ハリーポッターと花曇の魔女 作:madなサイレント
コンパートメントに座って私たちはロンとハーマイオニーを待った。こあは別のコンパートメントでジニーを待つらしい。
リーマスは昨日夜遅くまで授業の最終確認をしていたためか、疲れ切ってしまっていて、席に座るとほぼ同時に寝てしまった。
五分程待つと、2人ともコンパートメントに入ってくる。
「ハリー!」ロンが抱き着きながら「夏休みはどうだった?」
「パチュリー達のおかげで最高の夏休みだったさ!」
挨拶と近況報告をそこそこにロンが話を切り出す。
「そう言えばパパとママが君に話があるって」
「僕に?」
どうやらモリーさんとアーサーが何やら話があるらしい。
それを聞いてハリーはコンパートメントを出ていく。
「それにしても、貴方のその姿、やっぱり慣れないわね」
ハーマイオニーは私の外見が13歳前後から17歳程度まで一気に成長したことにまだ慣れていないらしい。ロンもしきりに頷いていることからロンもそうらしい。三人で夏休みはどうだったとか、エジプトのピラミッドにパーシーを閉じ込めておいていこうとして失敗したとか、楽しく雑談をし始めた。
また十分ほどだったころだろうか。
サンドイッチの入った浮かない顔のハリーが入ってきた。
「モリーさん達からの話って何だったの?」
私が代表して尋ねると、ハリーは
「シリウス・ブラックが僕を狙っているらしいから気をつけろって」
「なるほどね」
ハリーが不機嫌な理由が分かった。自分の後見人を殺人犯に仕立て上げられているのだから当然と言えば当然だ。
ロンやハーマイオニーはハリーは自分を狙っていることを怖がっていると勘違いしたのか、話をそらした。
「そう言えば、この人誰だと思う?」
今まで15分以上一緒にいたのに気にならなかったのだろうか?
「「ルーピン先生」」「リーマス」
ハリーとハーマイオニー、それとパチュリーが答えたことでロンは目を見開いた。
ハーマイオニーはハーマイオニーで私たちが知っていることに驚き、ハリーもハーマイオニーが知っていることに驚いていた。
「「「どうして知っているんだ(のよ)?」」」
ハリーとロンとハーマイオニーの声がかぶる。
まずはハーマイオニーが答えるらしい。
「カバンに書いてあるわ」
ハーマイオニーはリーマスの頭の上にある荷物棚を指さした。
くたびれた小ぶりの鞄は、きちんとつなぎ合わせた紐でぐるぐる巻きになっていた。
カバンの片隅にR・J・ルーピン教授と書かれた文字がおしてある。それを見てハーマイオニーは判断したのだろう。
「どうしてハリーは知っているのよ?」
「だって、僕、二か月くらい一緒に住んでいたから」
「住んでいた?貴方パチュリーの家で夏休みを過ごしたのよね?」
「そうだけど。だから一緒に来たんだ」
それぞれの答えを聞いてロンは納得したようだが次の疑問を口にする。
「いったい何を教えるんだろ?」
これはハーマイオニーもわからないらしい。
「闇の魔術に対する防衛術よ」
私が答えると、ハリー以外の2人は不思議そうな顔をする。
「でもパチュリーがいるじゃないか」
「まぁ落ち着きなさいよ。これまでの二年間の闇の魔術に対する防衛術の先生はその...アレだったでしょう?だから今年はしっかりと教えなければならない。だから教師が二人いるのよ」
それを聞いて2人も納得したようだった。
「それで、さっきの話なんだけど...」
ロンは再び話を切り出した。シリウスについて話すらしい。
「ブラックがどうやってアズカバンから出てきたのか誰にもわからない。これまで脱獄したものは誰もいない。しかもブラックは一番厳しい監視を受けていたんだ」
「だけど、またすぐ捕まるでしょう?だって、マグルの警察まで総動員してブラックを追跡しているじゃない...」
