ウォルターに並々ならぬ感情を向けるスッラ。その過去をたっぷりのコーラルで幻視したので書き留めてみた。
 こういう解釈をしたのかー程度の気持ちでご覧ください。

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独立傭兵スッラ

「餓鬼、名前は?」

 

「……」

 

 コーラルとかいう私からすれば何一つ意味が分からない……強いて言うのなら飯の種になれば良い程度の物体を使った実験をすると金払いの良い雇用主に言われて訪れたルビコンの研究室に併設された庭で精々、五歳程度の餓鬼が何もないところでしゃがんで居るのが何故か気になった。

 

「その目……そうか。お前、あの男の息子か。ふん、気狂いの元に産まれるとは不幸だな」

 

「……傭兵なのか?」

 

「そうだ。あの男の依頼を受けに来た」

 

 何を聞きたかったのか全く分からなかったが、私の答えを聞いて再び口を閉ざしてしまった餓鬼にこれ以上関わる気も起きず、手持ち無沙汰に悩んだがすぐにこいつの親がやってきたお陰ですぐに実験に移る事が出来た。

 ……もっとも、思い出すのすら億劫になるほどのふざけた実験だったが。

 

「ガッ……ァアアアアア!?!?」

 

「バイタルは乱れているが許容範囲だな……あぁ、これくらいのリスクは承知の上だ。それに傭兵は幾らでもいる……スッラ、気分は?」

 

「あぐっ……良いと……思うガッアアアア!!」

 

「返答できるぐらいの余裕はある様だな。続けろ……案ずるなこの実験が成功すればコーラルと人の共存、その第一歩となる。お前も望んでいる筈だ」

 

 私と会話をしている様でしていない会話と全身を焼き尽くす様な痛みに狂ってしまいそうになるのを必死で堪える。

 ただの勘でしかないが、ここで意識を手放す様な事をすればもう二度と私という自我が戻る事はなく、もっと大きな流れに飲み込まれる気がしていた。

 

「コーラル管理デバイス正常……スッラ、どうやらお前もコーラルに愛されているらしい」

 

 気狂いがそう言ったのを最後に私はもはや、周囲の音どころか自分があげる悲鳴すら聞こえる事はなく落ち着いた時には喉は枯れ果て……それでも嫌味の一つぐらいは言ってやろうとして──

 

────!!!!!

 

 全てが赤く染まった

 

 

 

 

 

「……は?」

 

「……喋れる様になった」

 

 次に私の意識が戻ってきた時にはあの気狂いの息子が私の体を濡れたタオルで拭いているところだった──いや、あの餓鬼こんなに大きかったか?それになんだこの違和感は。

 

「……あれから二年が経ってる。ずっと寝たきりだったお前は」

 

「なんだと」

 

 まさかこんな餓鬼に読み取られるほど私の表情に疑問が浮かび上がっていた事に驚きを隠せないが、それよりも二年だと?

 確かにあの時より餓鬼は成長しているし、そこにある電子時計が指す年数は記憶のそれと二年離れている……やってくれたなあの気狂いめ。

 

「独立傭兵にとって二年がどれほどか……知らない訳がないだろうに」

 

 名が全て、どれだけの実績を打ち立てているかが稼ぎに直結する傭兵業で二年の空白期間はあまりに絶望的過ぎる。

 恐らく既に私は死んだものと思われているか、実績など知らない者達が市場に広く蔓延っているのは容易く予想できそれが指し示す答えとは私はもはや木っ端に捨てても良い新米と同じという訳だ。

 思わず頭を抱えそうになり腕が動かし辛い事に気がついた。

 

「……無理はしない方がいい。父……お前に手術をした博士が言っていた。コーラルが脳に焼き付きていると」

 

「後遺症という訳か。ふん、いよいよ私も終わりの時か」

 

「……それは違う。強化人間はACに乗れば恩恵を得られると言っていた。だからきっとお前はまだ飛べる」

 

「驚いたな。お前、本当にあの男の息子か?他人を気遣えるとはな」

 

