「ほらほら、リリィ! 何ゆっくりしてるのよ、置いていくわよ~!」
陽の光が燦々とふりそそぐ草原を、二人の女性が歩いている。
「もう、シルフィが速いんだってばぁ」
リリィ、と呼ばれた女性はローブに身を包み、立派な杖で大地を突きながら前進している。
「んなこと言ったって、アタシはシーフなんだから速いのはトーゼンでしょ、トーゼン!」
ボディラインが強調されるようなピッチリスーツに身を包んだシルフィが、短刀を手で回して余裕を見せる。
「いっつもそうやって、意地悪言うんだから!」
「だーいじょうぶだってば! リリィが襲われないように、アタシが先に斥候してるんだよ?」
「はい、はい」
おっとりとした顔を崩さず、リリィが返事を返す。
(んもう、いつもそうやって張り切っちゃうんだから……私、シルフィと並んで歩きたいのになぁ)
この二人、付き合いは子供の頃から続いておりそこそこ長い。
それ故にお互いを信用しており、頼りにしており、カバーしあって。
息がぴったり、なのはいいのだが――リリィはシルフィに対し、少々踏み込んだ感情を持っているようであった。
キリッとした目つきの幼馴染が、周囲を警戒している。
頑張り屋で、ムードメーカーで、いつも優しくしてくれて。
(でもでも、私、僧侶だものね。あんまり恋愛とかしない方がいいって分かっているし、そもそも女同士なんだし、うーん……)
こういう時、恋という感情は厄介である。
下手にむき出しにしてしまえば、今の関係が壊れてしまうかもしれず。
かと言って、こうやって抱え込んでしまうとそれはそれで悶々としてしまい。
「おーい? リリィ、大丈夫?」
「あ、わ、きゃっ!?」
近くで声がしたと思った刹那、愛しの存在の顔が間近に見える。
「どうしたの? 一休みでもする?」
「あ、あー、ごめんね、今日ちょっと、疲れてるのかも、私……」
「仕方ないんじゃなーい? 昨日あのやばい洞窟抜けて、それから町に寄れてないじゃん? リリィ、ベッドで寝ないと調子戻らないもんねぇ」
軽口を叩きながら、シルフィが手早く休息用のシートを広げていく。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「うんうん、確か後少しで町につくんでしょ? 今日中に着いちゃえばいいんだし、せーっかくいい天気なんだし、慌てない、慌てない!」
固定したシートに、ダイブするように横になるシルフィ。
その横にそっと、リリィは腰掛けて。
「ええっと、おやつおやつ……」
ザックから物を取り出そうとゴソゴソしていると、ふと相方の手が目に入る。
完全にリラックスして伸びをしている彼女の手は、何だって分解できそうなくらい細く、キレイで、しなやかで。
(あー……間違って触ったってことにしちゃえば、いいかしら……)
禁欲第一、とは言え人間でなので限界はある。
大好物のおやつを取り出してシートの上に置きつつ、気づかれないように、そうっと手を伸ばし……
「あ、なんかいるね」
後僅かで触れ合うかと思われた矢先、シルフィが大声を上げて起き上がる。
「ひゃっ、えっ!?」
「あ、ん、ごめんごめん。モンスターの声がしてさぁ。あー、モンスターって言っても、大したことないと思うけど、ね!」
手頃な石を拾い上げ、スナップを効かせて放り投げる。
「ゲコッ」
「ほらいた、なんだなんだ~?」
茂みから姿を見せたのは、二足歩行のカエルモンスター。
大きく丸いお腹を揺らし、ノシノシと歩き。
ぎょろりとした目を動かし、喉を鳴らしながら舌を動かしている。
「デブガエルじゃん、この辺にもいんだね」
「シルフィ、正式名称はフロッガーですよ」
「いいじゃん、モンスターの名前なんてさぁ……あいつ、ただのカエルだから良い物持ってないんだよねー。まあ、ちょっとからかって追い払っちゃおっかな」
その辺の枝を手に取り、シルフィが近づいていく。
身長1m足らずのフロッガーがゲコゲコ鳴きながら、シルフィに飛びかかる。
「ほーらほら、そんなトロい動きじゃ当たるものも当たらないわよーだ!」
つん、つん、と背中のイボを軽くつついてすぐ離れ。
「ゲコッ、ゲッコォー!」
バカにされているとわかったのか、フロッガーは声を荒らげてまたもや飛びかかる。
「あはは、無理だってば! あんたはおデブカエルちゃん、アタシはスリムなシーフ! 相手にならないわよっと!」
手をひらひらさせ、楽しそうに笑い。
「もう、シルフィ! かわいそうでしょ!」
「ごめん、ごめん! でも、身軽さにこんな差があるのに必死だからさ! その体だとどんな感じなのか、なってみたい気もするけどねー!」
シルフィが余裕を見せながら喋り、足を地面につけた時。
ポウッと、足元が淡く輝き始める。
「ん、なんだろこれ?」
「あら、あの光は……?」
シルフィが下を見て、リリィが首を傾げ。
その次の瞬間、異変がシルフィを襲ったのである!
