ジャパンカップを終えて仲間たちとともに挫折を乗り越えた南曜スバル。
ギャラクシープリンセスは新しい壁へとぶつかり、より高度なパフォーマンスを身に着けようとしているがそんなある日、スバルの様子が……?

※キャラ崩壊注意

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第1話

もっと挑戦してみたいッ!もっと……ポールダンスを上達したいッ!

 

それは今まで体操選手としての挫折から失敗を恐れていた南曜スバルにとって、久しく忘れていた昂ぶる感情であった。

 

ワクワクするような、この燃える気持ち……!

そんなチャレンジャースピリッツがジャパンカップを経て蘇ったような気がする。

今ならもっと高く!もっと上手く!

ポールを握り、足を下げるとクルリと宙へと舞い上がる。

 

 

 

「何ていうか、燃えてるね~、スバル!まだレッスン前なのに!!」

 

「うん。ジャパンカップで新しい目標を見つけたって感じだね」

 

アズミスタジオのレッスン室、ギャラクシープリンセスの4名は今日も今日とて、ポールダンスのレッスンに打ち込んでいた。

体操座りで話していた西条リリアと星北ヒナノのところへ、猫のように人懐っこい笑顔を浮かべて東坂ミオも身体を寄せる。

 

「目標達成型のスバルちゃんには、生で見るエルダンジュのショーはと~っても!いい刺激だったみたいです~」

 

「そうそう、スバルは特にあの蒼唯ノア、って人にライバル心燃やしてたっけ、って、それを言ったらヒナノとミオだって!」

 

びしっと二人を指さすリリア。

 

「ヒナノはバレー時代からのライバル、御子白ユカリ!ミオはあのサナ姫って人のこと、ずーっと意識してるじゃん!練習でも燃えてるの、わかるよ!!」

 

「ユカリさんがライバルってそんな……」「えへへぇ~!サナ姫は~、私の憧れの人ですからぁ~」

 

照れた様に赤くした頬を掻くヒナノに、どこか誇らしげに口元を隠して笑うミオ。

どこか嬉しそうな二人を見て、リリアはくぅ~~と悔しそうに足をバタつかせる。

 

「……なんでエルダンジュは4人のチームじゃないんだろう!このままじゃ、アタシだけライバル居なくて余っちゃうっ!?」

 

「別に、一人に一人ずつライバルがいなくても……」

 

「うぅ、こうなったらアタシはスパイラルガールの中から~」

 

とリリアがスマホで検索し始めたところで、ガチャリとスタジオの扉が開く、入ってきたのは黒い長髪を一つにまとめて切れ長の目を光らせた女性、芯央アズミ。

 

「「「あ、アズミ先生。おはようございます(ぅ~)!」」」

 

「おはよう!それにしても……スバルってば、レッスン前からもう汗だくじゃないの」

 

皆が視線を向けた先には、シャツがグッショリと張り付いたスバルの姿が。

スバルは4人の視線に気がつくと、ポールから降りきて置いてあったタオルを拾い上げると、汗を拭いながら小走りに近づいてくる。

 

「おはようございます、アズミ先生。「おはよう、スバル」あの、アズミ先生」

 

「うん?」

 

「私、どうすれば、もっと上手く……いえ、どうすれば、あのエルダンジュを……超えられるようなショーが出来ますかっ!!」

 

「「「っ!!」」」

 

スバルはまっすぐな視線をアズミにぶつける。

他の3人もそれに続くように立ち上がるとアズミのことをジッと見た。

アズミは腕を組んだまま困ったように人差し指を頬に充てる。

 

「前にもあったわねぇこのやり取り……う~ん、そうねぇ……みんな技術的な面では本当に上達したわよね。少しずつだけど、上級のスピンやトリックにも挑めるようになってきた。だから次は……」

 

「「「「次は……?」」」」

 

不安そうにアズミの顔を伺う4人に対して、アズミは首を振ってから優しく笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

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スバルはあの後自主練で居残りをし、スタジオを出るころには外はもうすっかり暗くなっていた。

