ハリーポッターと花曇の魔女 作:madなサイレント
アズガバンの囚人編、スタートです。
波乱万丈な夏休み
7月18日。夏休みが始まってからもうすぐ三週間がたとうとしている。
私は、初めて友達を家に―というより大図書館に―呼んだことで、少しこれまでこあと2人で過ごしてきたのとは違った日常を送っていた。
まず、ハリーと一緒に過ごすことによって外へ行く機会が増えた。
箒に乗って空を散歩したり、家の周辺の森を散策したり。家の周辺の森は、ホグワーツにある禁じられた森よりも生物の数が多く、かつ、ハグリットのようにあまりに奇天烈な生き物を飼うこともなく、木々も適度に伐採されているためおどろおどろしい雰囲気など全くなく、晴れの日には、木漏れ日が心地よく、昼寝に丁度よさそうだ。もし、ニュート・スキャマンダーがこの森に迷い込んだら、一生出てくることがなかったかもしれない。
ハリーにしてみれば、夏休みに宿題ができるのもうれしいことらしい。
マグルの叔父さんの家では魔法のまの字が付く物に少しでも触れれば部屋に軟禁されかけるという、かなりひどい状況だったらしい。
それで去年は必死に隠しながらなんとか終わらせたそうだが、今年はそんなことをする必要もなく、分からないところは私に聞きに来て、解決していっている。いくら魔法を使ってもばれないので、レポートの課題の魔法を実際に使ってみることができたのも楽しくできた要因の一つだ。あれだけ嫌っていたスネイプの(私も先生になったため、相手に敬称をつけることをやめた)魔法薬学すら楽しんでいたようだから相当去年の生活が堪えたのだろう。実際に調合できる環境だったのも理由の一つだろう。
さて、そんな日常をゆっくりこあも含め3人で過ごしていたその日。
とある男を迎えにパチュリーはロンドンのとある喫茶店に来ていた。
店に入り、紅茶を飲んでいると、 病人のような青白いやつれた顔に継ぎ接ぎだらけのローブを纏った、鷲色の髪の男がやってきた。
「やあ、君がパチュリー君かい?」
「ええ、よろしくお願いしますね、ルーピン先生。とりあえず、場所を移しませんか?」
そう言って、会計をして喫茶店を出る。そのまま2人は人目のない路地に向かい、パチュリーが腕を出す。
「捕まってください。姿くらましをするので」
パチュリーは普段、自分で作り上げた空間転移魔法で移動している。そのほうが、魔力の消費も少なく、かつ、姿くらましが使えない場所でも転移できるからだ。しかし、誰か人を伴って移動するときに、この魔法がばれるのは少々不味い。そのためここでは姿くらましをすることにしたのだ。
ルーピンは黙ってうなずいて、パチュリーの出した腕に捕まり、それを確認してパチュリーは大図書館へ移動する。
「改めまして、パチュリー・アリワラ・ブラウンシュヴァイクよ。普段はパチュリー・ノーレッジと名乗っています。今年度は貴方の助手として闇の魔術に対する防衛術の教師をすることになっているのでよろしくお願いしますね」
「こちらこそ、リーマス・ジョン・ルーピンだ。体に不都合を抱えているが一年間よろしく頼むよ」
「さて、家の中に入りましょう。ハリーも待っていますよ」
そう言うとルーピンを連れ大図書館の中へと入っていく。
「おかえりなさい、姉様!」
「ただいま、こあ。応接室にハリーを連れてきてもらえる?あと、お茶もお願いね」
「わかりました!」
こあがパタパタとハリーを呼びに行ったことを確認して、パチュリーはルーピンを応接室に招待する。
「パチュリー君、君は...」
「そのパチュリー君というの、止めてもらえません?私のことはパチュリーと呼んでください」
「わかった。じゃあ私のこともリーマスで構わないよ」
「ええ」
「それでパチュリー、君は私の事情をどこまで知っているんだい?」