「むぐっ、なんだろ、アタシ、なんか、出る、んっ!?」
突然吐き気を催したシルフィの口から、大きな光が溢れ出す。
たちまち彼女の目から生気が抜け、力が抜け。
「ゲ、ゲコ?」
その光はものすごい勢いで、フロッガーの口に入り込む。
「ゲロォオオオオ!?」
吐き出そうとする間もなく、ぬるりとそれは体内に飲み込まれ。
「ゲッ、コッ……」
ふらりとバランスを崩して倒れていくフロッガーが、ゲップのような音とともに小さな光を吐き出した。
「え、ちょっと、まさか、待って待って!?」
リリィが大慌てで立ち上がるが……その間に、倒れていたシルフィの口に一口サイズの光が吸い込まれていってしまったのだ。
「し、シルフィ!?」
リリィが身体を揺すると、大きく身体がビクンと震え。
目を開けた彼女が最初に発した言葉は……
「ゲッコォ~?」
「え、え、え、そ、そんなぁ!?」
目がフロッガーのようになっており、ぼんやりした表情のせいできりりとした顔立ちが台無しだ。
「え、まさか、うん、あれ、願いのパネルよね!?」
願いのパネル。
何者かが踏んだ時、その者の願いを叶えてくれる……という、一見良さそうなパネル。
「ゲコぉ? ゲコ、ゲコ?」
シルフィが大股で起き上がり、手足をバタつかせてキョトンとしている。
「ゲッ、ゲッ、ッコォオオオオオ~~~~!?!?」
その後ろから響いてきたのは……フロッガーの絶叫。
嫌な予感が的中したのか、リリィの顔から血の気が引いていく。
振り返ると、ぬちょぬちょの手で自分の顔を触っているフロッガー。
なぜだか、その目はどこか人間の女性のように見え……
「え、ええっと、もしかして、シルフィ!?」
「ゲッ、ゲコッ、ゲコッ!」
フロッガーが舌を出したまま、何度も大きく首を縦に振る。
「や、やっぱり……!」
「ゲ、コ!?」
どういうことなのか、と言わんばかりにフロッガーが顔を近づける。
思わず顔をしかめそうになりつつ、リリィが説明を続けた。
「ええっと、シルフィはさっき、願いのパネルを踏んじゃったの。それで、シルフィの願いが叶っちゃったみたいなの」
「ゲコぉっ!? ゲコッ、ゲコゲコ! ゲコぉ~!?!?」
フロッガーがお腹を触り、その大きさに驚いたように下を向き、すぐにリリィを見て大声を上げ。
「うん、うん、シルフィはこんなの、願ってないのは分かるんだけど……ほら、言っちゃったでしょ? 『その体だとどんな感じなのか、なってみたい気もするけどね』って」
「ゲロッ」
しまった、と言わんばかりに口を抑えるフロッガー。
その弾みに喉が膨らみ、鳴き声が漏れ。
「……叶っちゃって、その代わりに……そのフロッガーが、シルフィの体になっちゃったの」