厚手の赤いパーカーに手を突っ込んだまま何となく遠回りをすると、たまたま通りかかったのは昔ヒナノたちがアズミに出会ったという公園だった。

星が輝いた夜空、ライトアップされたポールのオブジェクト……まるでポールダンスのステージのような場所。

 

そこでスバルはそっと中央のポールに手を添わせ、額を支えに体重を預ける。

 

「私に足りないもの、か」

 

ポールに足をかけて、クルリと回る。

 

スバルは初めポールダンスと鉄棒は似ていると思っていた。

どちらも鉄の棒を使うという単純な共通点があるし、難度の高い技を覚え、いかに完成度を高く保ったまま演技を終えられるか。という点も似通っている。しかし……

 

 

『あなたたちには一人一人に『魅せたい』ものがあると思うの。それを表現できるようになるのが次のステップ。そのためにも、今は練習あるのみよ』

 

 

それが、あの時に言われたアズミ先生の言葉だ。

 

ポールダンスは鉄棒以上に、『魅せるモノ』。

ただ技を成功させるだけではダメで、観客に、審査員に、そして、同じダンサーであるライバルたちさえも魅了する。そう、あのエルダンジュのように……!

 

ポールを握り、身体はクルクルと、簡単なボディスピンへと移行する。

少し風は冷たいはずだったが、身体が熱くて涼しいとすら感じる。

 

ギャラクシープリンセスとエルダンジュとの圧倒的な力量差。

順位こそ近かったものの、その差は、その溝は、数値以上に遠く、深い。

力強いフロアダンスに、難しいトリックやスピンの連続、ポールを手繰り、宙を舞う彼女たちは本当にキレイで、カッコよくて、その洗練されたパフォーマンスに釘付けにされた。

 

彼女たちはただがむしゃらにダンスをする私とは違い、魅せたいものを……『魅せつけたいもの』を明確に理解しているように思った。

 

だとしたら、「私の魅せたいもの」とは、なんなのだろう。

 

「よぉ姉ちゃん、ポールダンスしてんのぉ?」

 

スバルに近づいてきたのは4つの影だった。

大学生とも、社会人とも思えるチャラい雰囲気の男たち。

皆共通しているのは顔を赤らめて、酒気を帯びているということ……

 

「知ってるぜ、一枚ずつ服を抜いてくあれだろ?」

「バカお前、それはストリップだろ」「え、一緒じゃないの?」

 

「……っ!」

 

ハハハハッ、っと笑う4人にスバルは不快感をあらわにし、ポールから降りて立ち去ろうとする。

 

「おいおい、もう終わりかよ」

「てかよく見たら結構美人じゃね?」「お前こういうのがタイプか?」

「よぉし、おい姉ちゃん!俺達と飲みに行こうぜ?」

 

「結構です。それに、お酒は飲めないので」

 

「大丈夫大丈夫、ちょっとくらいなぁ?」「そうそう」「楽しく話するだけだってー」

 

「…………」

 

無視して足早に去ろうとするスバルに、男たちは諦めるようなこともなく、追随するようについてくる。そして

 

「ちょっと待てよっ!!話くらい」

 

そう男に肩を掴まれた瞬間、スバルは咄嗟に身体を返し、肘に関節を決める。

 

「がぁ!!」

 

「てめぇ何して!」「おい!」

 

スバルは拘束するように肘と肩を持たれ、頭を押さえつけられ、囲まれてしまった。

一人くらいなら何とかなったのかもしれないが、この数は……!

 

闘争心は燃えていたが

 

「いてーよぉ!」「くそアマが!」「ひん剥いてやるか!!」

 

さっきまでのふざけた印象から一変した男たち、ギラついた視線、這うように見る下劣な視線。背筋が凍りつき体中が硬直した!

 

…………怖い!誰か助けて……!

