ダークギャザリング~闇なる者達よ、死に候え~   作:四五茶

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神祖鏖殺―③

 例えば神主であったり、僧侶だったり、他の霊能力者も然りなのだが。

 高次元なる存在に力を借りる際に、どのような力を借りたいのかを求め、その力を求める際の名前を予め双方の合意の下に決めておく。

 分かりやすく言えば、彼ら(高次元なる存在)の成り立ちや彼らが求める姿などを予め面談し、顕在化した際に思う存分力を行使できる儀を執り行っているのだ。

 

 例えば例外ではあるが、貞観(じょうかん)――長年の絶え間ぬ修行を経た上で、あのハゲは常に仏様に護られる身となり、仏様の名を呼ばずともその身に宿すまでに至っている。故に本来であれば死んでもおかしくない状況であろうと、あのハゲはちょっと怪我した程度の幸運を身に宿すイカれたハゲだ。

 

 ようは、だ。

 今俺が二人の名を呼び、そしてその前に命じた言葉は、彼らが俺に求めた在り方なのだ。

 義経はただひたすら眼前の敵を殲滅することを望み、弁慶は主たる義経の身を護る、ひいては義経の主たる俺を絶対に護ることを望んでくれた。

 ではどうやって護るか? ただの人間だった頃は、立ったまま無数の矢に射られて死した弁慶が、ただの人間の形を求めるはずがない。既にこの名を呼ぶ前に赤鬼のような見た目であったが、今の弁慶は赤鬼そのもの。4対の巨大な腕を宿した燃え盛る肉体のそれぞれに異なる武器を装備し、頼光(よりみつ)を激しく睨みつけていた。

 

「ほぉ? 少しは鬼らしくなったではないか? で、義経よ? お前は天狗の真似事か? ふむ、天狗はまだ斬ったことはないので丁度良かった。準備も出来たのならば、挑んでくるがいい? 雑兵共が」

「ジジイ、お前はまだ準備していないようだが? まさかこのオレとそのままで戦うと? 冗談がキツイぞ、ジジイ? 肉体は若いままだが、脳内は腐ってるんじゃないか?」

「ふはははは! 流石は源氏の子だな、糞みたいな安い挑発を誠にありがとう。――(ほとばし)れ、童子切安綱(どうじきりやすつな)!」

 

 頼光がその名を叫んだ瞬間。

 頼光が放った斬撃が巨大な雷の龍と化し、俺達を一気に飲み込むかのように襲いかかる!

 「弁慶!」と義経は命じると、弁慶はその龍の攻撃を正面から全身で受け止め、その場で一瞬にして灰と化してしまった。

 

「これで一匹また鬼を仕留めたか。では次は天狗でも狩る――ほぉ? これは中々面白い、()()()()()()()()()()()()()()。子よ、先程この鬼をなんと呼んだか教えてくれぬか? すまんな、雑魚の名など聞いておらんかったわ」

「……答える必要はないかと。滅する相手の名を知っても無意味ではありませんか?」

「ふはははは! それもそうか! いやはや、すまんすまん! 先程の言葉は子に対してではない、滅すのはそこの出来損ない者達に放った言葉である! それに、そ・れ・に? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 っく!? 流石にこんな攻撃を後数回も喰らえば、弁慶は恐らく完全に消滅してしまうだろう。

 先程の巨大な雷の龍――アレは決して呪いによる攻撃ではなく、ありとあらゆる災厄を祓う神聖なる祈りそのものだ。

 弁慶と頼光では相性が悪すぎる――だが、弁慶でなければ頼光の攻撃を完全に防げないのもまた残酷な事実。

 

「……お気遣いありがとうございます。ですがご安心を。()()()()()()()()()()()()

「それはどういう――がはっ!」

 

 頼光からすれば、俺の傍に確かに義光と弁慶の二人が俺を護っているかのように見えたであろう。

 そして義経と俺の焦りは本物であり、何とか弁慶の攻撃を封じたのは紛れもない事実。事実であるが、事実ではないのだ。なにせ俺の隣にいるのは義経であって、義経ではない。本命の義経は頼光をたった今首を完全に刎ね、すかさず頼光の肉体を細切れに斬り刻み続けている。

 

「……頼光様、貴方も先程仰ってたじゃありませんか。戦の才がある、と。奇襲にかけて、義経の右に出る者は他におりません。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() それが貴方の敗因――」

「――敗因ねぇ? あー、子よ? 説明を続けることを赦そう? ささ、続けてくれ? んぅ~♪ いやはや、相手が完全に勝利を確信した時に、絶望を与える! 兵は詭道(きどう)なり、よく分かってるじゃないか? 子よ?」

