ダークギャザリング~闇なる者達よ、死に候え~   作:四五茶

14 / 15
一週間遅れました。
暫くほのぼの回でお願いします。



悔恨深海―②

 かつて、宗海と名乗る中僧正が東照寺に在籍していた。

 が、他の僧とは違い、決して表舞台には立たず、書庫及び宝物庫の管理を担う役割をしていた。

 言ってしまえば、会社における部長のような役割を中僧正のような高僧がやっていると言えば分かりやすいだろうか?

 

 そんな高僧である宗海は、修行僧達から他の僧とは違い物腰が柔らかく接しやすかったのだろう。

 どうすれば宗海のような徳を積めるのか、どうすれば更に精進できるかなど、ひっきりなしに相談されることが多かった。

 

 が、それは宗海にとってあくまでも日常の一場面の過ごし方であり、別の顔を有しており。

 それは東照寺が誇る対悪霊における最強戦力という一面であり、滅霊会議において緊急性が高い案件は宗海の手でほとんど解決してきた。

 案件を解決するには決まって深夜からであるせいか、生活リズムが乱れ、結果、20代半ばだった頃の宗海は、30代後半にしか思えない顔つきにまで酷くやつれていた。

 

 そんなある日、とある縁談が宗海に訪れた。

 その縁談とは、東照寺が懇意にしている檀家からの縁談の申し出であり、以前、宗海が檀家の娘を救ったのがきっかけだったのだろう。

 檀家からの熱い申し出に対して貞観(じょうかん)は本人と話し合いをし、本人がその気であれば縁談の話を進めたいと返答し、宗海にその件に関して相談してみることにした。

 

「宗海。お前に縁談の話がある。桜柄(さくらつか)家のご令嬢との縁談だ。お前よりも10歳程若い娘であるが、どうする?」

「……遠慮させていただきます。私はこのままで問題ありません」

「しかしだな……。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()何を言っているか分かるな? 見合いだけは受けろ。上手くいかなければ儂が頭を下げよう。それでよいな?」

「……畏まりました」

 

 そうして1週間後に執り行われたお見合いの場にて。

 桜柄家のご令嬢である美麗(みれい)を目の当たりにした瞬間、宗海の思考は完全に停止していた。

 というのも、以前自分が救った時は明らかに大和撫子のような美少女だったはずなのだが。

 南国で1ヶ月間でも過ごしてきたかのようなこんがりと焼けた褐色肌に、髪をピンクに染めたギャルメイク。

 しかも花魁のような恰好であったせいか、その場に同席していた桜柄家のご両親もたじたじであった。

 

「あ! (むね)ちゃん! ちょりーっす! うっわ、マジぱねぇ! なんかピカってる~! あーしの名前覚えてるっしょ? まま、座って座って!」

「は、はぁ……」

「ちょ、パパもママもそこのハゲもあっち行ってて! ダーリンとお喋りすっから! ここの料理マジ最高なのはあーしが保障するよ! オラァ! 隣の部屋でも行ってっこいや! ダーリンとあーしのお楽しみを覗いたら……殺・ろ・す・ぞ♡」

 

 一瞬、なり代わりかもしれないと貞観と宗海は疑ったが、どうやらそうではないらしい。

 と言うのも、桜柄家に正月の挨拶回りでたまたま宗海も貞観に付いていった際、非常に大人しそうな美麗が出迎えてくれたのだが。

 貞観は普段通りに正月の挨拶をしようとした際、すかさず宗海は美麗をなり代わりだと見破り。

 結果、義経に喰らわせ、不幸中の幸いか、なり代わり前の魂がまだ桜柄家に残っていたため、貞観が速やかに元の魂を肉体へと戻し。

 念のために、緊急措置として桜柄家の周囲に悪霊達の侵入が出来ないような強い結界を施し、改めて桜柄家から沢山のお布施を頂いたというわけだ。

 

「……ではご両人。ゆっくり寛ぐがいい」

「うっせー! ハゲ! ハゲはハゲらしく、ピカってろ! ピ、ピカチュウぅぅぅぅぅぅぅぅぅ! 十万ボルトでチュぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