「ゲッ、ゲッ、ゲコぉ!?」
「げこぉ~?」
女性の可愛らしい声で鳴きながら、モンスター然とした歩き方を平気でしているシルフィの体。
「どうしよう、願いのパネルって発動間隔、不定期でよく分からないから……」
「げぇ、ろぉおおおおお!!!」
フロッガーの肉体になってしまったシルフィは、流石にパニックになってしまったようだ。
大急ぎで自分の体に近づこう……とするのだが、カエル足をうまく使えないわ、重いお腹がやたらと揺れるわ。
「げこぉ、こぉおお……」
あまりに情けない性能に、嘆きの鳴き声が出てしまう。
「げっこぉ?」
一方、何も理解できていないシルフィの身体のフロッガーは自分に似た――というか、元自分なのだが――を見つけ、人の体にも関わらずカエル座りをして見つめだす。
「げっ、げこぉ!!!」
何かを訴えながら、フロッガーが思い切り飛びかかる。
いや、飛びかかったつもりなのだろう。
慣れない足をうまく使えず、見当違いの跳び方をしてしまい。
偶然にも、しゃがんでいた自分自身の豊満な胸に頭から突っ込んでしまったのである!
「げっこぉん!?」
甘い声の鳴き声とともに、シルフィが身体を起こす。
「シルフィ、大丈夫!?」
リリィが駆け寄り、フロッガーを起こし。
「げこっ、だいじょーぶ、げこっ、げこ?」
「え?」
突然シルフィが言葉のようなものを発し、リリィは目を丸くして。
「げこっ、おいら シルフィ? げこっ」
気のせいだろうか、大股に開いている足も少し閉まってきているような……
「え、え、あなたはシルフィじゃなくて……」
「げこっ、なんか へん、げこっ。ここ、おされて、きもち、よかった、げこっ。もっと、もっと、げこっ、げこっ」
妙なことを言いながら、シルフィが自らの胸を手で押し始める。
片手で横から何度か押して、そのうち左右から挟むように押し出して。
「あ、あ、気持ち、いい、おいら、オイラ、これ、胸、おっぱい、好き、すき、げこぉ♡」
「ゲ、ゲコぉ!?」
「嘘っ、どうして!? フロッガーの魂のはずなのに、喋って!?」
リリィの発言に、シルフィは見たこともない笑みを浮かべてみせる。
「おっぱい、おっぱい、気持ちいい。気持ちよく、ゲコッ、なると、なんだか、オイラ、シルフィってなってきて、げこっ、んっ、あ~んっ、うっふぅ~ん、オイラ、シーフのシルフィ、げっこぉ~♡」
なんということだろう!
肉体の快感に連動して、魂が肉体と同調し始めているのだ!
シーフであるシルフィの脳に保存された記憶を……ただのカエルモンスター・フロッガーが読み取り、利用し始めているのだ!
