ハリーポッターと花曇の魔女 作:madなサイレント
今年もよろしくお願いします。
さて、今は9月1日の10時53分。
ロンの家族と、私、こあ、ハリーはとても急いでいた。
フレッドとジョージとジニーが花火を忘れただの箒を忘れただの、日記帳を置いてきただのでそれらを取りに三回も隠れ穴に戻ったことで本来ではホグワーツ特急の発車まで一時間以上の余裕があったのにもかかわらず、駅に着いた時点で残り10分を切っていたのである。
やっと9番線と10番線のホームに到着すると、先頭を進んでいた、アーサー、モリ―さん、ジニー、パーシー、ジョージ&フレッドの順番で柱に向かって進んでいった。
そして、ロンとハリーがそのまま進もうとしたときに事件が起こる。
汽車の発車まで2分あるのにもかかわらず、柱を通り抜けられなくなったのである。
カートを小走りでおしていたハリーとロンは柱に派手にぶつかり、カートから荷物があふれる。
周辺にいたマグルは、”あいつら何してんの?”という視線を向けつつ、自分らのするべきことをしている。
「ちょっと?あなたたち何やっているのよ?馬鹿なことしていないでさっさと柱を通り抜けなさい。あと1分と少ししかないのよ?」
「パチュリー!違うんだ!柱を通り抜けられないんだ!」
そう言ってロンが柱を叩く。
確かに通り抜けることはせずにパンパンとレンガを叩く音がする。
「ちょっとどきなさい」
パチュリーは二人の言葉に眉をひそめて、柱を調べる。確かに柱にかかっていた魔法がきれいさっぱり消えている。
「パチュリー?どうだい?何とかなりそうかい?」
「無理ね。周りにマグルが多すぎるわ。ロンの家を要とした結界を張るにしても、こんだけマグルが多いと、誰かしらに結界を張っているところを見られてしまう。それに10秒で直せても汽車は出発してしまう」
そう言って懐から懐中時計を取り出して二人に見せる。
「そんなぁ!僕らどうなるのさ!パパもママもこっち側に戻ってこれなかったらどうしよう?マグルのお金、少し持ってる?」
「僕はダーズリーに去年のクリスマスでもらった50ペンスだけ」
「一銭たりとも持ってないわよ。仮にお金があったとしてどうするのよ。ロータリーに言って観光案内所に「ホグワーツ行きのバスはありますか?」ってきくのかしら」
私がそういうとハリーたちの表情がまた暗くなった。
ハリーのふくろうが鳥籠の中で暴れまわっているせいでこちらを冷ややかな目で見ているマグルが多い。
「取り敢えずここを出よう。人目に付きすぎるし、車のそばとかで――」
「ハリー!車だよ!」
突然ロンが大声で叫びだす。
「車がどうかした?」
ハリーに質問された論が得意げに語りだす。
すごくわかりにくい説明だったが、要約するとこうだ。
車に乗って空を飛んでホグワーツに行く、だ。
もしかしたらロンには脳みそが詰まっていないのかもしれない。
未成年の魔法使いが魔法を使ってはいけないという規則を忘れたのだろうか。
直接魔法を行使していないとはいえ、マグルに見られてはいけないという最も根本的な問題に引っかかるのだ。
ハリーもそれを聞いて目を輝かせていた。
「どうだいパチュリー。いい考えじゃないかい?一緒に行こう!運転は任せて」
「遠慮しとくわ。私とこあは別の手段でホグワーツへ向かうことにするわ。逆に聞くけど一緒に来る気はあるかしら?」
「ちなみにその手段って?」
「ホグワーツに直接乗り込む。私一人だとこの人数と荷物は持っていけないけどこあもいるなら何とかなるわ」
「本当にできるのかい?」
「たぶんできると思うわ。ホグワーツで前やってみた時にはできたし。もしできなかったら、その時は車で行けばいいんじゃないかしら」
「そうしよう。ハリーもそれでいい?」
「うん。それでいいよ。...なんて言うか、2人とも規格外すぎるね」
「それじゃあ、人目のない裏路地に行きましょう」
5分後。キングズ・クロス駅のそばにある裏路地で。
パチュリーがハリーの、こあがロンの荷物をそれぞれ預かり、小さくして自分の鞄の中に放り込み、それぞれのペットを持って2人組になって手をつなぐ。
「こあ、この霊符を渡しておくわ。それさえあれば私のいる場所に飛べるでしょう?私はハリーを連れて行くから、私たちが着いたことを確認してからロンを連れてそこに飛んでちょうだい」
「わかりました!でも、どこに飛ぶんですか、姉様?」
「そうねぇ...ホグズミード村だと中に入れないし...城の中はさすがにまずいし...ハグリッドの小屋のそばでどうかしら?」
「そりゃぁいい!」
「じゃぁ、それで決まりね、行くわよ。ハリー、しっかり私につかまって。絶対に梟を放しちゃだめよ」
そうして私はハグリッドの小屋に飛んだ。
数秒後、こあも飛んできた。
そして...
