2年後もしくは106年前 作:requesting anonymity
1892年9月4日。今日もまた同室の誰より早く起きた11歳のアルバス・ダンブルドア少年は、分厚く大きな本を抱えてのっそりと寝室を後にし、グリフィンドールの談話室からも出てレイブンクロー塔へと向かっていた。
「おやまあ、ずいぶんお早いお目醒めですな」
「おはようございますサー・ニコラス」
途中廊下ですれ違ったグリフィンドールの寮憑きゴースト「ほとんど首なしニック」に挨拶し、角を曲がった先の遠くに居たピーブズを回避するべく廻り道し、通りがかった首なし騎士の集団にも挨拶し、騎士の石像をひとつひとつ磨いていたホグワーツ城の管理人グラドウィン・ムン氏に挨拶して、レイブンクロー塔の階段を登る。
「おはようございます、フォーリー先輩」
「早いね、ダンブルドアくん。おはよう」
ヘクター・フォーリーの背後でレイブンクローの談話室へ続く扉が閉まり、ダンブルドア少年はフォーリー先輩と入れ替わりにその扉の前へと進み出る。
「ホグワーツで最も優れているのはどの寮か?」
「συμφερτὴ δ' ἀρετὴ πέλει ἀνδρῶν καὶ μάλα λυγρῶν『団結こそ力である』」
鷲の頭を象ったドアノッカーの問いに即答したダンブルドア少年を、ヘクター・フォーリーが背後から褒めた。
「他の寮の生徒が、それも1年生がホメロスから引用して答えるのなんて初めて見たよ。ホント、つくづくレイブンクローに欲しかったよ、きみ」
そう言って階段を降りていったフォーリー先輩の足音に数秒耳を傾けてからレイブンクローの談話室へと入ったダンブルドア少年に、そこに居たひとりの7年生が挨拶を投げかける。
「やあアルバス。おはよう」
「おはようございます、先輩」
見覚えのない顔の知らない女生徒が聞き覚えのない声で親しげに話しかけてくるという普通なら身構える状況にも関わらず、ダンブルドア少年は平然と挨拶を返した。
そしてダンブルドア少年は、その女生徒と同じテーブルで黙々と何らか作業し続けているレイブンクローの制服を着た1年生の男の子にも声をかける。
「おはよう。僕はアルバス・ダンブルドア。きみは……それは何をしてるんだい?」
「ん?………ああ、おはよう。僕はギャリック・オリバンダー。この通り仕事中だ」
たとえそれが11歳の男の子でも、オリバンダーと名乗った人間に「仕事中」だと言われて「仕事とは何の事か」などと訊くような魔法族はイギリスにはいない。
「すごい………!杖を作、いや修理してるんだね…………誰の?」
「オミニスの杖だよ」とダンブルドア少年の質問に7年生の女生徒がオリバンダーくんの代わりに答える。
「最近『調子が悪い』らしくて、そのうちオリバンダーさんのところに持っていくつもりだったらしいんだけど昨日、このオリバンダーくんに見てもらう事にしたの」
「見たところ芯に損傷もないし、杖が『枯れた』わけでもない。問題があるのは木のほうみたいだったから一晩だけ貰った。で、今最終チェック」
そう言いながら顧客の杖と向かい合う11歳のギャリック・オリバンダーの仕事ぶりは既に、1人前の杖作りと呼んで遜色ないものだった。
「ねえギャリックくん、今話しかけて大丈夫?」
「構わない。いちばん集中力の要る作業は昨日の夜中に寝室で終わらせたから」
寝室から降りてきたアミットとアンドリュー、ドアノッカーの問題に答えて談話室へと入ってきたポピーとサチャリッサにひらひらと手を振りながら、その女生徒はギャリック・オリバンダーに質問を投げる。
「きみ昨日も言ってたけど『枯れる』ってなんだい?杖が枯れる事なんてあるの?」