 

 俺は一体何を見させられているのだろうか。

 いや、そもそも一体何を相手に戦っているのか? 呆気なく斬り伏せられ、地に伏した義経と弁慶を目の当たりにし。

 再び恐ろしいまでに凍えた刃が俺の首にそっと当てられていた。

 

 

 

 

「さて、子よ? この私を滅する手段は他にあるのか? あれば嬉しいのだが? なければこの二人を滅し、私がお前を護ろうではないか? こんなに素敵な神となった私に護られるのだ、実に素晴らしい幸運だと思わないか? 命乞いをしろ、さすれば私が慈悲深くお前を護ろうぞ? 返答は如何に?」

 

 完全決着とはまさにこのことよ。

 とは言え、中々に愉しい余興であった。それだけは認めてやろう、子よ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 私の童子切安綱に触れて尚、ただ氷柱が肌にぴたっと当たった程度の加護を有すとは、何とも恐るべき加護ではないか?

 どこぞの出来損ないの子孫とは違い、なんとも魅力的な子では――。

 

「――お断りさせて頂きます」

「……おやおやぁ~? すまんな、えっと……? 今、何と言ったか?」

「頼光様の大変素晴らしいご提案の件、謹んで辞退させて頂きますと言ったのですが? 滅する手段が他にないのかとの質問に対して、お答えしましょう。先程までならば不可能ではありました。ですが、頼光様? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ほぉ? この土壇場で子よ?

 先程までのただの泣き虫な童のような表情から、戦場を愉しむ武将の顔になりよったわ!

 実に実に実に! あぁ! 実にこの私を愉しませてくれようか! 素晴らしい! 素晴らしくて思わず今すぐ殺したくなってしまう!

 

「ふはははは! ならば傲慢な私を満足させてみろ、子よ!」

「元よりそのつもりです。――鏖殺(おうさつ)だ、戦神狂乱(せんじんきょうらん)源義経!」

 

 

 

 

 鳴海がその言葉を発した瞬間、死屍累々が燃え盛る戦場がこの場に一気に拡がっていき。

 死すことを望む亡者の叫びや、飢えに苦しんだ者同士で互いの肉を喰らい合う亡者など、その場はまさに地獄のような光景。

 そんな光景を前にした頼光は思わず高らかに笑い、そして久しく滾っていく歓喜を確かに感じていた。

 

「子よ! 中々どうして面白い催しを出してくれ――っ!?」

 

 頼光はすぐさま後方に飛び、鳴海だった存在に対して酷く汗を流す。

 が、久しく感じた滾りの方が勝り、そして頼光は高らかに自分の名を叫び、一騎打ちを申し込んだ。

 

「我こそは源頼光! 源満仲(みなもとのみつなか)の子であり、あの酒吞童子(しゅてんどうし)を討った男である! 改めて名を聞こうではないか!」

「……あ、あぁ……! あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 鳴海だった存在は狂ったように叫び、頼光の呼びかけに応えず、その場で高らかに飛びそのまま頼光に二刀で斬りかかった。

 頼光は不敵な笑みを浮かべその斬撃を受け止めたが、防いだはずの斬撃が頼光の肉体に刻まれる。

 不可解なその攻撃に対し、頼光は即座に距離取り、再び巨大な黄金の龍を放ち、鳴海だった存在に襲いかかった。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「っ!? 馬鹿な!? 龍を一瞬で斬り刻んだだと!? いや……、これは……! これは何が起こっているのだ!? ()()()()()()()()()()()()

 

 頼光が狼狽するのも無理はない。

 鳴海だった存在は躊躇なく近くにいた亡者を貪らしく喰らい、喰らえば喰らう程、鳴海だった存在の悍ましさが深みを増し、その悍ましさに頼光自身が押し潰されそうになっているのだ。

 乱れ狂いながら、ただただ全てを皆殺しにしたい存在――それが戦神狂乱源義経であり、義経の主である鳴海の肉体を媒介にした戦闘形態。見た目は九天流転源義経の姿であるが、天狗の仮面を被った状態ではなく、その出で立ちはまさに蒼炎(そうえん)を身に纏った鬼そのもの。

 

「お……まえ……の……! はい……いん……は……! ゆだ……ん……したこと……だ!」

「――何だと? たかが鬼風情が! 何をほざいて!」

 

 頼光は瞬く間にその鬼の背後を取り、本気の斬撃で無数に斬りつける!

