ハリーポッターと花曇の魔女 作:madなサイレント
翌日の朝。パチュリーは目を覚ますと
「こあぁ~、お茶淹れてくれなぁい~...」
と寝ぼけながら口にした。当然、こあは図書館で留守番をしているためいるわけがない。しかし、図書館ではいつもパチュリーに呼ばれればすぐに来ていたため、パチュリーは呼び続ける。
「ちょっとこあ?聞いてるの?」
まぁ150年以上毎日していたのだ。癖がついてしまっているのも仕方のないことなのかもしれない。
「ちょっとパチュリー!何寝ぼけてんのよ?こんな朝早くに。まだ日も出ていないじゃない!少し静かにしてよ!」
ハーマイオニーにそういわれ、ようやく意識がはっきりしてきた。
「あ、ごめんなさい。ついいつもの癖でね。でもあなたももう少し声を小さくしたほうがいいと思うわよ?まだ寝るんでしょ?おやすみ」
そうパチュリーが返すとハーマイオニーは「おやすみ...」と言って再び寝始める。まだ朝食まで2時間以上あるので何をしようか考える。
「”とても痛い死に方をしたくない者は今年いっぱいは四階右側の廊下には近づかないように”...ねぇ。こんなの是非来てくれと言っているようなものじゃない」
とりあえず、今からすることは決まったらしい。
パチュリーはまだ外が暗いうちに外に出た。自身に認識阻害の魔法や不可視の魔法をかけ、廊下を進んでいく。今現在、ホグワーツにパチュリーを見つけることのできる人はいないだろう。透明マントも真っ青の効果である。しばらくして木製の扉の前に立っていた。ここは四階の右側の扉。”痛い死に方をしたくない者は近づくな”と言われた部屋である。パチュリーは鍵のかかった扉を魔法で開け、中に入ってからかけ直す。中には三つの頭を持った犬がいたが、パチュリーがにっこりと微笑むと部屋の隅のほうに逃げて行った。そこには地下への扉があった。
「...」
パチュリーもあっさり退いてしまったことに驚きつつも扉を開けて中へ入る。
しばらく穴の中を降りてゆくと『悪魔の罠』と呼ばれる植物がパチュリーのことを捕まえんと動き出した。
しかし、今回は相手が悪い。懐から霊符を取り出すと
「火符”アグニシャイン”」
そう口にすると『悪魔の罠』は跡形もなく消え去る。
今のところまだ一度も足を止めていない。
私が防御魔法を使ったほうが強いのでは?...なんて考えながら次の部屋へ向かう。一応、『悪魔の罠』を元通りにして。そのまま開けた空間に出たかと思うと、羽の生えた鍵がとびまわる広場に出た。なかなかに幻想的な空間である。本来はその鍵のうち正しいものを捕まえて次の部屋への扉を開けるのだろうが、彼女はそんなことをせずに扉に近づき、開錠魔法をかけた。
「...誰よ、こんな低レベルの開錠魔法で開くような魔法を掛けたのは...」
と彼女は言ってはいるがそんなわけはない。扉にも魔法がかかっており、本来であれば飛んでいる正しい鍵でなければ開かないようになっていた。
彼女がおかしいだけである。
次の部屋へ進むと、部屋全体がチェス盤になっていた。どうやら勝たなければ進めないらしい。しかし...
