2年後もしくは106年前 作:requesting anonymity
ホグワーツでは開校当時から、生徒のためにキチンと朝昼晩の食事が用意される。一方、開校当時からは考えられなかった時代の変化にも、結果的にではあるがキチンと対応している。
10世紀では考えられなかった変化。毎日の食事が保証されているというのが如何程有り難い事かを皆が身に沁みて理解していた頃には有り得なかった生徒の行動。
「ねえグレース、アンタはどうする?アタシら今から大広間に行くけど」
「私はいいや。声かけてくれてありがとレストレンジ」
食べ物は有るのに食べない、という新時代の選択肢。
「何かは食べなよ。何でもいいからさ」
「うん。ありがとう」
朝昼晩毎食大広間に用意されはするが、それを生徒が「必ず大広間で食べなければいけない」という規則は無い。創設者たちの時代に於いては「そんな行動をする生徒は居ない」ので規則で定める必要が無く、今では「そういう行動をする生徒も居るが別に咎めるべき事ではない」と判断されている。自分で用意したものを少数の親しい友人達だけで食べたければそうすればいいし、そも食べたくなければそうしてもいい。もっとも何日も何週間もそれを続けて食事時に大広間に顔を出さないと先生方に心配されるし、さらに体調など崩すようなら先生方と「お話」することになるが。
「グレースこれあげる。気が向いたら食べてね」
今日は食欲が湧かないスリザリンの7年生グレース・ピンチ・スメドリーは、ニフラーの仮装をした女生徒に手渡された人参を受け取ってお礼を言い、大広間に食事をしに行く皆がレイブンクローの談話室から出ていってしまってから、やっと気づいた。
「人参を生でそのまま食べるのなんてアンタくらいよおバカ………」
大広間での食事が強制参加でない以上、当然、毎回それに参加する人数は異なる。つまり、キッチンに居る屋敷しもべ妖精たちが用意すべき食事の量も、毎回異なる。
「毎度の事だけどさ、凄いよねこれ」
大広間にやってきて、スリザリンのテーブルのいつもの位置に座ったレストレンジが言う。
「何がだ?」
「だって、ちゃんとグレースの分が無いよ」
なのにいつも、食事は余らず食べ足りない生徒も出ない「丁度の量」が用意されているのだった。
「ヘルガ・ハッフルパフの配慮、なんだろうな。何らかの魔法で把握しているんだろう」
「まあそうだろうけどさ……マルフォイなんてついさっきまで『今日はいい』って言ってたのに直前で撤回したんだよ?なのにちゃんと用意されてたじゃん。凄くない?」
「凄いが、『ヘルガ・ハッフルパフその人ともなればそのくらいはできて当然』だとも思う」
レストレンジとノットのその会話を、すぐ隣に座っているマルフォイは黙々と食事をしながら静かに聞いている。去年レストレンジとノットからそれぞれ別々に恋愛相談された時は心底面倒だったが、最も親しい2人の友人がお互いを意識し合って急激にギクシャクしていたあの頃とはまた違う気苦労が、この2人が無事に交際を始めた今は今で、ノットの事もレストレンジの事も大切な親友だと思っているマルフォイにはあった。
(レストレンジの髪型がいつもと違うだろう何故言及しないんだノット………)
マルフォイは今日も、やきもきしていた。
(レストレンジは結構な時間をかけて珍しく自力でセットしたとピンチ・スメドリーの奴が言っていたぞノット!何故褒めない!気づいていないわけはないだろう!)
