更に、司令官は男の子の持っていたおもちゃと頭部がすげ変わってしまいますます大変に!
「ハイパーヒーロー・キィーック!!!」
「ぐわぁあああああ!?」
繰り出された一撃が、怪人を派手にぶっ飛ばす。
最強のヒーローの必殺技を受け、吹き飛んだそれは哀れ……空高く飛んでいき、見事に爆散してしまうのだった。
「よし、これでおしまいね!」
蹴った反動を利用し、見事な着地を決めるヒーロー。
やたらとカラフルなヒーロースーツに身を包んだその姿は、かなりガタイが大きくて。
2mを超えていそうな身長に、かなり広い肩幅。
全身の筋肉はとてもたくましく、筋骨隆々という言葉ですら足りないほどだ。
長い髪をなびかせ、メガネをかけているその顔は美人……ではあるのだが、どこか雄々しさを秘めている。
そして何より……胸に大きな膨らみがあるとともに、股間にももっこりがあるではないか!
「じゃあ、ちゃんと分離してから基地に帰るとしましょっと。みんな、今日も力を貸してくれてありがとう!」
変身アイテムであるブレスレットを太い指で触り、画面をタッチする。
スクリーンには、自分を含め五人のバイタルデータが表示されているようだ。
「それにしても、五人が一人になって異常がないっていうのも……理屈じゃ分かるんだけど、不思議よね」
全員の状態が完全に一致しており、乱れはまるで見られない。
「強敵に対抗するため、とは言えとんでもないシステム作っちゃったわねぇ、私も……悪用されないように気をつけないと」
そう、なんとこのヒーローは五人が融合した存在。
変身アイテムや様々なメカを製作している司令官に残り四人が重なっている、まさにハイパーなヒーローなのである!
もちろん、この事はヒーロー達は同意済みだ。
それだからこそ融合中の思考は司令官に一任されており、全員がシンクロ済み。
合体ヒーローの強さの秘訣は、各々の強さが一つになっているだけではなく……司令官に対する、強い信頼感なのだ。
「わー! ヒーローだぁ!」
無邪気な声が聞こえ、ハイパーヒーロー状態のままの司令官がちらりと見る。
そこには、目を輝かせている男の子の姿。
「あら、キミ! こんな所にいたら、危ないわよ?」
幸い怪我はないようだが……もし、ヒーローと怪人の戦いに巻き込まれていたならばひとたまりもなかったであろう。
「えー、だいじょーぶだもーん! だって、ヒーローがたたかってたじゃん! すごかったー!」
どうやら、たまたま見かけて近寄ってきたらしい。
無謀と言うか、幼いと言うか。
「うふふ、みんなを守るのが私の仕事だからね! でも、いつだって完璧じゃないのよ? あんまり、近寄らないこと!」
「えー、つまんないの! ぼくだって、メカザウルスもってるもーんだ!」
頬を膨らませ、男の子は両手でメカ怪獣のおもちゃを見せてくる。
「あっ、それ……この前、ボツメカのデザインを使ってもらった奴ね。キミ、そういうの好きなの?」
色々なものを設計するとは言え、全てが装備として採用されるわけではない。
全自動戦闘マシン、というと聞こえはいいが……暴走するとろくなことにならないのが目に見えているものもある。
そういう物はそのまま、おもちゃなどに流用してもらっているというわけだ。
司令官自体も、折角考えたものが埋もれてしまうよりは気分が良いのだろう。
大事そうに抱えられたメカザウルスを懐かしそうに眺め、そっと撫で。
それに反応したのか、メカザウルスは目をチカチカを光らせている。
「うん、かっこいいもーん! ねぇねぇ、メカザウルスみたいなヒーローはいないのー?」
「うーん、ごめんね。まだ実用化は出来ないのよ。なかなか難しくって」
「そっかー……」
ちょっとしょんぼりしてしまう男の子に、司令官は慌ててしまう。
「うふふ、キミが大きくなって、作ってくれると嬉しいんだけどな!」
「えっ、僕? でも、ヒーローってすっごいんでしょ? なれるのかなぁ?」
「頑張ったら、なれるわよ! そうだわ、ちょっと待っててね!」
うっかり気落ちさせてしまった以上、少しは喜ばせてあげたいものだ。
「ハイパードッキング、オフ!」
わざと格好をつけて叫び、ブレスレットを操作。
司令官の体から四人のヒーローがエネルギーとして抜け出し、彼女の肉体は徐々に本来の体型に戻っていく。
カラフルだったスーツも色が減っていき、シンプルなものに。
「わぁ、すごーい!」
目を丸くして、男の子が大はしゃぎ……したその時だった。
『予期せぬエラーを確認。復元に異常発生、緊急再合体実行』
「え?」
初めての事態に、司令官も驚いてしまう。
「どうしたのかしら、まあ再合体できるなら大した問題はないはずだけど……」
呟きながら司令官はモニターから目を離し……息を呑んでしまう。
それも無理はない!
