ハリーポッターと花曇の魔女   作:madなサイレント

12 / 15
お気に入り登録250件ありがとうございます。

ここ数日、共通テストの同日模試で投稿できませんでした。
すみません。

さて、今回で秘密の部屋もおしまいです。
東方の設定やらオリジナル設定やらがたくさん出てきます。

お楽しみに!


パチュリーと秘密の部屋

太いパイプの、丁度果てしのない、ぬるぬるしたくらい滑り台を3人は急降下している。

そのパイプは曲がりくねりながら下に向かって急こう配で続いている。

そして、滑り始めて30秒ほど経った頃。

パイプが平らになり、出口から放り出され、ドスッと湿った音を立てて暗い石のトンネルのじめじめした床に落ちた。そのトンネルは立ち上がるのに十分な高さだった。

パチュリーがあたりに敵や危険生物がいないことを確認して、杖を出し、光を灯す。

 

「行こう」

 

ハリーが私達に声をかけ、3人は歩き出した。

足音が湿った床にびしゃびしゃと大きく響いていた。

こんな地下深くであるから当然のことではあるがトンネルは真っ暗で目と鼻の先しか見えない。

 

「2人とも、何かが動いていることを感じたらすぐに目を閉じるのよ」

 

そうパチュリーが言う。

何か話していないと気が滅入りそうな静寂の中で、最初に耳慣れない音を聞いたのはロンが何かを踏んづけたバリンという大きな音で、それは鼠の頭蓋骨だった。

ハリーがあたりの床をよく見ると、小さな動物の死骸や骨がそこら中に散らばっていた。

ジニーはいったいどうなってしまうだろうと考えたのか、ハリーとロンの顔色は優れない。

 

「ハリー、あそこに何かある...」

 

ロンが声をかすれさせながら、ハリーの肩をぎゅっとつかんだ。

ハリーとロンは凍り付いたように立ち止まってゆく手を見つめる。

トンネルをふさぐように何かが大きく曲線を描いたものが転がっていた。パチュリーが光球を左の掌の上に作り出し、その何かの上に飛ばす。

 

「どうやらバジリスクの抜け殻のようね」

 

パチュリーがその何かについて話す。それは伝説の蛇の王の抜け殻だった。毒々しい鮮やかな緑色の皮が、トンネルの床にとぐろをまいて横たわっている。

脱皮した蛇は優に6メートルはあるだろう。

これにはさすがのパチュリーの顔色も悪くなる。

自分らはこんな怪物を相手に戦わなければならないのだから。

そして3人は何とか自信を体に叩き込んで巨大な蛇の皮を超えて先に進んだ。

トンネルはクネクネと何度も曲がった。自分たちはいったいどこへ進んでいるのかもわからない。

そんな恐怖を肌で常に感じている3人の神経はきりきりと不快に痛んだ。

3人は早くトンネルの終わりがくればいいと思いつつも、見つけてしまえば、あの蛇と戦わなければならないと考えると恐ろしく、今すぐにでも逃げ出したくなった。

そして、もう一つの曲がり角を曲がった途端、ついに固い壁が現れた。2匹の蛇が絡み合った彫刻が施されてあり、蛇の目には大きなエメラルドがはめ込まれている。

 

そこへゆっくりと近づいて行って覚悟を決め、咳ばらいをしてハリーは

 

『開け』

 

低くかすかなシューシューという音を立てる。パチュリーにはなんて言っているのか聞きとれないがおそらく蛇語で何か言ったのであろう。

 

すると、壁が2つに裂けて、絡み合っていた蛇が分かれ、両側の壁がスルスルと滑るように見えなくなった。

 

3人は震えながらその中に入っていった。

 

ハリーは細長く奥へ伸びている、薄暗い部屋の端に立っていた。

またしても蛇の彫刻を施した石の柱が上へ上へと何本も聳え立っている。

 

ここがどうやら”秘密の部屋”らしい。

バジリスクは何処にいるのだろうか。柱の奥に隠れているのだろうか。ジニーは何処にいるのだろうか。

 