運の悪いことにダンブルドアとハグリッドが小屋から出てくるところに鉢合わせた。
まぁ、当然の如く校長室に連行され、今は事情聴取を受けている。
「それで君たちは汽車に乗らずに直接来たわけじゃな?」
「そうなんです、先生」
「じゃが、どうやってここまで来たのじゃ?」
「それは...えっと...」
ロンが口をつぐんでしまったところで私が代わりに答える。
「飛んできました」
「は?」
「だから、飛んできました」
「...魔法を使った痕跡は無かったのじゃが」
「こちらの魔法を使ったわけではありませんから」
「...なるほどのう?」
「さらに、別に校則に違反したわけではないと思いますが?」
「それもそうじゃのぅ...」
「では、私たちが今から寮の談話室に言ってゆっくり休んでいても特に問題はありませんよね?」
「その前に一つ。パチュリー・ノーレッジ嬢、君はいったい何者かね?」
「あら、私はパチュリー・ノーレッジ。ただ知識と技術を求める魔女よ」
「わかった...いってよろしい。ノーレッジ嬢、あぁ、年下のほうじゃ。グリフィンドールの談話室に行くよよい。他の3人もグリフィンドールの寮生じゃしの」
「わかりました。お気遣いありがとうございます」
そうして4人は校長室を後にする。
グリフィンドールの談話室でパチュリーに膝枕をしてもらってこあが溶けてしまったのはまた別の話だ。
sideダンブルドア
5分後、校長室には、セブルス・スネイプ、ミネルバ・マクゴナガルがいた。
「さて、今回ノーレッジ嬢らがしでかしたことについてどう思う?」
「私は、ミス・ノーレッジを退学処分にするのが妥当だと思います。あぁ、二人共です。彼女らは危険です。少なくとも、私らよりもはるかに魔法についてよく知っている。戦ったらアルバス、貴方でも勝てないかもしれませんよ」
「吾輩は、退学には反対ですな。”例のあの人”が復活する可能性を考慮すればポッターと一緒に行動させるのは悪くないと思われるが?さらに、生徒としても優秀だ。今回の件でも特段、何かの規則を破ったわけではない。我々がただ、姿くらまし以外の移動方法を知らないだけだ」
「わしは2人を教師として迎えてもいいと考えている。前にわしが言ったことを、覚えておるじゃろう?最後のブラウンシュヴァイク家の男が失踪した森に彼女らが住んでいることを。もしかしたら、彼女らはブラウンシュヴァイク家の生き残りかもしれん。こういう話を聞いたこと事はないかの?ブラウンシュヴァイク家の対外向けの名前はノーレッジであると。それにさっき彼女に何者だと問うたところ、知識と技術を求めるただの魔女だと答えたのじゃ。知っておるじゃろう?かの一族はただただ自身の魔法力の鍛錬や、魔法の研究に専念する一族だと」
「まさか、そんな。でもどうやって。ここ300年ほどブラウンシュヴァイク家と誰かが結婚したという話を聞いていません。親がいなければ子は生まれない。そんなことはないのでは?それにもう、教師の席は埋まってしまっています。さらに彼女はまだ12歳なんですよ?」
「そこに関しては吾輩も同意しかねます。さすがに自分よりも年下の子供に教えてもらうのは生徒が嫌がるでしょう」
「それもそうかのぅ。彼女らの行動はこれからも気を付けるということでいいのじゃな?」
「ええ、そうしましょう」
「校長がそうおっしゃるなら」
そうして2人が退出した後の部屋で、ダンブルドアは1人で思考をめぐらす。