その女生徒の問いは、続々と集まってきた7年生たちも皆気になっていた事だった。
そこへいつも通りキッチリと身だしなみを整えたスリザリンの7年生たちと共にレイブンクローの談話室までやってきたセバスチャンがオリバンダーに言う。
「お、やってるな。オミニスは半分寝たままどうにか談話室にこそ出てきたがそこで力尽きた。今はいつもの通り床で寝てる………まあそのうち来るだろ」
「…………みんな、いつもこんなに朝早いのか?」
オリバンダーが答えのわかりきった質問を投げ返し、同じテーブルの正面に座る女生徒が答える。
「今日は特別だよ。だって普通『杖の修理』なんて見たことないんだから」
「昨日も皆ずっと見てただろ。そんなに面白いか?…………見てるだけじゃ僕が今この杖に何してるのかも判らないだろうに」
ポピーとサチャリッサが持参した大きなバスケットに山盛りのベーグルをひとつ貰いながら、オリバンダー少年はそう言ってどこか得意げに微笑んだ。
「面白いよ」とダンブルドア少年が横から言う。
「一流の職人が仕事をしている姿ってのは、いくらでも見てられるもんだよ。……ていうか、見せてもらえてる事がちょっとびっくりだけど」
ダンブルドア少年のその言葉に、女生徒も続く。
「同感。昨日もすごく丁寧に解説してくれたけどさ。あれ、いいの?企業秘密とかなんじゃないのかい?作業風景を見て、解説から学んで、杖作りの技術を盗まれる心配とかはしないのかい?」
わらわら集まってきて同意を示す7年生たちに、オリバンダー少年は堂々と笑った。
「盗んで、それでどうする?……杖作りで『オリバンダー』と勝負するか?」
ともすれば傲慢にも聞こえかねないその言葉には、むしろ威厳さえあった。
「言えてるな。その分野でお前ら一族に敵う奴なんか居るもんか。ましてやそいつが盗み取った付け焼き刃の技術と知識で『オリバンダー』に太刀打ちできるなどと考えるほど間抜けな奴なら、尚の事、そんな奴に杖作りは務まらんだろうよ」
マルフォイがそう言うと、同じスリザリンの純血家系出身の面々を中心に笑いが起きる。そしてオリバンダー少年も同意を示すかのように笑った。
「勿論、門外不出の神髄ってヤツはあるさ。拷問されたって教えられないヤツがな。けどそういうのは言葉で説明しようとしたってできるもんじゃないし、今のこの僕に身についてるとも思えない………たぶん父さんも爺さんも同じように思ってるんだろうけど、一生勉強し続けるんだ。次もっと巧くやるため、今最高に巧くやるために」
オミニスから預かった杖を至近距離で睨み、かと思えば離してなにやら調整しを繰り返しながらオリバンダー少年は言う。
「よし、後は本人に試してもらって、それ次第だ。で……なんだっけさっきの質問。杖が枯れる事?ある。『杖が持ち主を見放す』って事が、一部の素材だと起きる」
興味津々で言葉の続きを待つダンブルドア少年の周りで、7年生たちは仲良く山盛りのベーグルを食べながら皆、同じ事を思っていた―早起きした甲斐があった、と。
「自分の杖の芯が何か覚えてるか?材は覚えてるか?『ユニコーンの毛』を芯にしてる杖を使ってる奴は?……おお、それとそれは爺さんが作った杖、そっちは父さんだな………で、ユニコーンの毛は闇の魔術に敏感なんだ。杖を使う側にとっては都合が悪い方の意味でな。芯にこれが使われてる杖で己の悪意のままに闇の魔術ばっかり使ってると、芯にしてるそのユニコーンの毛の魔法力が『枯れる』事がある。こうなったら芯を交換するんだが………それでも駄目、という場合もある」
そこで「あー、どおりで」と言った女生徒が何本か杖を取り出して机に並べた。