「わぁ、なんか、はいってくるよ!?」
なんと、自分から分離したヒーローエネルギーは……男の子に溶け込んでいっているのだから!
「ちょ、ちょっと、待って!?」
司令官が叫ぶも、もう遅い。
四色の光はたちまち、見知らぬ男の子にすぽんと収まってしまったのだ。
「わ、わ、わ」
次の瞬間、まるでヒーローの変身のように男の子が輝く。
「そ、そんな!?」
司令官が大声を出し終えるか否か――たったその程度の、僅かな時間。
「偶然合体、ハイパー・タカシ!!! すっげぇー、僕、大きくなってるー!」
幼児だったはずの存在は、司令官を見下ろすほどの巨体に変わりきっていたのだった。
四色のスーツを装着し、逞しく、強靭な肉体。
そして自分と合体していた時と同じく、大きな胸に、股間の膨らみ……
「う、嘘でしょ!?」
目の前の出来事が受け入れられず、またもや大声をあげてしまう。
「へっへーん、ホントだよーだ! すっごいや、僕、もうヒーローになっちゃったんだよー!」
女性的な長い髪を風になびかせつつ、幼い表情を浮かべる融合体・ハイパータカシ。
大きくなった手を動かし、興味津々ではしゃいでいる。
「え、えっと、タカシくん、いい子だから、元に戻ってくれる?」
モニターを確認すると、未登録の存在とヒーロー四人がシンクロしている状態が表示されている。
「えー、やーだよ! だって、この体、すごいんだもーん!」
軽く跳ねるだけで、元の身長以上に跳び上がる。
「だ、ダメだってば、ヒーローの力で遊んじゃあ!」
「えー、でも、僕、悪くないもーん!」
見たこともないはずなのに、ハイパータカシは当然のようにブレスレットを操作し始める。
「えっ、えっ!?」
「ほらほら、ログにあるもん。『エラーにより、近くの人間に全員再合体』って! ヒーローのみんなが、勝手に僕に合体してきたんだよー?」
嬉しそうにニヤニヤしながら、司令官に説明を始める。
司令官はワケが分からず、混乱してしまう。
「ちょ、ちょっと、タカシくん、なんで操作方法が分かったの!?」
「えへへー、じゃあ、クイズだよ! 僕は、分かったんじゃなくて……知ってたんだよー! どーしてか、分かるかなー?」
腕を曲げ、盛り上がった筋肉に目を輝かせながら、司令官に質問をしてくる。
「もう、ふざけてないで、早く答えなさい!」
「ブッブー、僕はふざけてないもーん! あーあ、正解だったら元に戻るつもりだったのになー! じゃーあ、正解を言うよ! だって、ヒーローのみんなはもう、僕なんだよ? だったら、ヒーローのみんなが知ってることは、僕もとーうぜん、知ってるんだもんねーだ!」
「そ、そんな!?」
司令官が顔を青くしながら、ハイパードッキングの仕様を思い出す。
確かにハイパータカシの言う通りなのだが、まさかエラーによりそのままの合体を赤の他人にしてしまうとは……!
