鈴仙が妊娠し出産して落ち着いた頃。
鈴仙のスマホに着信が入る。
2歳となった一人娘をあやしつつスマホを見るとそこには緑谷の文字が映し出されていた。
スワイプして通話をする。
挨拶から始まり軽く世間話をした後で本題に移る。
「実は……特別講師として雄英に来て欲しいんだ、内容はUSJでの怪我人に対する講義と実技なんだけど」
そう言われてカレンダーと自身の予定表を確認しつつ1日オフなのを確認し、更に母である八意永琳に娘を1日預かれないかと聞いて快く了承されたのを確認してから緑谷への返事を行う。
「助かるよ‼︎ 現役の医師兼プロヒーローはほぼ居ないから‼︎ その道のプロからの視点はとても参考になるよ‼︎ じゃあ詳しい事は後ほど‼︎」
通話を終了して愛娘を抱きしめる鈴仙。
物間と鈴仙との間に産まれた愛娘は既に個性が発現している。
物間の個性である『コピー』と鈴仙の『波長を操り支配する個性』と『兎』の身体能力が合わさった複合型の個性である。
個性は次世代になればなるほど深く複雑に絡み合う。
物間は対象に触れなければ個性がコピーできなかったが鈴仙と物間の子は対象を視るだけでコピーが可能になっていた。
しかも鈴仙の波長支配と兎の外見的特性と身体能力すら完璧に受け継いでいる。
まぁそれはさて置き。
愛する物間が帰ってくるまでに風呂や夕食の支度などの全てを完璧に仕上げる。
「ただいま、鈴仙さん」
18:45に帰宅した物間。
鈴仙達が学生の頃よりかはヒーローが暇をする世の中とはいえ大小様々な事件は毎日起こる。
特に今日は銀行強盗を働いた組織的な
心身ともにクタクタになっている。
だが妻である鈴仙の顔を見ると疲れも吹き飛ぶ。
愛娘は寝ていると告げられて若干へこむ物間。
休日くらいしか娘と会えないのは歯痒い思いがある。
「お風呂にしますか? ご飯にしますか? それとも……わ・た・し?」
経産婦とは思えない鍛え上げ引き締まった肉体と豊満な胸部と臀部を色っぽく見せつつ定番となったやり取りを行う。
扇状的な仕草で煽る鈴仙に対して生唾を飲み込みつつ……物間は語る。
「とりあえずはお風呂かなぁ」
鈴仙の建てた家は風呂に対して並々ならぬ執念を込めている。
鈴仙自身、八意家に居た頃より風呂に対しては並々ならぬ思いがあった。
家を建てる際にかかった資金5億の内、半額である2億5千万円を浴室と浴槽などの周辺設備にかけている。
当然ながらその資金は全部鈴仙から出ている。
医師としての年収とプロヒーローとしての稼ぎ、団子を売ってる収入、そして鈴仙自体の人気は下火になる事なく人気は上昇し続けている。
プロヒーローとしての活動はあまり行ってないにも関わらず8年連続チャート6位を維持してるのが何よりの証左である。
「ふぅ……」
人2人など余裕で入る大きさの浴槽で足を伸ばしながら疲れを癒す物間。
……にしても浴槽設備に関しては妻である鈴仙の趣味全開となっている。
風呂は命の洗濯。1日の疲れを癒す為の設備であるが故に本気で作り上げた最高の設備。
大変な事もあるが……今の日々は幸せだと実感している。
「あら、そう実感してくれるのはとても嬉しいわ……」
突如として声が聞こえ、鈴仙がいつのまにか居た。
「……とりあえず聞きたいのはいつの間に入ってきたって所かな? 悪戯好きの兎さん?」
鈴仙のもちもちしたほっぺをギュッと摘み上げて引っ張る物間。
ニコニコとした表情を浮かべている鈴仙は物間と対面になるように湯船に浸かっており、本当にいつの間に入ってきたのか。
「ふふーふ、私の個性はこーいう悪戯にも使えるのです!」
渾身のドヤ顔を浮かべながらそう語り湯船の中でハグを行う鈴仙。
2人以上が入ってもなお広い浴槽にしたのはこういう事をする為でもあるのだと波長で語っており……2人でゆっくりと湯船に浸かって思い出を語り合う。
「ねぇ……物間さん、いつまでもいつまでも……この幸せは続いて欲しいと心の底から願っているよ? 私はね。物間はどう?」
鈴仙は体勢を変えて物間に体を預けて寝そべっており寄りかかるようにして湯船に浸かっている。
「その意見には僕も大賛成だよ、鈴仙さん……この幸せは2度と手放したくないと、そう実感するよ」
たあいない会話を続けてのぼせる前に2人とも湯船から上がるのであった。
そして、特別講師の日。
特別講師証明証兼入館証を首からぶら下げて鈴仙は雄英の職員室前で待機していた。
職員室から出てきた変わらぬ恩師の姿を見て懐かしく思う鈴仙。
「お久しぶりです相澤先生‼︎ ……また朝食と昼食がゼリー飲料ですか? 医師としてはあまり褒められた食生活ではありませんね……ああいうのはたまに摂取するのは良いですが……まぁそれは置いておきましょう……今度診察するので永遠亭に来てください、必ずです」
お辞儀と挨拶をした後で恩師に釘を刺す。
「はい、お久しぶりです……悪いなこっちの都合で呼びつけて……医師としての貫禄も付いてきたんだな……誇らしいよ、泣いてばっかだった生徒がこんな立派になって」
しみじみと思い出話を語る2人。
そんな折、教師となった緑谷さんが鈴仙の案内を行う。
「ごめん‼︎ 遅れた‼︎」
今日の授業内容のカリキュラムや医師たる鈴仙からの講義など綿密に打ち合わせを重ねていく。
USJに赴いた緑谷、鈴仙、13号先生。
13号先生のお小言を聞きつつも特別講師として紹介される鈴仙。
ヒーローとしての実働がほぼ無く人気のみでチャート6位に登り詰めているのは純粋に異常と言うべきか。
いつもの様に白衣を纏った鈴仙は簡単な挨拶ののちに自身が招かれた理由を理解した。
(なるほどねぇ……)
とても楽しい授業になりそうだと実感してカリキュラム通りの授業を進めるのであった。
授業後。
振り返りを行いつつ医師としての知識の全てを余す事なく伝えた鈴仙。
現役医師、それも八意永琳の愛弟子と呼ばれる鈴仙から得られる物はとても大きく糧になる素晴らしい物である。
一仕事を終えて振り返りを行い、懐かしい学舎を後にする鈴仙。
明日からまた変わらない日常が続く。
帰り道。
スマホに入った通知を見れば親友たる一佳からの食事のお誘いであった。
即座に肯定の言葉を返して、久しぶりの一佳との食事に期待に胸を膨らませる鈴仙であった。