姿くらまし以外の手段を使って、しかもほかの魔法生物の手を借りずにホグワーツに侵入したというパチュリー・ノーレッジとコアトル・ノーレッジ。しかも、コアトルに関していえば、いまだに来たことのない場所に来たではないか。それはいったいどのようの手段なのか?果たして彼女らが闇に堕ちたら自分は戦うことができるのだろうか。もし本当にブラウンシュヴァイク家の生き残りならば、どうするべきなのか。そもそも彼女らは本当に子供なのだろうか。ヴォルデモートと戦う戦力となりうるのだろうか。
今彼女のこれまでを見てみることにしよう。いくら彼女といえどまだ12歳の少女なのだ。まだ、彼女を疑ってかかるべきではない。
sideパチュリー
さて、その日の晩。
先に談話室で話していたところハーマイオニーが到着してハリーらを問い詰めている。
話を聞いてハーマイオニーは呆れながらも、まぁパチュリーならばとなぜか納得した。解せぬ。
そうそう。こあはグリフィンドールになった。というか、そうなるように帽子を説得(?)したらしい。
ジニーと同じ部屋になったようで2人で抱き合って喜んでいた。
それをウィーズリー兄弟と、私は温かい目で見ていた。普段生真面目でにこりともしないパーシーがあんなにニコニコしているのを見て全員で驚くなんて言うこともあった。
翌日の朝。この日は薬草学と闇の魔術に対する防衛術の授業のある日だ。
どうやらハーマイオニーはすべての教科書?というか小説を書いたギルデロイ・ロックハートにぞっこんのようだ。
その日の朝食では楽しみで仕方がないという雰囲気で教科書?の一つである『ヴァンパイアとバッチリ船旅』を読んでいた。
因みにパチュリーもすべて読んだが、何が面白いのかサッパリわからなかった。そこそこの年齢の夫人がなぜ面白いと思い読んでいるのか?そもそもそんなにカッコいいだろうか?正直に言って彼の浮かべる気障っぽい笑みは嘘くさい。何故か見ていて不快になる。さらに言えば教科書として指定された本をどう使えば教科書になるのかわからない。
本に出てくる魔法生物の相手なら自分でも独力で苦戦することなく倒せる自信があるし、その場で使われている魔法の使い方も間違っているわけではないが、効率的ではない。彼が教師をやるくらいなら、新人の闇払いを連れてきたほうがまだいいだろう。もしかしたら、彼自身、闇の魔術に対する防衛術がとても得意なのかもしれないが、本を読んでいる限り、望みは薄そうだ。
「ハーマイオニー、貴女よくそんな本を読む気にるわね。そんなに彼に尊敬できるところがあるの?」
「何を言っているのパチュリー!?彼ってば素晴らしいのよ?こんなに素晴らしい教科書を書いているんですもの!彼に今年、闇の魔術に対する防衛術を学べるなんて最高だわ。それなのに...」
「あ~分かったわ。私が悪かった。カレハスバラシイマホウツカイヨネー」
パチュリーは真剣に小説を読むハーマイオニーを見て彼女も同じことを思っているだろうと思って聞いてみたけれど彼女はもうだめらしい。
ハリーとロンと苦笑していた。
さて、今パチュリーたちは薬草学の授業を受けるために魔法の植物が植えてある温室にやってきていた。少しすると包帯と大量の耳当てを持ったスプラウト先生となぜかロックハートがにこやかに笑いながら入ってきた。そしてハリーを見つけるとにこやかに笑いながら近づいてきた。
「ハリー!君と話がしたかった!スプラウト先生、ハリーがほんの2,3分授業に遅れることになっても差し支えありませんね?」
