変な夢を見たので、盛大に怪文書を書いてやった。

1 / 1
ぷぼ君にペロペロされたい馬生だった…

ポニーとは、体高147cm以下の馬の総称である。ポニーの多くは乗馬用、少数が愛玩用に生産される。

 

では、乗馬用にするには気性が激しく、愛玩用には愛嬌が足らないポニーはどうやれば殺処分を逃れられるだろうか。私は常日頃から、そう考えて、死を待っている。

 

私は白石。かの有名なポニー、ナリタブラリアンにダート1000メートルで2着まで迫ったサンデーサイザンスの産駒である。ポニー競馬が盛んでない日本では無価値に等しい、ただ「速い」だけのポニーの一頭だ。

 

今日も、誰を乗せるでもなく、誰に媚びを売るでもなく、ただ放牧地を駆け回っている。

 

でも今日は違う。同じ放牧地にやたらデカくてやたら黒い馬が放牧されてきた。でかい体。細く、長い脚。おそらくサラだろう。だが妙に痩せている。おそらく、競走馬というやつだろう。休養に来たのだろうか。

 

サラはいいなあ。気性が激しくても、愛嬌がなくても、ただ「速い」だけで、それだけで手塩にかけてもらえる。それだけで存在価値を認めてもらえる。俺もサラだったらなあ…

 

『おい、ボウズ』

 

きっとあの黒いサラも「速い」んだろうなあ。

 

『おい、聞いてんのか、ボウズ。』

 

なんだこのサラ…高圧的だなあ…

 

『あっ…はい。聞いてませんでした。』

 

『生意気なガキだな。そこどけ。そこのシロツメクサを食いたいんだ。』

 

『ならどいてやらねー。サラだからって調子乗ってんじゃねえぞ。』

 

『何だと。お前、歳はいくつだ。』

 

『2歳だ。』

 

『俺は9歳だ。』

 

『けっ。おっさんどころかジジイに片脚突っ込んでんじゃねえか。』

 

『何だとこのガキ』

 

調子に乗って強がってみるが、高齢といえどサラはサラ。蹴られるとひとたまりもないので退いてやる。

 

『あんた、サラだろう。どっかレースでも走ったことあんのか。』

 

『ある。ついこの前だって走った。2着だったがな。』

 

『走るのって、楽しいのか。』

 

『楽しい。全力で走って、競り合って、どれだけ早く板のところまで行けるか。こんなに楽しいことはない。』

 

『ふーん』

 

『どうした。聞いた割には興味なさそうだな。』

 

『俺はポニーだから。いくら走れたって、なんの意味もない。』

 

『そうか。そう思うか。』

 

『サラはいいよな。「速い」だけでチヤホヤされて。』

 

その時、その黒いサラからなにか殺意のような、怒気のようなものを感じた。

 

『ボウズ。俺達サラだって、ただ「速い」だけじゃ、だめなんだぞ。』

 

黒いサラは、怒っていた。

 

『ただ速くても、ヒトに従順でなければだめだ。落ち着きがなければだめだ。体調を崩しやすかったり、怪我をしやすかったりするとだめだ。大きすぎたり、小さすぎてもだめだ。』

 

『………』

 

『ただ、すべてが揃ったサラなんかいない。だからそんなやつの中でも、ヒトに愛想の良いやつが生き残る。』

 

『そう…なのか。』

 

黒いサラの言葉は、俺の頭に響いた。なにか欠けていた俺の根幹を、なにか補完してくれる気がした。

 

『でも、愛想の振りまき方なんて…わからない。』

 

『じゃあボウズ、ちょっと見てろ。』

 

そう言うと黒いサラは、見学者であろうヒトに向かっていき、盛大にフレーメンしてみせた。

 

ヒトたちは「ぷぼ君って、間近で見るとかっこいいね。」「変顔もかわいい♡」などと笑っている。すると黒いサラはこっちを向いて、

 

『ボウズ、お前もやってみろ。』

 

と言い放つ。俺がもたついていると、

 

『早くしないとこの放牧地のシロツメクサとタンポポ、食い尽くしちまうぞ』

 

…なんて恐ろしいサラだ。ジジイのくせに、生意気だ。

 

『わかった。』

 

俺は、見学者であろうヒトに近づき、同じようにフレーメンしてやった。

 

『やればできるじゃないか、ボウズ』

 

黒いサラのジジイは、そう言って俺をペロペロ舐めた。

 

 

 

2ヶ月半過ぎた頃。ついに黒いサラのジジイが休養を終えてまた走りに行くと言う。

 

『2ヶ月半だったが、世話になったな、ボウズ』

 

『こちらこそ。』

 

『ヒトには愛想よくするんだぞ。』

 

『わかってる。』

 

なんだか、名残惜しかった。

 

『サラのおっさんは、今度はどこを走るんだ?』

 

俺が聞くと、おっさんはしばらく黙ったあと、答えた。

 

『フランスだよ。フランスのロンシャンってとこで、凱旋門賞ってレースを走るんだ。世界で一番強い、世界で一番速い馬を決めるレースだ。』

 

そして、黒いサラのジジイは少し悲しそうに続けた。

 

『そして、たぶん俺の最後のレースだ。』

 

俺には、黒いサラのジジイがどこか寂しそうに見えた。

 

『そうなのか。頑張れよ、サラのおっさん。』

 

 

 

このあと、黒いサラのジジイは、その「凱旋門賞」ってレースを、日本の馬で初めて勝ったそうだ。

 

そして今、俺は……

 

その影響で誕生したポニー競馬のネット番組で、黒いサラのジジイの偽モンをやっている。

 

『おっさん…走るって、楽しいな!』

 

 

 

 




信じられないかもしれませんが、とある夜に私が見た夢そのまんまです。まあとんでもない夢を見たもんだと思います。夢だとすぐにわかったのですが、四足歩行にも、挨拶としてペロペロされることにも、違和感が全く無かったのが不思議です。夢ってそんなもんなんですかね。
ただ、ポニー君の言葉遣いはかなり変えています。自分が見た夢そのまんまだと、クソデカぷぼ君に萎縮してヒンヒン泣いてる、まるでリアルの私をトレースしたような精神がクソほど貧弱なポニーが出来上がってしまうので、生意気ポニーくんに仕立てています。この手のおじショタのショタは生意気な方がいいと思います。おねショタのショタは貧弱なほうがいいけど。てかそうでないと成り立たん。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。