ダークギャザリング~闇なる者達よ、死に候え~   作:四五茶

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かなり鬱展開です。
誤字脱字チェックは明日やります。


悔恨深海―③

 数年後、美麗が成人式を迎えた翌日に、宗海と美麗は祝言を挙げ、晴れて夫婦の関係となり、桜柄家の婿養子という形になった。

 と言うのも、宗海は赤ん坊の頃に東照寺の玄関先に捨てられていた孤児であり、本来であれば孤児院へ預ける所であったのだが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 それが意味するところは、東照寺が宗海を養ったとした場合の費用対効果が極めて高いと判断し、結果、対悪霊に関しての最強戦力とする位置づけにし。

 英才教育の果てに宗海という法名が与えられ、果てなき海の如く東照寺の教えを広めていって欲しいという意味合いからその名が与えられた。

 

「夫婦になったんだし? これから産まれてくる子のためにもさ、なんかカッコイイ名前にしたくね? ほら、最初のデートでさ、海岸一緒に歩いたじゃん? そこの波の音が超絶気持ちよかったの覚えてるっしょ? だから、戸籍上では桜柄鳴海でヨロ!」

「は、はぁ……。なんだか女の子っぽい名前ですけど……」

「いやいやいやいや!? ほら、あーしのことをザバーンってな感じで救ってくれたし? (むね)ちゃんはさ、悪い奴らをやっつける津波じゃん? だから鳴海! 波の音を聞こえた悪霊共! 退治してやるべー! な感じっしょ? ちゃんとそこも考えたの! 自信持とうぜ、ダーリン!」

「は、はは……。名前負けしないよう頑張りますね……」

 

 宗海にとって、名前など正直どうでもよかった。

 ただ大事だったことは一つ――美麗を幸せにしていきたい、ただそれだけだった。

 東照寺だけの世界だった宗海にとって、美麗の存在は新たな世界を知ったきっかけでもあり。

 ありとあらゆる初めてを美麗が宗海に与え、誰かのために生きる喜びもまた美麗が宗海に与えたのだ。

 

 結婚してから半年後。

 美麗の腹の中に新たな命が誕生し、めでたい雰囲気に包まれていた桜柄家であったのだが。

 暗い影が忍び寄っていることは、この時まで宗海は気づかずにいた。

 

 いや、気づけるはずもなかったというべきか、桜柄家周辺に施された結界を宗海ですら気づけない程に少しずつ弄り続け。

 結界の効力を決して弱めることはせず、以前として結界としての機能を維持し続けたが故、気づけるはずがないのだ。

 ()()()()()()()()()()()()調()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そう、なり代わりからすれば、自分達の仲間を滅した宗海に対しての復讐なのだ。

 宗海が幸せの絶頂を迎えた瞬間に、最大限にまで絶望の果てに叩き落す素晴らしき計画。

 妻が出来、子供が出来、まさに桜柄家が幸せの絶頂を迎えた瞬間に最大限の価値がある。

 だからこそ宗海が桜柄家を離れ、遠い地で必死に悪霊と戯れている瞬間に、結界を破壊する価値が生まれる。

 

『ダーリン! 助けて! パパとママがおかしくなっちゃった! どうしよう! どうしようどうしよう! 怖い怖い怖い怖い!』

 

 宗海は美麗のその声を聞いた瞬間、瞬時に状況を理解した。

 取るべき行動は一つ――今からでは間に合わない、東照寺の兄弟子達に頼るしかない。

 だがそれまで美麗の安全の保障は? 兄弟子達が現場へ駆けつけるまでどう対処する?

 

「美麗、落ち着いて。護符は持っているかい?」

『あ、ある! あるよ! パパ! ママ! お願い! 傷つけあわないで! ど、どうしよう! パパとママを救わなきゃ――』

「……美麗。ご両親は必ず救う。けれどまずはその場から逃げなさい。狙いは君だ、美麗。だから決して護符を手放しちゃいけないよ? それは万が一の時に使う貴重なものだからね? だから決して――』

『パパ! ママ! もうやめて! あーしが助ける! 正気に戻ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!』

 

 宗海が渡した護符は、自身の守護霊である義経を一定時間権利譲渡するといった代物。

 例え遠方の地にいたとしても、護符が効力を発揮すれば、瞬時に譲渡した者へ瞬間移動し。

 結果、美麗の背後に義経が現れ、美麗の父親と母親になり代わっていた悪霊達を瞬時に滅することには成功したが――。

 

(……不味い。不味い不味い不味い! 兄弟子達がどれだけ早く駆けつけても30分はかかる! 護符の効力は約15分! つまり約15分間、美麗は無防備状態になる! それだけは避けたかった! 最悪だ、どうするどうする!? 考えろ、考えろ! 最適解を導け!)

 

 同行していた貞観に事情を説明し、すぐに東照寺から桜柄家へ救援を派遣する手筈は整えたが。

 それでも不十分極まりないのが実情であり、仮に自分が敵側の立ち位置ならば、どうやって自分を苦しめるかを宗海は考える。

 どう嫌がらせをする? 結界が破壊されたこの状況で、どう攻められたら最悪なことか?