「ダンブルドア先生から粗方聞いていますよ。さて、あなたがホグワーツで教師をするのに絶対に必要なのが脱狼薬。その薬を私なりに作ってみました。元のものだと苦すぎる上に、調合が複雑すぎますしね。素材も高価なものが多いですし。今回、貴方のために薬を調合してみたんです。この薬がうまくできていれば満月の夜でも狼にならなくて済むはずです。気分は最悪のままでしょうけど...」
「それでも君には本当に感謝している。君がいなければホグワーツで教員をすることなんてできなかっただろう。これでプロングス、親友の子供を見守れる。それにかつての親友、シリウス・ブラックから―」
その時、こあがドアをノックし、ハリーを連れて部屋に入ってきた。しかし、パチュリーは聞き逃さなかった。”かつての親友、シリウス・ブラック”と。ということは、ハリーのお父さんと、シリウス・ブラックもそれなりに仲が良かったのではないだろうか。
そしてハリーを見たとたんにリーマスはゆっくりと立ち上がった。
「君がハリーかい?私はルーピン。リーマス・ルーピン。君のお父さんの親友だった...すまない、ハリー。少しこっちへ来てくれないか?」
リーマスがそう言うと、ハリーはおずおずと近づいていく。そしてリーマスのすぐ側まで行ったところで思いっきり抱き着かれた。
始めは面食らって固まってしまっていたものの、すぐにリーマスを抱き返した。
「ハリー。ハリー。本当にありがとう。君はお父さんによく似ている。目もリリーの目だ...生きててくれて本当にありがとう。そしてすまない。すまなかった。私は君の両親をシリウス・ブラックから守れなかった...」
そう。丁度3日前。大雨の日に、シリウス・ブラック―ハリーの両親をヴォルデモートに売ったとされている人物―が脱獄不可能と言われていたアズカバンから脱獄したことが発覚し、魔法界を恐怖へ陥れた。
リーマスとハリーが抱き合っていたこと約5分。ようやく落ち着いたのか、ゆっくり二人は離れて互いに自己紹介を改めてし始める。
「私はさっきも言った通りリーマス・ルーピン。今年からホグワーツで闇の魔術に対する防衛術の教師をすることになっている」
「僕はハリー。ハリー・ポッター。でも闇の魔術に対する防衛術の教師はパチュリーなんじゃあ...」
「今年私はリーマスの助手よ。昨年度、1か月くらい実際に教師をやってみたけどなかなか慣れなくてね。特に闇の魔術に対する防衛術は2年とも教師が...まぁ、その、アレだったでしょう?だからしなきゃいけない授業が山ほどあるから2人でやることになったのよ。あ、あとリーマスも学期が始まるまでここに滞在することになっているからよろしくね」
「まぁ、教師に関しては分かったよ。でも、ルーピン先生もここに住むの?」
そうハリーが疑問に感じていると、リーマスが言いにくそうにしゃべり始める。
「ハリー、一緒にしばらく住むことになっているからすぐにわかることだと思うんだけれど...えっと...言いにくいんだが、私は人狼なんだ...昔ヴォルデモートの手先にかまれてね。だから、普通の家では暮らせないんだ。だから、パチュリーの好意に甘えて、ここで暮らすことになったんだ。それにパチュリーが満月の夜になっても狼にならない薬を作ってくれてね。もし仮に私が狼になったとしても彼女なら抑えれるだろう?それに彼女は動物もどきだしね。人狼は人間しか襲わないから、狼になっても彼女を襲うことはないんだよ」
さすがに情報量が多すぎたのかハリーは混乱しているようだ。やがて、ゆっくり口を開いて
「えっと...ルーピン先生の事情については分かったけど...動物もどきって?」
それを聞いてリーマスは目を見開いた。
「驚いた。パチュリー、君説明してなかったのかい?ハリーは知っているから大丈夫だと言っていたが...」
「まぁ、説明はしていなかったわね。正確には見せたことがある、ね。ハリー、私が秘密の部屋で不死鳥になったでしょう?ここから少し変身術の授業をするわよ?動物もどき―アニメ―ガス―は自由自在に自分の意思で動物に変身する能力のことよ。動物もどきになるには卓越した忍耐力と魔法能力が必要で失敗すると半人半獣になる恐れのある危険な術よ。だからたいていの人は普通の変身術で代用するのだけれど、メリットがいくつかあるの。なんだと思う?」