そうして3人はパチュリーを先頭にしてゆっくりと進む。

部屋の一番奥まで来ると、部屋の天井に届くほど高くそびえる石像が壁を背にして立っているのが目に入った。

パチュリーはこの石像の顔の人物を大図書館で見たことがあった。

サラザール・スリザリンその人の顔である。

その石像の下に真っ赤な燃えるような赤毛の黒いローブの少女の姿がうつ伏せに横たわっていた。

 

「「ジニー!」」

 

ロンとハリーは自分がいつバジリスクに襲われるかわからないという恐怖を忘れ、ジニーのもとへ駆け寄る。ハリーもロンも手に持っていた杖を投げ捨て、ジニーを仰向けにした。ジニーの顔色は大理石のように真っ白で、目は固く閉じられていた。そんな2人を見てパチュリーはさらに警戒する。

どう考えても不自然だ。これは自分らをおびき寄せるための罠に違いない。

そう思いながら周囲を警戒した。

そしてハリー達に背を向け、自分たちが入ってきた入り口を見る。いや、背を向けてしまった。

パチュリーが後ろを向くのを見計らったようにそれは姿を現した。

 

「その子は目を覚ましはしない」

 

それは物静かな声だった。

背の高い、黒髪の青年がそばに立っていた。ハリーの杖を持って。まるで曇りガラスでできた、像であるかのように輪郭がぼやけている。ハリーはトロフィー室で見た顔だと、50年前に事件を解決したその人であると確信し、表情を少し綻ばせ、話しかけようとしたその時、

 

「やっと姿を現したのね。トム・リドル。いや、こう呼んだほうがいいかしら。――――ヴォルデモート。やっぱりあなたが今回と、そして50年前の騒動を起こした張本人なのね」

 

その言葉にハリーとロンは目を見開く。まるで現実を受け入れたくないかのように。

 

「その通り。よくわかったね、お嬢さん。確かに僕はトム・リドルだ」

 

「目を覚まさないってどういうこと?」

 

ハリーが絶望したように聞く。

 

「僕の妹は、もう、まさか!」

 

ロンも同じような顔をしていた。

リドルはそれを見て愉快そうに笑い、答える。

 

「その子はまだ生きている。しかし、辛うじてだ」

 

「ハリー、ロン。落ち着いいて聞いてね。今ジニーにはほとんど魂がない。多分、そこのヴォルデモートの中にあるんだと思う。だから、あいつを倒さなきゃ意味ない」

 

そう言ってパチュリーは杖を構え、魔導書を現し、いつでも戦えるように準備する。

トムもハリーの杖をパチュリーに向けていつでも戦えるように構えた。

 

「2人とも、今すぐジニーを連れて私の後ろにきて」

 

2人はその指示に従い、ジニーを連れてこっちへ向かってくる。

トムはそれを逃すまいと魔法を使い妨害するがパチュリーはそれを妨害する。

ハリーとロンは生きた心地がしなかった。自分らの横で、頭上で、足元でとんでもないスピードで魔法が行き交っている。トムは当然のように禁じられた呪いを使っているのも、原因だ。それも無詠唱で。パチュリーは相手の杖から出てくる魔法を正確に予測し魔法をかけようとしている場所に対して寸分たがわず、その反対呪文や盾の呪文を飛ばして、展開してハリーとロン、ジニーを守っている。その無限に思えるような時間を耐えて何とかパチュリーの後ろまでたどり着く。すぐにパチュリーが強力な防護結界を張って、トムの魔法が影響を及ぼさないようにした。

トムは忌々しそうにパチュリーを見てトムは話す。

 

「チッ。その歳でよくそれだけ魔法が使えるな。君は純血か?」

 

「だったら何なの?混血のトム・リドルさん?」

 

そのパチュリーの挑発によほど腹を立てたらしい。

 

「減らず口を叩くな!さて、ハリー、お嬢さん。少し揉んでやろう。サラザール・スリザリンの継承者、ヴォルデモート卿の力と、有名なハリー・ポッターとちょっと優秀なお嬢さんとを、お手合わせ願おうか」