「や、やめて!」
「やめないゲコぉ。だってぇ、オイラはなりたくてこの体になったわけじゃないのよ? アタシ……元々のシルフィが、オイラ……フロッガーになりたいって言ったから、オイラは仕方なーく、このおっぱい女のアタシになったんだげこぉ♡♡♡」
挑発するようにニヤニヤしつつ、フロッガーを見下ろす。
「というわけで、どうゲコぉ? でっぷりお腹の気持ち悪ーいオイラの身体、便利ゲコぉ~? げこ、げこげこ!」
スタスタと歩いて近寄り、わざと同じポーズで立ち直し。
「げこ、げっこぉー!!!」
「あはは、何言ってるか分からないわよ? アタシ、に・ん・げ・んだからぁ、デブガエルの鳴き声なんか、わっかんないゲコぉ♡」
「やめてって、言ってるでしょう!?」
そうリリィが叫ぶものの、いかんせん相手の肉体は愛しの相手。
下手に乱暴して、怪我をさせてもいけない。いけない、のだが……
「げこ、げこぉ!!!」
顔を真っ赤にしたフロッガーが大ジャンプするも、シルフィはいとも簡単に避けてみせる。
「うっふふ! じゃあ、ゲームをするゲコ! オイラを捕まえられたら、この身体を返してもいいわよ? でもぉ、失敗したら……罰ゲームだゲコぉ♡」
「ちょ、ちょっと、倒すだなんて言わないでよね!?」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ! オイラも流石に、そんな事したら夢見が悪いもんね、うふふ!」
一人称以外はほぼ完璧にシルフィの喋り方だ。
リリィは言い返そうとするが、その言い方のせいか……うまく言い返せなくなる。
「はーい、アタシの身体はここだげこぉ~♡ うっふーん、今、アタシの身体はおでぶがえるのオイラが動かしているんだげこぉ~!」
舌を出しながら笑い、わざと大股でしゃがみ込み。
「ゲッ、コォオオオ!」
挑発に乗り、全力でジャンプするフロッガー。
今まで一番の勢いで跳んだそれの手が、彼女に……
「はい、ダメ~!」
触れるかと思われた瞬間、シルフィがしゃがんでしまう。
「ゲコォオオ!?」
派手に転がり、お腹を出してひっくり返ってしまい。
「じゃあ、罰ゲームだゲコぉ♡ お腹、なーでなで!」
シルフィが優しく、数度大きな腹を撫でてやる。
「え?」
想像していた物とは全く違う内容に、リリィは素っ頓狂な声を上げ。
「ゲッ、こぉおおお……♡」
「へへへ、やっぱりそうだ! 気持ちいいわよねぇ、お・な・か!」
「な、何をしているの?」
「ん~? お腹、撫でてあげただけゲコ!」
「そ、それは見たら分かるけど」
「オイラ、お腹をナデナデすると気持ちよくなるんだゲコ。だから、これが罰ゲームなんだゲコ♡」
「ど、どういう……?」
「んもう、リリィったら鈍いんだからぁ。実はアタシがリリィの事、大好きでたまらないのも、気づいてないんじゃないのぉ?」
「えっ、ひゃっ!?」
突然の告白に、うろたえうろたえ。
「うふふ、今のはオイラじゃなくて、アタイの頭の中にちゃ~んとある記憶だゲコ。さて問題ゲコ。オイラはどうやって、アタシになったんでしょう、か!」
「え? 確か……胸を、触って?」
「胸を触ると、どうなるゲコ?」
「気持ちよく……あっ!?」
やっと気づき、リリィはフロッガーを見る。
「げっ、コッ、ゲコッ、ゲコぉ、ぉおお……!?」
右手で頭を抑えつつ、左手でお腹をゆっくりとさすり。
「うふふ、わかったゲコ? アタシの気持ちよさでオイラがアタシになるなら、オイラの身体で気持ちよくなると……アタシは、オイラになっていくんだゲコぉ♡ 今、我慢できなくって自分でお腹撫でちゃってるんだゲコ♡ そーすると、どんどん『アタシ』のはずなのに……『オイラ』の記憶が入ってきちゃうんだゲコ。うふ、うふふ♡ オイラの頭は悪いから、『アタシ』は完全に『オイラ』に上書きされちゃうかもね♡」
「や、やめさせて!」
「と言っても、オイラは教えただけゲコ。やってるのは、オイラになっていってるアタシだから、オイラ知らないわ~。でも、あのアタシがオイラになっちゃえば、もうオイラがずっとアタシでいられるんだゲコ♡」
「シルフィ、負けないで! 必ず、戻してあげるから!」
リリィがフロッガーの両手を掴み、大声で呼びかける。
「げっ、こっ、ゲコぉ……!」
徐々にフロッガーの記憶に飲まれつつあったシルフィの魂が、なんとか調子を取り戻し。
「んもう、別にいいじゃないのよ~。ほらほら、リリィもアタシのこと、好きなんでしょ? オイラのままでいさせてくれたら、今日から毎日一緒に寝てあげるゲコよぉ?」
「え、え、え、え、え……」
ストレートに指摘され、顔が赤くなり。
「隠さなくてもいいのよぉ? さっきだって、アタシの手を握ろうとしてなかった? バレてないって、思ってた~?」
「え、あ、う、そ、その……」
「かわいい、キスしちゃう」
そっと、シルフィの唇が重なってくる。
「あ、わ、わ、わ、わ」
中身は違うはずなのに、それは分かっているのに、でも、姿も喋り方もそのもので。
うっかり心がゆらぎそうになるリリィ、だったのだが……
(あっ、願いのパネル……光り出してる!?)