 

 

その時だった。

 

 

「~~ッ!!」「ぐあ!!!」

 

身体に掛かっていた締め付けるような握力が無くなる。

不思議に思い顔を上げると……

 

「走って!」「え、あ……はい!」

 

そう低い叫び声が聞こえると、スバルは突然手を掴まれ走り出す。

ごつごつしてるけど、暖かい、そんな手に惹かれて走る。顔はよく見えず、スバルの目に一瞬映ったのは、優しそうな目の青年であるということだけだ。

後ろを振り返ると、もつれた様で小さくなっていくさっきの酔っ払いたちが目に映る。

 

鼓動が早い。

走ったせいか、襲われそうになった恐怖か、それとも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、ありがとうございました」

 

人通りの多い明るい通りに戻ってきてからようやく一息つけた。

 

「ケガはない?」

 

「あの、はい、お陰様で……」

 

「もう忘年会シーズンだから変な人も増えてるんだと思う。お昼に走ったりする分にはすごくいい公園なんだけどね」

 

そういうと、スバルの握られていた手が離れた。

あっ、とつい名残惜し気な声を出している自分に、スバルは内心驚いた。

 

「それじゃあ」

 

「待っ……」

 

手をひらひらと振って去っていく男性に、スバルは声を出そうと手を伸ばしたが、やがてその背中は人混みの中へと消えていき、見えなくなった。

 

スバルは、まだほのかに暖かい手を、胸元に寄せて目を瞑るとほんのりと頬を赤く染めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

南曜スバルは恋をする!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「冬場のポールダンス、正直、ヤバいね……」

 

「う、うん。乾燥してて、すっごく滑りやすい……」

 

練習を終えて。ガチガチと暖房の行き届いていないスタジオで手をこすり合わせるリリアとヒナノ。

 

「それよりも!スバル!どうかした?全然レッスンに身が入ってないじゃん!」

 

「え?あぁ……ごめん」

 

ダブルスの練習中、どこかぼーっとした様子のスバルに対していい加減痺れを切らしたリリアが声をかける。

 

「スバルちゃん、もしかしてこの前アズミ先生に言われたことを気にしているんですかぁ~?」

 

「この前って、あぁ、あの何を『魅せたいか』、みたいなやつ?でもあれってもっとちゃんとした実力をつけてから考えてみろって、アズミ先生そう言ってたじゃん!」

 

「うん。私たちは今はまだポールダンスを楽しくすることが一番重要だって、先生はそう言ってたよ」

 

スバルの様子を気にしてヒナノ、ミオの二人も膝を寄せる。

それに困惑したスバルは手をバタバタと振る。

 

「ち、違うんだ。別に、そっちも悩んではいたけど、今はそれよりもちょっと……」

 

カァっと顔を赤らめながら俯いたスバルを見て、ピンとリリアのアホ毛レーダーが反応し、目を光らせる。

 

「ちょっとスバル何々!?どしたん、相談乗るよ!?」

 

「へ?ちょ、リリア?」

 

黒マスクマッシュ男子の如く、言葉巧みにスバルの肩を組むとニヤニヤと笑うリリア。

その様子を見て、ミオとリリアは頭に?マークを浮かべる。

 

「えっと、うん、何か悩みがあるのなら私たちで良ければ相談にのるよ?」

 

「はい!魔法少女アルカノームでもこうやってみんなで悩みを共有する話が……」

 

「その、気になる人が出来て……」

 

 

スバルの突然の告白に、3人は目を合わせた後声を揃える。

 

「「「好きな人が出来たッ!!?」」」

 

「き、気になる人だよ!」

 

スバルは手をキュッとしながら未だに顔真っ赤にさせながら吼える。

リリアもミオもヒナノも目を輝かせてスバルに更に詰め寄った。

少女たちは恋バナに飢えていた。

 

「そんなのどっちだって一緒だって!チョコレートアイスか、チョコレートケーキかみたいな違いだよ!!」

 

「た、例えが分かりにくい……」

 

「とにかく‼スバル、それってすっごく素敵なことだと思うよ!」

 