「ん?なんだ。何恐い顔してるんだマルフォイ。僕が何かしたか?」
「していないからいけないんだノット!お前がそんなだから!」
声を荒らげてすぐ冷静になり「いやすまん」と謝罪したマルフォイの声を聞いて、オミニスとセバスチャンがクスクス笑っている。
「サロウもオミニスも何か察しているのなら教えてくれてもいいんじゃないか」
ノットが戸惑いながらそう言ってきたのを受けて、オミニスは益々クスクス笑いが激しくなる。
「ノット。きみ、他の女子相手ならスマートなのに、レストレンジに対してだけぎこちないよな。褒め言葉の1つくらい照れずに言えなくて今後どうするんだ?」
クツクツと湧き上がる可笑しみを抑えながらのセバスチャンの指摘を受けて一瞬ものすごい表情になったノットはしかし、大きな声を出しそうになった自分を心中で諌める。
そして歯車が錆びついたかのような動きでギリギリとレストレンジの方を向いた。
「なあセバスチャン」
小さな声で言葉を交わすノットとレストレンジの傍の席で、オミニスが隣の友人に訊く。
「もしそこから見えてたら教えてほしいんだけどさ。ていうか正直見えなくても見えてるって言うか、百も承知の事を面白半分で訊くんだけど」
「なんだ、オミニス」
何を質問されるのか薄々察しながら訊き返したセバスチャンも、オミニスも笑っている。
「もしかしなくてもノットとレストレンジ、今2人とも顔赤いか?」
「ああ、耳まで真っ赤だぞ。あんまり囃し立ててやるのも良くないって解ってるけど―」
横で聞いてる部外者の方が恥ずかしくなるようなぎこちない会話をしているノットとレストレンジの傍で食事をしているスリザリンの7年生皆が、同じ事を思っていた。
「―なんで僕まで照れてるんだろうな。僕関係無いのに」
普段の振る舞いと比べてあまりにも初々し過ぎるノットとレストレンジを横目に見ながら、セバスチャン・サロウは自分の顔がどんどん熱くなっているのを感じていた。
「ねえマルフォイ」イメルダ・レイエスが小声で訊く。
「ノットとレストレンジさ。あの2人、いつから?」
「お互いの気持ちを確かめ合ったのは去年の夏休み前。交際し始めたのは昨日からだ」
「………え何その空白期間。何してたの」
「あまりにも恥ずかしすぎてどちらからも言い出せなかったそうだ」
「ええー、アホくさ……あんな『恋人なんて今まで散々とっかえひっかえ手玉に取ってきました』みたいなルックスしといてアイツら……」
「それ本人の前で言うなよ。ノットもレストレンジもまだ手を繋いですらいないんだからな」
それを聞いたイメルダは、大きく溜め息をついた。
「アホくさ……」
そんな大広間の、いつもとは少し違う愉快さがあるスリザリンのテーブルの反対側。グリフィンドールのテーブルでは、1年生のアルバス・ダンブルドア少年が未知と遭遇していた。
「それ、なんですか………シマヅくん……」
「ん?卵かけご飯と納豆だが。見たことないのか?」
その「マホウトコロ出身者用特別メニュー」が、チヨ・コガワの薫陶を受けた屋敷しもべ妖精ディークが眉間にシワを寄せて己の中から数多湧き上がる疑問を押し殺しつつ渋々用意したものだということを、このマホウトコロから来た交換留学生のミスター・シマヅは知らない。
「ディークは無為に食べ物で遊んだのではありませんか?本当にアレが食事なのですか?」
極東アジアの島国の料理など当然作った事が無かったディークと、その作業を見守っていたその他の屋敷しもべ妖精たちは配膳してしまった今も確信が持てなかった。あんなものが本当にニホンの一般的な朝食だと言うなら、自分たちが働いているのがホグワーツで本当に良かった。それが和食を初めて作った屋敷しもべ妖精の率直な感想だった。
「下された命令を遂行しない」という選択肢が無い屋敷しもべ妖精にも、どうせやるしかないとはいえ、「やりたい」と「やりたくない」は両方ヒトと同じようにあるのだ。
「ディークー。居るかいー?」と、グリフィンドールのテーブルの中程に座っているニフラーの仮装をした女生徒がどこへともなく声をかける。
「はい。ディークに何か御用ですか?」
現れた屋敷しもべ妖精に、女生徒は言う。
「一緒に食べよ!ほらここ座って。僕の隣!」
サンドイッチをもう一切れ手に取ったグリフィンドールの5年生ヘンリー・ポッターは少し右にズレてスペースを空け、そのさらに隣のダンブルドア少年もちょっと座る位置をズラす。
「ディークもご相伴に預かって宜しいのですか?」