 

そう言い放つとトムは何やらシューシューと口から音を立ててゆがんだ笑みを浮かべる。

パチュリーとロンは怪訝そうな顔をしていたが、ハリーにはリドルが何を言っているのか分かった。わかってしまった。

 

「危ない!バジリスクが来る」

 

ハリーはスリザリンの石像の顔のあたりを指さして叫んだ。

それを聞いてパチュリーは急いで魔導書を開き、高さ数メートルの土壁を立てる。

 

「2人は私が合図するまで絶対にここから出ないで。合図をしたらロンはジニーを抱えてバジリスクに踏みつぶされないようにして。ハリーはこの剣で戦って」

 

そう言うとパチュリーは何処からか剣を取り出し、ハリーに預ける。それは持っているだけで何やら勇気が湧いてくるような気がした。しかも、剣にしては異様に軽い。しかし、その刃は固く鋭いことはなぜかわかる。

ハリーはパチュリーにそれは何か聞こうとした。

しかし、それはかなわない。

パチュリーの体が熱を感じない、美しい深紅色の炎に包まれていたためだ。

ハリーとロンは思わず見とれてしまった。ああ、なんてきれいなんだろうと。

 

やがてパチュリーの体の形は変わっていき、大きな鳥の姿となった。

 

クジャクの羽のように長い、長い金色の尾羽を輝かせた、紅色の鳥となったのだ。

 

ロンは見とれつつも驚いているだけだったが、ハリーはこの鳥を見たことがある。

ダンブルドアの校長室にいた鳥だ。

それは不死鳥と呼ばれている鳥だ。

それは日本で火の鳥と呼ばれている鳥だ。

 

パチュリーは体に炎を纏い、一度羽をバサッと大きく羽ばたかせ、そのまま壁の向こうへ跳んでゆく。

思わず「待って!」と叫びそうになってしまう。いかにパチュリーが不死鳥になったとはいえ、蛇の王に勝てるのだろうか。

 

そんなことをハリーが考えているうちにパチュリーはバジリスクの目を焼いた。

ロンからすると狂ったようなシューシューという音と、何かがのたうち回って柱を折っている破壊音しか聞こえず、怖かったことだろう。

それから少しすると、壁の向こうから感じていた熱気がなくなった。

 

「さぁ、始めて!」

 

そうパチュリーが叫ぶ声が聞こえ、土壁を消し去った。

そこには、体中が焼けただれ、目は切り裂かれたバジリスクと、その傍らに立っているパチュリーがいた。

 

「違う!」

 

トムはそう叫び、何やらシューシューとバジリスクに向かって言っている。

すると盲目の蛇は途端にパチュリーを襲うのをやめ、ハリーに向かって移動を始める。

ロンは怯えながらもジニーを連れ、できる限り遠くへ離れていった。

 

「私はヴォルデモートを抑えているから!バジリスクの牙に気を付けて!」

 

「この忌々しい小娘が!殺してやる!」

 

そうしてヴォルデモートとパチュリーは再び魔法をぶつけ合う。

ハリーも必死でバジリスクから逃げ、隙を見てバジリスクに剣を振るう。

 

 

 

 

 

 

私は今、かつて闇の帝王と呼ばれた少年と戦っている。

容赦なく死の呪いをかけてくるあたり、本当にろくでもないやつだ。

 

「貴様は僕が直々に殺してやる!」

 

「いきり立たないでよね、小童が。ただただ殺人を犯しただけの人間に私を倒せるわけがないじゃない」

 

「何故貴様は死の呪いが防げる!」

 

「あなた、本当に学ばないのね。私以外にも死の呪いを防いだ人はいるじゃない。死の呪いは何処まで行っても所詮は魔法なのよ」

 