 その斬撃を躱す余裕などかったその鬼は、呆気なく地に伏し、今度こそ完全決着かに思えた、が――。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 鬼が叫んだ瞬間。

 亡者達の魂が瞬時に鬼に吸い込まれ、再び鬼はゆっくりと立ち上がり、再び頼光に襲いかかった!

 

「っちい!? そういうことか!」

 

 頼光は即座に理解した。

 この地獄のような戦場の光景をした領域は、義経の呪い領域そのものなのだ。

 そんな義経の呪いへの耐性を強制的に得させるために、義経の主である鳴海に対し、この領域内の呪いに対しての完全耐性を義経は与える。

 が、当然ながらその代償は大きい――何せ一人の人間から一匹の鬼へと変貌させ、恐らく鳴海の魂すらも吸い取っているのであろうと頼光は自ずと理解してしまった。

 

「義経ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 子に対して何たる行いかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 許せぬ、許せぬぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! 貴様を滅す、滅さねばならん! この外道がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 頼光は理解したが故、激しく激昂し。

 自身が宿した災厄なる存在を祓う力を以て、鳴海を救おうと試みた、が――。

 

「っ!? 弁慶ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 貴様が、貴様が、貴様がその身に宿るせいで! おのれおのれおのれ! ようやく理解したわ! 貴様を祓わねば、何度も何度も蘇るということがなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 頼光にとって、弁慶は取るに足らない道端の小石程度の存在でしかない印象だった。

 が、そんな取るに足らない小石程度の弁慶の恐ろしさは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「言った……はずだ……! ジジイ、アンタは油断した! それが敗因だ!」

「ほざけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 源氏の恥晒しがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 子を壊し尽くすようなお前を断じて許すわけにはいかない! 滅しろ、義経ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

 頼光は自身の強さに絶大な自信があった。

 だからこそ義経如きが自分に敵うはずがないという驕りがあった。

 

「な、なんだと!? 何故私の動きに付いてこられる!? 有り得ん、有り得んぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「……ジジイ、アンタはオレを見くびった。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()? ほんのごくわずかだったけど、お陰でアンタの全てを喰らえる! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()()()()() だから死ね! 死んでオレの血肉となれ、頼光ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

 

 その言葉を聞いた頼光は、初めて義経に笑いかけ。

 そっと童子切安綱を地面へと手放し、自身の最期を潔く認めていた。

 




【専門用語解説等】

◎オリジナル要素◎

不退不滅武蔵坊弁慶……ようはマリオの残機。マンマミーアとか言いながら1UPしまくれば、実質無敵。本編の神様のアレ的な奴。そりゃあ頼光さんも「ふぁ!?」ってなるレベルの性能。

戦神狂乱源義経……九天流転源義経は義経の祈りであるが、この形態は呪いの形態。まだ謎が残る形態だが、本編中頼光に源氏の恥晒しだとボロカスに言われた。なのでご利用は計画的になアレ。アクションゲームの鬼武者的なアレ。桜を見たら思い出してくれなアレ。


◎戦神狂乱形態で分かっている情報まとめ(頼光がブチギレた理由)◎

①本編の花魁のように、呪いの領域をその場に創り出す。
 →頼光曰く、それはさなから死屍累々が燃え盛る戦場かのような場。
 →その呪いの完全耐性を得るにはどうすべきか?
 →そうだね! 主である鳴海の魂を媒介にして鬼にしちゃおうZE☆
 →だってここは地獄の戦場のような場所だし、多少はね?

②鳴海だった存在が一匹の蒼炎を纏った鬼へと変貌
 →現段階で分かっているのは、この鬼は義経と弁慶の二人の能力に加えて、透過する斬撃にて相手を攻撃できる
 →つまり弁慶の能力を行使できるので、弁慶を倒さない限り、義経までは決して刃が届かない
 →しかも何故か弁慶は無限に回復し続ける

③初期段階では理性がない鬼であるが、中盤から終盤にかけて理性が回復
 →この時の人格は義経であることは判明しており、義経が鳴海の肉体を借りて頼光と戦っていた
 →つまるところ、護るべきはずの主の肉体を酷使し、護るべきはずの主の魂を媒介にし戦う義経

頼光「絶対祓わなきゃ……(ブチギレモード突入)」
作者「ですよね……」

◎専門用語◎

童子切安綱……酒呑童子絶対斬るマンな刀。とりあえずチート、ヤベェ。天照大神さんが予め酒吞童子と戦うし、多少はね? ってノリで頼光に任せたらしい。
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