「んもー、司令官さん、分かってたんじゃないのー? だって、モニター機能使ったら、みんなが僕とシンクロしてるの、分かるでしょ?」
「あっ」
確かに、少し前に自分自身で確認をしていた。
少し考えれば導けたはずの結論すら、動揺している今では難しいのであった。
「えっへへ、僕、四歳の幼稚園児、斎藤 隆だよ! 僕にシンクロしてるから、俺も斎藤 隆だぜ! ボクも斎藤 隆です! 私も斎藤 隆だよ! アタシ、斎藤 隆~!」
「や、やめなさい!」
「えー、でもいいじゃん! 俺、私が好きで、私はボクが好きなんだけど、ボクはアタシが好きで、アタシは俺が好きで、みーんな僕になっちゃったから、僕が僕を大好きってことで、気持ちいいんだもーん! 僕、僕、大好きよ、うふふ、えへへ、おっぱいおっぱいおちんちん!」
「ふ、ふざけないの!」
四人の口真似をして遊びながら、勝手に自分で自分とラブラブになっているハイパータカシに司令官が掴みかかる。
が、次の瞬間……強烈な裏拳が、彼女の顔に直撃したのだった。
「あ、ごめんごめん。僕じゃないよ、レッドの体術が勝手に反応しちゃった! あ、でも、俺、レッドだけど、僕だったや! あははー!」
「あ、あ……」
あまりにも正確な一撃に、司令官は完全に怯んでしまう。
「もう、気をつけてね! みんなが僕なんだから、僕はヒーローみんなの力があるんだよ? うふふ、だから、こんなにおっきいおっぱい、僕、男の子なのに、僕の、おっぱい、なんだぁ♡」
ハイパータカシはスーツの上から、自分の乳房を鷲掴みにする。
ぐにゃり、と柔らかく変形し……その感覚が、しっかりと脳に伝わって。
「わぁ、わぁ、気持ち、い~い♡」
自分自身をおもちゃのように扱い、満面の笑み。
「こ、こうなったら、直接ブレスレットを操作するしか無いわね」
隆くんに合体している今、分離指示は司令官から出すことは出来ない。
念のため試したものの、非情にもエラーが戻ってくる。
幸い、胸に夢中になっている彼は隙だらけだ。
おまけに、ブレスレットがある腕にはおもちゃのメカザウルスが握られたまま。
合体前は両手で抱えていたのだが……今は片手で余裕になっている。
ヒーロー四人との融合で、どれだけ大きくなったかが伺える。
「えへへ、僕、ずっとこのままでもいいかも! みんなも、僕と同じ気持ちだもんね~♡」
「よし、今よっ」
司令官は限界まで集中し、理想の角度でブレスレットに向かって飛び込む!
ところが、である。
「わーい、おっぱいおっぱい!」
後少しで触れられる……と思った刹那、ハイパータカシは大きく身体を捩ってしまったのだ。
虚しく手が宙を切り、派手に地面に転倒してしまい。
「はーい、残念でしたー! 司令官さんの作戦は、お・み・と・お・し!」
ケタケタと、高い笑い声が聞こえてくる。
「ど、どうして!? 私の計算だと、最高のチャンスだったのに!」
「んもー、司令官さん? まだちゃんと分かってないのー? 僕、みんなのパワーがあるんだよ? ブルーの、ボクで、僕になっている、天才的頭脳だってあるのに! 今はもう、司令官さんより僕の方が頭、いいんだもーんだ! えへへ、1+4は、1! だーいせいかーい!」
「じゃ、じゃあ……」
「うん、わざとだよ! こうやったら絶対そうしてくるって思ったもん。だから、アタシ……ピンク! でも、もう僕でーす! ピンクの僕の反射神経で、パッと避けちゃったってわけ! どう、どう? ドキドキしたでしょー?」
相手の圧倒的性能に、怒ることすらできなくなる司令官。
ヒーロー四人の強さはよく知っているつもり、だったのだが。
こうやって改めて、全く知らない思考の元で……それも、一つに束ねられてしまった今、理解が足りていないと思い知らされる。
例えば、レッドだけが融合したのなら裏をかけばいいだろう。
ピンクも、結構フェイントに弱いので誘ってやればいい。
ブルーは頭がいいのはそうだが……無理やりスタミナ差に持ち込めば、勝機はあるのである。
ところが、レッドでピンク、かつブルーなのだ。
体力があり、近接戦闘の心得があり、そこに野性的な反射神経が加わり、しかも自分より頭が回る。
この時点で、手のうちようがない。
おまけに、イエローも合体しているのだから……まるで新入りヒーローが、トップクラスヒーローに訓練されているかのような差になってしまうのだ。