本来、死の呪いは相手を殺す呪文ではない。肉体と、魂を乖離させる魔法だ。つまり、体から魂を出さなければいい。ちなみにハリーが生き残ったのはハリーの母親のリリー・ポッターが自分自身がヴォルデモートに殺されることをトリガーとして、ハリーの魂をハリーの体に縛り付ける古い魔法をかけていたからである。これは一度呪いを受けてからその効果を無効化する方法である。

それに対してパチュリーは死の呪いの効果を霧散させ、ただの魔力へと還元させ、効果をなくす結界を創り上げた。尤もせいぜい人2人分が入れる程度が限度の大きさであり、パチュリーの生み出した独自の魔法体系であるため、だれも理解できないし、魔力の消耗も激しい。ダンブルドア先生の全魔力をもってしても展開できないほどである。しかも、死の呪い以外無効化できないという、使い勝手の悪さだ。パチュリーにしか使えないがそれでも死の呪いを無効化できる魔法だ。

 

「ふざけるな!クソ!クソ!」

 

そう悪態をつき、様々な魔法をかけ続ける。それらをことごとく叩き落し、無効化し、反撃する。

 

...おかしい。いくら直接当たっていないとはいえ、ヴォルデモートに一切の傷がつかない。

私は不思議に思って考える。傷をすぐに治す魔法がある?違う。魔力を使った形跡はない。体にはダメージが入っていなくても、日記にダメージがいっている?違う。それにしても手ごたえがない。本当に、ただの記憶だから魔法が通用しない?そうかもしれない。あれはあくまで記憶であって体ではない。試しにトムに爆発魔法をかける。すると、最低限人に当たれば即死は免れる程度だけ守った。それなのに、あいつは無傷だ。トムの足元にある日記に対して同じことをやってみる。なんと、完全に守ったのだ。

私は思わず、ニヤリと笑う。

 

「やっぱりそれが弱点なのね」

 

するとヴォルデモートは苦虫を嚙み潰したような表情をした。

でも、私の推測が正しければ、あの日記は分霊箱だ。あの日記にヴォルデモートの魂が入っていたことから考えて多分間違いない。つまり、生半可な魔法ではどうすることもできないのだ。燃焼魔法をかけても燃えないし、水につけても濡れない。多分、効果があるのは、バジリスクの万物を蝕む毒、すべてを燃やし尽くす悪霊の火、闇の呪文をすべて無効化する、最上級の神聖魔法程度であろう。神聖魔法は使えないので、悪霊の火を使うべきだろうか。しかし、ヴォルデモートと戦いながら、それを使うために準備するのは命取りだ。

 

そうして5分ほど戦った時。ついにハリーが戻ってきた。バジリスクを倒したらしい。しかし、腕にはバジリスクの牙が食い込んでいたのか、それを腕から抜いていた。私の貸した剣はバジリスクに刺さったままらしい。

 

そして、一つ、解決策を思いつく。私は呼び寄せ呪文で日記を呼び寄せ、ハリーに向かって投げる。そして、ニヤリと笑う。ハリーは私の意図を察したのか、さっきまで己を貫いていた牙を日記に突き立てる。

 

恐ろしい、耳をつんざくような悲鳴をヴォルデモートは上げた。日記帳からインクが激流のように迸り、ハリーの手の上を流れ、床を浸す、リドルは身をよじり、悶え、悲鳴を上げながら、のたうち回って、消えていった。

 

それを確認して、私は、再び不死鳥となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてハリーは、傷口からズキズキと、灼熱の痛みが広がり、もうすでに、腕の感覚はなくなっていった。徐々に目は霞み、やがて気を失った。

 

次に目を覚ました時、体から痛みはなくなっていた。

そばにはロンと紅色の美しい鳥がいて、心配そうにのぞき込んでいた。

目を開いたのを確認して、安心したのか、鳥はパチュリーの姿に戻った。

 

「どうして僕は生きているの?毒でもう死んだと思ったのに」

 

「不死鳥の涙よ。すべてを癒す、癒しの力」

 

「ありがとう、パチュリー」

 