「えっと...長時間なれるとか?」
「それもあるわね。でも、一番大きな理由ではないのよ。他に何かある?」
「うーん。検知されないとか?」
「それも大きな理由ね。あとは、杖なしでできるとか、自分の意思や思考を保ったままでいられるとか、自分一人で解除可能とかね。それで一つ面白いのが変身する動物は自分で選べるわけではないことかしら。本人の資質に最も近い動物になるのよ。こんなところかしら」
「わかったよ。ありがとうパチュリー。パチュリーは不死鳥の動物もどきだったからあの時不死鳥になったんだ...あの時綺麗で見とれちゃったよ」
「でしょ?私も気に入っているのよ」
そう言うと私は少し気分がよくなり、不死鳥に姿を変える。
その時、パチュリーが深紅色の炎に包まれたためか、リーマスが驚いていたが、不死鳥に姿を変えたあと、さらに驚いていた。
しばらくして再び元の姿に戻ると、
「これは驚いた!不死鳥になるとは聞いていたけど、こんなに鮮やかだなんて...」
「まぁね。でも誰にも言わないでね。ダンブルドアにも魔法省にも言っていないから。話がそれたわね。ということでリーマスが今日から1か月半、一緒にいるからよろしくね。あとハリー、リーマスが人狼であることとも誰にも言ってはいけないわよ」
「わかったけど...それまたどうして?」
「ハリーは魔法界にきてまだ2年程度だから分からないかもしれないけど、人狼は迫害の対象なのよ。本人にはどうしようもないことなのにね。だから、リーマスの為にも言っちゃだめよ」
「わかった」
こうして先生2人と生徒1人の不思議な生活が始まった。
しばらく3人で、途中からこあも加わって雑談を楽しんだところで、私がもう一つ、話を切り出す。
「ねぇ、みんな聞いてくれるかしら。特にリーマスとハリーは。とても大事なことだから」
「何かな?」「どうしたの?」
「シリウス・ブラックのことなんだけれど...」
途端にリーマスの顔が曇った。ハリーは何のことかわかっていない様子だ。
「結論から言うとシリウス・ブラックはハリーの親を売っていないし、マグルだって誰も殺していないかもしれない」
「...どうしてそんなことを」
リーマスは少しの怒りと困惑が混ざったような顔をしている。ハリーも驚いているようだ。
「少しついてきて」
そうして私は大図書館に2人を連れていく。
そこにはホグワーツの図書室とは比べ物にならないほど大きな部屋に高さ十数メートルはある本棚がぎっしりと、綺麗に並んでいた。
その様子を見て2人は唖然としながらも、私についてくる。
そして杖を振ってとある新聞記事を呼び寄せる。
「ここには魔法についてや、魔法界の歴史についての資料や本が多分、二つ以上出版されたものはほとんどすべてあるわ。ここ千年程度のものならば。そこには日刊預言者新聞も含まれているのよ。これを見て」
そう言うと呼び寄せた新聞を2人に見せる。
シリウス・ブラックが捕まった事件が起こった当日の新聞だ。
要約するとピーター・ペティグリューは勇敢にもかつての親友であるシリウス・ブラックへと挑むもシリウス・ブラックがあまりに強かったため敗れる。シリウス・ブラックの放った爆発呪文によって多くのマグルを道連れにして亡くなる。残ったのは僅かな肉片と指一本。爆心地には深くえぐれたクレーターができており、下水管にまで至る穴が開いていた。といった内容である。当然、写真付きだ。
2人とも読み終わったようだ。不思議そうな顔をしてリーマスが疑問を口にする。
「それで、これがどうかしたのかい?」
「まず、普通人間の体が跡形もなくなるほど吹き飛ばされて、指一本だけが運良く残るなんてことあるかしら?さらに、周囲のマグルが死んだことによる血痕が大量に残っているけれど、ペティグリューが死んだ場所の血痕があまりにも少なすぎると思わない?一番シリウス・ブラックの近くにいたペティグリューだからこそ血すら残らずに蒸発したとしたら、指や、たとえ僅かでも血痕が残っているのは不自然でしょう?つまり、体がばらばらに吹き飛んだのだとしたら血痕が少なすぎるし、体が跡形もなく蒸発したのであれば血痕が多いというわけよ」