「うん。私もそう思うよ、別に誰かを好きになるのに、恥ずかしがることなんてないと思う」

 

「そうですよ~、スバルちゃん!私だって、アルカノームラブ勢ですからぁ~!」

 

「だから、好きな人ってわけじゃ……」

 

声が小さくなっていき、煙が噴き出し始めたスバルに3人は更に詰め寄る。

 

「それで、年上?それとも、同級生?」「バイトの先輩とかですかぁ~!?」「案外、年下とか……?」

 

「いや、その………………わからないんだ」

 

「「「え……?」」」

 

 

 

 

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「ふむふむ、ピンチのところを颯爽と助けてもらって」

 

「名前も名乗らずに去っていってぇ~」

 

「ずっと、その人の事が頭から離れない?」

 

「……う、うん」

 

場所をスタジオからスターライトバーガーに移すと、早速スバルへの尋問、もとい、恋愛相談は始まった。

スバルは昨日のことを話し終えてからも、照れた顔を隠すように顔をヒナノたちとは合わせない。

 

「なんだか恋愛もののアニメみたいで素敵ですぅ~」「うん。すごく勇気がある人なんだね」

 

「……でもさ、それって相手の事なんにもわからないってことだよね?」

 

「えっと、それは……そうだけど」

 

「もう~せめて、そこで連絡先の一つや二つ交換くらいしときなよ~!」

 

「な!!そ、そんなこと言ったって、私も当時はずっとドキドキしっぱなしで……って、リリア~?私のことを言えるくらい恋愛経験あるの?」

 

「え!?え、え~っと、ねぇ、ヒナノ?」

 

「え~……私はその……えっとぉ、ミオ?」

 

「じゃあ~……スバルちゃん?」

 

「わ、私は体操一筋だったから……って、なんで私のところに戻ってくるのさ!」

 

「おぉ、ノリツッコミ」「意外と冷静みたいだね」

 

クッと屈辱感からか机に拳を付けて頭を垂らすスバル。

やがて、徐々に顔を上げてうるりとした目で3人を見渡す。

 

「……そ、それで、どうするのが良いと思う?」

 

そう言われて流石に茶化すような空気ではない察した、3人は同時にう~んと悩み始める。

 

「まずは、相手を知るところからじゃないかな?」

 

「相手を知る?」

 

「それは思いましたぁ~。スバルちゃん、まだ相手のお名前すら知らないんですよね~?」

 

「それは、うん……あ、でも……確かお昼に公園を走ってる、みたいなこと言ってたような」

 

「だったら、もう一度会ってみようよッ!!」

 

「えぇ!?」

 

ほぼ一人で食べていたポテトを突き付けて宣告するリリアに、途端に顔を両手で隠して真っ赤になる乙女スバル。

 

「でも、実際そうかも。せめて連絡先の交換くらいしないと気になってるってだけで終わっちゃうかも……」「イケ女のスバルちゃんが告白すれば、絶対OKです~」

 

「よーしそうと決まったら早速、明日、公園で張り込みだ~!!」

 

「「お~!」」

 

「え?え~~!!?」

 

 

 

 

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「それで、どうやって見つけるって?」

 

「「「……」」」

 

休日、昼間の公園は賑わっていた。

元気に駆ける子供たちに、デートに来ているカップル、日向ぼっこをしている老夫婦などなど、バラエティ豊かな面子が揃っていた。そう、揃い過ぎていた。

 

「この中から見つけるのってかな~り大変かも」

 

「そもそも、私たち会ったことないですしぃ~」

 

「写真とかもないし、顔も、マスクしてる人とか多いし……」

 

「せめて何か特徴だけでもあればなぁ~」

 

「あの人の特徴…………目?」

 

ハッとしたように皆を見るスバル。

 

「目?」

 

「うん、目だよ。澄んでて、スッゴク優しそうな目で、あと手が温かくて……」

 

「そう言うところが好きになったの?」

 

「うん……!!?ま、待って、今のは違って!」

 

