槌と鉄床(仮題)   作:編集長

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書き上げて途中保存したものの、うまく保存されなかったのでそのまま投稿しました。続きを書いてから更新するつもりなので、しばらく更新ないと思います。あらすじも適宜更新するつもりなので、長い目で見守っていただけたらと思います。

最初はどうしても説明に終始すると思いますので、面白くない方が大半かと思いますが、ご承知おきください。


ドワーフという人種について
0.


カン、カン、と規則正しく甲高い、鉄に鉄を叩きつける音がそこらじゅうに木霊している。

 

 ドワーフの街、ガラム。およそ3000年の長きにわたってドワーフが増改築を繰り返し、他種族たちにも莫大な富をもたらし続けてきたドワーフの至宝とも呼ばれる都である。

街といっても、人間が地上に作るものとは異なり、大部分が地中に建造されている地下都市である。その街の最下辺はマグマの巨大な噴き上げを覗くことのできる遥か地中の奥に達し、横の幅は都の上に鎮座する大山脈、その東西南北の麓に大穴を開けそれぞれ都中心部への大門を築くほどに広大なものである。

 

 オインは、そんな王都ガラムに大店を構える豪商の家に生まれた。オインの生家は、もとは東にあったドワーフの国であるムーア王国から移住してきた一団、その長であったことから、ムアヒジョルと呼ばれている。

 この家は、ムーア王国にあったころより、同族であるドワーフのみならず、地上に住まう種族、特に人間を主な取引相手として交易を広げてきたことから、人間との交流もほかのドワーフよりはるかに持っていた。

 そのため、一家の三男として生まれたオインは小さいころから長男や次男に比べて自由でいられることもあり、屋敷に招かれた人間の商人やその小間使い、あるいは馬車を駆る御者にいたるまで、ほとんどの階層の人間と触れる機会があった。

 

 一方で、一般的ドワーフとして望まれる技能の腕に関しても、オインは最上にして最難関の技能である鍛冶、ひいては鍛冶師としての立身を望んだ。

 長男や次男に関しては、生家が鍛冶の家でもない限りは、家業に最も役立つ技能を修めることが望まれるから、ムアヒジョルの場合、長男・次男ともに経営や商売のイロハを親より伝承することが第一であった。

 他方、三男であるオインはその点自由であり、経済的な制約もなかったことから、鍛冶師への道をその望み通りに歩むことが許されたのであある。

 

 このことから、一般に技能を習得する年のころである24歳を目前に控えたオインは、鍛冶師の卵としてよりも、豪商ムアヒジョル家に連なる者として、王都ガラムのあらゆる鍛冶師から弟子へとひそかに望まれるようになった。

 本来であれば、弟子が将来にわたって世話を見てくれる師匠の鍛冶場の門戸を叩くことが通例であるところ、なまじ金持ちかつ、鍛冶師の作品を地上へとお目見えさせる機会をもつ家に生まれたことで、オインはその後ろ盾がそもそも必要ないばかりか、オインの印象によって鍛冶師としての名声を大いにあげられる可能性がでてきたのであるから、王都中の鍛冶師が目の色を変えたのも当然のことであろう。

 

 もっとも、オインにとって、これら彼を取り巻く状況は不本意なものであった。

 

 小さいころから人間との交流を持っていた彼にとって、人間とはその短い生のなかで時には派手に争うこともあれば、目に見えない争いを内側でしながら、自らの益となる作品を作るドワーフ、つまりドワーフ全体を贔屓するわけではないということを幼いながらに理解していたし、そのことに一切無頓着で一個人のドワーフが立てた功績を家族のごとくお祝いしてしまう種族としての強固な紐帯とドワーフ的感性を人間とは違う個性として好ましく思っていたオインからすれば、オインの生家の伝手を鍛冶師個人として得られると考えている鍛冶師たちに失望の念が湧き上がっていたからである。

 

「頑固一徹な師匠がいればなぁ」

 