「森でブッ殺した密猟者の杖。これとこれは何唱えてもうんともすんとも言わない。でこれとこれとこれは異様に使いづらい。もしかしてそのへんが原因なのかい?」
オリバンダー少年がその内の1本を手に取ると、みんなのベーグルを食べ進める手が止まった。
「まずこれは、よくしなる…榛とユニコーンの毛、この杖は死んでる。お前の言い分だと元の持ち主は密猟者で、既にお前にやられて死んでるんだよな?だったらそれが原因だな………榛の杖は持ち主にとびっきり忠実なんだ。持ち主が死ぬと杖も全ての魔法力を放出して死ぬ。他の芯材なら抜き出して新しい杖の芯にすることもできるが、ユニコーンの毛だと無理だ。ほぼ確実にまるごと駄目になってるから」
談話室のみんなに注目されている事など一切気にせずにオリバンダー少年はその杖を置き、眉間にシワをよせて別の杖を手に取り、それを端から端まで鋭く睥睨した。
「ギンヨウボダイジュ………もどき。トウヒと、中の芯は何だ……?ニーズルの髭か?誰だこんな杖作ったのは……セファロポスの奴か?良い木材なのに酷い仕事だ」
そこでひとりだけ食事を続けている女生徒が、その言葉を聞いて浮かんだ疑問をオリバンダー少年に投げた。
「なんだいその『ギンヨウボダイジュもどき』って」
「ギンヨウボダイジュで作った杖を開心術士や『予見者』が使うと素晴らしい効果を発揮する……と、一般に言われている。そして見た目が大衆受けする。故に物の道理がわからん短絡的なバカど……ああいや『浮足立ったお客様方』に大人気なんだが」
オリバンダー少年は大きく溜め息をついてみせる。
「僕が生まれるより前から、もう長いことギンヨウボダイジュ材の供給を需要が上回っている。だから誇りの欠けた三流杖作り共は、適当な木材をギンヨウボダイジュっぽく塗装して『ギンヨウボダイジュの杖』として売ってる………まったく!だいたい『あの木材で作られた杖が欲しい』なんて要求する事自体ナンセンスなんだ!!」
そう言って机をドンと拳で叩いた11歳のギャリック・オリバンダーに、ダンブルドア少年が横からそーっとベーグルを差し出す。
そしてダンブルドア少年は、その場の7年生たち全員がずっと、果たして訊いていいのかそれともそんな事を訊いたら気分を害するかと悩んでいた疑問を口にした。
「ねえオリバンダーくん、聞いてて気になったんだけど。杖に意志があるのかい?」
オリバンダーくんは「当たり前だ!」と食い気味に叫び、ダンブルドア少年は反射的にビクッと怯んだ。
「杖が、持ち主を選ぶ。決してその逆じゃない。まして材料を持参、指定して『オーダーメイド』なんて馬鹿げてる。『顧客の意を汲むのも仕事の内』だとか爺さんも父さんも言うけど、杖を欲してウチに来る客の望みなんて『最高の杖をくれ』だけだろ?だったら自分に合う杖、自分を選んでくれた杖を使うのがそいつにとって1番良いんだ。何が『最高の杖』か、なんて1人ひとり違う」
そこで「じゃあさ」と切り出した女生徒が旅行カバンを取り出し、「ロコモーター」と唱えてその旅行カバンの中から何十本もの杖を机の上、オリバンダー少年の前の空中に浮かべて並べた。
「僕にとっての『最高の杖』は、どれ?」
束の間いくつかの杖を睨んだ後、「これだ」とオリバンダー少年は断言する。
「これがそうだ。見た限りこれらの全ての杖の忠誠心は現状、お前にある。つまりどれを使っても平均以上の効果が期待できるが、最も相性が良いのはこの杖だ。判ってて訊いてるだろ、お前。これは爺さんが作った杖だ」
それを聞いてニッコリ笑った女生徒はその杖を手に取り、見つめる。