その後、目を覚ましたハリーと同じくしてジニーも目を覚ました。自らが全ての元凶だと打ち明けるジニーを立たせて、ハリーは剣をパチュリーに返して4人は秘密の部屋から出た。

 

こうして一年間、学校中を恐怖のどん底に陥れていた秘密の部屋は閉ざされ、事件は解決したのだった。ちなみに、パイプを上がる時は、再びパチュリーが不死鳥となって、3人を掴んで持ち上げたのであった。その後、3人には絶対に自分が不死鳥になれることを言わないでほしいとお願いし、3人の記憶を厳重に守った。これでダンブルドア先生に開心術をかけられても覗き見ることはできないだろう。

 

 

 

 

 

 

そうして3人はマクゴナガル先生の部屋に移動した。

ハリーがドアをノックし、ドアを押し開けた。

 

ハリー、ロン、ジニー、私が泥まみれで血まみれで、インクまみれでびしょびしょな状態で戸口に立つと一瞬沈黙が訪れた。

そして叫び声が上がる。

 

「ジニー!」

 

モリーさんだ。暖炉の前に座り込んで、泣き続けていたモリーさんは飛び上がってジニーに駆け寄り、アーサーもすぐ後に続いた。2人は娘に飛びついて抱きしめた。

 

しかし、3人はロンの両親がいることよりも、マクゴナガル先生の机の隣に立ってにっこりとしているダンブルドア先生に目がいった。マクゴナガル先生はスーッと大きく深呼吸し、状況の整理をしている。

 

それと同時にハリーもロンも、私もモリーさんに抱きしめられた。

 

「あなたたちがあの子を助けてくれた!あの子の命を!どうやって助けたの?」

 

「私達全員がそれを知りたいと思っていますよ」

 

マクゴナガル先生が言い訳は許さないと言っているかのように強い口調で尋ねる。

ハリーはちょっと躊躇したが、机まで歩いていき、トム・リドルの日記の残骸を置く。

ハリーは一部始終を話し始めた。15分も話しただろうか、大人たちはまるで魅せられ鷹のように静かに聞き入った。

 

「そうでしたか」

 

マクゴナガル先生は部屋を特定した行為を聞いて話の続きを促す。

 

「それで数百の校則を粉々に破って入り口を見つけたわけですね。でもポッター、一体全体どうやって、全員生きてその部屋を出られたというのですか?」

 

ハリーは話をつづけた。私が不死鳥になったこととジニーのことには触れないで説明してくれた。

 

再び10分ほど話して、秘密の部屋での一通りの戦いの顛末を告げた。

それを話し終わったとき、ダンブルドア先生がかすかに微笑んだ。

 

「わしが一番興味があるのは、ヴォルデモート卿がどうやってジニーに魔法をかけたかということじゃな。わしの個人的情報によれば、ヴォルデモートは現在アルバニアの森に隠れているらしいが」

 

「な、なんですって?」

 

アーサーはきょとんとした声を上げた。

 

「例のあの人が?ジニーに、魔法をかけたと?でも、ジニーはそんな...ジニーはこれまでそんな...それも本当に?」

 

「この日記だったんです」

 

そうして一通りの説明が終わった後、私、ロン、ハリーはホグワーツ特別功労賞を授与され、グリフィンドールに一人につき100点もらった。

 

ジニー、ロン、ハリーはやがて医務室へ向かった。

残ったウィーズリー夫妻、マクゴナガル先生、ダンブルドア先生は、ソファーに座り、私にも座るように促してくる。私は別に抵抗することなくソファーに腰かけた。

 

 

「わしらは君に聞かねばならないことがある」

 

ダンブルドア先生がそう切り出し話始める。どうやら今回起こったことをしっかりと説明しなければならないらしい。

 

「先ほどのハリーの説明によると、君は移動中の3人を守りながらヴォルデモートと魔法戦闘をして、3人を無傷で守り切った。そうだね?」

 

「まあ、その通りです」

 

「だとすれば、本当に君はいったい何者なんじゃ?先ほどウィーズリー夫妻からはブラウンシュヴァイク家の当主だと聞いた。それにしても君は優れすぎている」

 