早々に復帰したパネルの光が、リリィの目に入る。
目の前にいるシルフィは自分の理想の事を言ってくれて、それはとても嬉しくて。
それでも、中にいるのは誰とも知らないフロッガーで……!
「シ、シルフィ! 跳びついて、戻りたいって、本気で叫んで!!!」
目をつむり、全力でシルフィを突き飛ばす。
「げ、げこぉ、げこぉ、げこぉ!!!!」
その叫びに呼応したかのように響く鳴き声。
リリィが恐る恐る目を開けた時見えたのは……
カエルのように目を大きく開いた顔で驚きながら、フロッガーとともにパネルに倒れ込む幼馴染の見慣れた姿であった。
それは、次の瞬間パネルの光で隠されてしまい……
「えっ、さっきと――」
あ、アタシ、どうなってるゲコ!?
わぁ、だいぶオイラになっちゃったのね!
あ、あ、あんた! アタシの身体、返すゲコ!
嫌だもぉ~ん、オイラは「返したくない」って呟いたゲコ!
アタシは「自分の体に戻りたい」って言ったんだゲコ!
イヤよぉ、オイラは今日から、リリィとイチャイチャ生活始めちゃうのよぉ♡
や、やめるゲコ、アタシだって、恥ずかしくってなかなか言い出せなかったのにぃ!
うふふ、じゃあますますちょうどいいじゃない! もう全部、オイラに任せちゃうゲコ!
そんな訳にはいかないわよ、アタシはシルフィ、人間なんだゲコ!
ゲココ、オイラもシルフィ、人間だゲコ♡
何いってるのよ、あんたはでぶがえるだゲコ!
そんな事言うあんたがでぶがえる、フロッガーでしょ?
違うゲコ! オイラはどこからどう見ても、シルフィよ!
うふふ、変なこと言っちゃって! アタシ、すっごくぬめぬめしてるじゃない?
それは、アタシがフロッガーだからよ!
オイラ、シルフィだゲコ!
ん、あれ、なんか変じゃないゲコ?
ゲコ? アタシはそうは思わないんだけど。
待つゲコ、アタシってオイラじゃないゲコ?
何言ってるのよ、オイラはフロッガーだって言ってるじゃない。
え? テキトー言わないでよ、オイラゲコ!
アタシ、確かにアタシよ。だって、胸、気持ちいいもの。
お腹が気持ちいいゲコ!
あっ、あれっ、なんか、お腹、確かに……
えっ、あっ、胸、おっぱい、なんだか、気持ち、いいっ♡
あっ、あっ、お腹、お腹気持ちよくって、オイラ、オイラの記憶が入ってくるゲコぉ♡
おっぱい、あーっ、アタシに、アタシ、あーっ、ゲコッ、ゲコッ♡♡♡
ゲコッ、げっこぉ~ん、オイラになったアタシのオイラの記憶の中のアタシの、オイラ、あれ、あれれ?
あっ、やっ、なんだろう、アタシ、知らないアタシが、オイラって、アタシ。
わ、わかったゲコぉ、今、お互いにぃ、お互いになっちゃってるゲコぉ、だから、アタシにオイラが入ってオイラにアタシが入って、
オイラが入ったアタシがオイラに入って、アタシが入ったオイラがオイラに入って、あれ、あれれ、じゃあ、今、アタシって、だあれ?