「やっぱりすごいねえきみたち一家は。『オリバンダー』は。これね、僕が一昨年ホグズミードのゲボるんのお店で最初に買った杖だよ。その後すぐ武装したトロールと戦う羽目になってね。ナッちゃんとセバスチャンと、そしてなによりコイツのお陰で、どうにか勝てたんだ………いやー、あの時は焦った焦った」
「今お前ウチのゲボルド爺さんの事をなんて呼んだ????」
そこに、ネリダ・ロバーツとイメルダ・レイエスに連れられて、うつらうつらと船を漕いでいるオミニスがレイブンクローの談話室にやってきた。
「おはよ、みんな。あーちょっとまってオミニスだめ!寝ちゃ駄目!」
来るなり床で横になろうとしてイメルダに制止されているオミニスの首には、まるでマフラーか何かのように蛇がゆるく巻き付いている。
「おーい。いい加減起きろオミニス………本当につくづく朝弱いなお前」
オミニスの周りにはセバスチャンを始めとするスリザリン生たちが集い、どうにかしてゆすり起こそうと試みだしている。しかし友人たちの努力も虚しく、床に体を横たえたオミニスは未だベッドの中に居るつもりのようで、背中を丸めて目を閉じた。
〈起きろ〉
その空気が漏れ出すようなシューシュー言う声にビクリと反応したオミニスはようやく目を醒まし、ぼんやりと周囲を見回した後その声の主に返事をする。
〈……………おはよう。なんでこんな大勢集まってるんだい?〉
「ごめんオミニス。後半わかんない」
オミニスに蛇語で呼びかけて起こした女生徒は、そう言って笑った。
「ぅん?………ああ。みんなここまで連れてきてくれたのか。ありがとう」
オミニスの寝癖に杖を向けているマルフォイも、オミニスが着ている寝間着に杖を向けて制服に「変身」させたセバスチャンも、その上からローブを着せたイメルダも、それを周囲で見ているスリザリン生たちもそれを聞いて笑っている。
「さあ、杖を試してみてくれ。僕は杖を修復できたと思うが、その杖の『知覚』もそれ以外の通常の性能も、本来の持ち主が使う事より確実な『テスト』は無い。だから持って、使ってみてくれないか。何かできれば、…………高度な呪文を」
そう促すオリバンダー少年から杖を受け取ったオミニスの心の底から、古い思い出が木霊のように響いてきていた。最も暗い思い出、大嫌いな家族の声が。
「さあ、何か呪文を使ってみてくれ」とオリバンダー少年は急かす。
〈やれ、オミニス!穢らわしい豚共相手になにを躊躇ってる?〉
まるでそこにいるかのように、オミニスの頭の中をその声は反響する。
〈クルーシオ!ははは、声まで不愉快だな穢れた血は!〉
〈虫め、のたうち回ってやがる!お前もやれよオミニス!早く!〉
〈それでもゴーント家の一員か?やれ、こうやるんだ―『クルーシオ!』〉
あの時自分に向けて唱えられた「磔の呪文」と、そのあと自分が目の前のマグルに磔の呪文を唱えてしまった事による耐え難い苦痛を、オミニスは今でもハッキリと思い起こす事ができた。
〈やれ、オミニス。やるんだ〉
家族の声がオミニスの心の中に響き渡り、思い起こされた苦痛は全身を苛む。
〈嫌だね、あんな事2度とするもんか!〉
声に出してそう言ったオミニスは杖の「知覚」を借りて、周囲の友人たち1人ひとりに意識を集中させる。そうするとすぐに大嫌いな声は静まり、オミニスはそれを記憶の底へと仕舞い込んだ。
「エクス―ペクト―パトローナム!」
大きく腕を回してそう唱えたオミニスの杖の先から現れた守護霊は確かな実体を伴ってレイブンクローの談話室中を、オミニスの友人たちの頭上を優雅に通過し、オミニスの傍まで戻ってくるとその顔の横に寄り添ってから、穏やかに薄れて消えた。
〈ありがとう、オリバンダーくん。杖。ばっちりだ〉
