーマイオニーもパチュリーのほうを見て動きを止める。
そこには目から光の消えた、無表情のパチュリーがいた。
そして魔導書と杖を取り出し、無機質な声で呪文を唱え始める。
「...フィニート・インカンターテム ―呪文よ終われ」
これにより天井から追加でハートの紙吹雪が舞ってくることがなくなった。
今度は魔導書に魔力を込め
「木符”グリーンストーム”・改」「風陣・飄風・駆け巡る風」「断熱結界」「インセンディオ・マキシマ ―大炎上せよ」
全く別の魔法系統の魔法を同時に使うという離れ業を実現する。それもあり得ないほど精度が正確だった。
生徒や先生、梟などに全く当たることなく針葉樹の葉のような形をした何万という数の弾幕が空中に舞っている紙吹雪を正確に射抜きそのままコントロールして纏め上げ、その上壁にこれでもかというほどつけられた花を誰も突風に吹かれることなく引きはがし、先ほどの紙吹雪同様まとめ、窓の外に出してその場にとどめ、それらを断熱結界で覆い、対象を一瞬で燃やし尽くしてしまった。
それをほとんどの生徒はぽかんと眺めていたがすぐに割れんばかりの拍手が沸き起こる。ロックハート以外の先生もしているのだから相当嫌だったのだろう。たった十数秒の間に自分自身以外、けばけばしさがなくなったロックハートは呆然と立ち尽くしている。まだハーマイオニーを筆頭にごくわずかに残っているロックハートファンには睨まれているものの、本人はどこ吹く風だ。
そして笑顔になったパチュリーは
「さぁ、朝食を食べましょう。ロン、今日の朝食は今までで一番おいしくなるよう魔法をかけてみたの。どうかしら?」
「全く君ってば最高だ!こんなにおいしい朝食は初めてだ!」
こうして、世界で一番愉快な朝食の時間は過ぎていった。
その後、数日間はパチュリーとハーマイオニーが話さなかったのは仕方のないことだろう。
パチュリーのおかげで憂鬱だったバレンタインデーが最高の一日となった日からまた数週間。
再びクィディッチの試合の日がやってきた。
因みに今日は、パチュリーとこあは試合を見に行っていない。というより、パチュリーは絶対に外に出ないぞと固く誓っていた。こあはその付き添いである。
魔法書を黙々と読み、自身の魔導書を改変するという作業を二人はしていた。
そしてこあが不意に質問を投げかける。
「いつもなんだかんだ行っていたのに何故今回はクィディッチを見に行かないんです?」
「ロックハートのせいよ。前回みたいに何かしでかしてくれたら、今回こそホグワーツを古代遺跡みたいにしてしまえる自信があるのよ」
「ははは、でもなんであのバカは教師になれたんでしょうね?」
「知らないわよ。クソ教師のことなんて忘れて今は自分のしたいことをすることにするわ」
「わかりました。あ、私ちょっと図書室に行ってきますね。ちょっと気になる料理があって作り方を調べてきます」
「わかったわ。行ってらっしゃい」
「はい!」
それからおよそ一時間。
おかしい。こあはまだ帰ってこないし、まだクィディッチの試合が始まって40分程しか経っていないのに廊下は騒がしいし。
そう思って談話室を出ると丁度ジョージとフレッド、そしてハリー以外不機嫌そうなクィディッチの選手が入ってくるところだった。
全くわけがわからない。
「ジョージ!フレッド!いったいどうしたのよ?試合は?」
「「あ、パチュリー」」
「それがわからないんだよ」
「いきなりマクゴナガル先生が」
「「中止だって言ってきたんだ」」
双子が自分らもよくわかっていないことを告げる。
そしてしばらくすると、暗い顔をしたハリーとロン、無表情のマクゴナガル先生が談話室に入ってくる。
そして口を開くと
「ミスター・ポッター、ミスター・ウィーズリー、ミス・ノーレッジはすぐに医務室へ向かいなさい」
「いったい何故です?」
とパチュリーが不思議そうに聞くと数秒間を開けて
「...とても言いにくいのですがミス・ハーマイオニー・グレンジャーとミス・コアトル・ノーレッジ、そしてレイブンクローのミス・ペネロピ―・クリアウォーターの3人が石にされました」
.................え?