「チェックメイト」
十二歳の頃に不老の魔法を完成させた彼女にとって、こんなものは足止めにもならない。
5分程度で突破してしまった。
先に進むとトロールがいたが魔法で寝かしつけてそのままスルー。
次の部屋に入ると扉の前にそれぞれ紫と黒の炎が上がり、パチュリーは部屋に閉じ込められた。しかし、その程度でパチュリーを足止めできるわけもなく、彼女は防御魔法を自分にかけて次の部屋へと向かう。すると部屋の真ん中に台があり、その上に石が置かれていた。
”賢者の石”である。それを見てパチュリーは顔を顰めた。
「何よ、こんな大したことない石を守るためにわざわざこんな大掛かりな罠を張ってたの?」
無論、そんなことを思うのはパチュリーだけである。
パチュリーは「火水木金土符”賢者の石”」という術が使え、それはダンブルドアらが守ろうとしていたものよりもより完成された賢者の石を作成できる術であった。
とりあえず石だけ回収して、その辺の埃に変身術をかけ見た目だけそっくりにして、台の上にのせておく。
そうして空間転移魔法を使って部屋に戻った。
一応、ホグワーツには転移魔法である、姿くらましが使えないようになっているが、パチュリーの使った魔法は彼女のオリジナルなので問題なく使えたわけである。
そうして彼女は30分もかからないうちに自室のベッドに戻ってきたのであった。
パチュリーがホグワーツにきて数日が経った。
魔法魔術学校を名乗るだけあって、様々な授業があった。
思っていたよりも杖を振って呪文を唱えるといった授業は少なく、天文学、薬草学、魔法史、魔法薬学などの授業は魔法を使うことはない。
逆に変身術や呪文学では、実際に使うことが多い。闇の魔術に対する防衛術は半々といったところだ。
今日は初めての変身術の授業なのだが、隣のベッドのハーマイオニーのテンションが朝っぱらから高い。
「今日は待ちに待った変身術の授業よ!私、興奮して昨日寝付けなかったの!」
「誰よりも早く寝ていたのによく言うわ」
「それでもよ!パチュリーは変身術が得意なのよね?」
「そんなことないわ」
そんなことを話しながら席に着き、授業が始まるのを待っているとマクゴナガル先生が入ってきていきなり説教を始めた。
「変身術はホグワーツで学ぶ魔法の中で最も複雑で危険なものの1つです。いい加減な態度で私の授業を受ける生徒は出て行ってもらいますし、二度とクラスには戻れないと思っておいてください。初めに警告しておきます」
そういった後、先生は机を豚に変え、また机に戻して見せた。それを見たハーマイオニーが目を輝かせている。
生徒達も早くやりたいとウズウズしているがパチュリーはその生徒達に呆れていた。確かに魔法らしい魔法に興奮するのはいいことだし、学ぼうとする欲求は素晴らしいことだが、下手したら自分が豚になる可能性があるのを分かっているのだろうかと少し不安になっていた。
そしてマグゴナガル先生が授業を始め、黒板に理論を書いて説明していき、生徒が書いた物をノートに纏めたのを確認した後、一人1つずつマッチ棒を渡されてそれを針に変えるよう指示を出したが、パチュリーだけは空いたマッチ箱が渡された。そして先生はパチュリーに
「それを好きな動物に変えて見せなさい」
と指示を出す。
それを見てハーマイオニーは、不思議そうな顔をして
「マグゴナガル先生、何故パチュリーにだけ難易度が高い事を指示なさるのですか?明らかに1年生が授業でする内容ではありませんし、教科書にも載っていません」
彼女は教科書の内容を暗記でもしているのだろうか...非効率極まりない。
「いえ、ミス・ノーレッジはおそらく可能です。彼女は昨日、ろうそくを犬のゴーストに変えたのです。むしろマッチを針にするなんて彼女にとっては退屈なものになるでしょう。ミス・ノーレッジ、やれますか?」
「ええ。どんな動物でもいいのですね?」
「構いません」
「わかりました」
そう答えたとたん、クラスがざわめきだした。そんなのできるはずが無いだろう、と。特にロンとハリーは。この二人はマルフォイと一緒だといったことをまだ根に持っているらしい。
パチュリーはいいことを思いついたといわんばかりに、杖を振ってマッチ箱に触れる。すると途端にマッチ箱は光輝き始めやがて大きなトビとなった。
マクゴナガル先生はそれを見て驚愕し
「ミス・ノーレッジ、この鳥は何ですか?私は今まで様々な魔法生物を見てきましたがこのような鳥は初めて見ました」
という。
「これは金鵄と呼ばれ、日本の神話に登場する神獣です。日本では勝利の代名詞となっています。まぁ、西洋で言うところの勝利の女神でしょうか。最も変身術で似せているだけなので本来の力を発揮できるわけではありませんが」
「す、素晴らしい。グリフィンドールに20点!ミス・ノーレッジ。よくやりました」