ハリーはシリウスのことを全く恐れていないのに、2人が必死に心配している様子は少しおかしかった。
まぁ、確かに2人からしてみれば殺人犯がハリーを狙っていると思うわけで。仕方のないことではあった。
しばらくハリーに2人がいかにブラックが危険な人間か、一人で行動してはいけないなどの注意をしていたが、突然ロンが言った。
「何の音だろう?」
小さく口笛を吹くような音がかすかにコンパートメントの中に響いている。四人はコンパートメントを見回した。
「ハリー、君のトランクからだ」
ロンは立ち上がって荷物棚に手を伸ばし、やがてハリーのローブの間からスニーコスコープを引っ張り出した。スニーコスコープは怪しい人が近づいたら回りだす道具である。
「それ、スニーコスコープ?」
ハーマイオニーが興味津々といった様子で、もっとよく見ようと立ち上がった。
「うん、だけど、安物だよ」ロンが言った。「エロールの脚にハリーへの手紙を括りつけようとしたら、めちゃめちゃ回ったもの」
「その時何か怪しげなことをしてなかった?」
ハーマイオニーが思わず突っ込む。
「してない!でも...エロールを使っちゃいけなかったんだ。爺さん、長旅には向かないしね。だけどハリーにプレゼントを届けるのにほかにどうすりゃよかったんだい?」
「早くトランクに戻して」
スニーコスコープが耳をつんざくような音を出したので、ハリーは寝ているルーピン先生のことを気遣って、発言した。ハリーは毎晩遅くまで授業の準備をしていたことを知っているのだ。
ロンはスニーコスコープを、トランクの中から引っ張り出した靴下の中に押し込んで音を殺し、その上からトランクの蓋を占めた。
「ホグズミードであれをチェックしてもらえるかもしれない。『タービシュ・アンド・バングズ』の店で、魔法の機械とかいろいろ売ってるって、フレッドとジョージが教えてくれた」
「ホグズミードのこと、よく知っているの?イギリスで唯一の完全にマグルがいない村だって本で読んだけど」
「ああ、そうだと思うよ。でも僕、だからそこに行きたいってわけじゃないよ。ハニーデュークスの店に行ってみたいだけさ!」
「それって何?」
ハーマイオニーが怪訝そうな顔つきで聞いた。さしずめ、本で読んだことないといったところだろうか。
「お菓子屋さ。なーんでもあるんだ。激辛ペッパーにイチゴムースやクリームがいっぱい中に詰まっている大粒のふっくらチョコレート、それから砂糖羽ペン――」
「でも、ホグズミードって面白い所なんでしょう?『魔法の史跡』を読むと、そこの旅籠は1612年の小鬼に反乱で本部になったところだし、『叫びの屋敷』はイギリスで一番恐ろしい呪われた幽霊屋敷だって書いてあるし――」
「――それにおっきな炭酸入りキャンディ。なめている間、地面から数センチ浮き上がるんだ」
ロンもハーマイオニーもお互いの話を全く聞いていなかった。
ハーマイオニーはハリーのほうに向き直った。
「ちょっと学校を離れて、ホグズミードを探検するのも素敵じゃない?」
「だろうね。見てきたら僕に教えてくれなきゃ」
「どういうこと?」
「僕、行けないんだ。保護者のサインをもらってないから」
するとロンがとんでもないという顔をしていた。
「サインをもらっていないって?そんな、そりゃないぜ。マクゴナガルか誰かが許可してくれるよ」
ハリーは力なく笑った。グリフィンドールの寮監であるマクゴナガル先生はとても厳しい先生だ。
「じゃなきゃ、フレッドとジョージに聞けばいい。あの二人なら城から抜け出す秘密の道を多分知っている」
「ロン!」
ハーマイオニーの厳しい咎めるような声が聞こえた。
「ブラックが捕まっていないのに、ハリーは学校からこっそり抜け出すべきじゃないわ」