「仮にそうだとしてもピーターは何処に逃げたんだい?もし仮に人込みにワームテール―ピーターが逃げたのであれば魔法省で保護されているはずだろう?さらに、血痕がある以上はピーターも怪我をしているはずだ。どこかに血痕が残っているはず。それがないわけだ。」
「そうなのよ。つまり、このことからわかるのは、今した話は単なる私の妄想で、新聞に書いてあることが事実であるということ。二つ目は何らかの理由でペティグリューの死は偽りで逃走したということ。あと、単純にシリウス・ブラックがハリーの両親を殺したとは思えないのよ。それはペティグリューも一緒なんだけれど」
「どういうこと?」
ハリーはシリウス・ブラックが両親を殺していない可能性を私が示唆した理由について知りたいのだろう。
「だって、リーマスはハリーのお父さんともシリウス・ブラックとも親友だったのでしょう?そして新聞にある通り、ペティグリューとシリウス・ブラックもかつては親友だった。つまりハリー、あなたのお父さんとシリウス・ブラックもそれなりに仲が良かったはずなのよ。そうでしょう?リーマス」
「...確かに私たち四人は学生時代親友だった」
「だったらハリー、シリウス・ブラックは新聞によると親友2人を殺したことになっているのよ?少し不謹慎だけれど、貴方で例えるならロンとハーマイオニーを殺すのと同じことなの。それをやったと思う?ペティグリューが犯人だとしても同じ点で引っかかるわ。さらに言えば、シリウス・ブラックは優秀な魔法使いだったのでしょう?だったら死の呪文も使えたはずよ。仮にヴォルデモートの手下なのだとすれば抵抗もないだろうし。わざわざ爆発魔法なんて回りくどいことはせずに殺してしまえたのよ。これはあくまでも私の推測だし、実際にどうだったかなんてわからないけれど、この事件はシリウス・ブラックが犯人でもピーター・ペティグリューが犯人でも不自然な点が多すぎる。つまり何か裏があるはずよ」
そう言うと2人は納得する。特に学生時代を共に過ごしたリーマスは長年の疑問が解けたように頷いた。
そしてこの疑問が解消される日は4人が想定していたよりもはるかに早く来た。
7月26日。シリウス・ブラックがアズガバンから脱獄したのが発覚してからもうすぐ二週間が経とうとしていたその日。
私たち三人は外の森に出て魔法生物を見て回っていた。それぞれの生物の特徴や危険な点、かわいらしい所をリーマスとパチュリーが解説しながら歩き回る。ハリーは普段、触れ合うことのない生物を見て回っているためかとても楽しそうだった。
女でなかったためか、ユニコーンに小突かれたり、誇り高いヒッポグリフにお辞儀をして仲良くなり、触らせてもらったり、河童を見つけ、その対処方法を教えてもらい、リーマスが今年の授業は闇の生物への対策を学ぶことがメインテーマだと聞いて目を輝かせたり。
そんな中、もうすぐ昼の時間になるため、大図書館に戻ろうとしたところ、やせ細った大きな黒い犬が、よろよろと歩いていた。犬がこちらに気づき、驚いたような顔をして逃げようとする。リーマスもそれに気づいて、
「シリウス!」
と叫ぶ。
私はそれに反応して、あの犬はシリウス・ブラックが動物もどきになった姿だと考え、捕まえるために魔導書を現し、結界魔法で覆い隠し、逃げれないようにする。その場でしばらく暴れていた黒い犬だが、あきらめたように、人の姿になった。痩せこけてはいるが、確かに新聞記事に載っていたシリウス・ブラックだった。
「...リーマス!ハリー!聞いてくれ!」
そう叫ぶも、
「...私は貴方が犯人だと思っているわけではないけれど、一応、話を聞きたいのよ。家についてきてくれないかしら。釈明はそこで聞くわ」