パチュリーは擦り寄ってくる金鵄をマッチ箱に戻して杖を仕舞う。その様子を見たクラスの全員は固まっていて、ハリーの隣に座っていたロンは顎が取れるんじゃないかと心配になるくらいであった。
ハリーはハリーで私が自分以上に注目されているのが気に食わないらしく、むすっとしている。
再び授業を進めたところハーマイオニーに話しかけられる。
「パチュリー!あなたって本当にすごいのね!ところで、あなたの杖って綺麗よね。そんな色のもあるんだ」
「大したことないわよ。杖に関しては私もそう思うわ。オリバンダーさん曰く、何十代も前の店主が作った杖だそうよ。それはいいとしてあなたはうまくいきそうなの?」
「まだまだかしら。木を鉄にすることはできたんだけど、形を変えるのが難しくて」
「あなた、さっき先生が黒板に書いていたじゃない。理論は内容を暗記するんじゃなくて、それをいつでも使えるように理解しなければ使えないわよ。あなたの場合は形を変化させるための法則を理解しなおしたほうがいいと思うわ」
「ありがとう!やってみるわ」
そうして授業は過ぎてゆき、終わりの時間がやってきた。結局、針にすることができたのはハーマイオニーだけだったらしく、マクゴナガル先生はグリフィンドールに5点を与え、授業は解散となった。
次の授業は魔法薬学である。
何故地下牢にいるのか?そんなの私が聞きたい。どうやら魔法薬学の授業は地下牢で行うらしい。あたりには、アルコールやホルマリン液で固定された生物が並んでおり、光がほとんど入ってこないことも相まってかなり不気味だ。そして私は、ロンやハリー、ハーマイオニーからいや、全グリフィンドール生からにらまれている。なぜなら
「パチュリー、今日はよろしく頼むよ」
「よろしくね、ドラコ」
「そっちの調子はどうなの?」
「上々さ。それより、君はあの穢れた血とまだ話しているのかい?いい加減やめたほうがいいと僕は思うよ」
と、スリザリン生であるドラコと話しているのが原因らしい。
ドラコはその視線を気付いているのかいないのか、人当たりのよさそうなにこやかな笑みで話しかけてくる。
この授業はグリフィンドール生とスリザリン生との合同授業なのだが、どちらも人数が奇数なので、一人ずつ余ることになり、私とドラコが組むことになったのだ。
私が誰と組もうが勝手でしょう?寮が違うだけでなんでこんなわけのわからないやっかみをうけるのかしら?
授業が始まる時間になると、地下牢に一人の魔法使いが降りてくる。
肩まで伸ばしたぬらりとした黒髪の老け顔の男、スリザリンの寮監のスネイプだ。
スネイプは教室を見回し、生徒が集まっていることを確認すると、名前を呼んで出席を取っていく。
「ああ、なるほど...」
スネイプ先生はハリーの順番が来た時に、ハリーの方を見ながら言う。
「ハリー・ポッター。我らが新しい...英雄だね」
それはハリーを称賛しているというよりかは、何か嫌味を言っているようだった。それを聞いて一部のスリザリンの生徒がクスクスと笑う。
そして出席を取り終わると先生は生徒を見渡して話始める。
「この授業では魔法薬調剤の厳密な化学と絶妙な芸術を学ぶ。この授業では杖を振り回すようなバカげたことはやらん。だからこそ、これが魔法かと思う諸君が多いかもしれんな。ふつふつと沸く大釜、立ち上る湯気、人の血管の中を這い巡る液体の繊細な力...心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力。諸君がこの真理を理解することは期待しておらん。私が教えるのは、名声を瓶詰めにし、栄光を醸造し、死にさえ蓋をする方法である。ただし、私がこれまで教えてきたウスノロたちより諸君がまだマシであればの話にはなるがな」
わぁお、この人生徒のことウスノロとか言い始めたよ...なんてどうでもいいことを考えているとスネイプ先生が大きな声で叫びだす。
「ポッター!」
「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になる?」
あの2つを混ぜると強力な『生ける屍の水薬』という眠り薬となる。成分が強すぎると2度と起きれなくなるほどの。でもこれ、一年生に聞くものではないでしょうに...
ハリーは横のロンの顔を見る。
どうやら二人ともわからないらしい。
ハーマイオニーは立っているのか座っているのかわからないくらい高く手を挙げている。
「ふん。有名なだけでは知識はえられないようだな」
「ポッター。もう一つ聞こう。ベゾアール石を見つけて来いと言われればどこを探す?」
あの様子を見るにあの二人はわからないらしい。ハーマイオニーは座ったまま上げれるぎりぎりまで手を挙げている。逆にあれはすごいと思う。
「わかりません」
ハリーは素直にそう答えた。私の横でドラコはニタニタ笑ってる。そんなことするから余計なケンカをするんでしょうに...