マクゴナガル先生の言葉にグリフィンドール生全員の顔が驚愕と怯えの表情に染まった。
パチュリーはそれを聞いて、すぐに談話室から駆け出す。ロンとハリーも一緒についてくる。
そしてパチュリーは医務室から丸々1日出てこず、部屋から出てからも憔悴しきっている様子だった。
全生徒がこんな状態の彼女を見たのが初めてで戸惑っているようだった。
そして今まで余裕をもって笑っていた一部のスリザリン生、特に聖28一族と昔からある純血の名家の人ほど余裕がなくなった。
パチュリーの家がブラウンシュヴァイク家であることを知っている人たちである。
ブラウンシュヴァイク家は生粋の魔法族である。ドラコに言わせれば”高貴なる血”の一族だ。
決して純血主義ではないとはいえ、それを加味してもスリザリンの敵とはなりえない。
それなのにもかかわらず、パチュリーの従妹のコアトル・ノーレッジは、いや、コアトル・ブラウンシュヴァイクは襲われた。
そのため一つの疑念が生まれる。
”ひょっとして継承者は純血だろうとなかろうと関係ないのでは?”
この一件によりとうとう学校はパニック寸前となってしまった。
学校側も、生徒を一人にすることを許さず、教室移動の際には先生に護衛してもらい、午後六時以降の外出を禁止した。クラブ活動も一切を停止し、トイレに行く時は、必ず先生に付き添ってもらうこと。クィディッチの試合も練習もすべてを延期することなど、対策を取った。
パチュリーの気分も元に戻ることなく、ずっと沈んだままであった。
いつの間にか季節は夏になった。
クィディッチの試合の日に三人が襲われ石になったこと、責任を追及されダンブルドア先生とハグリッドが学校からいなくなったことが生徒たちの間で話題となり、さらに恐怖を抱く者が増えた。
こんな騒ぎの最中でもどうやら期末試験をするらしい。ロンとハリーは悲鳴を上げていた。まぁ、パチュリーには関係のないことだが。
そして試験三日前。朝食を食べているとマクゴナガル先生がまた発表があると言った。
「良い知らせです」
途端に大広間は蜂の巣をつついたような大騒ぎとなった。
「ダンブルドアが戻ってくるんだ!」
「スリザリンの継承者を捕まえたんですね!」
「クィディッチの試合が再開されるんだ!」
とまぁ、好き放題騒ぎ続けること数分。
やっと大広間が静かになったところで先生が発表の続きをした。
「スプラウト先生のお話では、とうとうマンドレイクが収穫できるとのことです。今夜石にされた人たちを蘇生させることができるでしょう。言うまでもありませんが、そのうちの誰か一人が、誰に、また何に襲われたのか話してくれるかもしれません。私は、この恐ろしい一年が犯人逮捕で終わりを迎えることができるのではないかと、期待しています」
歓声が爆発した。
ハリーもロンもパチュリーも、ここ数週間で一番うれしそうな顔をしている。...いや、パチュリーは無表情に近い微笑みだったけれど。
「これでマートルに聞きそびれたこともどうでもよくなった!目を覚ましたら多分ハーマイオニーが全部答えを出してくれるよ!でも、あと三日で試験が始まるって聞いたらきっとアイツ、また石になるぜ」
とまぁ、こんな調子である。
ハリーとロンはもう全く警戒していないようだったが、パチュリーはそうではない。被害者が元に戻るだけであって、事件が解決するわけでも、スリザリンの怪物が討伐されたわけでも、犯人が捕まったわけでもない。
しかもその怪物はおそらく”蛇の王”バジリスクである。だとするとパーセルマウスのハリーにだけ声が聞こえるのも納得だし、目を合わせるとそのものは死に、たとえ間接的でも石になるという伝説よりパチュリーはそう推測した。そして、事件の犯人はというより原因はおそらく以前見つけた魂の入っている日記帳だ。その日記帳の元の持ち主の名前T・M・リドル。トロフィー室で確認したところ50年ほど前にホグワーツ特別功労賞を取っていた。そこではっきりとしたのだが本名は
トム・マールヴォロ・リドル(Tom Marvolo Riddle)
これを並べ替えると...