 この時はただの子供の……例えるのなら不器用な優しさだと思っていたがこの後、部屋にやって来た気狂いによってベッド事運ばれて用意されていたACに乗った時に真実だと知った。

 

「これは……」

 

 今までとは比べ物にならないほどに敵の動きがよく見え、そして頭で思い描いた通りにACを動かせた。

 反射神経に関しては比べるまでもなく、弾の一つ一つが迫ってくるのが見えACをどう動かせば避けられるのかそして避けた後にどの様に反撃をすれば効率よく倒せるのかその全てが一連の動きで見えるほどに全ての機能が向上していた。

 

『やはり元々AC乗りなだけはある……あぁ、そうだな。スッラ、お前が良ければルビコン周辺で仕事をして貰いたい。報酬はもちろん払おう、ただしこちらの指定するレポートを毎回提出してくれ』

 

 断られるとは微塵も思っていないいつもの態度で告げてくる気狂いに多少の苛立ちを覚えたが、実験動物的な扱いとは言え捨て駒にされる事はないだろうと考え、奴の提案を受け入れた。

 ただ、文句をつけるのなら与えられたACが作業用であり戦闘を行うにはあまり向いていないこと。

 それでも強化人間というものになった私からすれば、十分に動かせるものでむしろ私の動きについてこれず、パーツが悲鳴をあげているACを整備する技研の連中に哀れみを覚えたくらいだ。

 そして、もう一つ。

 

『スッラ。二時の方向に敵の増援だ。ACの姿は確認されていない』

 

「分かった」

 

『残弾には気をつけろ。装甲にもダメージが見受けられる。無茶な戦闘はお前の身を危険に晒すぞ』

 

「お前は私の親か何かか?ウォルター」

 

 私の専属オペレーターとして付けられたあの気狂いの息子が妙に甘い事だ。

 今の立場がこの親子にとっての実験動物に過ぎないと私は割り切っているのだが、どうにもこの息子はあの気狂いと違って私を一人の人間として扱っている。

 オペレーターとしての腕もまぁ、悪くはない。

 腐ってもあの気狂いの息子だ。頭の出来が良いのだろう。

 

「……向いてないな……」

 

「すまないスッラ。俺のミスだ」

 

 ……あれは私と気狂いの息子が組んで五回目ぐらいの仕事だったか。

 依頼としては単純で、コーラルを聞きつけたのかそれとも別の目的かルビコン周辺にやってきた何処かの船を沈めるものだ。

 事前に護衛はいないと聞いていたのだが、いざ接敵すると積んでいたのであろうACが一機飛び出してきて艦砲が飛び交う中、敵ACての戦闘を強いられどうにか撃退したものの、最後の抵抗で放たれた一撃が私のACを中破まで追い込み怪我を負ったのだ。

 

「あれは敵の我慢強さが優っただけだ。たかが、数回のオペレーターしかしてないお前に見抜けるものではない」

 

「……それでも俺は役目を果たせなかった事に変わりはない」

 

 傭兵一人が傷ついたぐらいでみっともないほどに顔を涙で濡らす奴が生意気な事を。

 お前は何食わぬ顔で傭兵を使い潰す側に居なければならない男なのに、背負わなくて良い責任を背負い心に傷を負う……不器用な男だ。

 

「悪いが傷ついて帰る訳にはいかないのでな」

 

 それから私はらしくもなく、命を最優先に戦い方を行う様になりそれが結果的に独立傭兵スッラの名を広く知らしめる事になったのは、なんという因果かと笑わざる終えない。

 しかし、この関係はさほど長く続く事はなかった。

 

 何故ならアイビスの火が起きたからだ。

 

 その頃にはあの気狂いからの仕事も少なくなり、名が売れていた事もあり別の依頼主の仕事を受けていた。

 当然、その時にはあの男と組む事はなかったのだが私が別の仕事をしている間にルビコンは燃え盛り、同時にあの男との連絡も取れなくなった。

 

「気狂いめ……狂気に呑まれたか」

 