「はいはい、ゴチソウサマですぅ~」「スバルってば、純正だね~」

 

「……それを言うなら純情って……ヒナノ?」

 

ヒナノが悩んだような顔をした後、皆を見渡してぼそりとつぶやく。

 

「ポールダンスの野外ショー……やるって言うのはどうかな」

 

え!!?と驚いた三人。

ヒナノの指先を自然とみる、それは公園の真ん中にあるオブジェを指さしていて……。

 

「こ、ここでやるんですかぁ~?」

 

「うん!だって、そうしたらお客さんはみんなこっちに「目」を向けてくれるよね?」

 

「「「あ!」」」

 

「それに、その人、スバルを助けられるくらい近くに居たってことだよね?もしかしたら、スバルのポールダンスに興味があったから、観てくれていたからだったんじゃないかな?」

 

「私に……興味が……」

 

何故だろうか。

そう思うと……すごく嬉しい。

同時に、少しだけ、モヤりとした感情を抱く。

 

あの時のダンスでは私のことは……。

 

「うん、そうだよ!流石はヒナノ!よーし、アタシ、ちょっと子供たちに場所、借りてくるね!」

 

「あ!ちょっとリリア!行っちゃった……」

 

「こういう時のリリアちゃんの行動力はと~っても頼りになるんです!……さてさて、私もスケッチブックを持っていますので、ポールダンスショーの告知の看板を作って周りに宣伝してきますねぇ~」

 

そう言ってウィンクをしてからベンチに向かうミオ。

私もスタジオからスピーカーを借りてくるねと、嫌な顔一つせずに行ってくれるヒナノ。

 

スバルは、自身の胸の内から熱いものがこみあげてきたことに気が付き、すぐに腕で目元を拭う。

 

そして、同時に強く、決意をした。

必ず、ショーを盛り上げて見せると。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「いよいよ次は最後のステージだよ~!みんな拍手で迎えてね~!」

 

パチパチとリリアの言葉にお客さんからも大きな拍手が飛ぶ。

ミオやヒナノ、リリアのステージや頑張りもあり、お客さんはあたりをぐるっとポールのステージを囲むほどに集まっていた。

この中に、スバルの意中の人が居るかもしれない……。

 

「お客さん、結構集まってくれたね」

 

「けど、ポールダンスを知らない人相手に興味持ってもらうのって、すっご~く難しいですぅ」

 

「うん……物珍しくてチラッとは見てくれるけど、足を止めてまでって人も多かったし……いつも、恵まれた状況でポールダンスに挑めてたんだって、改めて思う」

 

「確かにぃ~、それに~外は寒くて滑りやすくなってるからスバルちゃんも要注意ですぅ~」

 

「あはは、ミスしちゃってもそういう時は笑って誤魔化す!」

 

リリアの笑顔につられて、みんなもあはははと笑う。

スバルはいつの間にか自身の力が入り過ぎていたことにそこで気が付き、緊張を解すようにそう言ってくれたな仲間たちに、自然と笑みがこぼれた。

 

ポールダンスの摩擦を生むため、少し肌を出す必要があったのだが、この寒さは凄く応える。

だというのに、寒くて手足を震わせているのに、奮闘してくれた3人。

 

「……みんな本当にありがとう!お客さんも初めは立ち止まってすら居なかったのに、みんなのショーをみて、足を止めてくれて……」

 

「…………でも、私も!」

 

そこに居たのは先ほどまでの乙女のような顔をしていたスバルではなく、ふぅと白い息を吐き、紫がかった眼を光らせる。

 

 

ポールプリンセス、南曜スバルであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ショーが始まった。

 

スバルは今までも何度かこの瞬間を味わったことがあるが、そのいずれも、緊張しなかった試しはない。

 

だけど、今日の私は壁を超える!