「ねぇねぇ司令官さん、勝負しよーよ! 司令官さんが勝ったら、元に戻るよ! でも、負けたら……ずーっと、みんなは僕のまま!」
大股で股間を触り、もっこりを大きくさせ。
レッドとブルーのそれが、四歳児のおもちゃになっている様は見ていて気恥ずかしく……
「い、いいわよ、勝負は?」
「えーっとね、鬼ごっこ! じゃあ、司令官さんが鬼ね、よーい、どん!」
言い切った途端、司令官の横を疾風がよぎっていく。
「ず、ずるいわよ、イエローに勝てるわけ無いじゃない!?」
そう、最後に残ったイエローは脅威の俊足持ち。
マラソンランナーでもある彼女の足は、まるで疲れ知らず。
この調子だとどうしようもない。
真っ向勝負だとイエローに勝てず、
策を講じようにもブルーに勝てず、
一瞬にかけた所でピンクに勝てず、
闘って勝とうにもレッドに勝てず。
四歳児になった部下全員の能力により、あらゆる手段が役に立たない状態だ。
「んもう、最悪モニター機能で大体の方向が分かるから良いけど……」
とは言え、諦める訳にはいかない。
司令官はブレスレットを注視しつつ、ハイパータカシの後を追う。
が、数歩歩いたその時であった。
「やっぱり! こうやったら、ブレスレット無防備にしてくれるって思ったんだ!」
反応するより早く、ハイパータカシが司令官の腕を掴む。
「ちょ、ちょっと、鬼ごっこじゃなかったの!?」
「あはは、司令官さん、本気にしてたの? おもしろーい! もっと面白いこと、思いついちゃったんだもーん!」
そう言いながら、司令官のブレスレットにメカザウルスを接触させる。
「よーし、なんか面白いことに、なっちゃえー!」
デタラメにブレスレットが操作され、光が溢れ――
「すっげー! オイラ、おっぱい女の体になっているザウルス~!」
司令官の弾んだ声が、周囲に響き渡る。
「あはは、すっごいや! 入力したとおりになっちゃったんだ!」
それを見て、ハイパータカシも大笑い。
「タカシ、オイラ、人間になったザウルス! 面白いザウルスー!」
「あっ、でもメカザウルス! 君の頭はメカザウルスのままだから、気をつけてね!」
その指摘を聞き、司令官が手を顔に伸ばし。
「わーっ、すごいザウルス! 手はこんなに柔らかいのに、顔はオイラのままザウルス~!」
硬質の顎が動き、目をチカチカさせながら言葉を発する。
その下では、メカザウルスのおもちゃがあたふたと走り回っていた。
「あはは、どう、司令官さん! メカザウルスの体、面白いでしょ!」
「オイラの体、こんな感じザウルスね~」
ハイパータカシのいたずらのせいで、メカザウルスの胴体に接続されてしまった司令官の頭部。
大きさはちゃんと調整されているからこそ、より滑稽さが目立ってしまっていた。
「えへへ、オイラつーかまえた!」
嬉しそうな声を上げ、メカザウルスが元自分をつまみ上げる。
司令官は抗議をしたいようだが……残念なことに、メカザウルスボディには発声機能はないらしい。
短い手をジタバタさせ、大股の足をばたつかせるも特に効果はなく。
「あんまり動きすぎると、司令官さん電池切れちゃうよ!」
ハイパータカシの発言に、ビクリとなって動きを止めてしまい。
機械式のおもちゃに自分の頭部がくっついている以上、そうなったらどうなるのか検討もつかない。
「わぁ~、そうザウルス! オイラ、人間の体だから……電池、無いザウルスね!」
片手でおもちゃを掴んだまま、楽しそうに大股歩きを始め大興奮。
「うん、うん! 今はメカザウルスの体なんだから、好きに使って良いんだよー!」
「わぁい、やったザウルス! へぇ、おっぱいって、柔らかいザウルス……!」
「ねー、おっぱい、気持ちいいよねー! メカザウルスは司令官さんの体だから、おちんちんはないんだもんね!」
ハイパータカシが、まるで指導するかのようにスーツ越しの自分の胸を触ってみせる。
「へぇ、こうやって、ガオッ、ガォオオオ♡」
メカザウルスもまねをして、思わず咆哮をあげ。
自分の声で変な鳴き声をあげられて、司令官も思わず顔を赤くしてしまう。
「あはは、司令官さん、恥ずかしいんだー!」
「そうだ、オイラばっかり気持ちいいの、ずるいザウルス! 司令官も、気持ちよくしてあげるザウルス~!」
そう言うと、メカザウルスは近くの箱の上に司令官を置く。
「どうするの、メカザウルス?」
「ええっと、タカシ。コントローラー、あるザウルス?」
「うん、あるよ! はい!」