オ、オイラだと思うけど、アタシじゃない!?
もう、どうするゲコ!? アタシがオイラなんだから、そっちはアタシなんだゲコ!?
そんな事言っても、オイラはオイラなんだから、アタシよ! 証拠に、リリィのこと、だ~いすきだもの!
ちょっと、リリィが好きなのはアタシなんだゲコ! アタシには、渡さないゲコよ!
やだやだ、リリィもアタシも、アタシのものよ!
オイラだって、リリィとオイラはアタシのものだもの!
あれ、じゃあ、オイラ、アタシ、アタシの、オイラのもの?
うん、そうだゲコ! アタシ、このままが良いゲコ! でも、オイラはアタシだから、戻ってるのよ!
あっ、あっ、分かっちゃったわぁ~、オイラ、アタシ、一緒に、なってるんだゲコ~♡
えっ、わぁ、本当だゲコぉ♡ 返さないし、元に戻れたし、リリィはオイラとアタシのものだしぃ♡
そうだゲコぉ、オイラはアタシなんだからぁ、一緒なんだから、リリィはアタシの独り占めなんだゲコぉ♡
ゲコ、ゲコッ、最高だゲコぉ♡ お腹気持ちいいし、おっぱい気持ちいいしぃ♡
よくわからないけどぉ、アタシがオイラになっちゃってるの、気持ちいいわぁ♡
うん、うん、オイラってアタシなのよ!
わかったゲコ、アタシはおいらなんだゲコぉ♡
じゃあ、じゃあ、同じなんだからぁ、同じなんだゲコ、もう、もう、一緒になっちゃうゲコ、一緒になっちゃいたいわ♡
オイラ、アタシ、同じ身体と、心に、なり、まぁ~す♡♡♡
あ、あ、あ、もう、アタシで、オイラで、シーフで、フロッガー、一緒一緒同じ同じ、どっちもどっちで違いなんて無くて、
心が、重なって、あぁああああああ~~~~~♡♡♡♡♡
「――違う!?」
「願望成就合体、フロッガーとシルフィでシルフロッガーだげこぉ~~~~ん♡♡♡」
リリィが喋りきったと同時に、光から異様な存在が姿を見せる。
ボサボサショートヘア、ぴっちりとしたスーツ。
確かにそれは、シルフィのものなのだが……
「えっ!?」
「げここ、いい感じゲコぉ~♡」
ヌメッとした手が、大きな胸を、でっぷりとした腹をスーツ越しに撫でている。
「おっぱいおっぱい、お腹お腹、オイラ、アタシになって、アタシ、オイラになって、もう一緒、一緒、一緒に気持ちいいんだわぁ~♡」
喉を鳴らし、嬉しそうにゲコゲコ鳴き。
顔はもはやフロッガーそのものなのだが……片目がシルフィの物になっているせいで、非常に滑稽だ。
「シ、シルフィ!?」
リリィが状況を理解できず、大声を出す。
「あっ、リリィ♡ 見てみて、願いが叶って、合体、合体、大成功、だゲコぉ~♡ わ、太ももも、アタシにオイラで、ムッチムチぃ!」
強靭になった脚力で、身長に近い高さで飛び跳ねてみせる。
その度に胸が揺れ、腹が揺れ。
「ね、願いって、元に戻るんじゃなかったの!?」
「えっ、何言ってるの? 元の体にも、戻ったゲコよ?」
平然とした表情――とは言え、ほぼフロッガーのカエル顔なのだが――でシルフロッガーが返す。
「ぜ、全然違うじゃない!?」
「それは仕方なかったのよ。アタシ……じゃないか、オイラはシルフィの身体のままでいたいって思っちゃったのよ。アタシはシルフィの身体に戻ろうとしたんだゲコ。そうしたら……じゃーん、体も心もくっついちゃったんだゲコ! オイラの身体だけど、アタシの身体! アタシの心も、オイラの心も一つになってるからお互い、元の体にいるようなものなんだゲコ~♡♡♡ ねぇ、ねぇ、リリィは……アタシ、嫌い?」