と言いつつ連行していった。スプラウト先生は、差し支えあるに決まってんだろボケタコが!って顔していたが華麗にスルー。その精神力だけは見習いたい。
結局5分くらいしてから戻ってきた。
「今日はマンドレイクの植え替えをやります。誰か特徴のわかる人は?」
すぐにハーマイオニーが手を挙げる。
「マンドレイク、別名マンドラゴラは強力な回復薬です。姿かたちを変えられたり、強力な呪いをかけられた人をもとに戻すのに使います」
「大変結構。グリフィンドールに10点。マンドレイクはたいていの解毒剤の主成分とすることができます。しかし、危険な面もあります。誰か理由を知っている人は?」
スプラウト先生の問いかけにハーマイオニーはビシッて効果音のつきそうな勢いで手を挙げる。
「マンドレイクの泣き声はそれを聞いたものにとって命取りになります」
「その通り。もう10点あげましょう。さて、ここにあるマンドレイクはまだ若く、まだ苗ですから泣き声を聞いても命取りではありません。しかし、苗でも皆さん間違えなく数時間は気絶させるでしょう。新学期最初の日を気を失ったままではいたくないでしょう?耳当ては作業中しっかりとつけて離さないように。さぁ、一人ひとつづつとっていって」
そして授業は問題なく進んでいた。
いや、進みすぎていた。ハリー達の班だけ。
正確にはパチュリーのところだけ。
普通、マンドレイクを抜くと、大声でわめきながら暴れるのだが、抜いてすぐにパチュリーがにっこりと微笑んでマンドレイクにお願いするとあら不思議。すべてのマンドレイクが泣きそうになりながら静かになるのだ。
そしてまだ授業の時間が半分以上残っているのに、ハリー達の班はすぐに作業が終わった。
そんな一連の様子を見てスプラウト先生が固まっていたり、ハーマイオニーが「教科書と違う...」と首を傾げたりしていたがパチュリーには関係のないことだ。さらにどうやってと聞かれても困る。私はただ、お願いしただけなんだから。
昼食の時間になり、私とハリー達は大広間で食事をしていた。
ハーマイオニーは薬草学の授業の後で行われた変身術の授業でマクゴナガル先生に褒められたことをハリーとロンに自慢し、2人はどんどん不機嫌になっていった。
パチュリーもそれに興味を示さず、魔法書を読んでおり場の空気はなんだか気まずい。
慌ててハリーが話題を変える。
「つ、次の授業ってなんだっけ?」
「闇の魔術に対する防衛術よ」
心なしかウキウキしながらハーマイオニーが答える。その時間割表をのぞき込んでみると...
「何よ!?これ!なんで闇の魔術に対する防衛術の授業をあなたはハートで囲っているのよ!」
珍しく大声を出したパチュリーに驚いたのか、ロンとハリーはびくっとしたがハーマイオニーは恋する乙女のような表情で
「へ?///」
と言ってきた。ロンやハリーはそんなハーマイオニーの様子をいぶかしんでいたが300年近く生きてきた同性のパチュリーにはよくわかった。
あ、これはもうだめだ、と。
パチュリーは聞かなかったことにして魔法書を再び読み始め、3人がご飯を食べ終わるのを待って一緒に教室へ向かう。
その廊下を歩いているとき、グリフィンドールの制服を着た、小柄な少年がカメラをしっかり持ってハリーに興奮した様子で話しかけてきた。
「あの、すみません!ハリー・ポッターさんですか?」
「え?う、うん。そうだけど...」
パシャ
「一緒に写真撮ってもらっていいですか?サインもください」
いや、もう撮ってたやん...