私はヴォルデモート卿だ(I am lord voldemort)
となる。杞憂だといいが、どう考えてもまともなわけがない。
因みにバジリスクのことは言ったが、犯人についてはまだ二人には知らせていない。不確定なことで2人を不安にさせるわけにはいかないと思ったからだ。
さらに最悪なことにロックハートが事件は終わったと再び宣言した。
これではもうまだ何か起こると言っているようなものだ。
念のため秘密の部屋の場所をはっきりとさせるためにマートルに詳しい場所を聞こうと3人で話し合って決めた。
ロックハートが大丈夫だと言ったんだ。きっと、ろくでもないことが起きるに違いない。
午前の授業も半ば終わり、次の魔法史の教室まで引率していたのがロックハートだった。
ロックハートは生徒を送り届けるためにわざわざ廊下を引率するのは全くの無駄だと考えているようだった。
「私の言うことをよく聞きなさい。哀れにも石にされた人達が最初に言うのは『ハグリッドだった』です。全く、マクゴナガル先生がまだこんな厳戒態勢が必要だと考えていらっしゃるのには驚きです」
「確かに驚きですね。2年生の女子生徒に決闘で手加減されてボロボロに負ける教師が護衛をするだなんて」
パチュリーが突然そんなことを言ったものだから、一緒に教室へ向かっていたグリフィンドールの生徒は全員が腹を抱えて笑い出した。
笑うことすら忘れてロックハートはパチュリーを睨み付け「もう護衛は必要ないでしょう」と言って去っていった。
3人はそのすきに3階の女子トイレへ向かって秘密の部屋の入り口がそこにあることを確信し、その怪物はバジリスクであることを確定させた。
そして授業がもうすぐ終わる時間だというときに突然、マクゴナガル先生の声が魔法で拡大され、廊下に響き渡った。
「生徒は全員、それぞれの寮にすぐに戻りなさい。教師は全員職員室に大至急お集りください」
それを聞いた3人は顔を見合わせパチュリーに防音魔法と、認識阻害の魔法をかけて、その上から透明マントをかぶり先生たちの話の内容を聞いた。
「とうとう起こりました」
マクゴナガル先生がそう話始める。
「生徒が一人、怪物に連れ去られました。『秘密の部屋』そのものの中へです」
「誰ですか?」腰が抜けたように椅子にへたり込んだマダム・フーチが聞いた。「どの子ですか?」と。
それを聞いてハリーとパチュリーの間で立っていたロンが声もなくへなへなと崩れ落ちるのを感じた。
「全校生徒を明日、帰宅させなければなりません。ホグワーツはこれでおしまいです...」
そう話していたその時、職員室のドアがもう一度バタンと大きな音を立てて開いた。
パチュリーとハリーは一瞬ドキリとして後ろを見た。もしかしたらダンブルドア先生が帰ってきたのかもしれない。そう期待せずにはいられなかった。ハリー達以外の全先生も同じだったのだろう。みんなが目を輝かせて振り返る。しかし、それはロックハートだった。にっこり微笑んでいるではないか。
「大変失礼しました。ついうとうとと、なにか聞き逃してしまいましたか?」
その場にいた全員が―といってもパチュリー達3人は見えないが―憎しみとしか言えない目つきでロックハートのことを見ていることにも気付かないらしい。そこで、スネイプが一歩進みだす。
「なんと、適任者が。まさに適任者だ。ロックハート、生徒が一人怪物に拉致された。秘密の部屋そのものに連れ去られた。いよいよあなたの出番が来ましたぞ」
ロックハートの顔から血の気が引いた。
「その通りだわ、ロックハート。そう言えば昨夜でしたね。たしか、秘密の部屋への入り口がどこにあるのかとっくに知っているとおっしゃっていたのは?」
とスプラウト先生が口をはさむ。
「.........私は、...いえ、私は.....」
どうせ、くだらない言い訳をしようとしたのだろう。それを遮ってフリットウィック先生が話始める。
「そうですとも。部屋の中に何がいるのか知っていると自信たっぷりに私に話していたではありませんでしたか?」
「い、いいましたかな。そんなこと...」
「吾輩は確かに覚えていますぞ。ハグリッドが捕まる前に、自分が怪物と対決するチャンスが無かったのは残念だとおっしゃっていましたな。何もかも不手際だった。最初から、自分の好きなようにやらせてもらうべきだったとか?」
「私は...何もそんな...あなたの誤解では......」
「それではギルデロイ。あなたに任せましょう」そうマクゴナガル先生が追い打ちをかける。
「今夜こそ絶好のチャンスでしょう。誰にもあなたの邪魔をさせはしませんとも。お一人で怪物と取り組むことができますよ。お望み通り、お好きなように」
ロックハートは絶望的な目で周りを見つめていたが、誰も助け船を出さなかった。
「よ、よろしい。へ、部屋に戻って、し――――支度します」
ロックハートが出ていく。
3人もそれに続いて部屋を出て、談話室へ入り、黙ってソファーに座っていた。
やがてロンが口を開く。