「勿論いいさ。ほら、どうぞ?」
ヘンリー・ポッターが言い、学年を気にしない自由な席順で座っている周囲のグリフィンドール生たちと、何人か混ざっている他の寮の生徒も頷く。
「では恐れながら、失礼します」
「きみが作ったものも混じってるんだろうけどね」
「ええ。幾つかはディークが作ったものです」
そう言ったディークは切り分けられたオレンジに手を伸ばしながら、斜向いに座るマホウトコロから来た3年生シマヅくんに声をかける。
「そちらの品も、恐れながら、ディークがお作りしました。と言ってもその豆料理はマダム・コガワにご提供いただいた物をただ盛り付けただけですが。……その、本当にそれが普段の朝食なのですか?ディークはそのような事を俄には信じられません」
話には聞いていた「屋敷しもべ妖精」を初めてこんなに間近で見たのでもっとじっくり観察したいという気持ちを「それは失礼ではないか」という理性で抑え込んでいるシマヅくんは、あくまでも落ち着いた口調でそれに答えた。
「そうだ。まあ、納豆は割と好みが分かれる品ではあるが。とても美味しい。ありがとう」
納豆をかき込みながらお礼を言ったシマヅくんに、ニフラーの仮装をしたまま食事をし今日もまた口の周りがソースやら何やらでベッチャベチャになっている女生徒が訊く。
「トミーくんが使ってるそれ『箸』だよね?コガワ先生が時々使ってるのと同じ!ホントにそれで食事するんだねえ、僕もやってみたい!」
「ダメですよ先輩。先輩ただでさえお食事ヘタクソなんですから。上手に使えるとは思えません」
ピシャリとそう言ったダンブルドア少年に、女生徒は頬を膨らませて抗議する。
「やっ、やってみなきゃわかんないじゃん!」
「口の周り拭いてからそういう事は言ってください―テルジオ!」
一方その隣、ハッフルパフのテーブルでは7年生たちに混じってシャープ先生が食事をしていた。
「シャープ先生、その例の『特別追加授業』って、今年は何人なんですか?」
サチャリッサ・タグウッドが訊く。
「グリフィンドール2人、ハッフルパフ2人、レイブンクロー1人。そしてスリザリン2人」
砂糖もミルクも一切入れずにコーヒーを飲みながら、シャープ先生は答えた。
「去年より少ないですね」
「まあ、僅かにではあるがそのとおりだな。少ないに越したことは無い」
「やっぱりその、吐いちゃった子も?」
シャープ先生がそれを肯定して頷くと、すぐ傍で食事していた4年生の女子が「今なら」と判断して、普段から気になっていた事をその魔法薬学教授に訊ねた。
「あの、シャープ先生。妹は授業中どんな感じなんでしょうか……」
「今の所は、特別優秀な成績を収めてはいないが、毎回とても楽しそうにしているな」
「なにかご迷惑をおかけしたりとかは……?」
「無いとも。最初の授業で『このお薬はどうやったらもっと美味しくなりますか』と訊かれた時は笑ってしまったがね……何も不安に思う必要は無い。君の妹は有望だ。あれほどの熱意があれば、実力はこれからいくらでも身につけられる。皆があんな風なら良いんだが」
シャープ先生の答えを受けてほんの少しだけ安心したらしいその4年生の女子を、隣に座る7年生のポピー・スウィーティングがニッコリしながら見つめている。
「よかったね?」
「………はい」
グリフィンドールのテーブルの端で、新しくできたお友達らしい皆に混じって食事をしている同じハッフルパフ寮所属の1年生の妹を遠目に見ながら笑った4年生の女子の頬を、ポピーが突く。
「………何するのポピー先輩」
「あなたも、すっごくカワイイのよ?」
そう言われた4年生の女子はポピー・スウィーティングの微笑みを間近に見ながら「そっちこそ」のような事を言おうとしたが、あまりにもバカみたいなのでやめた。
「ねえねえ、このとりにくはなあに?」
新しくできた友人たちに混ざってグリフィンドールのテーブルで食事をしているハッフルパフの1年生の女の子が誰にともなく訊いたその質問の答えは、頭上から帰ってきた。
「『チキン・モーレ』という料理だ。お嬢さん」
「オバケさん!」
「やあニック。知ってるの?」
「知っているとも。その料理をガーリック先生がリクエストするのを見ていたのだから」
そう言って、チョコレートとスパイスを混ぜた独特のソース「モーレ・ポブラーノ」を用いたメキシコ料理の解説をしてくれた親切なオバケさんは、己がグリフィンドールのテーブルに混じって食事しているハッフルパフの女の子が、目を輝かせて自分を見つめている事に気づいて、訊く。