「僕もグリフィンドールです!あなたのこと本でたくさん読んだし、みんなにも聞きました!同じ部屋の友達が写真をちゃんと処理したら動くようになると教えてくれたんです」
パチュリーはハリーに熱くなって興奮しているコリンに少し引き気味になっていた。コリンの勢いに押されて少しのけぞっているハリーに少し同情もしていた。
そして...私も少し揶揄うことにした。
「あら、サイン入りの写真ですって。ハリー、貴方ならロックハートを超える有名人になれるわよ。お祝いはこあの特上料理で決定ね」
「パチュリー、今は揶揄わないでくれ。できれば助けてほしんだけど。絶対ややこしいことになるから...」
「ポッター。サイン入りの写真だって?どうだい、有名人になった気分は?」
ニタニタしながらドラコが近づいてきた。
「ほら!ややこしくなったじゃないか!」
私はそんなハリーの悲痛な叫びを無視してドラコと話すことにした。
「あら、ドラコ。ダイアゴン横丁以来ね」
「やぁ、パチュリー。君も元気そうで何よりだ。その穢れた血と一緒にいることがなくなったら完璧だな。...っと、それよりもみんな並べよ。ポッターがサイン入りの写真を配っているそうだ!」
「僕はそんなことしてないぞマルフォイ!黙れ!」
「いったい何事かな?サイン入りの写真を配っているのは誰かな?当然君だね。ハリーまた会ったね!」
「ハリー今度宿題うつさせてあげるから許してね。私は先に教室に向かっているわ」
ハリーとドラコが喧嘩しそうになって、ロンが杖を取り出した時にロックハートが近づいてきてさらにややこしくなった。
ロックハートの登場によってパチュリーは顔を顰めて、ハリー達から離れることにした。
パチュリーはハリー達よりも一足先に教室に入り、一番後ろの端の席に座った。
そのあとぞろぞろと生徒が入ってきて、前から詰めて座っていく。
授業開始ぎりぎりになってハリー達3人が教室に入って来た。ハリー達も一番後ろの席のパチュリーを見つけ、そばに座る。パチュリーの隣から、ロン、ハリー、ハーマイオニーの順だ。
そしてロックハートが入ってくる。
「私だ」
無駄に高い値段の小説の表紙と同じようにウィンクをする。
「ギルデロイ・ロックハート。勲三等マーリン勲章、闇の魔術に対する防衛術連盟名誉会員、そして『週刊魔女』5回連続『チャーミング・スマイル賞』受賞。もっとも私はそんな話をするつもりではありませんよ。バントンの泣き妖怪バンシーをスマイルだけで追い払ったわけじゃありませんしね!」
...今のはギャグなのだろうか。
ロックハートはみんなが笑うのを待っていたようだったが、ハーマイオニーやラベンダーのようなごく一部の生徒が嬉しそうに口元を手で覆っただけでほとんどはぽかんと口を開けたり、苦笑いをしているだけだった。
「全員が私の本を全巻揃えたようだね。たいへんよろしい。今日は最初にちょっとミニテストをやろうと思います。ですが心配ご無用! 君たちが私の本をどれぐらい読んでいるか、そしてどのぐらい覚えているかをチェックするだけですからね」
ロックハート先生はニコリと笑うとテスト用紙を配り始める。
私はそのテスト用紙の内容に目を通した時、自分の正気を疑った。次にロックハートが配る紙を間違えたのかと思った。
何故ならテストの問題が、闇の魔術に対する防衛術に何の関係もない、ロックハート自身の問題だったからだ。
54問。制限時間は30分。
コイツはふざけているのだろうか。
パチュリーはまともに解くのがあほらしく思い、一問も解かずに魔法書を読み始める。
当然ロックハートには私がテストを解いているように見える幻影魔法を掛けて。
隣に座っているロンや、ハリーから尊敬と羨望の混ざった視線を向けられたので2人の前に魔法で文字を出す。
”ロックハートには私達3人が真面目にテストを解いているように見える幻影を掛けたわ。好きなことをしなさい”
それを見て2人はニヤリと笑い、それぞれのしたいことをし始める。