「え?ただの歳食った魔女ですけど...」

 

「「「「歳食った!?」」」」

 

「え?えぇ...」

 

そう答えると、私は体を17歳程度まで一気に成長させる。

もう元の体に戻ることはできないが構わないだろう。

 

「どういうことじゃ?」

 

「どうもこうも、そのままなんですけど...」

 

「どうして学校に入ったんじゃ?」

 

「え?あなたが私に入学案内を送ったんですよね?」

 

「それはそうじゃが...すまんのう、もう一度自己紹介してくれんかのう?」

 

「えぇ、分かりました」

 

そうして私はコホンと咳ばらいをして話始める。

 

「ブラウンシュヴァイク家、16代当主、パチュリー・アリワラ・ブラウンシュヴァイクです」

 

「何故、ブラウンシュヴァイクを名乗らなかったのじゃ?」

 

「そもそも、アーサーとモリーさんには説明しましたけど、ブラウンシュヴァイク家の人間はごく一部の人間や、公的な場所以外ではノーレッジを名乗ることになっているんです。ホグワーツではブラウンシュヴァイクを名乗るべきだったのかもしれませんが、私の入学案内はパチュリー・ノーレッジあてだったのでノーレッジを名乗ることにしたんです」

 

そう答えると、全員が固まってしまった。

 

「君もってことは、コアトル君も...」

 

「まぁ、そうですね」

 

ダンブルドア先生が頭を抱えだす。

え、でも私に入学案内を送ったのはそっちですよね?

 

「私からもひとつ聞きたいのですが、いいですか?」

 

ダンブルドア先生が頷いたのを確認して質問を始める。

 

「私とこあはあのままひっそりと大図書館―――ブラウンシュヴァイク家の館で過ごし、ゆっくりと生活してやがて死ぬつもりでした。いったいどうして、私たちを歴史の表舞台に立たせたのですか?私たちを何に利用するために学校への入学案内を出したのですか?私達二人は貴方の目的を探るために入学したのですが」

 

「森の中から子供の魔力を感じたからなのじゃが...」

 

再び長い沈黙が訪れる。

 

「......それだけですか?」

 

「それだけじゃ」

 

どうやら本当にただ一瞬、結界が緩んでしまったかららしい。

私は深くため息をついて頭を抱える。

 

「本当に300年かけてた結界が少し緩んだから感知されただけだったなんて...」

 

本当にただお互いに不幸な行き違いがあっただけらしい。

 

「...とりあえず、君がいてくれたおかげで去年も今年も大事にならずに済んだ。ありがとう」

 

「えっと...どういたしまして?」

 

「それで物は相談なんじゃが...」

 

ダンブルドア先生はそこでいったん区切り、やがて口を開いた。

 

「ホグワーツの教師になってみる気はないかのう?」

 

え?

私が教師に?どうして?

 

「...私が...ですか?」

 

「そうだとも。才能あると思うのじゃが。ウィーズリーの双子の成績を劇的に上げたのは君じゃろう?ハリーとロンもじゃ」

 

「...私以外にも適任がいるのでは?そもそも私のことを信頼できるのです?」

 

「ミネルバをはじめ、わしらは全員君を疑っておった。でも2度もヴォルデモートと戦いハリーを守ったのであればもう疑う必要は無かろう」

 

だったら受けてもいいだろうか。正直、ヴォルデモートのような魔法の使用方法を誤り、ただ殺人を犯すだけのクソ野郎はブラウンシュヴァイクの名に賭けて倒さなければならない。ホグワーツにいればそれも可能だろう。

 

「...教師の話は分かりました。別に受けても構いません。でも先生の誰かの助手にしてください。自信がないので」

 

「おお、そうかのう。では闇の魔術に対する防衛術の補佐をしてもらおうかのう」

 

そうして私はホグワーツに採用されたのだ。こあも私の付添人として一緒に来ていいらしい。

前任の闇の魔術に対する防衛術の教師だったロックハートについてもこの場で説明し、全員でロックハートの部屋に行き、捕まえた。おそらくアズガバンに投獄されることになるそうだ。