「ああ、もちろんだとも。お嬢さん。親友と、親友の息子に話を聞いてもらいたい。お願いできないだろうか」
「というわけで、2人とも、大図書館に戻って、話を聞くわよ?いいわね?」
「...ああ、構わないとも。」「うん、聞きたい」
リーマスは、一応納得はしているものの、まだ疑っている目でシリウス・ブラックを見て、ハリーは事件の真相を知りたいがために私の提案に従う。
「じゃあ、ついてきてくれるかしら、シリウス・ブラックさん」
「もちろんだとも。あと、私のことはシリウスで構わない」
そうして、4人は大図書館に向かった。
こあにシリウスの分のご飯も作ってもらい、シリウスの身なりがあまりにもひどかったのでお風呂の準備もしてもらい、シリウスがお風呂から出たタイミングで、話を聞きながら昼食と相成った。
シリウスは満面の笑みで
「こんなにおいしい料理は12年ぶりだ」
と言っているのを見て、本当にこの人は殺人を犯したのだろうかと余計に疑った。その様子は、好物のご飯が出てきて目を輝かせている子供と大差ないものだったから。
「ご飯に夢中になるのもわかるけど、説明してもらっていいかしら」
「ああ、構わない。でもその前にお嬢さんは?」
「私はパチュリー・アリワラ・ブラウンシュヴァイクよ。大体300歳くらいね。世間ではパチュリー・ノーレッジと名乗っているわ。ハリーの友達で、ホグワーツの教師よ。それで、話を聞かせて頂戴」
私が答えると、シリウスは食べかけのご飯を飲み込み、何でも聞いてくれと言ってきた。
「じゃあ、まずはどうしてあなたはここにいるのかしら?」
「プロングス―ハリーのお父さんとリリーを売った裏切り者がどこにいるかわかったからだ」
「ここに?」
「いや、ホグワーツだ。私はホグワーツに向かっている途中にこの森を通ったのだが、なぜか森から出られなくなったのだよ」
「あぁ~、それは私のせいね。この大図書館が見つからないように、この図書館に近づけば近づくほど知覚している方位と実際に進んでいる方位が狂う魔法が森全体にかけてあるの。中国系の古式魔法なんだけれど」
「そうか、道理で」
「それで、どうしてホグワーツに裏切り者がいるとわかったの?貴方アズガバンにいたのでしょう?」
「アズガバンに来た魔法大臣のファッジからクロスワードを解きたくて新聞をもらったんだ。そしたらそこに、ハリーの両親を売った男の写真が載っていてね。だからさ」
「ホグワーツにいるとわかったわけは?」
「新聞に書いてあったのさ。今その男はホグワーツに通っている生徒のペットになっているらしい。その生徒はロナルド・ウィーズリー。その生徒が飼っているネズミがその男だ」
そこまで話したところでリーマスが机を叩いて立ち上がる。
「!ッまさか!」
「ああ、その通りだとも。ムーニー。裏切り者の名前はピーター・ペティグリュー。かつての俺たちの親友だ」
「ちなみに、その写真って...この新聞の写真かしら」
私は3週間ほど前のロンの家族が旅行に行っていることが記事として取り上げられている新聞を呼び寄せ、見せた。
「ああ、その通りだとも」
「じゃあ、当時の話を聞かせてもらえるかしら」
そうして私たちはシリウスの知る、実際にあった出来事を聞いた。
曰く、ハリーの両親の秘密の守り人にシリウスがなる予定だった。その守り人をペティグリューに直前に変更して死喰い人に知られないようにした。にもかかわらず、情報が洩れ、ハリーの両親はヴォルデモートの襲撃に合う。ペティグリューが裏切り者だと気づいたときにはすでに遅く、2人はなくなっていた。ハリーをハグリッドに預け、ペティグリューを追いかけ、捕まえようとした。すると、ペティグリューが「シリウス・ブラックが犯人だ」といった趣旨の内容を叫び、爆発呪文を使って周囲のマグルを殺し、自分は小指を切り落とし、動物もどきとなって逃げだす。すぐにやってきた闇払いによってシリウス・ブラックは捕まり、少し前までアズガバンで監獄生活を送っていた。