「………きちんとお話するのは初めてだったね?お嬢さん」
「ハッフルパフの『太った修道士』が、グリフィンドールだとあなたなのね?」
女の子がそう訊くと、隣のグリフィンドールの女の子が横から答える。
「そうよ。彼がグリフィンドールの寮憑きゴースト『ほとんど首無しニック』」
「できれば『サー・ニコラス』と呼んでもらいたいんだがね」
いつも通りの紹介にいつも通りに苦言を呈したほとんど首無しニックに、ハッフルパフの女の子が、チキン・モーレをナイフとフォークで一口ぶん切り取りながら訊く。
「『ほとんど首無し』?なんで『ほとんど首無し』なの?」
そして「ほとんど首無しニック」は、その質問にもいつもの通りに、動作で返答する。
蒼白く透き通った彼が自分の頭を片手でグイッと引っ張ると、斬首され損ねて皮一枚で辛うじて繋がっているその首がゴロリと傾き、その切り口が露わになった。
「この通り」
「わあ!!」
目を丸くしている女の子に、ほとんど首無しニックは言う。
「私の処刑を担当した執行人が、斧の手入れを怠っておったのだ」
「………それは治らないの?」
「まあ。なにしろ死んでいる身なのでね」
ハッフルパフの女の子がそのまま、ほとんど首無しニックや新しく友達になったグリフィンドールの1年生たちとお食事をしているその同じテーブルの中程で、同じ1年生のダンブルドア少年は、7年生の女生徒に「2年前の話」を訊いていた。
「そういえば、一昨年までは『日刊予言者』に、時々そんな名前が載ってましたね。じゃあ今、森とかその周辺に居るのはその『信奉者』とか『アッシュワインダーズ』の残党なんですか?」
「半分くらいはね。ゴブリンたちも密猟者も、一旦乱暴な生き方を始めちゃったら、指導者が居なくなったからって中々辞められないんだよ。もう彼ら彼女らは、ああなる前に所属していたコミュニティでは『久し振りに帰ってきた昔馴染み』じゃなく『凶悪犯罪者』として扱われて爪弾きにされるから帰る場所もない。もう『暴力で解決する』以外の方法を覚えてないんだからね。暴力だって大して上手じゃないクセに、『自分たちのボスは全能なんだ』って無邪気に信じてた頃を忘れられないのさ。『嘘、偽り一切無し、向かう所敵無~し、ルックウッド!』って密猟者が歌ってるのを何度も聞いたよ野営地で。でも今はそんなの誰も歌ってない。『ビクトール・ルックウッド?あの小鬼の使い走りをやった挙げ句15歳のガキに負けて死んだって言う”玉無しルックウッド”か?』なんて話してる密猟者ならこないだ森で見たけど。ああいうのは生前熱狂的に信奉されてた奴ほど死んだらボロカスに貶されるもんさ。そして貶してる側は、褒め称えてた頃と何も変わってない」
「ゴブリンはどうなんです?」とダンブルドア少年が訊く。
「似たようなもんだよ。ランロクが居なくなっても、ゴブリンと魔法族との間の問題は変わらずあるからね。何がダメって彼ら『ゴブリンに魔法族と同じ権利を』が出発点だったはずなのに、自分たちに賛同しないゴブリンにも攻撃するんだ。ゴブリンという生き物に対する魔法族からの心証とかも含めると、ランロクとその信奉者達によって最も被害を被ったのは他ならぬゴブリンだ。単純な物的、人的被害でもゴブリンと魔法族とで同じくらいだろう。結局、『ゴブリンはもう誰にも従わない』なんて建前なのさ。単に好き放題暴れたいだけ。『かつて私は魔法族に酷い目に遭わされました。だから私に従わないゴブリンは殺します』って破綻してるじゃんね」
「………だから殺すんですか?」とダンブルドア少年は女生徒に訊く。
「そうだよ?掃除を一旦始めたんだから、最後までやりきらなきゃね。2つの組織の頭だけ切り取って『はいおしまい』じゃ、複数の軍閥に分裂してますます治安悪くなっちゃうだろう?だからね、少なくとも、森からは密猟者を駆逐するよ。だって森はホグワーツの生徒が立ち入るだろう?『生徒立ち入り禁止』ってのは『生徒が立ち入る』って意味だ。そして、森から密猟者が居なくなったら、ホグワーツに施されているような保護呪文を森にも施す。つまりホグワーツ領外から部外者が入り込めないように。そこまでが僕のやるべきこと」
「それは先生方と魔法省の仕事ではないんですか?」
「ブラック校長にそんな機能は搭載されていないよ。魔法省のお偉方はそれこそランロクとルックウッドの件以来僕にすごく協力的だから色々良くしてくれるけどね」
