ダークギャザリング~闇なる者達よ、死に候え~   作:四五茶

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この話はここで終わりです。
次章から新しい話となります。
サブタイトルの意味が分かるかなーと思います(ゲス顔)


胎動修羅―⑤

 重たい瞼をゆっくりと開き、上体を起こすと、病室の扉の前にはボロボロな状態になりながらも、俺の身を護るために扉の前に座す義経(よしつね)がそこにいた。

 義経に声をかけようかどうか迷ったのには理由がある――それは俺が義経の在り方を言葉にする前に、義経は既に九天流転(きゅうてんるてん)と化しており。

 恐らくはこの病室の外は地獄絵図と化しているには違いなく、それは誰と戦っていたのかすら容易に想像がつく。

 その相手とは頼光であり、先の発言で「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()」と語っていたからだ。

 これ即ち、俺と義経の一戦の意味ではなく、本体の頼光は直接手を下さずに、分霊が義経と戦っていたに違いないはずだ。

 

「……ようやくお目覚めか、主。安心しろ、邪魔者は全員殺し――っ!? あ……、あ……、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! おのれおのれおのれ! ジジイぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ! よくもよくもよくも! ()()()()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()

 

 俺の方を振り向いた義経は、激しい動揺を隠せず酷く狼狽し、激しい怒りを宿した(まなこ)で俺を睨みつける。

 何故俺を睨みつけるのか理解できず、義経の元へ歩み始めようとした、その時。

 まるで自分の肉体が羽毛のようにふわっと軽い感じがし、全身からは迸る雷光の如き生命力が溢れ出る不思議なこの感覚。

 一体自分の身に何が起こっているのか理解できず、近くにあった姿見で自分自身を見た瞬間、俺はその場で声の限り絶叫した。

 

「ジジイぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そう、俺の現在の姿は頼光そのものなのだ。

 思考や意識は完全に俺が掌握しているのだが、それがいつまで続くか分からない。

 ようは時限爆弾のスイッチをいつでも頼光の気分次第で作動させられる状態というわけだ。

 

 何より恐ろしいのが、絶叫して間も経っていないというのに、酷く冷静な自分自身がここにいる。

 客観的に俯瞰的な立ち位置から現状を把握し、この呪いに関して自分なりの解釈が出来てしまうのだ。

 こんな異常事態だというのに、何故俺はこうまで冷静に物事を捉えることが出来るのだろうか?

 

『ふははははは! それは子よ、貴様が新たな源氏だからである! で、源氏の恥晒しよ? 気分はどうだ? 先程まで混濁した意識の中で、私の雑兵達(ぶんれい)と楽しい殺し合いをしていたではないか? いやはや、実に愉快! 愉快すぎて、今日もぐっすりと快眠できるぞ! なんとも最高の気分だ! こういう場合は、現代風に言うと? あー、あれか! ねぇねぇ、どんな気持ちだ? 源氏の恥晒しよ?』

「ジジイぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

 

 姿見の中の頼光が義経を挑発するが。

 義経の愛刀が頼光に届くことはなく、ただ虚しく姿見だけを木端微塵に粉砕しただけだった。

 それは義経も痛い程よく分かっていたようであるが、それだけ挑発されれば誰だってそうするだろう。

 無数の砕けたガラス片に映し出された頼光が義経の無様な様を見て更に笑う、嗤う。

 そんなカオスなこの状況だというのに、全く動じない自分自身がそこにいた。

 

「……頼光様、新たな源氏とはなんでしょうか? この肉体のことを指すのでしょうか?」

『ふははははは! 言ったはずだ、お前にだけは私の力を貸すとな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() さすれば、お前達がこれから挑むであろう難敵とも渡り合えるだろう? かつての肉体ではただ死にに行かせるようなもの、それでは駄目だ。それでは子は護れぬ。源氏の恥晒しよ、貴様もそれは本望ではあるまい?』

「――っち! で、問題は主の肉体を返す気があるのか、ないのか。どっちなんだ?」

『何とも愚かな質問だ。言ったはずだ、新たな源氏にするには、私の力を最大限発揮できる肉体に変貌させる必要があったと。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()あれだけの悪霊達を喰らい続けたのだぞ? 加護は残れど、肉体までは残るはずがない。まー、私の肉体であるが故、女には困らんだろうがな? ふははははは! 流石は私、全世界が羨むほどの美男子である!』

 

 義経はその言葉を聞いた途端、その場で膝から崩れ落ち、自責の念に押し潰され項垂れ。

 その光景をこれ以上ないぐらい愉しむ頼光の下衆さには吐き気を催す邪悪さを一瞬だけ感じるが。

 それでもこの肉体が必要なのは他の誰よりも自分自身が把握し、俺は頼光に感謝の言葉を述べた。

 

「――頼光様、深く感謝致します」

『うむ、そこの源氏の恥晒しよりも余程物分かりがよくて助かる。さて、私に用がある場合は、教えた通りの言葉を発すのだぞ? そう、深い慈しみと畏怖と、それから溢れんばかりの愛を込めて!」

「は……、はぁ……。分かりました。ではまたその際は何卒宜しくお願い致します」

『ふははははは! 任せよ! では子よ、それに源氏の恥晒しよ! 派手な戦を共にする時まで、暫しの別れである! ――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 最後の台詞に全身が押し潰されそうな感覚があったが、その言葉を最後に頼光の気配は完全に消え失せた。

 とは言えだ、あの性悪な頼光のことだ――きっと俺達があずかり知らぬところで観察しているんだろう。

 が、そんなことは今はどうだっていい――今はただ義経を優しく気遣い、奮い立たせるのが主としての役割だ。

 

「立て、義経。項垂れている暇なんてないはずだが?」

「……まない、主。オレが巻き込んだばかりに……」

「巻き込んだ、だと? ふざけているのか、お前は! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()() あの糞野郎を絶対に滅ぼす! 滅ぼさねばならん! だからこそ、お前の力が必要なんだ、義経! 分かったのならば、今こそ奮い立て! ()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() 俺が保障してやる! お前の主であるこの俺が保障してやる!」

 

 「……流石は主だな」とボソっと呟くと。

 最早負け犬のように項垂れていた義経はそこにはおらず。

 九天流転とは別の形の義経が目の前に現れ、恐らくその姿こそが、今の義経に必要な在り方なのであろう。

 そんな義経の肩にポンと軽く手をやり、一緒にあの糞野郎を滅すことを再確認し。

 間もなく訪れるであろう終幕が刻一刻近づいているのを肌で感じていた。




【専門用語等説明】

【ざっくりとした流れ的なアレ】

①頼光「子を接待しなきゃ……(使命感)

②頼光「え!?ちょっと待って、めっちゃタイプなんですけど!手料理振る舞わなきゃ……(責任感)」

③頼光「はぁはぁ……!しゅきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!(恋慕感)」

④頼光「せや、ワイの肉体あげたるんごwwwwww(作者:「は?」)」

⑤頼光「ずっと一緒だね……/////あ、義経。テメェは絶対滅ぼす。だって推しはワイのだもん!べーだ!(嫉妬感)」

◎上記の要約◎
→頼光の力を使うならば、頼光自身の肉体を授ければいい
→童子切安綱が抜けるようになったのは、頼光と化したから
→源氏の力=頼光の力そのものであり、それを鳴海が使えるようになった
 (尚、鳴海の元の肉体は完全消滅。加護だけは残っているようだ)

※捕捉説明※
・おや?義経の様子が……?
 →つまり進化したね、おめでとう!
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