「ロックハートに会いに行くべきじゃないかな?僕たちの知っていることを教えてやるんだ。ロックハートは何とかして秘密の部屋に入ろうとしているんだ。それがどこにあるか、僕たちの知っていることを話して連れて行こう」
まぁ、やろうと思えばパチュリー達3人は誰の力を借りなくてももうすでに行くことができた。
しかし、それをしようとはだれも思わなかった。
目を見たら死に、傷をつけられたらどんな薬でも解毒できない毒に体内を侵されるような危険生物と誰が戦いたいと思うのだろうか。
パチュリーですらお断りである。
他にいい考えも思い浮かばなかったので、とにかく何かしたいという思いでパチュリーとハリーはロンの考えに賛成した。
役立たずで無能のアイツにも肉盾としての使い道くらいはあるだろう。
談話室にいたグリフィンドール生はすっかり落ち込み、ウィーズリー兄弟が気の毒で何も言えず、3人が立ち上がっても止めようとしなかったし、出て言っても、誰も止めはしなかった。
ロックハートの部屋は取り込み中らしい。
カリカリ、ゴツンゴツンとあわただしい足音が聞こえた。
ハリーがドアをノックすると中が急に静かになり、ドアがほんの少し開いてロックハートの目が覗いた。
「ああ、ポッター君、ウィーズリー君、それと...」
ドアをさらにまた少しだけ開いて私をにらんだ。
「私は今少々取り込み中なので、急いでくれると...」
「僕たち、先生にお知らせしたいことがあるんです」
「あー――――いや――今はあまり都合が」
やっと見える程度のロックハートの横顔が非常に迷惑そうだった。
私が体から魔力を大量に放出するとすぐに発言を撤回し、
「い、いいでしょう」
とロックハートはドアを開け、私たちを部屋の中に入れた。
部屋の中のほとんどすべてのものが片づけられている。
それを不思議に思ったハリーが
「どこかへいらっしゃるのですか」
と聞く。
「うー、あー、そう」
そう言いながらロックハートはドアの裏側から等身大の自分のイラストをはぎ取り、丸めながらしゃべった。
「緊急に呼び出されて...しかたなく...行かなければ...」
「そんな!僕の妹はどうなるんですか?」
ロンは愕然として言った。
「そう、その事なのだが。全く気の毒なことだ。誰よりも私が一番残念に思っている――」
どうやらロックハートは、いや、ゴミ野郎は逃げ出すつもりのようだ。
そしてパチュリーが腐敗物を見るような冷たい目で
「つまり、そこにいるゴミ野郎は私でも倒せるような相手と戦うつまらない、授業にすらなっていない授業をした挙句、怪物は自分の手では倒せないから逃げ出そうとしているわけよ」
「...」
「そして、普段の授業を見ていたらわかるでしょう?そんな、私でも倒せる程度の相手すら倒せないのよ。大方、他のたくさんの人たちがやった仕事を、まるで自分の手柄かのように書いたのだと思うわよ。それで、批判が全くないことを見るに、相手の記憶を消すなり、相手のことを殺すなり、相当後ろ暗いことをしてね」
そうパチュリーが言うとロックハートは怯えたように首を振った。
そして、荷物をすべてまとめて3人の前に立つと、
「さて、私の秘密は分かったかな?君たちには気の毒ですがね、忘却術をかけさせてもらいますよ。私の秘密をべらべらとそこら中で喋ったりされたら、もう本が一冊も売れなくなりますからね」
そう言ってまず、パチュリーに杖を向ける。
パチュリーも杖を構える。
そして2人は同時に魔法を使った。
「オブリビエイト ―忘れよ」
「プロテゴ・ホリビリス ―恐ろしきものから守れ」
そしてすぐさまパチュリーが再び魔法を使う。
「ペトリフィカス・トタルス ―石になれ」「ステューピファイ ―麻痺せよ」
そしてロックハートを石にした後、気絶させ、
「...早く秘密の部屋へ向かいましょう」
と2人に提案する。
「...うん」「...そうしよう」
そうして私たち3人はジニーを助け出すために秘密の部屋の入口のある、嘆きのマートルのいる女子トイレへと向かう。
そして、このトイレのどこかに入り口があるのだろうと3人は必死に探す。
そしてついにパチュリーが見つけた。
とある一つの蛇口をよく見ると魔術的に違和感のある場所があった。
それは日頃よく目にしているものと似ている。
そう、まるで、合言葉を唱えれば開く談話室の扉のような―
そして蛇口に触れてみると、蛇の模様が刻み込まれていた。
「ハリー。こっちに来てこの蛇口に向かって蛇語でなにか喋ってみてくれる?」
ハリーを呼び寄せ、物は試しとばかりに一度挑戦させてみる。
「わかった。えっと...『開け』」
パチュリーはハリーの口からシューシューという音が口から出てニヤリとする。横を見るとロンも同じような表情をしていた。
そして、蛇口はまばゆい白い光を放ち、回り始めた。次の瞬間、手洗い台が動いだした。手洗い台が沈み込み、みるみる消え去った後に、太いパイプがむき出しとなった。
大人なら2人。子供ならぎりぎり3人が滑り込めるほどの太さだ。
そして、真っ青な2人に声をかける。
「覚悟はいい?」
そう言うと2人は怯えながらも頷く。
そして3人は秘密の部屋へと向かっていったのだった。