一応、私達2人の扱いは卒業ということになる。

 

こうして私達2人の短い学校生活が終わったのだ。

 

 

 

 

 

「それとダンブルドア先生。一つ報告があります」

 

「なにかね?」

 

「そのトム・リドルの日記についてです。その日記には人の魂のやく四分の一程度が入っていました。それはホークラックスという魔法で作られた分霊箱です。おそらくヴォルデモートの」

 

この場にいた大人が全員動きを止めた。ダンブルドアだけは話したくなさそうな顔をしている。

 

「...それはこの場でせねばならん話かのう」

 

「ええ、もちろん。今回の騒動で明らかになったヴォルデモートの弱点についてなのですから。仮にホークラックスが完全な魔法であったなら、ヴォルデモートは仮に死の呪文を浴びてもものともせず、その場でハリーを殺していたでしょう?つまり何かしらおかしな点があるんです。では、ホークラックス―――分霊箱の作成の問題点を説明しましょう。一つ目は皆さんがご存じの通り、人を殺さねばならないこと。二つ目は不完全ながらも”本物の魔法使い”になってしまうこと。あくまでも人間であるあなた達にヴォルデモートは殺せなくなってしまっています」

 

それを聞いて一同は固まってしまう。それはそうだ。ヴォルデモートは殺せないと断言されてしまったのだから。

 

「では、私たちのような魔法使いとあなたたちの”魔法使い”は何が違うので?」

 

マクゴナガル先生が震えながらも聞いてきた。

 

「まず、魔法使いにはいくつか段階があります。まずはただの人間。要するにマグルのことです。次に魔法が使えるだけの人間の魔法使い、ようはあなた方魔法族のことです。次からは種族としての魔法使い。これになるには”捨食の魔法”―ご飯を食べなくても魔力によって生きていくことのできる魔法―を習得しなければなりません。私は生まれた時からこの段階でした。そして最後に”完全な魔法使い”。”捨虫の魔法”―身体の成長を止める魔法―によってなります。私とこあは”完全な魔法使いです”一応、正しい手段を踏んで修行を行い、不老となった”魔法使い”です。これでなんとなくわかったのではないでしょうか?ヴォルデモートはたとえ意図していなくても捨虫の魔法を使ってしまっているのと同じ状態です。不死という状態は不老という状態の下位互換だと思ってください。そして、人間と”魔法使い”では生き物としての格が違う。人間では魔法使いを傷つけることはできても殺すことはできない。大問題でしょう?ダンブルドア先生、貴方はこれだけ大切なことを誰にも話さず自分だけで解決するべきだと思っていたのですか?」

 

ダンブルドアはバツが悪そうな顔をしてうつむいてしまう。

 

「で...では、私たちにヴォルデモートを倒す手段はないと?」

 

「いいえ、二つあります。まずは分霊箱をすべて破壊すること。そして、ヴォルデモートを殺し続けること」

 

「先ほど君がヴォルデモートは殺せないと言ったのではないかね?」

 

アーサーがそう私に尋ねてくる。なるほどもっともな疑問だろう。

 

「その通りなんですが、そうではないんです。ヴォルデモートは”不完全ながらも””完全な魔法使い”になったんです。まず、捨虫の魔法を使っていない以上、どれだけ頑張ろうと完全な魔法使いにはなれないんです。そして、分霊箱の作り方的に己の生命としての格を下げることになるんです。だってそうでしょう?魂を引き裂いて別のものに移す魔法なんですよ?一度使えば自分に残る魂は二分の一に、もう一度分ければ四分の一に、さらに分ければ八分の一に、十六分の一に、三十二分の一にと自分自身に残る魂はどんどん少なくなっていく。今のヴォルデモートの生き物としての格は人間よりも高い”魔法使い”に近い状態でありながら人間としての格はとても低い。矛盾の塊のような状態なんです。人間は矛盾を抱える生き物だけれど、命そのものに矛盾を持っているものはとても弱い。ちょうどユニコーンの生き血を吸ったのと同じような状態です。”本物の魔法使い”になり切れていない”不完全な”人間だからこそ殺し続けることが有効的な方法になるんです。まぁ、続けるというより、何度も殺すというほうが正確かもしれませんが。あと、倒すときに死の呪文は使ってはいけませんよ。ハリーの時の二の舞になって、復活までまた10年以上かかることになりかねないので」