「ごめん。何言ってんのかさっぱりわからない」
もちろん、顧客が自分の目を見て微笑みながら言う内容などひとつしかないのはオリバンダー少年も重々承知だった。
しかしそれでも目の前のスリザリンの7年生の先輩、その「ほとんど知覚のある」杖で生まれつきの盲目を補っているオミニス・ゴーントの口から発されたシューシューという空気漏れのような音は「これがたぶん本で読んだ『蛇語』ってやつなんだろう」という事以外、オリバンダー少年には何も理解できなかった。
「おいおい、まだ寝ぼけてるのかオミニス?」
セバスチャンがそう言ってからかい、周囲の7年生たちも続いて笑う。その声はあの時オミニスを苛んだ家族の声とはまるで違っていた。
「どうだ、杖は」
オリバンダー少年は、答えのわかりきった問いを再び投げる。
「バッチリ。ありがとうオリバンダーくん。それで代金は………」
「100万ガリオンだ」
「エッ…… ! ! ! 」
凍ってしまったオミニスを見て笑っている女生徒が、オミニスの首元に緩く巻き付いている蛇に声をかけた。
「ほら、戻っといでヘンリー」
「その一晩オミニスが盲導蛇にしてたソイツってホーンド・サーペントの子供か?」
頭部、両目の上に尖った角があるその蛇がオミニスの身体から降りてスルスルと女生徒の方に移り、その服の中へと入っていくのを見ながらセバスチャンが訊く。
「違う違う。この子は魔法生物じゃないよ。サハラツノクサリヘビって言う種類の普通の、というか非魔法のヘビ。カワイイでしょ。ちゃんと毒も持ってるんだよ」
自分の服の襟首から顔を出したそのサハラツノクサリヘビのヘンリーを指先で撫でる女生徒は、またひとつベーグルをポピーから受け取って頬張った。
「まあ冗談は置いといて、何日かしたら店経由で正式に請求するよ」
「…………ひゃくまんがりおんをかい……?」
「じょっ、冗談だって!」と念押しするオリバンダー少年の慌て気味の態度がどうにも可笑しくて、オミニスは蒼褪めるフリに徹しきれずに思わず笑ってしまった。
「一応言っとくけど、今回は本当にちょっとした損耗だったから問題なかったけど、仮に真っ二つに折れたりしたらそれはもう誰にも直せないからな。気をつけてくれ」
肝に銘じておくよ、と答えたオミニスと同じように、そのオリバンダー少年の忠告が聞こえていたその場の全員がその言葉を心に刻んだ。
「あ、そうだ。そうでした、タッカー先輩」
そして自分が朝一番にこのレイブンクローの談話室へとやってきた本来の理由を漸く思い出したダンブルドア少年は、トコトコ歩いてアミット・タッカーの傍へ寄る。
「なんだいダンブルドアくん?……ああ、それ。…………もう良いのかい?」
ダンブルドア少年がずっと抱えていた大きくて分厚い本を手渡されて微笑むアミットの傍に、襟首からサハラツノクサリヘビのヘンリーを覗かせた女生徒が寄ってくる。
「はい。素晴らしかったですこの魔法生物図鑑!でも、何回も読んで覚えてしまいましたし、思い出の品を長々とお借りするのも申し訳ないので」
「おやアルバス、本当に『全部』読んで覚えてしまったのかい?」
アミットの手にあるその本の表紙を見ながら、女生徒は微笑む。アミットも微笑んでいる。きょとんとしているダンブルドア少年の周囲ではポピーとサチャリッサも、セバスチャンとオミニスも、マルフォイとイメルダとノットも、アンドリューもニヤリと微笑んでいた。
ギャレスとナツァイ、そしてリアンダーもこの場に居れば同じように笑っただろう。
「あれも載せたいこれも載せたいって楽しくなっちゃって、ページ数まるで足りなかったんだよね………だからこうした……『イレジビラス』」