 これがこのころのオインの口癖であり、彼なりに家と関わりのある鍛冶師たちを電撃的に訪ね歩いていた彼の願いであった。

 そんなオイン少年の願いは、思いがけず成就することになる。

 

 

 

 それはオインがやはり家に伝手のある鍛冶師を二人の兄から聞き出し、やはりいきなり訪問したときのことであった。

 

 もっとも、オインがこういう行動をするというのは、既に鍛冶師の間では公然の秘密となっており、オインの訪れをいまかいまかと待ち構えていた鍛冶師は用意周到に菓子や飲み物を準備し、自らの鍛冶場を毎晩清め、弟子たちの製作品にも厳しい文句をつけてより一層の質向上をかけていたから、オインを迎える手抜かりのなさはともかくとして、弟子入りして実際に火を操る段としては上々の場所であるようにオインは思った。

 

「僕への応対はともかく、鍛冶場としては・・・」

 

 かなりいい場所ですね、と言葉を続けようとしたオインの声は、大きなドラ声によって遮られた。

 

「鍛冶師なら媚びずに腕だけ見せてみろっ、ボケナスッ!」

 

 声がした方向へオインが振り返ってみると、向かいの鍛冶場から青年が走り出てきたかと思うと仁王立ちでそこにふんぞり返った。

 オインはしげしげとその青年を観てみる。背の程はドワーフにしてみればかなり高いように見える。そのせいか、ドワーフ特有の縦に短く、横に太いずんぐりむっくりな体型ではなく、エルフや普通人のようなすらりとしたドワーフではあまり好まれない優美さがあった。

 

「鍛冶師のマスターともあろう者が、まだ弟子にもなってないガキに媚びへつらって恥ずかしくないのかっ」

「な、なんだとっ。ひょろもやしの分際で俺に良鍛冶師(ハイ・スミス)の何たるかを説教するつもりかっ、えぇ?!」

 

 姿形は優美だが、声の感触と言葉選びはドワーフそのものという印象だ。それにひょろもやしなんて言われていたが、袖の下から覗いている腕はかなりの筋肉質に見える。実際は普通のドワーフかそれ以上に強靭な肉体の持ち主に見えた。

 

 そんなことをぼーっと観ながら考えていると、鈍く、低い音が立て続けに響き始めた。はっとしたオインが意識を集中させて見てみれば、先ほどの青年に馬乗りになって夢中で殴り続けているがいた。そう、オインが訪ねた鍛冶場のマスターだ。だが、馬乗りで乗りかかられている青年のほうも両腕を顔前で交差させ、攻撃を防いでいる。

 

 やはり、青年は見かけによらずがっしりしている。服の下からもかなりの筋肉がちらちらと覗いているからオインの見立ては間違いないだろう。おまけに青年のほうは防戦一方だが、どこか余裕がありそうな雰囲気である。仮にもドワーフの大人が全力で殴りかかっているのだから、怪我一つで済めばかなりの幸運なのに、青年は痛がる素振りすら見せていない。どこかの戦場に立った経験を持っているのかもしれない、とオインは思った。

 

 ここで状況が動く。青年のほうが一気に体を起こして、良鍛冶師(ハイ・スミス)を突き飛ばしたのだ。突き飛ばされただけなのに、顔が苦痛で歪んでる。一方、青年のほうはしまった、という顔をしていた。

 

「くっ、くそ・・・」

 

 これ以上は警邏を呼ばなければならなくなるだろうと判断したオインは、両者に対していったん落ち着き、日を改めて決着をつけては、と提案した。そして、訪ねたのほうに辞去のあいさつもそこそこに、青年のほうに話を聞こうと青年のほうへ歩み寄っていった。

 




前書きにも書いた通り、とりあえず一話だけ投稿してある程度書き溜めたらそのときに一気に投下したいと思っています。読んでくださった方には申し訳ないですが、気を長くして続きをお待ちいただければと思います。
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