そこから話は、その先輩と魔法省の関係性へと移っていく。
「そう言えば先輩、魔法法執行部の部長さんとも、魔法生物規制管理部の部長さんとも、スパーヴィン魔法大臣ともお知り合いなんですよね。それも2年前からですか?」
ダンブルドア少年が嫌いなニンジンを我慢して食べながら訊く。
「ううん、去年から。あでも三本の箒でいつもバタービール奢ってくれるおじーちゃんは、あの人が魔法大臣だって知ったのこないだだけどね。ずっとそっくりさんだと思ってた。『よく似てるなー』って。魔法法執行部の部長は僕が6年生になったばっかの時に、魔法生物規制管理部の部長さんは5年生と6年生の間の夏休みに『1度会って話が聞きたい』って手紙来たの。で、相手が相手だから一応ヘキャット先生にも着いてきてもらって、魔法法執行部の部長さんには『卒業したら闇祓いになってくれないか』ってお誘いをされたから『ホグズミードのお店も続けていいなら』って言っといた。魔法生物規制管理部の部長さんはもっと気安い人で、『私の次の代の魔法生物規制管理部が、今と同じように君の活動を黙認するとは限らない。だから今のうちに正式な飼育許可を取っておくべきだ。必要なら大臣にも私から』って」
女生徒は話し続けながら食事も続けようとして口の中にチキンを追加投入し、むせた。
「まあ純血種のニーズルは飼育に特別な許可が必要なのに僕はその許可を持ってなかったから、『ホグワーツで飼育している』ならともかく『僕の私物のカバンの中で飼育している』だと問題が出てくるんだよね。その時ちょうど『卒業したら必要の部屋使えなくなるよな、鞄の中とかに飼育環境作れないかな』って思ってウィーズリー先生に相談してた頃だったのもあって、それからなんだ。僕が『飼育許可』とか『それに関する法律』を全部無視するんじゃなくちゃんと正式な許可貰うって方針に変えたのは。で、いざ許可を貰いに行ってみたら、魔法省はめちゃくちゃすんなり飼育許可をくれた。ってもまあ、その時飼ってた中で明確に『許可がなきゃ飼っちゃいけない』のはニーズルだけだったけど……グラップホーンもまあ、人んちの庭に繋がれてたら魔法省に通報が行きそうだけど『飼育に許可が必要』って法律は無い。………まだね。今作ってる。僕が飼えちゃってるもんだから、どこぞのバカチンが無茶やらかす可能性を魔法生物規制管理部が認識したんだ」
「角の粉末の継続採取の為にグラップホーンを飼育しようとする、と?」
「うん。それってつまりそうするためにグラップホーンの生きた個体を確保するわけで、つまりは密猟じゃない?グラップホーンは絶滅寸前だからね。むしろまだ法律ができてない事が問題」
そして女生徒は、急に話すのをやめてダンブルドア少年の食事風景をじっと見る。
「………ねえアルバス」
「なんです先輩」
「野菜嫌いなのかい?」
「そうですけど」
モソモソとカリフラワーを食べ進めているダンブルドア少年の顔に浮かぶ、占い学の7年生の宿題に取り組まされたときのような不快感を理性で押さえつけている複雑な表情を見ながら。先日その自分の占い学の課題を面白半分で押し付けた女生徒は、その時と同じようにクスクス笑っていた。
「そんな顔するなら食べなきゃいいんじゃないかい?誰も責めないよ」
「…………まんべんなく食べるのが大事なんです。先輩は嫌いな食べ物とか無さそうですね」
女生徒は、ダンブルドア少年がなぜそんな苦渋の表情を浮かべながらも野菜を積極的に食べ進めるのか、それが今回だけでなく普段からなのは何故か、察した。
そして一層ニンマリと笑顔になって、ダンブルドア少年を見つめる。
「…………なんですか。笑顔が気色悪いですよ先輩」
「好き嫌いしてたら背ぇ伸びないもんね。はーー!カワイイなあアルバスは!!!」
「急になんですかほっといてください」
「かわいい!さいこう!」
「やめてください」
それ以上は囃し立てなかったものの、女生徒はダンブルドア少年の食事風景を、料理がテーブルから消えるまでの間ずっとニンマリしたまま見物し続けた。
「……満足ですか」
「何ていうんだろうこの気持ち。あのね、今ね。アルバスにね、何か買ってあげたい」
そしてシャープ先生の後ろに続いて魔法薬学の教室に向かおうと立ち上がった女生徒に、マホウトコロからの交換留学生の片割れでグリフィンドールの3年生であるシマヅ少年が話しかけてきた。
「森に密猟者が居るというのは本当か」