 

「...つまり、どういうことかね?」

 

「要するに今までとあまり変わりません。ヴォルデモートの妨害をできる限りする。勝てないなら逃げる。勝てそうなら倒してしまう。それと並行して分霊箱を探す。これがヴォルデモートを倒すうえで私たちがするべきことです。さらに言えば分霊箱に関していえば、何が分霊箱なのか皆目見当もつかないので、今は優先順位は低いです」

 

「パチュリー。貴重な情報をありがとう。わしはてっきり、分霊箱を破壊しつくさないとヴォルデモートは滅ぼせないものだと思っておったのじゃが...何はともあれ、ヴォルデモートが動き出してから出ないとどうにもなるまい」

 

なんにせよ、ヴォルデモートを滅ぼす手段を”騎士団”の団員に言えてよかった。

直接何かしたわけではないとはいえ、グリーンデルバルドやヴォルデモートをはじめとする、これまでの歴史上に数多くいる、闇の魔法使いを生み出してしまったのには私の家も関わっているのだから。

 

 

 

 

 

さて、それからいろいろなことがあった。

こあやハーマイオニーをはじめとした、石にされた人たちが回復したり。

試験が三日後だと知ってハーマイオニーがまた石になったり。

その後の宴で試験がなくなると知って叫んだり。

ロックハートがアズガバンに送られたと発表があったり。

パチュリーが実は300歳近くでとりあえず学年末まで闇の魔術に対する防衛術の臨時講師になって大騒ぎになったり。(三人にはどういうことだと何度も問い詰められた)

そして意外なことに、その授業が人気だったり。

再び捨虫の魔法を自身にかけて17歳程度から成長しないようにしたり。

そんなてんやわんやの学期末もすぐに過ぎ去り、もうじきホグワーツ特急に乗って家に帰る時が来た。

 

「ねぇ、ハリー」

 

「何、ノーレッジ先生」

 

ハリーがニタニタ笑いながら返してくる。ハリーの隣に座っているロンも私の隣のハーマイオニーも似たような顔をしている。

 

「...その呼び方、もうやめてよ...言ってなかった私が悪かったから...」

 

「ごめん。で何?」

 

「おじさんたちのところに泊まるのがそんなに嫌なんだったら、私とこあの家に来る?夏休みの間。ダンブルドア先生には許可取ってあるわよ」

 

するととたんにハリーは目を輝かせる。

 

「願ってもないさ!でも本当にいいのかい?」

 

「ええ、もちろん。私たち二人で住むには広すぎるのよ。あの家。ちなみに魔法も使いたい放題よ」

 

こうして夏休みの間、大図書館でのハリー滞在が決定したのだった。

その後も宿題が多すぎるだの、私も魔法を使いたいだの、こあの作る料理はホグワーツの料理にも負けないだの、そんな他愛もない会話をしているうちに徐々に列車は速度を落として、やがて停車した。

 

私にとっては初めてこあ以外の誰かと過ごす夏休みが、ハリーにとっては初めての楽しみな夏休みが始まった。




さてどうだったでしょうか。
秘密の部屋終了時で主人公を教師にする暴挙を成し遂げたのは自分だけだと思います。
あと、パチュリーの動物もどきは不死鳥でした。
パチュリー自身不老なのだからなかなかいいアイデアなのでは?

ヴォルデモートの設定もなかなかうまくできたのでは?

次回からアズガバンの囚人編に入ります。

さて、シリウス・ブラックとの関わりはどうなるのでしょうか。

楽しみにしていてください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。