30分経過して、ロックハートはテストペーパーを全て回収し終えて全員の前でバラバラとめくった。
それと同時にパチュリーは幻影魔法を解く。
「おやおや、私の好きな色がライラック色だということを殆ど誰も覚えていないようですね。それと『狼男との大いなる山歩き』の第12章ではっきり書いているように、私の誕生日の理想的なプレゼントは魔法界と非魔法界のハーモニーです。もっとも、オグデンのオールド・ファイア・ウィスキーの大瓶でもお断りはしませんよ!」
ロックハートはバチコンとウインクをする。
クラスの男子の大半は付き合ってられないといった顔で頭を抱えていた。
逆にハーマイオニーを含む一部の女子はうっとりとした顔でロックハートを見る。
「そしてハーマイオニー・グレンジャーは満点です!よく私の本を読んでいるようですね。ミス・グレンジャーは何処にいますか?」
ハーマイオニーは幸せいっぱいといった様子で手を挙げる。
「すばらしい!まったく素晴らしい!グリフィンドールに10点あげましょう」
多くのグリフィンドールの生徒はやっぱりといった風にハーマイオニーを見る。さすがは学年次席だと。
しかし、このざわめきもすぐに収まる。
ロックハートが再び不機嫌そうに話し始めたからである。
「このクラスに2人、1問も正解していない生徒がいます。これはまだいいでしょう。さらに1人だけ、1問も正解していないどころか字を書いてすらいない。何故、白紙なのかな?ミス・ノーレッジ?」
それを聞いてほとんどの生徒がバッとパチュリーのほうを見た。
今に至るまで、パチュリーはすべてのテストで満点もしくはそれ以上の点数をたたき出しており、先生も驚かせるような知識を持っている。さらに、実技においても誰もかなわない。杖を使わないで魔法を発動できるほどなのだ。そんな彼女が満点ではない、それも0点なんて取ったのだからその反応ももっともだろう。
そんなパチュリーはロックハートを冷たい目で一瞥すると何も言わずに再び魔法書を読み始める。
「ミス・ノーレッジ!聞いているのですか」
ロックハートはわめく。
パチュリーはめんどくさそうに答える。
「うるさいわね。このテストを真面目に解く必要がないからに決まっているじゃない」
「は?それはいったいどういう...」
まさかそんなことを言われるとは思っていなかったロックハートはパチュリーを不快にさせる笑みを浮かべるのをやめ、口を開けて固まってしまう。
「聞こえなかったのかしら。あなたのくだらない好みなんかより、トロールの生態について学んだほうが有意義だと言ったのよ」
「...」
今度こそロックハートは金縛りの呪文にかかったみたいに動かなくなった。
ほとんどの生徒は、口を手で押さえて必死に笑いをこらえている。
「もう一度言うわよ。あなたよりもトロールのほうがまだ興味あるといったのよ」
「!!?君は優秀だと聞いていたんだがね。どうやら見込み違いだったようだ。君には失望しましたよ。グリフィンドールから20点減点です!...では授業をします」
ロックハートはそう言いながらかがんで机の下から何か取り出そうとしているが、生徒は全員パチュリーを向いたままだった。
固まっているもの。必死に笑いをこらえているもの。よくやったと賞賛しているもの。そして、ハーマイオニーやラベンダーのように怒って凝視しているもの。
そしてロックハートが何やら覆いのかかった籠を机の上にドンと置いたときに全員がハッとして前を向いた。
「さあ、気を付けて!魔法界の中で最も穢れた生物と戦う術を授けるのが、私の役目なのです!この教室で君たちは、これまで以上に恐ろしい目に遭うことになるでしょう。ただし、私がここにいるかぎり、何物も君たちに危害を加えることはないと思いたまえ。落ち着いているよう、それだけはお願いしておきましょう...どうか、叫ばないようにお願いしたい。連中を怒らせてしまうかもしれないのでね」
そして散々もったいぶって覆いを外す。出てきたのは...