「うん。一昨年と比べればわりと減らしたけど、まだ結構いるよ」
「森は生徒は立入禁止、だったな」
「そうだよ。入りたいなら……ヘキャット先生に相談するといい。理由はうまいこと考えてね。あと、君はそんな事しないって信じてるけど、魔法生物やケンタウルスたちを騒がせちゃダメだよ」
「勿論だ。ケンタウルスは……『敬意を持って丁重に接するべき』だったな?」
「うん。彼ら基本的に『ヒト』を一括で信用してないからね。魔法族だろうがマグルだろうがイギリス人だろうがニホン人だろうが等しく『森を荒らすニンゲン』だ。そして彼らは、ヒトよりよっぽど賢い。外交という意味ではちょっと頑固でもあるけどね」
それだけ訊くとシマヅ少年は「ありがとう参考になった。くれぐれも気をつける」と言ってヘキャット先生の方へと早足で歩いていった。
そして程なくヘキャット先生がセバスチャン・サロウに声をかけたのを見て、女生徒はシマヅ少年がこれから森で何をするのかを察した―つまり普段自分がしているのと同じ事をするのだと。
「………密猟なんかするからこうなるんだよ」
普段よく言っている事を独り呟いた女生徒に、ダンブルドア少年が言う。
「先輩。あんまり殺人ばっかりしてると、心が傷だらけになっちゃいますよ」
11歳とは思えない言い回しをするダンブルドア少年を一瞬キョトンとした目で見つめた7年生の女生徒は、次の瞬間いつもの気楽な笑顔に戻った。
「だからアルバスで癒やすんだよ~」
急に抱き上げられたダンブルドア少年は振りほどこうともがくが、それは無駄な抵抗だった。
「優しいねえアルバスは~」
「おや、おやめくださいはなしてくださいおろしてください」
激しく頬擦りされているダンブルドア少年の後ろから、オミニスが女生徒に話しかけた。
「今からは、シャープ先生の手伝いかい?」
「そだよ~」
「………使う相手をいくら選んだって『アバダ・ケダブラ』は『アバダ・ケダブラ』だって事、君はちゃんと理解してるよね?スッパリ脱却しようと頑張ってるセバスチャンはもう心配いらないけど、あの頃深い闇の中にどんどん沈んでいったセバスチャンとは違って、君は至って平常心のまま、一切心を乱す事なく、溺れる事も目を曇らせる事もなく、ただ習得して使ってる。常識的且つ一般的な倫理観で、今も使い続けてる。それがどれだけ危険『に見えるか』、わかってるよね?」
オミニスは、女生徒の精神が闇の中に沈んでいく事などは一切心配していない。
「俺、嫌だよ。君が道を歩くだけで怖がられるようになったりしたら」
女生徒はそのスリザリンの直系たる「貴様らなんぞよりよっぽど純血」で知られるゴーント家の出身でありながら誰より心優しい盲目の友人を、強く抱きしめた。
「ありがとねオミニス、心配してくれて。でも大丈夫だよ。大丈夫だけど、僕が『大丈夫』で居られるのは、たぶんオミニスと出逢えたお蔭だ。君がイギリス魔法界の宝だって言っても、君は否定するんだろうね、オミニス。そういうとこが大好きだよ」
女生徒のその暖かい声色で、オミニスは察した。
「提出期限今日までの魔法史の課題、まだ真っ白なのかい?」
「………たすけてくれたらうれしいです」
こういう時、7年生たちの対応は二極化する。ヘクター・フォーリーやマルフォイのように「自分で蒔いた種だろう」と突き放して一切助けない、その方がこの友人のためであると考えるグループと、絆されて助け舟を出してしまうアミット・タッカーやナツァイ・オナイのようなグループに。
「後で見てあげるから、シャープ先生の手伝いが終わったらスリザリンの談話室においで」
オミニス・ゴーントは、すぐ絆される方だった。
ニーズルの飼育許可
ニーズルの飼育には特別な許可が必要ですが、ホグレガ本編ではレガ主がそのようなものを申請している様子がないにも関わらずニーズルを勝手に獲っています。これは恐らく(ここから妄想)飼育場所が必要の部屋なのであくまでも「ホグワーツが飼育している」という扱いであり、ペルセポネ他数匹の存在と担当科目からニーズルの飼育許可を取得していると予想されるホーウィン先生が居る事、もしくは他ならぬ「ホグワーツである」という理由での特別措置により「ホグワーツ」はニーズルを有していても適法なのだと考えられる。
Q.今までと比べると随分間が空いたな?
A.コロナに罹った(現在進行系)のが理由の3割。残り7割が他ならぬホグレガ。
修理に出してたPCが戻ってきたから………新キャラ作ったんすよ………