ということらしい。
「なるほどね。一応筋は通っているわね。じゃあ最後に、これにあなたの記憶を入れて覗いてもいいかしら。言っておくけど、魔法で記憶の改ざんをしていても、まったくの無意味よ」
そう言って私は相手の取り出した記憶を覗き見ることができる、憂いの篩という道具を呼び寄せる。
すると、シリウスはその篩に自身の記憶を抵抗することなく入れ、こあも含めて5人で見る。
先ほどシリウスが語った内容はすべて本当のことであったようだ。記憶を改ざんした痕も無い。
後はシリウスの思い違いである可能性だが、この分だとそれは無さそうだ。
つまりシリウス・ブラックは完全に無罪で捕まり、ペティグリューはロンのペットのネズミのスキャバーズとしてのうのうと生きていることになる。
実際に私がスキャバーズが動物もどきであることを確認したわけではないので、何とも言えないが、もし仮にスキャバーズが動物もどきでペティグリューだった場合、今まで名乗り出なかったことの不自然さから真実薬の使用が認められるだろう。真実薬によって話させた話の内容と、足りなければシリウスの記憶を出せば、おそらくシリウスは無罪放免となる。
「さて、シリウスの無罪がはっきりとしたところで、今後の方針を決めましょう」
「そんなの決まってるじゃないか!スキャバーズを捕まえてダンブルドアに渡すんだ」
ハリーが叫ぶ。シリウスは自分の後見人で名付け親で、自分に残された唯一の親族といっても差し支えない。でも少し落ち着かなければならない。
「ハリー。気持ちはわかるけど落ち着いて。私たちはシリウスが無罪であることを知っているけど、世間一般では彼は大量殺人の犯罪者なのよ?のこのこ出ていっても、捕まってアズガバンに逆戻り、最悪の場合、ディメンターのキスを受けることになるのよ?」
「じゃあどうすればいいんだ!」
「一番理想的なのはシリウスがペティグリューを捕まえて、証言しに行くことね。ペティグリューはすでに死んでいることになっているから現れるだけで不思議に思われるはずよ。でもペティグリューを一人で連れて行ってもシリウスを捕まえた英雄として新聞に載るだけでしょうからシリウスと一緒に行かなければならないの。しかも、捕まえるまで、彼に気づかれてはいけないのよ?ネズミなんてホグワーツに腐るほどいるうえに、ほとんど見分けがつかないわ。だから、慎重に捕まえなければならないの。つまり、ハーマイオニーはともかく、ロンにこのことを話すべきではないわ。できればこの場の5人の秘密にするべきね。動かぬ証拠がすべてそろってからダンブルドアに直訴するべきよ」
「確かにその通りだろうとも」
シリウスからの同意を得た上にリーマスも頷いていることからハリーは納得した。
「でもどうやってシリウスをホグワーツへ連れて行くの?」
「それなら問題ない」リーマスが口を開く。「叫びの屋敷で過ごすんだ。ホグズミードになら姿現しができるし、犬が歩いていてもあまり不自然じゃない。問題は食料をどうするかだが...」
「それは私が何とかするわ。リーマスとハリーに比べれば自由に動ける時間が多いもの。私に何か用事があってもこあが行ってくれるでしょうし」
「それじゃあ決まりだ」
こうして教師2人と生徒1人と使用人(?)1人の愉快な夏休みに脱獄犯1人が加わった。
side ハリー
7月31日
この日は僕の誕生日だ。でも僕はこの日を楽しいと思ったことはないし、特別だとも思ったことはなかった。
もし、僕が生まれなければ父さんと母さんが死ぬこともなかったんじゃないかと思ったこともある。
僕は生まれて今まで一度も誕生日祝いのカードをもらったことがなかった。
でも、今年は違った。
朝、パチュリーも、コアトルも、ルーピン先生も、シリウスも誰も何も言わなかったから少し落胆した。
この人たちなら覚えていてくれていて、祝ってくれるかもと思っていたからだ。
それにロンとハーマイオニーからのプレゼントも、カードも来なかった。
やっぱり僕はこの日が好きになれそうもない。