「ありがとうザウルス! オイラ、コントローラーで操作されるの……とーっても、気持ちいいんだザウルス~♡」
メカ怪獣の顔にもかかわらず、心なしか頬を染め。
司令官は司令官で、とんでもないと言った表情をするのだが……コントローラーが機能し始めているのか、既に体が動かない。
「ようし、まずは怪獣歩きザウルス~!」
コントローラーを、華奢な指が操作する。
それに合わせ、玩具であるメカザウルスボディは元気よくノシノシと歩き出す。
「わあ! 司令官さん、強そうだよー!」
「えへへ、思わずクセで、オイラもやりたくなっちゃうザウルス!」
自分で自分を操作しつつ、今の自分である司令官の体も同じように動かして。
「あはは、ふたりとも同じ動きしてるんだ! 面白いや!」
「自分で自分に指示を出すの、気持ちいいザウルス~♡」
どうやら、指示通りに動くのはメカザウルス本人の快感らしい。
つまり……今、無理やり動かされている司令官は気持ちよくもなんとも無く、ただただ勝手に動く体に翻弄されているだけなのであった。
なんとかしようにも、首から下はまるっきり言うことを聞かない。
自分の開発したメカの体になるという奇妙な体験は、ますます司令官を混乱させていくのであった。
「えへへ、疲れちゃったザウルス! このおっぱい体、オイラと違ってすぐ疲れちゃうザウルスね!」
「えーっとね、司令官さんの体は怪人倒したばっかりだし、僕と遊んだ後なのもあると思うよ」
メカザウルスは座り込み、箱に手をつき。
と、偶然にも……司令官のブレスレットが、司令官の顔の目の前に姿を見せる。
ちょうどコントローラーを手放しているからか、メカザウルスの体も自由に動かせるようだ。
一か八か、チャンスは今しかない!
司令官は意を決し、自分の額を思い切りブレスレットにぶつけに行く。
タッチされた反応があり、画面が光り。
良かった、動いた! と思ったのも束の間。
『ハイパードッキング、開始』
ブレスレットから聞こえた音にリアクションする間もなく、光が彼女に襲いかかり。
わ、私、どうなってるの?
あれぇ、知らない声がするザウルス。
ザウルスって……えっ、メカザウルス!?
そうザウルス! そっちは誰ザウルス?
誰って、私は……
ああ、司令官さんザウルス! 今、おっぱいボディ借りてるザウルス~♡
私の体なのよ、返しなさい!
別に返してもいいけど、今オイラ、どうなってるんだザウルス?
えっ、どうなってるって……
だって、司令官さんがオイラのブレスレット触って、変になったザウルス。
ちょっと待って、ハイパードッキングが起動していたけど、まさか!?
ハイパードッキング? ああ、司令官さんとヒーローが合体するザウルスね!
そ、そうなんだけど、このままじゃ、私とメカザウルスが……
あ、分かってきたザウルス! オイラに、司令官さんがドッキングするんだザウルス~!
待って、待って、どうして私がメカザウルスに!?
だって、オイラのブレスレットが合体実行したザウルス。だったら、メインはオイラでしょ?
そ、そうだけど、それは私の体ザウルス!
でもぉ、今はオイラが動かしている体なのよ。仕方ないザウルス!
た、大変、このままじゃ、私、オイラとシンクロしちゃうザウルス!
あっ、でも、なんだか、オイラに……私、入ってきている、わよ♡
うそうそ、それ、私なんだから、オイラの勝手にされたら、困るザウルス!
うふふ、そう言われても困るわね! だって、ハイパードッキングシステムは私が作ったんでしょう?
そ、そうザウルス! でもまさか、こんな変な状態で起動しちゃうなんて、困るザウルス!
そうかしら? オイラ、すっごく楽しいわぁ! だって、どんどん頭が良くなっていってるザウルス!
そ、そんな、私は、楽しいわぁ! え、あ、あらっ!?
えへへ、オイラと私、シンクロが進んでいっているわ。オイラに私が入って、一緒の心になってるの!
えっ、えっ、そんなの、ドキドキしちゃうザウルス~♡ えっ、あっ!?
なるほどね、今回は特殊な状況になっているザウルスね。
と、特殊って、ただのシンクロじゃないザウルス!?
そうザウルス! シンクロどころか、私とオイラは精神が一つになっていっているみたいだわ。
心が、一つにって、私が、オイラ!?
ううん、そうみたいよ。メカザウルスのオイラの精神に、ヒーローの司令官の私の精神が溶け込んでいっているんだわ!
じゃ、じゃあ、オイラ、一生オイラになっちゃって、わぁ、わぁ!
