大戦から8年後。
永遠亭に担ぎ込まれた5人の重傷患者をざっと見て診断を降すのは白衣を身に纏った若き医者、鈴仙・優曇華院・イナバであった。
X-P代わりに体内の状態をその赤い眼で見ると隣に居たナースへと指示を出していく。
そうして処置を終えてひと段落つく鈴仙、最初は不慣れな生活に四苦八苦したものだが人は慣れるものなのだと理解して日々、難解な手術を行ったり論文を発表したりしている。
永遠亭の院長は変わらず八意永琳である。
自身の机に飾られている写真たてには、雄英の卒業式で一佳との2人で撮ったツーショットの写真が収められており……それを愛おしそうに触れる鈴仙。
あの大戦の後、鈴仙は度重なる地獄のリハビリを繰り返し行なって全盛の身体能力を取り戻したが卒業後は事務所を設立する事もサイドキックとして就職する事も選択しなかった。
そのまま世界最高峰の医学部へと進学して最短で全ての試験を突破、医者として永遠亭に就職した。
プロヒーローとして名を馳せている訳ではないが災害や
プロヒーローとして出張る際には学生時代から変わらぬスーツスタイルのヒーロースーツ、そしてその上から白衣を纏う感じにしており、更に首にぶら下げた聴診器と手術に必須の道具などを一通り収納してあるアタッシュケースを常に持ち歩いており非番の日も1人で出かける際は白衣とそれらの道具を欠かさない。
勤務後。
福利厚生の一環で永遠亭に設置されている浴槽とシャワーで汗を流し終わり家に帰るとそこには結婚8年目の夫である物間寧人、そして居間をチラリと見ると一佳と心操の姿が。
「やぁ鈴仙さん、お帰り、今日はお客さんが来てるよ」
「お邪魔してるよ鈴仙」
「お邪魔してます、鈴仙さん」
心操と一佳を見てニコリと笑みを返して手を振る鈴仙。
仕事着からゆったりとしている普段着に着替えてからテーブルを囲む。
そうして、客も交えての食事会となる。
本日のメニューは鈴仙謹製のビーフシチュー、デザートには鈴仙謹製のお団子が提供される。
ビーフシチューの方はといえば5日前から仕込んでおり最高の仕上がりとなっている。
そして、お団子の方は絶品である。
ごく一部の店にしか卸していない鈴仙の団子、現在卸しているのは砂藤力道が構えているケーキ屋『シュガーハウス』と学生時代から打診されていた大手スーパー2店舗のみ、趣味の延長である為週に2回の卸す量もそれなりに少ないが店主である砂藤力道曰く絶大な人気を誇ってるとか。
医者でもありプロヒーローでもありパティシエールでもある鈴仙。
余暇を利用し食品衛生管理者、菓子製造技能士和菓子及び洋菓子1級、製菓衛生師の資格を取得したのは医学生時代である。
鈴仙は八意永琳を見習って稼ぎを多角化させており製菓はもとより株式や投資信託、不動産投資でも利益を上げている。
その結果が俗に豪邸と言って過言ではないこの家である。
「それはそうと、話を聞かせてよ2人のさ」
鈴仙がそう語ると心操と一佳は最近の出来事や楽しかった話をしてくる。
物間も話に加わり花を咲かせる4人。
そうして日付が変わるまで雑談に花を咲かせておりそのままお泊まり会となった。
翌朝。
自室で目醒めた鈴仙は隣で眠る一佳を見てそのサラサラの髪を撫でると目醒めたのか一佳からのハグが行われる。
ポヤポヤした眠気が残る口調で一佳は鈴仙に呟く。
「……ん、はよ、れーせん」
「おはようございます、一佳……良い朝ですね、朝と言うにはかなり時間が遅いですが」
同性同士でしか語れない事もあるだろうと言う事で寝室を一緒にして就寝していた4人。
4人ともあの後で更に盛り上がって寝たのは3時過ぎ。
現在時刻を確認すると11時少し過ぎ。
遅い朝食を摂りつつこの日は全員が非番の為に久しぶりに4人でのお出かけをしようという事になりショッピングモールに向かう事となった。
その道中、鈴仙はふと思い出す。
「そーいえば、物間さんは居ませんでしたが……懐かしいですね、覚えてますか? 一佳と一緒に買い物をしてたらナンパされて、そこへ颯爽と現れた心操さんを……カッコよかったですねぇ」
そう告げると一佳と心操はそんな事もあったなぁと懐かしそうに当時を振り返る。
フードコートでハンバーガーを食べながら思い出話に耽る4人。
その時……静かな空間を砕き割るかのように
どうやらお仕事の様である。
私服で非番の日とはいえプロヒーローである4人。
互いに視線のみで語り合うと慣れた手つきで物間は鈴仙の個性をコピーして相手の個性へと対処。
一佳も近接格闘で対応する、一佳の近接格闘術は鈴仙と双璧を成しており、鈴仙と同様に極めた先にある更に向こう側の領域に入っている。
心操はといえばボイスチェンジャー無しでも声帯模写が更に流暢に進化している。
ものの数分で制圧し終わると現着したプロヒーローと警察に後を任せて買い物を行ってその日の夕方に解散となった。
買い物を終えて家に帰った鈴仙夫婦。
楽しげな会話を行いつつ家事を済ませて2人仲良く食事となる。
食事をしつつお話をする2人。
「鈴仙さん、そういえば……」
過去の思い出話に花を咲かせつつも未来に目を向ける物間。
その問いに対して……鈴仙は自身の腹部を愛おしそうにさすりながら答えを告げる。
「妊娠4週目らしいわ」
その言葉にプロポーズの時と何ら変わらぬ笑みを浮かべて、自分の事の様に喜んできた物間。
思えば鈴仙は入学当初、一佳から紹介されたあの時から鈴仙は物間の事が好きだったのかもしれない。
本格的に物間への恋心を自覚したのが物間から行われたあの日のプロポーズの時なだけであって。
願わくばこの時間が永遠に続きますように。
そう願う鈴仙であった。
これにて本当に完結です
ありがとうございました