そして、ここ最近ずっと繰り返している日常をたどって昼ご飯を食べた後、僕は強烈な眠気に襲われ、しばらく寝ることにした。
side パチュリー
「ハリーは寝たか?」
「バッチリ大丈夫よ!私の調合した眠り薬でぐっすり寝ているわよ。6時きっかりまでずっと寝ているわ」
「それにしても、君は素晴らしいサプライズを考えるね。でもせっかくのハリーの誕生日を起きてすぐに祝ってやれないのは残念だ」
「心配いらないのです!私が腕によりをかけて最高の料理を創り上げて見せます!」
こあが張り切って夕食の準備を始める。
最高級の食材で作られたこあ作のローストチキンとローストビーフ、鳥の丸焼きに照り焼き。それに大きなケーキ。ハリーの大好きな料理を大急ぎで、丁寧に作り始める。
「さて、私たちは私たちでやることをやるわよ。シリウスは食堂の飾りつけ。私とリーマスはダイアゴン横丁へプレゼントを買いに」
side ハリー
目が覚めると6時を少し過ぎたところだった。
どうやら自分は相当疲れていたらしい。昼ご飯を食べてから今までずっと寝ていたのだ。
ゆっくりと下の階へ降りて食堂への扉を開けた時、
ッパーン!
と何かのはじける音と、吹き抜けの2階から花火で鮮やかに彩られた文字が浮かんでいた。
”ハリー誕生日おめでとう”
そして、後ろから人の気配を感じて振り返ると、そこには満面の笑みの4人が立っていた。
「「「「ハリー、誕生日おめでとう」」」」
僕は一瞬何を言われているのかわからなかった。
そして4人から次々とプレゼントとカードを渡された。
パチュリーからはインクに漬けなくても文字が書け、羽でなぞると文字を消せる羽ペンを。
コアトルからは杖のホルダーを。
ルーピン先生からは僕の父さんと一緒に作ったという”ホグワーツ取扱説明書”を。
シリウスからはニンバス製のクィディッチプレイヤーセットのシーカー用を、僕の体に合わせてオーダーメイドで。
成長する分も含めて少し余裕を持ったサイズのものを。
そしてここにはいない友人からも届いていた。
ロンからはスニーコスコープを。
ハーマイオニーからは高級箒磨きセットを。
ハグリッドからは何やら今年度使うらしい暴れまわる本を。
それぞれもらった。
中には何に使うのかすらわからないような変なものもあったけれど、それでも誰かに誕生日を祝ってもらえたのがたまらなく嬉しかった。
パチュリーが杖を振るうと綺麗に飾りつけされた机や椅子が現れ、何やら襷をつけさせられた。
どうやら日本では誕生日の人は”本日の主役”と書かれた襷をするのが伝統らしい。
そしてもう一振りパチュリーが杖を振るった時、思わずわぁと言ってしまった。
今まで生きてきた中で一番おいしそうな料理の数々が突然現れたのだ。
どうやら、今日は人生で最高の1日になるらしい。
それからは楽しい夏休みも矢のように過ぎ去っていった。
夏休みが終わる3日前にシリウスは犬になってホグズミードにある叫びの屋敷へ向かった。
そしてパチュリーとルーピン先生も、どの学年にどんな授業をするのか夜通しで考えているようで少し疲れているようだった。
話を聞いている限りとても楽しそうな授業になりそうだけれど。
そして9月1日10時30分。
僕らはホグワーツ特急に乗り込んでコンパートメントに入り、親友2人が来るのを待った。
今年も楽しい1年になりそうだ。
いま、クィディッチの試合にディメンターが乱入してくるあたりを書いているんですけど、ハリーがシリウス・ブラックが無罪だと知っているアズガバンの囚人編は時々ディメンターに襲われる以外、特に何もない、超平和な1年になってしまってちょっと書くのが大変です...
ハリポタには珍しい平和な期間だと思って楽しんでください。
あと、こんだけ滅茶苦茶なことを書いておきながらアレですけど、不死鳥の騎士団あたりまで原作の内容を大きく変えるつもりはありません。ご了承ください。
(誰もガマガエルをボコしたいからなんて言っていない)