ダークギャザリング~闇なる者達よ、死に候え~   作:四五茶

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神祖鏖殺―②

 時刻は丑三つ時に差し掛かった頃。

 事前に神主に事情を説明し、許可を得て敷いた人払いの結界も十二分に効力を発揮しており、この境内は既に幽世(かくりよ)と化している。本来であればこの場は神社の中なのだが、目の前に広がる風景は何処かの武家屋敷かの庭園かのようであり、そんな庭園内で義経が探し人の名を大声で叫びながら探し回っている。

 

頼光(よりみつ)様~! 可愛い子孫が遊びに来ましたよ~! 沢山遊びましょうよ~! こんな機会、滅多にないですよ~?」

 

 久々に里帰りした孫のような口調で語る義経であるが、義経が求める人物からの返事はない。

 いや、違うか。義経の言葉を終えた直後、幽世の中で一つの変化が起こった。ボゴボゴと庭園内にあった池の水が血生臭くなりながら沸騰し、やがて池の水は全て枯れ、地下へ降りていく階段が突如目の前に現れた。

 恐らく俺達を歓迎しているのだろうか、階段に置かれた蝋燭に灯りが怪しく灯るのだが、果たしてどこまでこの階段は続いているのだろうか? 

 ただ一つ、これだけはハッキリと分かる――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「鳴海君! じめじめしてるっぽいからさ、足元には注意だぞ♪ 線路は続くよ~♪ 何処までも~♪」

「……線路ではなくて階段だがな。大事な話し合いがしたいとのことだったので、協力したつもりだったんだがな? 義経?」

「え? 嘘はついてないよ? あ、若しかして……? 若しかしてだけど……? 僕がご先祖様を喰らおうと思ってたりする、鳴海君?」

 

 俺は即座に首を縦に振ると、それを見た義経は腹を抱えて大爆笑し、その場で転げ回るその様は、ただの無邪気な子供のよう。

 では先程見せたお前の表情は? いや、俺が見間違えただけか? 一体どっちだなんだ?

 

「ははは! 源氏万歳的なノリの話し合いだよ! ささ! 鳴海君、時間も限られてるし、ちゃちゃっとね?」

 

 確かに義経の言う通り、俺が敷いたこの人払いの結界の効力の時間は、効力を十二分に発揮してから約2時間程。

 普通は人払いの護符を張ることにより、霊媒体質がない人間であろうとも、本能的に立ち入るのは不味いと感じさせ、その効力の持続時間は護符を剥すまで。

 しかしながら、俺の施した結界の場合、不味いと感じさせる物ではなく、強制的に認識してはいけないという暗示を周囲に伝搬させる代物だ。何せ幽世を結界内で顕在化させているのだからな。仮にこの結界内に迷い込んだら最後、何も耐性がなければ現世の住人から幽世の住人と化してしまう。だからこそ、何重にも近づくなという暗示を施すが代償として、2時間程しか結界の効力は得られないのだ。

 

「――一つ聞きたいことがあるんだが?」

「え? 何? 時間がないはずだけど?」

「ただの話し合いならば、結界など必要ないのでは? 身内同士だとしてもだ、余程のことがない限りまず聞かれないだろ?」

「あー、んー、まー……。もう! 鳴海君、面倒臭い! 弁慶! ちょっと鳴海君を担いで降りちゃおっか!」

「――承知」

 

 義経の肉体の中から現れた巨漢の僧兵らしき男――それが武蔵坊弁慶だ。

 最初、義経に紹介された時は、なんでコイツは喜んで元僧侶の俺に赤鬼を紹介したのかとすら思ったか。

 まぁ、鬼に金棒という言葉が最も似合う出で立ちであり、その巨大さは一般男性二人分の男の身長に匹敵するやもしれない。いや、持っている武器は巨大すぎる薙刀なのだが。

 