「い、いきなりそんな事聞くの!?」
「えへ、ゲココ、だってぇ、アタシもオイラもリリィだ~いすきで、そのままくっついちゃったでしょ? 好き、好き、もう、オイラ、アタシ、あふれちゃうくら~い、リリィが大好きなんだゲコぉ~!」
リリィが反応するより早く、融合体が跳びついてくる。
フロッガーの時とは違い、シルフィの素早さが合わさっている彼女の速度は素晴らしいものがあった。
とは言え、お腹が出ているせいで少し鈍重ではあるのだが。
「ねぇ、ねぇ、好きゲコ? 好きでしょ?」
「え、えっと、シルフィは、好きだけど……」
「ひっどぉーい! さっき、アタシのオイラにキスされた時、まんざらでもなさそうだったゲコ!」
自分で自分に嫉妬し、口をとがらせて抗議してくる。
とは言え、人の髪が生えたフロッガー人間であることは変わりがなく……
「そ、そうだけど」
こうなると、なんとか元に戻すしか方法はない。
当然、願いのパネルを頼るしかない状況。
「あー、よそ見してる! 誤魔化しちゃ、いやゲコー!」
横に大きくなってしまったシルフロッガーがずいっと近づいてきて、腹で押されて。
「あ、ごめん、シルフィ……」
「んもう、アタシはオイラで、シルフロッガーになったんだゲコ。シルフロッガーって呼んでくれないと、寂しいわよ」
「う、うん、うん」
猛烈なアタックに、リリィはされるがままだ。
「ねぇ、ねぇ、アタシ、リリィとずーっと一緒にいたいゲコ……ねぇ、リリィ。リリィは、オイラ、アタシと……ずっと一緒にいてくれるゲコ?」
「あ、う、うん。私、シルフィの事、大切だから。どんな姿になったって、私はシルフィと一緒だよ」
そこだけは、自信を持てる。
リリィがしっかりと、その発言を言い切ったときだった。
足元が、ポウッと光り出し……
「ラブラブ三体合体、私とアタシとオイラが合体、リリィシルフィフロッガーが一つになって、リリルフロッガーになっちゃったんだげっこぉおおおおおおんんん♡♡♡♡♡」
三体合体することで、リリィの願い通りずっと一緒になってしまった三人。
「あっ、あっ、いいっ、嬉しいっ、オイラ、アタシ、私と合体しちゃって、完全に、一緒なんだわぁ、願いが叶って、好きって気持ちが、私達の中でぐるぐるしちゃって、あは、うふふ、げっこぉ~ん♡♡♡」
ぴっちりスーツの上にローブを着た、僧侶でシーフなフロッガー人間。
完全に自分一人で幸福回路が完結しており、二人の髪型が合わさっている頭を振り乱し大喜び。
「一緒、ゲコゲコ、一緒、いっしょ、げろぉおおお~~~~ん♡♡♡ 嬉しい、嬉しい、今日からずうっと、私とアタシは、オイラと一緒にラブラブで一つで、おんなじになっちゃって、気持ちよくって、幸せになっちゃんだわぁああああ~~~~~♡♡♡」
口にした願いが元で誕生した、自分大好き融合体。
喉を鳴らし、大きな胸を触り、大きな腹を撫で。
「うふ、うふふ、町についたらぁ、一番いいホテルに泊まって、お楽しみしてぇ、美味しいもの食べてぇ、おしゃれしてぇ、あーっ、何もかも、一緒にやれるの、楽しみすぎる、げっこぉおおおおおおん♡♡♡」
長い舌を垂らし、恍惚とした顔で愛を叫ぶ。
うっとりとしつつ、滑稽で不格好な融合体は一人、合体新婚旅行を始めるのであった。
「ゲコッ、げここっ、もうずぅ~っと、このまんまでいたいゲコぉ~♡♡♡」
ムッチムチのムキムキの足で飛び跳ねながら大声で叫ぶその足元は、またしてもポウッと光っていた。
おしまい