青色で、とんがった頭のうるさく鳴く小さなピクシー小妖精がたくさんいた。ロックハートはそれらを見せる様にしながら芝居染みた声を出した。
「捕らえたばかりのコーンウォール地方のピクシー小妖精!...どうしたのかね」
ほとんどの生徒はぽかんと口を開けている。無理もない。あれだけもったいぶった挙句出てきたのがタチの悪い悪戯しかできない妖精だったのだ。対処さえ間違えなければ何の問題にもならないような。
「あの、こいつらがそんなに危険なんですか?」
シェーマス・フィネガンは笑いを堪えるのに必死だという表情で聞いた。
「思い込みはいけません!連中は厄介な小悪魔になりえますぞ」
そう言ったとたん、パチュリーは頭に血が上っていくのを実感した。
この、ゴミに等しいような妖精と自分の唯一の家族ともいえるこあを同列にされたのだ。無理もない。
ロンは隣から殺気のような何かを感じて顔を青くしながらパチュリーとの距離を置く。
それを見てハリーは一瞬不思議そうな顔をしたもののロンの奥に座っているパチュリーを見てぎょっとする。
「さあ、それでは...君たちがピクシーをどう対処するかやってみましょう!」
何を考えたのかロックハート先生は突然籠の扉を開け放った。次の瞬間、ロケットのようにピクシー妖精が教室中に飛び立つ。
途端にピクシー小妖精達は教室で暴れまわる。ネビルをシャンデリアに引っ掛ける。羊皮紙を破く。インクを投げて巻き散らかす。羽ペンをへし折る。それはもう、好き放題暴れている。
ロックハートは、まったく仕方ないとばかりに金縛り呪文を掛ける。しかし、素早く動き回っている妖精には当たらず、逆に杖を取られて窓から投げ捨てられてしまった。就業の時間になると、生徒は我先にと教室から逃げ出す。パチュリーのかけた認識阻害の魔法によって一切の被害のなかった4人はゆっくりと外に出ようとしたところロックハートに呼び止められる。
「さぁ、その4人にお願いしよう。その辺に残っているピクシーの後片付けをしておきなさい」
そう言い残して生徒たちと一緒に逃げ出してしまった。
ロンは肩をすくめて
「やってられないぜ。どう思うよ?ハリー、パチュリー」
「僕も耳を疑うよ」
「...」
「パチュリー?...パチュリー!?」
パチュリーから返事がなかったのでパチュリーのほうを向いた3人はパチュリーを見て驚く。こめかみに青筋を浮かべて全身からとてつもない覇気を纏っているパチュリーがいたからだ。
「2度とこんな授業受けるか!日符”ロイヤルフレア”」
ゾッとするほど低い声でそう言うとこの教室にロックハートが持ち込んだものと、ピクシー妖精に正確に弾幕を浴びせ、それらを灰も残さず燃やし尽くす。教室自体には全くの影響がなかったのはさすがというべきだろうか。パチュリーは教室の隅でガタガタ震えている3人のことなど頭にないのか、そのまま部屋から出て行ってしまう。そんなパチュリーの一連の行動を見ていた3人とシャンデリアにつるされたままのネビルはパチュリーを怒らせないと決心した瞬間でもあった。