「ふふっ……」

 

 その時、宗海は久々に笑っていた。

 何年ぶり、いや、何十年ぶりにもなるかもしれない。

 それぐらいずっと笑ってこなかった宗海だったが、美麗の明るさと馬鹿さ加減に救われた気持ちになっていた。

 そんな宗海に安心したのか、貞観は美麗のご両親を引き連れて室内から退室し、美麗は畳み掛けるように宗海に猛アタックを始めた。

 

「あ! ダーリン、笑ったっしょ!? あーし、見てたもん!」

「……久々に、ですかね。それにしてもお元気そうで何よりです。私もハゲておりますがお許しくださいね?」

「んー? あのハゲと違って、頭の形がハゲに似合わないよね、ダーリンってさ? 髪伸ばそう! それがいいよ! あーし、そっちの方がテンション上がるし~? で、テンション爆上げからのクラブでウェーイ! これマジ最強! 行くべ? 行っちゃうべ?」

「確か……。美麗さんは18歳ではなかったですか? まだ行っちゃ駄目ですよ? 成人してから行きましょうね?」

「いやいやいやいや!? そんな真面目ちゃんなわけないっしょ!? 逆に聞くけどさ、成人前までに済ますっしょ? 色々と? ヤらぬなら、ヤってみせよう、コケコッコ! で、卵産んじゃうわけ! あーし、喩え方上手すぎね? 褒めて褒めて~♪」

 

 この時、まだ宗海は童貞である。

 つまり先程の喩え方を褒めていいものかどうか真剣に数秒悩み、出した答えは――。

 

「……大変ユーモアであり、知的なのですね、美麗さん。ですが美麗さんはまだ卵の状態なのです。孵化すらしておりません。まずは、ご自身をご自愛くださいませ。まだあれから時間も経ってな――」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!? ()()()()()()()()()()()()()()()()()() ダーリンってさ、占い師さんか何かなの!? え、ちょ、待って! マジやば! そりゃあパパもママもめっちゃお布施するの分かるわー! 宗教ぱねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! よ! 教祖様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

(何でそうなるんですか!? 占い師さんって何!? 私、普通の僧侶なんですけど!? 意味不明すぎるんですけど!?)

 

「ち、ちが! そういう意味ではなくてですね!? まずはご自身のお体を――」

「しかもあーしの体を気に掛ける英国紳士っぷり! マジ感動なんですけど!? ダーリンちょっちこっち来て座って! ウェーイ! ピースピース!」

 

 宗海の腕に自身の胸を当てた写真をバシバシ撮影する美麗に対し、コミュ障な宗海はただただ動揺していたのだが。

 

「こ、こら! そんなに胸元を露出させてはいけません! ちゃんとしまいなさい、全く!」

「えー? あーし、今超絶イケてる花魁イメージなんですけど? 吉原? だっけ? なんかそこでめっちゃ売れてる感じの花魁っぽくね?」

「知りません! 全く……。で、今何をされているのですか?」

「うっそ!? ダーリン知らないの!? SNSだよ! 見て見てー! あーしの画像だけでこんなにいいね! 付いてるの! フォロワー数やばくね?」

「どんだけ煩悩塗れなんですか!? はぁ……。まぁ、何にせよ元気で何よりです。ちゃんと残さず食べましょうね、頂きます」

「よーし! あーしがダーリンのために食べさせてあげるからね♡ はい、アーン♡」

 

 こうして宗海と美麗が出会うことになり、二人はすぐに打ち解けていき。

 数度の逢瀬にて、二人は結婚を前提に付き合うことに付き合うことになった。 




【専門用語等説明】

中僧正……めちゃんこ偉い。けど、まだ上には上がいる。会社でい言えば常務ぐらい? 

桜柄家……東照寺に多額のお布施をしまくる素晴らしい檀家さん。俺にもお布施くれよ、この野郎。

桜柄美麗……劇的ビフォーアフターに失敗したのか、それとも成功したのか分からん女。ギャルしか勝たん考え。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。