 

「……美麗。聞こえるかい? 大丈夫かい?」

『う、うん! パパとママは気絶しちゃったけど、大丈夫! きゅ、救急車呼んだから! す、すぐに来るって!』

「なら二人を放置して、その場を出来る限り離れなさい。いいね?」

『なんで!? なんでそんな冷たい言い方するの、鳴海ちゃん! パパとママなんだよ!? 二人とも酷い怪我なんだよ!? 私の大事な家族なんだよ!?』

「……言ったはずです。美麗、狙いは君なんだ。私達の勝利条件は君の生存、私達の敗北条件は君の死だ。だったら私は是が非でも君を守らなければならない! 悔しいが完全に敵の術中であり、そして残された時間は限られている! 最短ルートで東照寺へ向かいなさい! その場にいるのはただ犬死にするだけです! 急ぎなさい!」

『無理! 無理無理! 絶対無理! あーしはパパとママを見捨てられない! 言ったじゃん、大事な家族なんだって! お腹の子のおじいちゃんとおばあちゃんになる大切な家族なんだよ! 見捨てられるはずないじゃん! そんなことも分からないの、鳴海ちゃん!』

 

 宗海は何も言い返せなかった。

 最善手はその場を脱し、限られた時間で出来る限り東照寺へ向かう事には違いない。

 だが美麗の考えも痛い程理解できるし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 故に宗海は腹を決め、速やかに禁じ手である手法を用いて護符の効力を伸ばそうとしたのだが――。

 

「宗海、それはならん。義経なき今、お前が欠けてしまえばそれこそこの地域は終わりだぞ」

 

 貞観がすぐに宗海のやろうとしたことを察し、力任せに宗海を地面に屈服させた。

 

「し、しかし! 私の妻に危機が迫っているのです! 私の子を宿した妻を守りたいんです、貞観様!」

「では問おう。このままコヤツを放置した場合における被害はどの程度になると思う? 義経がいない現在、儂とお前で何とか動きを封じている状況なのだぞ? そんな中、お前の妻とその両親を守りたいその気持ちは痛い程分かる。が、よく考えろ。コヤツを解き放てば、確実にこの地域はおろか、さらに被害は深刻化するであろう。()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 貞観を含めた複数の霊能者達が対峙している悪霊は。

 放っておけば大震災レベルに匹敵するであろう破壊力を秘められた凶悪な悪霊であり。

 現在何とか動きを封じ、悪霊の弱体化をし、その後に滅する段取りで行動していた。

 

「ふ、ふざ、ふざけないで頂きたい! そもそも! 私抜きで今回の件は当たると約束されたはずではありませんか! それを急に代役として私に声掛けし、このような事態に――」

 

 宗海は次の言葉を言いかけた瞬間。

 「糞がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」と叫びながら、対峙している悪霊に向かって激しく睨み付けた。

 

「そういうことか、下衆がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「ヒャ……! ヒャーハハハハハ! イイネェェェェェェェェェェ! ドウジル? ドウジルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!? ドウジニ、ドウジニ、ドウジテェェェェェェェェェェ! ドウジルオマエェェェェェェェェェェ! ザマァァァァァァァァァァァ!」

 

 その悪霊を形容するのであれば、巨大な百足のような姿をした化け物のような姿であり。

 脚の先端部分には苦悶の表情を浮かべた老若男女の顔が靴のような感じで履かれ。

 人の形を成さない程に人間性を喪失し、それが意味するのは極めて最悪な存在ということ。

 だとすれば優先すべきは言わずもがな、目の前に対峙したこの悪霊を置いて他にあろうか?

 

「……従え、宗海。残酷な選択であるが、分かってくれ」

「嫌だ! 嫌だ嫌だ嫌だ! この地域がどうなろうか知ったことか! 勝手にしろ! 私は自分の妻と子を救いたい! もうどうだっていい! 何が人々を悪霊から守るだ! 何が私の力を正義のために使えだ! 私はもうアンタらの道具なんかじゃない! 勝手に悪霊と戯れていろ、偽善者共が!」

 

 その悲痛な叫びが虚しく山々を木霊し。

 ただただ対峙する悪霊は愉快極まりない声で嗤い続け、ただ悪戯に時間が過ぎ去ろうとしたかと思った矢先。

 宗海はその悪霊の脚の部分にある女子供の顔が、美麗と美麗に宿る子が成長した顔に重なった瞬間。

 先程まで酷く狼狽していた宗海とは打って変わって、東照寺最強の戦力と化し、悪霊と激しい戦闘を再開し。

 ただただ現実逃避すべく、血の涙を流しながら、義経と共に悪霊を滅すことに成功し、宗海はその瞬間、完全に精神的に壊れた。




【専門用語等説明】

鳴海……名付け親は美麗。波の音が聞こえるっぴ!かららしい。

悪霊?……人間性を完全に喪失している時点でマジでヤベェ悪霊。


◎大まかな時系列◎

①なり代わった美麗を救う

②①をきっかけに、美麗と交際開始
 (この時点でなり代わりによる復讐始動)

③美麗と結婚

④美麗に子が宿る

⑤急遽、宗海に悪霊退治の救援をするように指示が来る
 (代役として宗海が参戦することに)

⑥悪霊と対峙してる際に、桜柄家の結界が崩壊

⑦桜柄家の異変を携帯電話にて知る

⑧美麗、護符を使用し義経召喚

⑨悪霊との戦闘中、なり代わり者が混じっていたことに宗海が察する。
 (理由:桜柄家の異変のタイミング及び急遽代役として自分が招集されたため)

⑩結果、義経が宗海の手に戻り悪霊討伐に成功するが……。

めちゃくそバッドエンドですね……
そりゃあ壊れるよなぁ……orz
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