女生徒がその本の表紙に手を翳してそう唱えると途端に表紙の色がワインレッドに変わり、染みていくように背表紙も裏表紙もワインレッドになる。そして女生徒が手を退けると、表紙のタイトルも一部変更、というよりは付け足されていた。
「『第2巻』…………?そ、それにイレジビラスって文章をデタラメに変更して読めなくしちゃう悪戯呪文ですよね?」
戸惑い驚くダンブルドア少年の視界の真ん中で、その女生徒は笑っていた。
「ホントはそうだよ。けどこの本には魔法がかけてあって、『イレジビラス』はこの本を変化させる合言葉でもあるんだ。唱える度1~5巻まで順番に、若しくは変更したい巻数と同じ数だけ杖で軽く叩いて『イレジビラス』で直接指定の巻にもできる」
ダンブルドア少年は、アミットの目を見る。
「もちろんいいよ、ダンブルドアくん」
「ま、まだ何も言ってません。タッカー先輩」
「顔に書いてあるよ………何日でも貸してあげるさ」
そこに、血相を変えたヘクター・フォーリーが談話室へ戻ってきた。早足で自分に迫って来るヘクターの表情から全て察した女生徒は逃げ出そうとして、アミットに腕を掴まれた。
「お前、昨日の晩。ギャレスが寝てる間にアイツに一体何飲ませた」
「ヒェー………ナ、ナンニモシテナイヨ………ホントダヨ………!!」
一気に呆れ顔になったダンブルドア少年のみならず、どころかその女生徒と昨日初めて会話した11歳のギャリック・オリバンダーにも、ヘクターにものすごい剣幕で詰められているその女生徒が嘘をついている事はすぐに解った。
「すごいヤツなんだか何なんだか……騒がしいのは嫌いなつもりで居たんだけどな」
ヘクターを筆頭とする7年生の友人たちによってグリフィンドールの談話室へと連行されていく女生徒と、その後ろをトコトコついていくダンブルドア少年の背を、11歳のギャリック・オリバンダーは彼らの声が聞こえなくなるまで見つめていた。
ここまでが「自分が読むためだけに書き溜めていた分」ですので
これ以降は常識的な更新速度になると思います。
【オリバンダー少年が解説した内容について】
公式設定に基づくものですが、それらの公式設定は全て
「あのギャリック・オリバンダー氏による解説」という体裁の物なので
この11歳のギャリック・オリバンダーくんがどこまで識っているのかは
私の妄想です。そして「杖が持ち主を選ぶ」と最初に言い出したのも
このギャリックくんで、それまでは「オーダーメイド」つまり
材料を持ち込んだり指定したりして希望通りの品を作ってもらうのが
当たり前のスタイルだった。(公式設定)
ギャリック・オリバンダーのこの理論とそれに基づくやり方は当初
「ハァ??」と変人を見る目で見られるが、彼の杖が
それまで流通していた物よりも見違えるほど優れていると
あっという間に判明して、人々に受け入れられた(公式設定)
つまり1892年当時もまだ「オーダーメイド」が普通だったと思われますし
ホグレガで自分の杖をカスタマイズできるのもこの設定に基づく仕様だと
考えることもできなくもない。
しかしゲーム内では(恐らくファンサービスで)杖が持ち主を選ぶ事を
既に重々承知してるような言動をゲボるんがします。
つまり「杖が持ち主を選ぶ」ってのはオリバンダー家は昔から把握してたけど
それを大きな声で世間に発表したのはギャリック・オリバンダーが
最初だったんだよ!!(妄想)
Q.セファロポスって誰だよ
A.オリバンダーのやり方にいちゃもんを付けた挙げ句なんか勝手に廃業したダメ杖職人だそうな。シンプルに技術と知識と能力でオリバンダーより劣っていた模様。