 何はともあれ私に付けられていた首輪は無くなったものと判断し、本当の意味での独立傭兵として活動を再開し僅かにあの男に対する心配はあったが、すぐに忘れ去り戦いに明け暮れ独立傭兵としては高齢とも呼べる40を迎えた頃、ファーロン側で参加した木星戦争で私は再びあの男と再会した……オペレーターとAC乗りとしてではなく、同じAC乗りとして。

 

「驚いたなウォルター。お前がAC乗りになっているとは」

 

 図体はデカくなり、一丁前に髭を伸ばし始めた記憶の中の餓鬼とは全く結びつかない癖に、あの諦観が支配している独特な瞳だけは変わっていなかった。

 

「その声……スッラか。お前なら生きているとは思っていたが随分と老けたな」

 

「ふん。それはお前もだろう。幾つになった?」

 

「32だ。お前は」

 

「40だ。思っていたより離れていなかったな私達は」

 

「らしいな……スッラ、お前は恨んでいないのか?」

 

 あぁ……変わっていない、やはりお前は向いていないな。

 

「何の事だか分からないな。余計な事を考えて撃墜されるなよウォルター」

 

「スッラ!」

 

 私を呼び止める様な声が聞こえた気がするが、無視し私は預けてあるAC……所々パーツを取り替えてはいるがコアパーツだけはあの作業用ACと同じ愛機に乗り込み一足早く配置予定地点へと向かった。

 ……ウォルター、お前から漂う死の香り……また余計なものを背負ったのだな。

 それから何となくだが、ウォルターを避けていると木星戦争はミシガンがベイラムに付いたのをキッカケにファーロンの敗北が濃厚になり、負け戦をする気のなかった私はその時点で離脱した。

 

『独立傭兵スッラ。私に協力する気はありませんか?』

 

「何者だお前」

 

『私の名前はオールマインド。コーラルと人類の共存を願うAIです』

 

 再び訪れたルビコンで出会ったオールマインドとかいうAIから、コーラルの危険性と人類への影響、そして奴の掲げる理想コーラルリリースとやらを知った。

 何一つとして私には興味惹かれるものではなかったのだが、そんな私の様子を見て手法を変えたのかそれとも私という個人の遍歴を漁ったのかは分からないが、オールマインドはある事を口にした。

 

『貴方はどれも興味がない様ですね。では、ここは一つ貴方が気になる事を教えましょう』

 

「……」

 

『コーラルを燃やすために貴方のご友人はルビコンに戻って来ますよ。そう遠くない未来に』

 

「……ウォルターか」

 

『はい。今、彼はOVERSEERという組織に身を置き、貴方と同じ様な独立傭兵達を束ねてルビコンに訪れようとしています。コーラルに興味はなくても彼にはあるのでは?』

 

 ……コーラルを燃やす。

 つまりはアイビスの火を再び起こすという事だろう。

 

「背負わなくて良いものを背負ってばかりだなあの男は」

 

 お前とあの気狂いは別人だ。

 気狂いの罪は、お前をアイビスの火から逃した者達の遺志はお前とは無関係だろうウォルター……命のやり取りなど向いていない癖に、独立傭兵なんぞに涙を流す餓鬼の癖にまたしても背負うつもりか。

 

『ハウンズと呼ばれる独立傭兵達を指揮する彼をハンドラー・ウォルターと呼ぶそうですよスッラ』

 

 あの男に指揮される猟犬ならばさぞ、良い猟犬に育つだろう……それがどれだけ残酷な事かあの男は考えないのだろうな。

 

「オールマインド。ハンドラー・ウォルターの場所は分かるか?」

 

『はい。ですが、その代わりに』

 

「コーラルリリースの為に私を好きなだけ利用するが良い。私もお前を利用させて貰う」

 

 お前はきっと止まらないのだろうハンドラー・ウォルター。

 ならば、私がお前の猟犬を殺して殺し尽くしお前の心を殺して止めてやろう。

 

「私の復讐の為にな」

 

 それが私に出来るお前への恩返しだハンドラー・ウォルター。




勢い任せなので設定と矛盾があったらすみません!!

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