うふふ、面白いわよね! まさかオイラも、ある意味生みの親と一緒になっちゃうなんて、ゾクゾクするザウルス~♡
えへ、えへへ、おかしいのに、ダメな気がするのに、私って、どんどん、オイラ、ザウルス!
そう、そうよ! 私、オイラ、今日からもう、おんなじザウルス!
私の全部はオイラの全部、オイラの全部は私の全部!
あっ、あっ、心だけじゃなくて、体も、重なっている、んだわぁ♡
オイラの顔が、私の顔が、あっ、一緒になって、すごい、すっごぉい……!
尻尾が、足が、でっかくなって、パワーが出てきて、すごい、すごい!
合体して、一つになって、同じになって、オイラ、私、どんどんっ、強くなって、ガォオオオオオオ……♡
私に、オイラが一致していって、オイラと私は重なり合って、全てを共有して、同じ、同じ、同じ、同じ♡
ああっ、素敵ザウルス、もうずっと、合体したままでも、良いっ、わぁぁあああああ♡♡♡♡♡
「完全ハイパードッキング、ザウルス司令官だガォオオオオオオオ!!!」
「わぁ! 司令官さんとメカザウルスが、合体しちゃったー!」
光から飛び出したのは、メカ怪獣人間と言った存在。
メカ怪獣顔なのにキレイな髪が生え、左右の目がそれぞれ司令官とメカザウルスの物に分かれている。
いかにもな怪獣ボディにもかかわらず、スーツに覆われた胴体には二つの膨らみが。
太い尻尾、大きな足がしっかりと大地を捉えている。
「うん、うん、しっかり、合体しちゃったわ。私はもう、オイラと一緒なんだザウルスぅ!!!」
自信満々に大股で立ち、天を仰ぐように吠え。
「合体って、気持ちいいよね!」
「うん、うん、最高ザウルス♡ 私ももっと早く、合体するべきだったわ♡」
新しい自分の体を撫で回し、ザウルス司令官はデレデレとして。
「あっ、でも……司令官さんなんだけど、メカザウルスなんだよね? 僕、どうしたら良い?」
ヒーローにとっては司令官は上司だが、メカザウルスにとってはタカシは持ち主だ。
お互いにお互いの関係が絡まった、厄介な状態ではあるのだ。
「気にしなくて良いザウルス! そっちはみんながタカシになってて、こっちはオイラになったんだザウルス。だから、私はタカシの遊び相手のおもちゃのままザウルスよ!」
新しい体を自慢するように動かしながら、ザウルス司令官は嬉しそうにそう宣言した。
「わーい、やったー! じゃあ、今日からよろしくね、ザウルス司令官!」
「わかったザウルス~! それに、そっちのほうが強いのは変わらないし……タカシ、ムキムキだザウルス!」
「えへへ、良いでしょー! 頭もいいし、強いし、おっぱいもおちんちんも大きいし、僕、気に入ってるんだよ!」
二人はニヤニヤしながら、互いの肉体を魅せつけ合い。
「そうだ! オイラ、司令官だから……二人とも、一生このままにしちゃうザウルス!」
「えっ、できちゃうの!? そっかぁ、僕はあくまでもヒーローだからその権限がないけど、ザウルス司令官はできちゃうんだ!」
「うふふ、その通りザウルス! コンピュータ、オイラとタカシの合体状態を固定! 一生このまま、ザウルス~♡」
『了解。情報を更新しました』
とんでもない命令にもかかわらず、基地のコンピュータは入力を受け付けてしまい。
「やった、やった、ありがとう!」
大きな胸を押し付けるように、ハイパータカシがザウルス司令官に抱きつく。
「うへへ、タカシのおっぱい、おっきいザウルス~♡」
「えへへ、家に帰ったら全部見せてあげる!」
「オイラも、裸になっちゃうザウルスよ!」
「えっへへへ、僕も大きくなってヒーローになっちゃったし、メカザウルスもヒーローとして実用化しちゃったし、やったぁ!」
妙な事故で誕生してしまった新ヒーロー二人。
ヒーローと完全に融合した四歳児と、おもちゃの怪獣メカは新しい肉体の胸をつつき合いながら、楽しそうに帰路につくのだった。
「合体、合体、楽しいな! 俺もボクも、私もアタシもいい気持ち♡」
「オイラも私もおんなじ気持ち、合体って最高だわ~♡」
おしまい