「まぁ、ハリーが許可してくださいってマクゴナガル先生にお願いしたら、そうおっしゃるでしょうね」
「だけど、僕たちがハリーと一緒にいれば、ブラックはまさか――」
そんな殺すなんてことするわけないだろう。そう続けるつもりだったのだろう。
「まあ、ロン、馬鹿なこと言わないで」
ハーマイオニーは手厳しい。
「ブラックは雑踏のど真ん中であんなに大勢を殺したのよ。私たちがハリーのそばにいればブラックがしり込みすると、本気でそう思っているの?」
そう言いながらハーマイオニーはクルックシャンクス―ハーマイオニーが今年から学校に連れてきたペットの猫だ―の入った籠の紐を解こうとした。
「そいつを出したらダメ!」
ロンが叫んだが、遅かった。クルックシャンクスがひらりと籠から飛び出し、伸びに続いてあくびをしたかと思うと、ロンの膝に飛び乗った。ロンのポケットのふくらみがブルブル震えた。ロンは怒ってクルックシャンクスを払いのけた。
「どけよ!」
「ロン、やめて!」
ハーマイオニーが怒った。
私はその一通りのやり取りを見て思った。ああ、この子は賢い猫だと。
さっきや、これまでロンの家でスニーコスコープが大きな音を立てて回っていたのは、ピーター・ペティグリューがそばにいたからだろう。そして、クルックシャンクスがスキャバーズを執拗に襲っているのは本質が動物ではなく人間だと気づいているからだろう。ハーマイオニーとロンの2人の話からそう判断した。
ホグワーツ特急は順調に北へと走り、外には雲がだんだん厚く垂れ込め、車窓には一段と暗く荒涼とした風景が広がっていた。コンパートメントの外側の通路では生徒が追いかけっこをしていったり来たりしていた。クルックシャンクスは私の膝の上に乗り、撫でられておとなしくなっているもののその黄色い目はロンのローブのポケットに向けられていた。
一時を過ぎたころに丸っこい魔女が食べ物を積んだカートを押して、コンパートメントのドアの前にやってきた。
「この人起こすべきかなぁ?」
ルーピン先生のほうを顎で指し、ロンが戸惑いながら言った。
「何か食べたほうがいいみたいに見えるけれど」
「大丈夫よ。リーマスの分の食べ物も私が持ってるから。それに少し寝かせてあげて。先生になるために張り切っていたみたいだから」
そして4人は買いたいものをそれぞれ買って、お菓子を頬張った。
昼下がりになって車窓から見える丘陵風景が霞んで見えなくなるほどの雨が降り出した時、通路でまた足音がした。ドアを開けたのは3人が一番毛嫌いしている連中だった。
ドラコと、その両脇に腰巾着のクラッブとゴイルだ。
ドラコとハリーはホグワーツ特急での最初の旅で出会った時から敵同士らしい。
ドラコとハリーは互いに寮代表のクィディッチチームのシーカーでそこでもずっと戦っている。
「へぇ、誰かと思えば」
コンパートメントのドアを開けながら、ドラコは気取った口調で言った。
「ポッター、ポッティーのいかれポンチと、ウィーズリー、ウィーゼルのコソコソ君じゃあないか!それとパチュリー、君は僕たちのコンパートメントに来るべきだ」
クラッブとゴイルも阿保笑いをしている。
「ウィーズリー、君の父親がこの夏やっと小金を手にしたって聞いたよ。母親がショックで死ななかったかい?」
ロンが立ち上がって殴りかかりそうになるのを止めて私は口を開く。
「何故私があなたたちのコンパートメントにわざわざ行かなきゃいけないのかしら?今ハリー達との話が丁度盛り上がってたところなのよ。それに今私は先生よ」
「そうだった、ブラウンシュヴァイク先生。それで、僕らのコンパートメントに来る理由かい?そこの穢れた血と君は一緒にいるべきではないからさ」
今度こそロンが殴りかかろうとするのを何とか止めて