「――鳴海殿、失礼します」

「ちょ、ちょっと!? ちょっとちょっとちょっと!? お、下ろしなさい! 下ろしてください!」

「……ご免!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 俺の意を無視し、義経と弁慶は全力疾走で階段を駆けて行く。

 ただ一つ、改めてハッキリしたことがある――二人の表情はやはり酷く歪んでいた。

 

 

 

 

「――ふむ。来寄ったか。()()()()()()()()()()()()()()()()。そんな鬼に囚われた哀れな子よ、願うのならば鬼退治してやらんでもないが?」

 

 最深部に辿り着いたその場所は、闇夜の静かな湖面を彷彿させるかのような場所。

 紅き月が天を支配し、その湖面の中央にて、鬼の髑髏で造った盃のような物で真っ赤な液体を飲む美青年が俺に語りかけてきた。

 その美青年の風貌は、まるで西欧人かのような美しき長い金の髪を有し、浮世離れした妖艶な怪しさを感じさせる程の美しさであり、何よりも強大な霊力――いや、そんな安易な言葉で評すわけにはいかないか。この力は少なくとも義経以上であり、義経が挑むにはあまりにも早すぎる相手だということは、義経自身も即座に理解したはずだ。

 

「あれれ~? ご先祖様~? 可愛い子孫に対してそんな言い方はあんまりだぞ♡」

「義経、だったか。戦の才はあれど、その才に溺れ、その才のせいで自滅したではないか? そんな哀れな才に溺れた小鬼よ、この私を喰らいに来たか? 優しく忠告してやろう――大人しく帰れ。さすれば見逃してやろう、今回だけはな?」

「やだなぁ~♡ これだからお爺ちゃんは♡ あ……! 若しかして……? あの……? 若しかしてなんですけど……? この僕如きにビビってるんですか~? あ! 図星? 図星でしたか? ごめんなさい、おじいちゃん♡」

 

 義経のその挑発に対し、涼しい顔をしながら頼光は髪を弄りながら完全に無視しているかのようであった。いや、そう見えたのはほんの一瞬だけだった。

 刹那、突如頼光(よりみつ)は消えたかと思うと、俺の首元に恐ろしいまでに凍えた刃がいつの間にか当てられ。すかさず弁慶が俺を護るために頼光の頭上に向かって薙刀を全力で振り下ろすも、いつの間にか頼光(よりみつ)は先程いた位置に戻っていた。

 

「……ジジイ! 狙うなら僕にしろ! 卑怯者が!」

()()()()()()()()()()()()()() 自分を卑怯者だと思って行動する奴の方が愛嬌があって可愛らしいらしいぞ? にしても、子よ? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()? どうだ? そんな守護霊崩れ共を私が滅し、私が代わりに子を護ろうではないか? いやはや、流石は私。実に素晴らしい建設的な話ではないか? そんな頼りない鬼達よりも遥かに有用であるぞ? さて、返答は如何に?」

 

 返答は如何に、だと?

 ふざけやがって……! ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがって!

 こんな場所に来なければ良かっただけの話だが、そんなのはもう関係ない! 頼光! 俺は腹を決めたぞ! 

 

「――殲滅しろ、九天流転源義経! ――忠死せよ、不退不滅(ふたいふめつ)武蔵坊弁慶!」

「……子よ? それがお前の答えか? ならば果敢に挑むがいい! 安心してこの場所で逝くがいい! 貴様らまとめて等しく滅してやろうぞ! さぁ! 殺し合いの時間だ!」

 




【専門用語等解説】

◎登場人物◎

源頼光……伝説の妖怪バスター。酒吞童子曰く、「おめぇさ! 鬼より外道じゃね!?」で有名すぎる人。デビルメイクライのダンテ的ポジションであり、スタイリッシュにコンボ決めまくってそうな人。とある作品では超絶美女のママ。僕は大好きであり、かなりの頻度でお世話になっております(半ギレ)

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