「授業を受ける前に教科書を開いてみようとは思わなかったのか?ポッター。えぇ?」
「では、マルフォイの横に座っている...ノーレッジ。さっきの問いをこたえてみたまえ」
途端にニタニタ笑ってたドラコの表情が固まる。そちらのほうを見ると心配そうな顔をしたドラコがこっちを見ていた。
小声で「大丈夫」とドラコに言ってから先生の質問に答える。
「とりあえず草原か、牧場を探します」
「ほう、それはなぜだね?」
「ベゾアール石はヤギの胃袋からとれるものだからです」
「その効果は?」
「多くの毒に対する解毒剤の材料となります」
「もう一つ聞こう。モンクスフードとウルフスベーンの違いは何かね?」
「どちらともトリカブトの別名です」
「では、トリカブトの毒性は」
「有毒な成分は根に多く含まれ、アコニチン、メサコニチンなどのアルカロイドがあります。摂取した場合、舌がしびれ、やがて全身がしびれて呼吸困難になり、最悪の場合死に至ります。」
「...ポリジュース薬を1週間で調合するには?」
本来であればこの問いは答えがない。今現在、魔法界で知られている方法で作るには1か月以上かかるからである。
しかし、彼女はパチュリーだ。いかに魔法薬学が苦手であろうと、魔法関係の知識を300年間吸収してきたのは伊達じゃない。
「...とこのように毒蛇の牙を砕いたものをほんの少しと鼠の心臓を2つとライラックの花弁を3枚入れ3日間煮込み続けると4日で調合することができます」
5分くらいかけて説明すると、はじめはいつもの無表情だったスネイプ先生の顔がどんどん驚きに満ちていき、今では顎に手を当てて本当にぶつぶつ何か言いながら考え込んでしまっている。
「...」
「先生?」
「っ!!?問題ないミス・ノーレッジ。その通りだ。グリフィンドールに5点!」
それを聞いて、グリフィンドール、スリザリンにかかわらずすべての生徒が驚いた顔をしている。スリザリン贔屓で有名なスネイプ先生はほかの寮の生徒から減点をすることはあっても点与えることなんてなかったのだ。全員が狐につままれたような顔をしている。
それでも授業は進んでいき、しばらくたったころ。地下牢いっぱいに緑の煙が立ち込め、シューシューと音が鳴った。パチュリーは誰かが鍋を火から降ろさないで山嵐の針を入れたのだろうと思いながら発生源を見るとネビルがおできまみれになっていた。鍋からは緑色の液体がドロドロとあふれかえっており、とんでもないことになっていた。
「馬鹿者!」
スネイプ先生が大声を上げ、杖を振り、あふれていた薬を消した。
「大方、大なべを火から離さないうちにヤマアラシの針をいれたのだな?」
スネイプ先生に説教をされ、ネビルは泣き出してしまった。
「この馬鹿を医務室に連れていけ」
そう、ペアの男子に言いつけると、その隣で作業していたハリーのほうを見た。
「ポッター。針を入れてはならないとなぜ言わなかった?彼が間違えると自分がよく見えると考えたのか?先ほどの態度と合わせてグリフィンドールは2点減点だ」
ハリーはなんで僕?って顔をしながらそんな理不尽な説教を受けていた。
その後も1時間ほど授業が続き、ハリー達が減点されパチュリーが点を稼ぐという、いたちごっこのような授業は終えた。ただパチュリーはスネイプ先生に大層気に入られてしまい、ロンはますます不機嫌になった。
次の授業は闇の魔術に対する防衛術の授業だった。教師はクィレル先生というらしい。
教室に入るとパチュリーは「うっ!」と顔を顰める。部屋中から強烈なにんにくのにおいがするのである。
しかも焼いた香ばしいにおいではなく、生のただただ臭いやつだ。
これが1年も続くと考えると嫌になるのは彼女だけではないだろう。
ちなみにその日の夕食のガーリックライスをパチュリーは一口も食べられなかった。
さらに数日後。談話室で本を読んでいるハーマイオニーを見つけ挨拶をする。
「おはよう。ハーマイオニー。なんの本を読んでいるのかしら」
「パチュリーじゃない!おはよう!あなた掲示板を見ていないの?今日から飛行訓練の授業があるのよ。そのために予習をしているのよ」
「...本で?実際に飛ぶのではなくて」
「そうだけど何?」
なんでこの子はこんなに抜けているんだろう。別に本を読んだって箒にうまく乗れるわけではないのに。
「まぁ、頑張りなさい。空を飛ぶのはきもちいいわ」
ハーマイオニーと一緒に外に出ると、よく晴れた生徒たちの初飛行にはもってこいの日だった。本来であれば、箒なんて使わずに一人でゆっくりと飛びたいところだが、さすがにそういうわけにもいかない。
集合場所に歩いていくとすでにスリザリンの生徒が集まっていた。どうやら合同授業らしい。
まだ時間まで30分ほどあったので魔導書を開いた。これはパチュリーが魔法を主に陰陽術を使うために必要なもので、気に入った魔法や、普段よく使う魔法、攻撃や防御に優れた魔法なんかを厳選して入れているものだ。すでに使う魔法を決めている杖を持っているという感覚だろうか?