「あいにくだけど、貴方がマグル生まれの生徒をそう呼ぶのをやめない限り、私があなたたちのコンパートメントに行くことはないわ。ドラコ、私は別に純血主義がいけないとは全く思っていないのよ。事実、純血家のほうが魔法力の高い子供が生まれてくることが多いしね。でもね、それはあくまで考え方の一つであってそれを他人に押し付けるべきではない。ましてや他人を害するなんてもっての外よ。それにあなた、今学校にマグルの血が少しでも入っている人は何人いると思っているの?本当に純血家だけにしたら残る生徒なんて5%にも満たないわ。それに今いる純血家だって本当に純血かなんて誰にも分らないんだし」
「わかったよ。君は純血を否定していないだけで十分さ。でも付き合う相手は考えたほうがいいと僕は思うよ。それで、そいつは誰だ?」
リーマスに目をやった途端に、ドラコは無意識に一歩引いた。
「新しい先生だ」
そう聞いた途端にドラコは薄青い目を細めた。先生の鼻先で喧嘩を吹っ掛けるほど馬鹿ではないらしい。
「行くぞ」ドラコは苦々しげにクラッブとゴイルに声をかけ、姿を消した。
「なんでパチュリーはあいつらを否定しないのさ!」
ロンが怒ったように話し出す。
「逆に聞くけど、何故あなたはそこまで否定するのよ...それに、貴方も私もそれにハリーもあまり強く物申すことはできないのよ」
「それはまた、いったいなんで?」
ハリーが不思議そうに聞いてくる。
「ロンと私は一応純血家の生まれなのよ?私に関してはなぜか知らないけどその中でも最上位とされているし。ハリーもお父さんの世代まで純血家だったのだし。ということはよ、私達や私たちの親、おばあちゃんは違っても、絶対にどこかに純血主義の人がいたのよ?じゃないと1000年近く純血であり続けることなんてほとんどできないんだから」
その説明で納得したのかしていないのか、ロンは曖昧に頷いた。
汽車がさらに北へ進むと、雨も激しさを増した。窓の外は雨足がかすかに光るだけの灰色一色で、その色も墨色に変わり、やがて通路と荷物棚に設置されていたランプが灯った。汽車はガタゴト揺れ、雨は激しく窓をうち、風はうなりを上げた。
徐々に列車の速度が落ちていくのを確認したロンが
「もう着くころだ」
と言い出す。確かに外はもう真っ暗だ。
「調子がいいぞ。腹ペコだ。宴会が待ち遠しい...」
「まだ着かないはずよ」
ハーマイオニーが時計を見ながら言った。
「じゃあ、なんで止まるんだ?」
汽車はますます速度を落とした。ピストンの音がどんどん弱くなり、窓を打つ雨風の音がよりいっそう激しく聞こえた。
ハリー達は不安そうにコンパートメントの扉を開け、通路の様子を窺った。
汽車が止まって、しばらくすると、ドサリ、ドシンと荷物棚からトランクが落ちる音が聞こえてきた。そして、何の前触れもなく明かりが一斉に消え、あたりが急に真っ暗になった。
私はとっさに明かりをともした。そのためか、私たちのコンパートメントでは特に何も起きなかったが他ではそうでもなかったらしい。やれぶつかった、やれ蹴られただの騒いでいる声が聞こえた。
何者かが近寄ってくる音が聞こえる。
何者かが近寄ってくると周囲の温度が下がり、結露していた窓が凍り付いていく。
間違いない。ディメンターだ。
ドアがゆっくりと開き、いつ起きたのかわからないリーマスと私はドアに向かって杖を構える。
開けられたドアからは想像していた通り、ディメンターが現れた。
黒づくめのマントを着て、天井までも届きそうな黒い影。顔はすっぽりと頭巾で覆われている。マントから突き出している、灰白色に冷たく光り、汚らわしいかさぶたに覆われ、水中で腐敗した死骸のような手。
なぜこんなところにいるのだろうか?