 

音楽に合わせて一回転のスピンを決める。

 

逆上がりの要領でポールを掴みながらさらに逆回転し、次にアレグラのトリックへと移行する。

そして、あの時、魅せつけられたあの技、フォールを決める。

 

息もつかせないアクロバティックな技の連続に観客は全員息を呑む。

 

 

今日の屋外ショーをやってよくわかった。 

 

アズミ先生の言ったように、ポールダンスは「魅せる」ものだ。

 

儚くて、空を掴むようなヒナノのトリック。

明るくて太陽みたいなリリアのスピン。

まるでおとぎ話に入ってしまったようなミオのフロアダンスに表現力。

 

でもその全部に負けたくない!

 

今、表現するのは私自身だ!!今、踊りだしたのは私自身だ!!!

私のポールダンスをみんなに、

 

あの人に魅せつけたい!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ショーが終わった瞬間スバルはポーズを取りながら観客席を見渡す。

それと同時に今日一番の大きな拍手が巻き起こった。

 

スバルは音が聞こえないくらいに集中する。

縋るような気持ちで、探し……。

 

「あ……」

 

居た!

 

忘れるはずがない、あの温かい目!

目が合った瞬間、向こうも気が付いたのか、スバルに優しく微笑み返してくれた。

が、すぐに背を向けて帰ろうとしてしまう。

 

スバルがそれを追いかけようとステージを降りると、何人か興奮した様子の女性客が私に寄せて走ってくる。

 

「すごかったです!あの、ポールダンスって、セクシーなだけじゃなくてすっごくカッコイイんですね!!」

「おねえちゃんすごかったー」「よ、良ければ連絡先を……」

 

「ごめん!急いでるんだ!」

 

人の群れをかき分けて走ると、お願い、お願いと、走って、走って。

 

彼に追いついた!

スバルがきゅっと裾を引くと青年は驚いたようにスバルを見る。

 

「あれ、君は……」

 

「あの、私……」

 

息を整えるが、声が出ない。

すると、スバルは自身の手が優しく包まれていることに気が付いた。

 

「凄かったよポールダンス!!あの夜も凄かったけど、今日はもっとかっこよくってさ!」

 

少年のように目を輝かせて言われ、スバルは出かかっていた涙と鼻水をひっこめる。

 

「……あは、ハァ!はい!ありがとうございます!!ふぅ…………あ、あの!良ければ、私と……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「~♪」

 

「何だかぁ、スバルちゃんご機嫌です~」

 

「うん、無事に連絡先交換してもらえたんだもんね」

 

「メスの顔してるよ、メスの顔!」

 

3人は鼻歌を歌いながら上機嫌にスマートフォンをいじるスバルを隠れ視る。

スバルはどうやら無事に連絡先を入手したらしく、チャットのやり取りに時たま口元がへちゃりとだらしなくゆがむ。

3人はそんな見慣れないスバルの様子にニヤニヤした笑みを浮かべた後足を寄せる。

 

「スバル、調子はどう?」

 

「あ、うん。良い感じ、だと思う……!」

 

「そっかじゃあ「今日も朝7時くらいに会えてさ」…………え?」

 

「私と出会ったあの公園は駅までの通勤路みたいで……公園で朝待ってたら一緒に駅まで歩けるんだ♪そうそう、この前もお休みの日に時間とルートを予測してジョギングしていたら偶然会えて……」

 

恐ろしく饒舌になるスバル。しかし、先ほどからなんだか内容が……。

 

「えっと、スバル。何だか毎日偶然を装って会いに行ってるみたいに聞こえるんだけど……」

 

「え?う、うん、その、もっと会いたくて……」

 

にへらと可愛らしく照れるスバルであったが、3人はゾッと戦慄した。

 

「フフフ、今日は帰りももしかたら会えるかも……」

 

「……なんだかスバルちゃんを、とんでもない方向にめざめさせちゃったのです~!?」

 

「スバル、重いよそれ……」

 

「えぇ、そんなこと……ねぇヒナノ!?」

 

「あっはは……」

 

窓から見えるのはシンシンと降り積もる雪景色。

それに負けないくらいに美しく、今日も少女たちは宙を舞うのであった。

 

 


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