しばらくするとグリフィンドールの生徒とマダム・フーチがやってくる。ロンには一睨みされた。スリザリンの生徒とは誰とも話していないのになぜだろう。
「なにをボヤボヤしてるんですか。みんな箒のそばに立って。さぁ、早く」
そうマダム・フーチが言うと、みんな、ぞろぞろと箒のそばに立っていく。
「右手を箒の上に突き出して。そして『上がれ!』と言ってみて」
そうマダム・フーチがが言った後、全員が「上がれ!」と叫ぶが、箒が上がったのはマルフォイとハリー、そしてパチュリーだけだった。
やがて大半の生徒が上げることに成功した後、マダム・フーチの指示で箒にまたがり握り方を直してもらっていた。
箒に乗りなれていたドラコもマダム・フーチに直されていて、ハリーやロンは何やらうれしそうにしていた。
全員の姿勢の確認をし終わった後、
「私が笛を吹いたら強く地面を蹴ってください! 箒をしっかり押さえ、二メートルほど浮き上がったらそこで止まり、そしてゆっくり降りてきてください!」
フーチは鋭い視線で生徒たちを見渡す。そして笛を咥えながらカウントダウンを始めた。
しかし、まだ数え終わらないうちにネビルが誤って地面をけってしまい、ネビルを乗せた箒はどんどん上に上がっていく。
そして真っ逆さまになりやがて落ちてきた。
あのまま行ったら確実に死ぬだろう。
「まったくもう、しかたないわね」
そう言うと、さっきまで開いていた魔導書が浮かび上がり、ひとりでにページがパラパラめくられていく。そして風属性の魔法を発動させ、地面にふんわりと着地させる。
ネビルは恐怖のあまり気絶してしまったらしい。まぁ、無理もないだろう。
「私がこの子を医務室に連れて行きますから、その間誰も動いてはいけません。箒もそのままにしておくように。さもないとクィディッチの”ク”を言う前にホグワーツから出て行ってもらいますよ。...それにしてもあの風の魔法はいったい?」
「あいつの顔を見たか?あの大まぬけの。死ななかったのが奇跡だよ」
そうドラコが話し始め、ネビルのおばあさんが送って来たらしい『思い出し玉』を拾い上げた。よくそんなものが落ちているのをみつけたなぁ。
「ご覧よ!ロングボトムのばあさんが送ってきた馬鹿玉だぜ」
それを掲げているとハリーが口を開いた。
「マルフォイ、こっちへ渡してもらおう」
「嫌だね、ロングボトム自身に見つけさせる」
そう言うとドラコが乗りなれているかのように箒に跨り空を飛んだ。ドラコは木の上丁度くらいの高さまで飛ぶと口を開いて
「ここまで取りに来いよ、ポッター」
それを聞いてハリーは箒を掴む。パチュリーの隣でハーマイオニーが叫ぶ。
「駄目よ!フーチ先生が言っていたでしょう。動いてはいけないわ。みんなが迷惑するのよ」
しかしハリーはそれを無視して飛び上がる。
その様子を見てパチュリーは少し感心していた。
彼は今日、初めて箒に乗ったはずだけれど、まるで乗りなれているかのように乗りこなしていたからだ。
「こっちへ渡せマルフォイ。でないと箒から突き落としてやる」
ドラコの正面で止まったハリーはそう挑発した。
マルフォイも、それに対していつもの調子で返す。
「とれるもんなら取ってみろ」
そう叫んでドラコはガラス球を城に向かって投げた。しかも驚いたことに、ハリーはそれを箒で追いかける。
それを空中でキャッチし、地面にふんわりと着地をしたときにグリフィンドールの生徒から大きな拍手が沸き起こった。
しかし、それもすぐに終わることとなった。
「ハリー・ポッタッー!!!」
そう、血相を変えて走ってくるマクゴナガル先生を見たからだ。
何人かの生徒が先生にハリーの擁護をしたが先生は聞く耳を持たずといったように
「ポッター!さぁ、一緒にいらっしゃい」
そう言ってハリーを連れて急ぎ足で部屋へ戻っていった。
しばらくしてマダム・フーチが戻ってきた。
「不幸な事故がありましたが私の指示に従って手順を踏んでいけばあのようなことになることはありませんので安心してください。おや、ポッターがいないようですが」
「マクゴナガル先生に連れていかれました」
「副校長に?まぁいいでしょう。さあ、授業の続きをしますよ。」
そうして飛行訓練の授業は過ぎていった。
後日聞いた話によると、ハリーはマクゴナガル先生に怒られたのではなく、グリフィンドールのクィディッチの選手にシーカ―として選ばれたそうだ。まぁ、パチュリーにはあまり関係のない話である。
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