ただの学生に見せるにはいささか刺激が強すぎるように思えるが。
ディメンターがゆっくりと息を吸い込んだ。
ゾッとするような冷気が全員を襲う。
私はホグワーツ周辺にシリウス・ブラックの侵入対策のためにディメンターを配置することは聞いていたが、生徒に手を出したのであれば、対抗していいはずだ。
「エクスペクト・パトローナム ―守護霊よ来たれ」
ハリーは生きた心地がしなかった。
今まで、見てきた中で最もおぞましい生物がコンパートメントの中に入ってくる。
そのおぞましい何かが息を吸うと、冷気におぼれていった。どこからともなく叫び声が聞こえてきたような気がした。
そんな時、パチュリーの呪文を唱える声がなぜかはっきりと聞こえた。
「エクスペクト・パトローナム ―守護霊よ来たれ」
ヘドウィグよりも一回りも二回りも大きな梟がそこにいた。
まるで、薄青色のガラスで作り上げた硝子細工のようにきれいな見た目で、色は冷たいのになぜか温かみを感じた。
そしてその梟が雄々しく、堂々と翼を広げ、そのコンパートメントに入ってきたおぞましい何かに対して威嚇をした。翼を広げた時、二メートルもあるんじゃないかと思えるほど大きかった。
すると、おぞましい何かはその梟に恐れをなしたのか、奇妙な叫び声をあげて逃げ出していった。
それを見届けて、再び意識を失った。
十秒ほどだろうか。ハリーは気を失っていた。
本来であれば私がもっと早く魔法を使っていればよかったのに、ディメンターに襲わせてしまった。
ハリーはこの中で、誰よりもディメンターの影響を強く受けるであることは予想できたことなのに。本当に申し訳なかった。
リーマスはハリーが起きたことを確認してから、私以外にチョコレートを配り始める。
ディメンターに襲われた後に食べると気分が多少マシになるのだ。
そのまま運転士に話をつけるためにコンパートメントの外に出ていった。
私は開口一番にハリーに謝る。
「ハリー、ごめんなさい」
「どうして君が謝るの?」
「私は魔法省の命令でホグワーツ周辺にディメンターが今年配置されることを知っていた。ハリーが人一倍ひどい影響を受けるであろうことも予想できていた。それなのに、あいつらが入ってきたとき、すぐに対処できなかった。だから、ごめん」
「別にいいよ。それに追い払ってくれたのはパチュリーなんだろう?」
「そうだけど」
「だったらありがとう」
ああ、やっぱりハリーはいいやつだ。
そして私も私でやるべきことをやる。
「エクスペクト・パトローナム ―守護霊よ来たれ」
再び守護霊を呼び出し、ダンブルドアへの伝言を持たせ、窓を開けて飛ばす。もちろん、防水魔法をかけることも忘れない。
「パチュリー、さっきも見たんだけど、あの梟は何だい?」
ロンが聞いてくる。ハリーも不思議そうな顔をしてこっちを見てきた。
私が答えようとしたとき、ハーマイオニーが口を開く。
「守護霊の呪文ね!貴方そんなに高度な魔法が使えたのね!私実物は初めて見たわ。いもり試験レベルを軽く上回るとても難易度の高い魔法なの。さらに人によっては何年も練習をしないといけないそうよ。さらに闇の魔法を普段から多用している人には使えないって聞いたわ。それにレベルの高い術者が使えば、伝言を伝えるためにも使えるんだって。パチュリー、今のそうなんでしょう?やっぱりあなたがホグワーツの先生でよかったわ。ねぇ、今年の授業ですることにしない?学校の周りにディメンターがいるのであれば知っておく必要があると思うの。それに私もぜひ使えるようになりたいしね。それに人によって守護霊を形作る動物が違うのよね。私は何の動物になるのかしら。パチュリーのは梟なのね。それもあんなに大きいのだからシマフクロウかしら。貴方なんだかんだで日本にゆかりのある...」
初めて守護霊の呪文を見たからか、興奮した様子のハーマイオニーが息継ぎをいつしているのか不安になるほどの勢いで喋り続けている。
「落ち着いてハーマイオニー!」
