みどりは幼い頃から身寄りのない天涯孤独の女であった。実の親から貰ったであろう物はその名前と、物心ついた時から所持している木彫りのブローチだけである。
身体と血を売って生活する女はある日、客の男からブローチの裏に彫られた名前が「龍賀」であることを教えてもらう。
日本の財界を牛耳る一族の名が、何故自分の所持品に彫られている?もしかして自分はかの大金持ちと血縁者なのか?
根拠に乏しい、頼りない証拠品となったブローチの持ち主であるみどりは胸を躍らせた。
親族のもとへ行けば、きっとその身を保護してもらえるだろう。こんな惨めな生活とはおさらばできる。
期待を抱いたみどりは、そのまま客から哭倉村の情報を聞き出し、全財産をはたいて夜行列車の切符を買った。
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