さすがに不味いと思ったのか、ロンが止めに入る。
「えっと、一応答えるわよ。一応教師なんだし、使えるわよ。さっき飛ばしたのもダンブルドアへの伝言のため。それと授業では絶対にやらないわよ。難しすぎるもの。特にハーマイオニー、貴方みたいに理屈で理解しようとする人ほど習得しにくい魔法なのよ」
私が簡潔に堪えるとハーマイオニーが少し不満そうな顔をした。自分に習得できないかもしれないと言われたのが納得いかないらしい。
でもそれは仕方のないことだった。
守護霊の呪文を使いこなすのに必要な技能にもちろん、高いレベルの魔法技能もあるのだが、それ以前に、最も幸せだと自分自身が感じた瞬間を起点に魔法を発動させるため、理屈では使えないのだ。しかも、この魔法を使わなければならない状態に陥った時は大体、精神力を大きく削られるような状態であることが多い。つまり、精神的に追い詰められているときでも幸福な記憶を引きずり出せるほどの精神力が必要なのだ。
だから、すべてを理屈で理解しようとするハーマイオニーには不向きな魔法なのだ。
それに、習得難易度が高いわりに、使用頻度が少ない。
普段アズカバンの看守をしているディメンターに襲われるなんて言うことはほとんど起こらないためだ。
やっとホグズミード駅に到着し、みんなが下車する。
そのままハリー達3人と私、リーマスはセストラルの引く馬車に乗り込んだ。ちなみにセストラルとは他人の死を見て、受け入れたことのある、限られたものにしか見えない魔法生物だ。
その馬車にガタゴトと揺られホグワーツへ向かう。
どうやらハリーはチョコレートを食べたとはいえ、まだ体に力が入らなかったようだ。
私は、そんなハリーに気休め程度にしかならないが、体を軽く感じさせる魔法をかけ、やがて馬車から下りる。
私が下りた後に続いて降りようとしていたハリーに対して、気取った、いかにもうれしそうな声が聞こえてきた。
「ポッター、気絶したんだって?ロングボトムは本当のことを言っているのかな?本当に気絶なんかしたのかい?」
ドラコは肘でハーマイオニーを押しのけて、ハリーが城へと続いている石段へ進もうとしているのを妨害する。
「失せろマルフォイ」
ロンが歯を食いしばっていた。
「ウィーズリー、君も気絶したのか?あのこわーいディメンターで、ウィーズリー、君も縮み上がったのかい?」
私はさすがに不味いと思って止めにかかる。
リーマスも馬車から下りながら止めようとしていたようだ。
「ドラコ、それ以上は駄目よ」
ドラコはまさか止められると思っていなかったのか、驚いた顔をしている。
「ドラコ、貴方はディメンターに対してどのような認識でいる?」
「人の魂を吸い上げることのできる、追い払う方法はほとんどない魔法生物」
「あまりに認識不足ね。ディメンターは地上に存在する生物の中で最も忌まわしい生物で、最も穢れた場所にはびこり、絶望を周囲にばらまき、平和や希望、幸福を周りの空気から吸い取ってしまう。あまりに近づきすぎてしまうと、楽しい気分も幸福な記憶も、ひとかけらも残さずに吸い取られ、やがて体温を失う。そのままむさぼられ続ければやがてそのものもディメンターと化す。つまり、近づかれると、不幸だったり絶望した記憶しか残らなくなるわけよ。これまで感じた不幸がより大きければ大きいほど、拒絶も大きくなる。ハリーは気絶するほど過去に思い出したくない、拒絶したい記憶があるというだけよ。それに関して相手を煽ってはいけない」
その説得で納得したのかしていないのか、ドラコはクラッブとゴイルを伴って、さっさと城の中へと入っていった。
パチュリーの守護霊はシマフクロウでした。
守護霊の呪文はハリポタを知らない人でも知っているくらい有名ですよねぇ~
ハリポタで一番有名な魔法って何だろう?
ウィンガーディアム・レヴィオーサ(浮遊せよ)
エクスペクト・パトローナム(守護霊よ来たれ)
アバタ・ケダブラ(息絶えよ)
のうち、どれかだと思うけど...